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第4章 アルミニウム合金/鋼/鋼3枚重ね継手の摩擦アンカー接合

4.3 実験結果と考察

4.3.1 接合部の断面観察

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流動していることも分かる.なお,接合線近傍は,より色の濃い部位が存在するが,これ は,より細かいフェライト粒に起因する.接合線近傍でフェライト粒が,より微細化する 原因については,材料表面の酸化物によるピン止め効果によってオーステナイト粒の粗大 化が抑制されるためと考察されている24)

次に,Fig.4-5 にツール押し込み量を 1.4~2.4mm と変化させた際の鋼突起部近傍及び

SPCC/A5052接合界面の SEM反射電子像を示す.突起部のアルミニウム合金と鋼の接合界

面(以下,突起部接合界面とする)はいずれのツール押し込み量でも接合している.しか し,Fig.4-5 中の領域 A,つまり,突起部底部からアルミニウム合金と鋼を重ねた水平箇所

(以下,突起部ルート界面とする)では,ツール押し込み量1.4mmにおいて0.2mm程度の 接合領域が認められたものの,1.8mm 以上ではアルミニウム合金と鋼の間にわずかな隙間 があり,接合していないことが分かった.この現象については,第3章で述べた,アルミ ニウム合金と鋼の2枚重ね継手に摩擦アンカー接合を適用した場合と同様である.また,ツ ール押し込み量の増加に伴い,鋼の突起部高さが大きくなり突起部接合界面は長くなるも のの,ツール押し込み量2.4mmでは,Fig.4-6に示すように,鋼突起部先端とアルミニウム

Fig.4-5 Cross-sectional SEM images of the specimens with various plunge depths.

Fig.4-6 Magnified image of Area B in Fig.4-5 for the specimen (Pd: 2.4 mm).

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合金の剥離が起こっており,突起部接合界面の長さが短くなっていることが分かる.これ については次のように考えている.つまり,球面ツールを押し込むことで,鋼がアルミニ ウム合金中に突起を形成すると同時に,アルミニウム合金はカール状のバリとなる.押し

込み量2.2mmまでは鋼の突起はアルミニウム合金に追従するが,押し込み量2.4mmではカ

ールするアルミニウム合金に追従しなくなり,先端剥離が発生する.また,その後の冷却 過程でアルミニウム合金と鋼の熱収縮差から剥離部より亀裂が進展する.

一方,Fig.4-5に示すとおり,接合界面には,いずれも厚さ2~5μmの金属間化合物層が存 在し,ツール押し込み量による金属間化合物層厚さの顕著な差異は認められなかった.こ れについては,接合ツールの回転に起因する入熱量及び鋼の流動に起因する発熱量はツー ル押し込み量が大きいほど大きくなるが,接合時間が十分に短かったため,差異が顕著に 認められなかったものと推定している.また,接合界面の金属間化合物をEDSで分析した 結果,化合物はFe4Al13(FeAl3)またはFe2Al5の可能性が大きいことが分かった.

Fig.4-7にはツール押し込み量1.3mmと1.4mmの場合の中間SPCCと最下SPCC界面近傍

のEBSDマップ及び分析箇所の光学顕微鏡写真を示す.ツール押し込み量1.3mmでは,鋼

Fig. 4-7 OM and EBSD images of the SPCC / SPCC joint interfaces for the specimens with the plunge depths of (a) 1.3 mm and (b) 1.4 mm.

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表面から深さ約200μmの領域(光学顕微鏡写真中の領域A)を,ツール押し込み量 1.4mm では,鋼表面から深さ約200μm及び約400μmの領域(光学顕微鏡写真中の領域B,C)の EBSDマップをそれぞれ示している.一般に,アルミニウム合金の摩擦攪拌接合においては,

接合ツールによる攪拌部で金属の流動に伴う再結晶によって結晶粒が微細化することが知 られているが,鋼においても同様に微細化することが報告されている25-28).中間SPCCと最 下SPCCが接合されなかった押し込み量 1.3mmの場合は,接合ツール直下の SPCCの流動 に起因する結晶粒の微細化は150~200μm深さまでとなっており,最下のSPCCには達して いない.一方,中間SPCCと最下SPCCが接合された押し込み量 1.4mmの場合は,接合ツ ール直下のSPCCの流動に伴う結晶粒の微細化は約400μm深さまで認められ,最下のSPCC まで金属流動している.つまり,ツール押し込み量1.3mm以下では最下 SPCCは接合ツー ル直下の流動の影響を受けないが,1.4mm以上では影響を受け,最下SPCCも十分な流動を 起こすことで中間SPCCと接合されることが分かった.