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第3章 アルミニウム合金/鋼2枚重ね継手の摩擦アンカー接合

3.3 実験結果と考察

3.3.1 接合部の断面観察

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3.2.3 接合時の温度,ツール押し込み及び垂直荷重挙動測定

接合時の供試体の温度変化を把握するために,Fig.3-4に示すように所定の位置に 4本の 熱電対をセットした.また,接合中のツール押し込み挙動の測定は,裏当て治具の下面に 接触式変位測定装置を対角位置に2器セットして,供試体を含めた治具の移動(変位)を読 み取った.そして,実際に接合ツールが供試体に当たった時を0として,そこからの変位を 押し込み量として算出した.供試体に作用する垂直荷重は,裏当て治具とエアシリンダの 間に荷重測定用ロードセルをセットして測定した.(Fig.3-1参照)

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顕著な酸化物層は認められず,接合時にアルミニウム合金及び鋼の表面酸化物層が破壊分 散されたことが示唆される.一方,接合界面には金属間化合物層が認められ,この金属間 化合物層をEDS分析した結果を Table 3-3に示す.Table 3-3の結果から金属間化合物層は Fe4Al13(FeAl3)または Fe2Al5から構成される可能性が大であると考えられ,その厚さが 2

~5μmであるため,接合強度への影響が懸念される4).また,Fig.3-5中の領域A及び領域B,

つまり,突起部底部からアルミニウム合金と鋼を重ねた水平箇所(以下,突起部ルート界 面とする)において,アルミニウム合金と鋼の間にわずかな隙間が認められることから,

突起部ルート界面は接合されていない,すなわち,突起部側面のみにおいてアルミニウム 合金と鋼が接合されていることが分かった.

Table 3-3 Chemical compositions of the joint interface. (at.%) Fig.3-6 EPMA images of the specimen (Pd: 1.6 mm).

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次に,接合ツールの押し込み量を 1.2~1.75mm と変化させた際の接合部断面の光学顕微 鏡写真及び突起部接合界面のSEM反射電子像をFig.3-7に示す.Fig.3-7に示すとおり,押し 込み量の増加とともに突起部高さが大きくなっていることが分かる.また,突起部接合界 面では,いずれの条件においても金属間化合物層の厚さは2~5μmであり,顕著な差は認め られなかった.これは接合時間が短かったためであると考えらえる.

一方,突起部ルート界面については押し込み量が 1.2mm の条件では突起部の底部から

0.3mm 程度接合していたが,押し込み量が増加するとともに接合領域が小さくなった.こ

れについては以下のように考えた.上板のアルミニウム合金のみを攪拌して接合する摩擦 攪拌点接合技術による異種金属接合と同様に,回転する球面ツールが鋼に到達する前にア ルミニウム合金のみの攪拌でアルミニウム合金と鋼が接合される領域が形成される 2,5).そ の後,接合ツールが鋼に押し込まれ突起部が形成されても,押し込み量が小さい場合は,

接合した突起部ルート界面の一部の領域が残る.しかし,押し込み量が増加すると突起部 ルート界面の接合領域は突起部側へと移動するため,突起部ルート界面の接合領域は小さ くなっていく.なお,突起部ルート界面の接合領域が突起部側へ移動するという推察につ いては,第7章の7.4.2項の(2)に記載の観察結果から,概ね,その妥当性が確認できる.つ まり,7.4.2項の(2)では,A5052/SPCC/GA鋼の接合において,GA鋼表面に残存する固液混

合状態のZn-Feめっき層が,接合ツールの押し込みに伴って鋼突起側に移動するという観察

結果を示している(Fig.7-16参照).

Fig.3-7 Cross-sectional OM and SEM images of the specimens with various plunge depths.

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