2.6.4 薬物動態試験の概要文
2.6.4.6 排泄
放射能の排泄に関するマスバランスについてはラット及びイヌにおいて検討し(表 2.6.4-1及び 表 2.6.4-31),ヒトと比較した.いずれの動物種でも,排泄経路からの標識体の回収率は高く,尿 中排泄が主要経路であった.ヒトにおける尿中排泄率はラット及びイヌに比べてさらに高かった
(表 2.6.4-31).
また,授乳ラットを用いて
Org 25969
の乳汁排泄を検討した.表 2.6.4-31 排泄データの動物種比較 放射能(投与量に対する%)
尿中排泄 糞中排泄 総回収
動物種 投与量
(mg/kg)
雄 雌 雄 雌 雄 雌
書誌名
ラット 8 80.6 81.1 4.22 6.82 84.8 87.9 NL0056358 ラット a) 8 78.8 - - - 78.8 - INT00010275
イヌ 8 90.1 89.2 0.33 0.80 90.4 90.0 NL0055283 ヒト 4 96.1 b) - < 0.02 - 96.1 - 19.4.107試験 すべて静脈内投与により実施した.動物は特記したものを除き雌雄各3匹,ヒトは男性6名で測定した.尿及び糞は,動物では 7日間,ヒトでは48時間採取した.ヒトでは呼気中の[14C]-CO2も測定したが,放射能は検出されなかった.ラット及びイヌで はケージ洗浄液中の放射能も測定したが,これは主として尿由来と考えられるため,この値を尿中排泄に加えた.総回収量は尿,
糞,呼気中のCO2,及びケージ洗浄液(動物のみ)の合計として算出した.-:測定せず
a) 雄性ラットのみを用いた試験.本試験では糞中排泄は測定していないため,総回収率は過小評価されている.
b) 範囲:84.8~106%.
2.6.4.6.1 雄性及び雌性 Wistar
ラットに[14C]-Org 25969
又は[3H]-ロクロニウムを単回静脈内投与,
あ る い は
[
3H]-
ロ ク ロ ニ ウ ム 投 与 後 にOrg 25969
を 投 与 し た と き の 排 泄 試 験【NL0056358,4.2.2.5.1】
8 mg/kg
の[14C]-Org 25969
単回静脈内投与後の血漿動態(2.6.4.3.2),代謝(2.6.4.5.2)及び定量 的組織分布試験(2.6.4.4.2.1)の一環として,雄性及び雌性Wistar
ラットの排泄におけるマスバラ ンスを検討した.さらに,本試験ではラットに2 mg/kg
の[3H]-ロクロニウムを単独で単回静脈内
投与又は[3H]-ロクロニウム投与後に 8 mg/kg
のOrg 25969
を投与したときにOrg 25969
がロクロニ ウムの排泄に及ぼす影響も検討した.Org 25969は[3H]-ロクロニウム投与後 5
分に投与した.[
14C]-Org 25969
の排泄ラットにおける[14
C]-Org 25969
の排泄のマスバランスを下表(表 2.6.4-32)に示す.表 2.6.4-32 ラットに
8 mg/kg
の[14C]-Org 25969
を単回静脈内投与したときの放射能の排泄率 放射能(投与量に対する%)[14C]-Org 25969(8 mg/kg)
排泄経路
雄 雌
尿中排泄(0~168時間) 78.48 ± 3.36 78.86 ± 3.74 糞中排泄(0~168時間) 4.22 ± 1.06 6.82 ± 2.72 ケージ洗浄液(0~168時間) 2.12 ± 0.72 2.21 ± 1.50 骨(168時間) a) 2.71 ± 0.20 2.63 ± 0.08 屍体(168時間) 7.34 ± 0.62 4.68 ± 0.61
総回収 94.86 ± 2.30 95.19 ± 1.00
a) 大腿骨のみの放射能から算出した概算値を示した.より詳細な検討は他の分布試験で実施した(2.6.4.4.2.2及び2.6.4.4.2.3).
[
14C]-Org 25969
の放射能はほとんどが尿中に排泄された.放射能の排泄経路及び排泄率に明白な性差は認められなかった.初め,尿中排泄は非常に迅速であったが,投与後
168
時間の時点で もこの経路による放射能の排泄は継続し,この時点までに投与量の約78%が尿中に回収された.
