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第4章 アルミニウム合金/鋼/鋼3枚重ね継手の摩擦アンカー接合

4.3 実験結果と考察

4.3.3 ツール押し込み量と十字引張強度の関係

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29-37).一方,摩擦アンカー接合で作製したA5052/SPCC/SPCCの3枚重ね継手では,突起

部接合界面に金属間化合物層が2~5μm形成されており,これらの報告から,接合強度への 影響が懸念されたが,引張せん断強度約3.8kN/点を達成した.

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し,途中で鋼突起部を貫通して破断に至っていることが分かる.また,Fig.4-14に示すとお り,十字引張強度はツール押し込み量 2.2mmまでは,ツール押し込み量が大きいほど大き くなり最大で約2.5kN/点に達するが,ツール押し込み量2.4mmでは低下した.これらの結 果については次のように考察した.

Fig.4-13 Appearances and cross-sectional OM images of the specimens after the cross tensile tests with various plunge depths.

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ツール押し込み量が小さい場合,突起部高さが小さいため A5052に対するアンカー効果 が小さく,また,突起部接合界面の面積は小さい.したがって,小さい力で亀裂が発生,

進展するため十字引張強度は低い値となる.なお,ツール押し込み量 1.4mmでは突起部ル ート界面が 0.2mm程度接合されているものの,突起部ルート界面の接合部外周の未接合部 分が切り欠き形状となっており,十字引張試験では,その部分に大きな応力集中が発生す る.したがって,亀裂は突起部ルート界面の接合部端で発生し,低延性の金属間化合物が 存在する突起部接合界面を進行したものと思われる.

次に,ツール押し込み量が大きくなってくると突起部高さが大きくなるため,A5052に対 するアンカー効果が大きく,また,突起部接合界面の面積は大きくなる.したがって,亀 裂が発生,進展するためには,より大きな力が必要となり,十字引張強度は大きくなる.

しかし,突起部高さがさらに大きくなると,亀裂の発生,進展にはさらに大きな力が必要 となり,突起部に大きな力が負荷されるため,亀裂は突起部先端近傍の突起部厚さが薄い 部分を貫通するようになる.そして,ツール押し込み量2.4mmでは,Fig.4-6に示したよう に突起部先端とアルミニウム合金が剥離しているため突起部接合界面の面積は小さく,亀 裂の発生,進展に必要な力は小さくなる.つまり,十字引張強度は小さくなる.そのため 突起部に負荷される力が小さくなり,亀裂は突起部を貫通することなく,突起部接合界面 を伝播し剥離部に到達する.

以上より,突起部接合界面には金属間化合物が形成され接合強度への影響が懸念された が,十字引張強度約 2.5kN/点を達成し,後述のように,他の方法と比較すると極めて高い 結果が得られた.

Fig.4-14 Relationship between the plunge depth and the cross tensile strength.

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