放射能の糞中排泄は投与量のわずか
5%であり,ラットにおける本剤の胆汁排泄及び/又は腸管分
泌の寄与は大きなものではないと考えられた.本試験では投与後168
時間の時点で投与量の約8
~10%が屍体及び骨中に残っていた.
Org 25969
が[3H]-ロクロニウムの排泄に及ぼす影響
ラットに[3
H]-ロクロニウムを単独投与したとき及び[
3H]-ロクロニウム投与後 5
分にOrg 25969
を投与したときの[3H]-ロクロニウムの排泄におけるマスバランスを表 2.6.4-33に示す.
表 2.6.4-33 ラットに
2 mg/kg
の[3H]-ロクロニウムを単独で単回静脈内投与又は[
3H]-ロクロニウ
ム投与後に8 mg/kg
のOrg 25969
を投与したときの放射能の排泄放射能(投与量に対する%)
[3H]-ロクロニウム単独(2 mg/kg) [3H]-ロクロニウム(2 mg/kg)投与後に Org 25969(8 mg/kg)投与a) 排泄経路
雄 雌 雄 雌
尿中排泄(0~168時間) 10.27 ± 0.37 9.75 ± 1.03 14.43 ± 2.58 14.09 ± 5.69 糞中排泄(0~168時間) 81.11 ± 1.57 78.92 ± 2.85 82.33 ± 2.38 82.12 ± 4.27 ケージ洗浄液(0~168時間) 0.27 ± 0.08 0.44 ± 0.18 0.52 ± 0.11 0.39 ± 0.16
屍体(168時間) 0.55 ± 0.09 0.53 ± 0.06 0.48 ± 0.03 0.50 ± 0.04 総回収 92.19 ± 1.41 89.65 ± 2.33 97.77 ± 1.67 97.10 ± 6.33 a) [3H]-ロクロニウムの投与5分後にOrg 25969を投与
Wistar
白色ラットに[3H]-ロクロニウムを単独で静脈内投与又は[
3H]-ロクロニウム投与後に
Org 25969
を投与した後,いずれも0~168
時間の間に平均で投与量の約80%が糞中に排泄され,
糞中排泄は投与後
7
日以上継続した.したがって,このような実験条件ではOrg 25969
が存在し てもラットにおけるロクロニウムの排泄に胆汁排泄及び/又は腸管分泌が重要な役割を果たすこ とが示唆された.Org 25969
非存在下では平均で投与量の約10%が尿中に排泄されたが, Org 25969
存在下では14%に増加した.いずれの場合でも,屍体で回収されたのは投与量の平均 0.5%のみで
あった.
Org 25969
は胆汁及び腸管からの[3H]-ロクロニウムの放射能排泄に顕著な影響を及ぼさな
かった.放射能の排泄経路及び排泄率に明白な性差は認められなかった.
2.6.4.6.2 雄性及び雌性ビーグル犬に[
14C]-Org 25969
を単独投与又は[3H]-ロクロニウムを単独投
与,あるいは[3H]-ロクロニウム投与後に Org 25969
を投与したときの排泄試験【NL0055283,4.2.2.5.2】
雄性及び雌性ビーグル犬に[14
C]-Org 25969
を8 mg/kg
で単回静脈内投与したときの排泄を検討 した.さらに,0.36 mg/kg の[3H]-ロクロニウムを単独で単回静脈内投与,又は[
3H]-ロクロニウム
投与後10
分に8 mg/kg
のOrg 25969
を静脈内投与したときにOrg 25969
がロクロニウムの排泄に 及ぼす影響も検討した.検討は吸収(2.6.4.3.11)及び代謝試験(2.6.4.5.4)と併せて行った.[
14C]-Org 25969
の排泄イヌに[14
C]-Org 25969
を静脈内投与後,放射能は迅速に排泄され,ほぼ完全に尿中に排泄された(表 2.6.4-34).放射能の糞中排泄率は投与量の
1%未満であった.排泄経路及び排泄率に明白
な性差は認められなかった.表 2.6.4-34 イヌに
8 mg/kg
の[14C]-Org 25969
を単回静脈内投与したときの放射能の排泄 放射能(投与量に対する%)[14C]-Org 25969(8 mg/kg)
排泄経路
雄 雌
尿中排泄(0~168時間) 87.91 ± 3.11 87.20 ± 2.05 糞中排泄(0~168時間) 0.33 ± 0.26 0.80 ± 0.06 ケージ洗浄液(0~168時間) 2.14 ± 2.15 1.98 ± 1.32
総回収 90.38 ± 1.07 89.99 ± 1.03
Org 25969
が[3H]-ロクロニウムの排泄に及ぼす影響
イヌに[3
H]-ロクロニウムを単独で静脈内投与した場合と, [
3H]-ロクロニウム投与後 10
分に非標識
Org 25969
を投与した場合の放射能の排泄率を表 2.6.4-35に示す.表 2.6.4-35 イヌに
0.36 mg/kg
の[3H]-ロクロニウムを単独で単回静脈内投与したとき,又は[
3 H]-ロクロニウム投与後に8 mg/kg
のOrg 25969
を投与したときの放射能の排泄放射能(投与量に対する%)
[3H]–ロクロニウム 単独(0.36 mg/kg) [3H]–ロクロニウム(0.36 mg/kg)投与 後にOrg 25969(8 mg/kg)投与a) 排泄経路
雄 雌 雄 雌
尿中排泄(0~168時間) 14.04 ± 0.81 12.89 ± 0.62 32.52 ± 0.65 32.59 ± 4.02 糞中排泄(0~168時間) 71.04 ± 2.31 72.20 ± 2.92 54.86 ± 1.22 55.47 ± 4.69 ケージ洗浄液(0~168時間) 2.53 ± 0.87 4.04 ± 2.32 2.63 ± 1.25 2.60 ± 0.60
総回収 87.61 ± 1.54 89.13 ± 2.02 90.01 ± 1.40 90.66 ± 1.57
イヌに[3
H]-ロクロニウムを静脈内投与後の主要排泄経路は糞中であり,イヌでは胆汁排泄及び
/又は腸管分泌がロクロニウムの排泄に重要な役割を担っている.平均尿中排泄率は[3
H]-ロクロ
ニウム単独投与後は13%(雄性・雌性混合)であったが,[
3H]-ロクロニウムの 10
分後に非標識Org 25969
を投与した場合では33%に増加し,その結果平均糞中排泄率は 72%から 55%に減少し
た.また,非標識
Org 25969
投与の有無によらず,[3H]-ロクロニウムの排泄経路及び排泄率に明
白な性差は認められなかった.2.6.4.6.3 ラット乳汁排泄試験【NL0051934,4.2.2.5.3】
授乳
Sprague Dawley
ラットに[14C]-Org 25969
を単回静脈内投与後,血漿及び乳汁中に排泄され た放射能濃度を測定した【表2.6.5.7.D】.
授乳ラット(n=3)に
20 mg/kg
の[14C]-Org 25969
(約4.8 MBq/kg)を出産後 9
日に静脈内投与し た.本投与量は,曝露量に基づくとヒトにおける3~4 mg/kg
の投与量に相当する.投与後,血漿 及び乳汁を数回採取し,液体シンチレーション計数法により放射能濃度を測定した.放射能濃度 を血漿及び乳汁1 g
あたりの投与量に対する割合として図 2.6.4-19に示す.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0 20 40 60 80
Time (min)
% of dose/gram
plasma milk
血漿 乳汁
時間(分)
放射能濃度(%ofdose/g)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0 20 40 60 80
Time (min)
% of dose/gram
plasma milk
血漿 乳汁 血漿 乳汁
時間(分)
放射能濃度(%ofdose/g)
図 2.6.4-19
出産後
9
日の授乳ラットに[14C]-Org 25959
を20 mg/kg
で 単回静脈内投与したときの血漿及び乳汁中放射能濃度平均値±標準偏差(n = 3)
[
14C]-Org 25969
を単回静脈内投与した授乳ラットでは,血漿中の放射能濃度が時間依存的に減少した.[14