2.6.4 薬物動態試験の概要文
2.6.4.5 代謝(動物種間の比較)
Org 25969
の代謝については,in vitro におけるラット肝細胞試験,並びにラット,イヌ,ヒトにおける単回投与排泄試験において試料を採取して検討した.代謝分析を行った主な試料は,培 地(ラット肝細胞),羊水(ラットのみ),血漿及び尿であった.ラットでは投与量の約
4~7%が
糞中排泄されたことから(表 2.6.4-31),糞の代謝分析も行った.イヌ及びヒトの糞中排泄率は1%
未満であり(表 2.6.4-31),そのためこれらの種では糞試料の代謝分析は行わなかった.
2.6.4.5.1
In vitroにおけるラット肝細胞への取り込みと代謝【NL0053972,4.2.2.3.3】In vitro において用時採取雄性ラット肝細胞への[14
C]-Org 25969
の取り込みを検討した試験(2.6.4.4.1.3)で,対照としてインキュベーション開始後
3
時間までの[14C]-Org 25969
の安定性を 検討した(反応温度4℃及び 37℃,最終濃度 6
及び100 µM).
[
14C]-Org 25969
の放射化学的純度はすべての対照反応混合物について90~95%であり,いずれ
の反応条件でも
180
分間安定していた.さらに,ラット肝細胞との3
時間のインキュベーション で代謝物の生成も認められなかった.2.6.4.5.2
In vivoにおけるWistar
ラットの代謝分析及び代謝物同定【NL0056358,4.2.2.5.1】8 mg/kg
の[14C]-Org 25969
を投与した排泄及び組織分布試験(2.6.4.3.2及び2.6.4.4.2.1)の一環と して,雄性及び雌性Wistar
ラットにおいて単回静脈内投与後の血漿,尿及び糞試料の代謝分析を 行った.分析は放射能検出器付きHPLC
により行い,各サンプル中の放射性成分をHPLC-MS
に より同定した.ラットで分離された放射性代謝物は,その保持時間に基づいて
M1~M8
との記号を割り当てた が,全試料ですべての成分が検出されたわけではない.また,一部の成分は痕跡程度の微量のみ が認められた.血漿
ラット血漿試料の代表的なクロマトグラム(雄性,投与後
25
分)を図 2.6.4-13に,検出された 各放射性成分の抽出された総放射能に対する割合を表 2.6.4-27に示す.血漿中の主要成分はいず れの時点でもM8
であり,Org 25969 の未変化体と同時溶出していた.この成分の割合は25
分後 に雄性ラットで59%及び雌性ラットで 38%であり,1
時間後にはそれぞれ83%及び 80%であった
(表 2.6.4-27).微量成分である
M6
及びM7
が認められ,それぞれ 体のγ-シク ロデキストリン類縁物質である類縁物質E*及び類縁物質 I*と同時溶出した.未変化体(Org 25969)
並びにこれら類縁物質の構造を図 2.6.4-14に示す.
M6
及びM7
の割合は両サンプル採取時点で同 程度であり,それぞれ9~15%及び 10~25%であった.25
分後のサンプルでは,これら3
つの成 分以外に,分離度が低く(溶出時間:10~15分)その割合が1~8%である成分が 4
つ検出された が,1時間後のサンプルでは検出されなかった(表 2.6.4-27).0 . 0 5 .0 1 0. 0 1 5. 0 2 0. 0 2 5. 0 3 0. 0 mi n 0
10 0 20 0 30 0 40 0 c ps
M3 M4
M5
M6 M7
M8
M2
時間(分)
放射能(cps)
ラット血漿:
25
分0 . 0 5 .0 1 0. 0 1 5. 0 2 0. 0 2 5. 0 3 0. 0 mi n
0 10 0 20 0 30 0 40 0 c ps
M3 M4
M5
M6 M7
M8
M2
時間(分)
放射能(cps)
ラット血漿:
25
分図
2.6.4-13
雄性Wistar
ラットに8 mg/kg
の[
14C]-Org 25969
を静脈内投与後25
分の プール血漿抽出液のHPLC
ラジオクロマトグラム表
2.6.4-27 Wistar
ラットに8 mg/kg
の[
14C]-Org 25969
を静脈内投与したときの血漿中の[
14C]-Org 25969
とその他の放射性成分の放射能の割合放射能の割合(%:抽出された総放射能に対して)
性別 試料採取
時間 M1 M2 M3 M4 M5 M6 a) M7 b) M8 c) Other d) 25分 ND 1.2 2.4 3.5 3.1 15.0 13.1 59.4 2.3
雄 1時間 ND ND ND ND ND 8.8 9.9 83.1 0.0
25分 ND 2.5 4.9 8.3 7.6 12.1 24.6 37.7 2.3
雌 1時間 ND ND ND ND ND 8.8 9.8 80.3 1.1
平均の保持時間 - 11.5分 12.5分 13.5分 14分 17分 18分 21分 - ラット3匹からのプール試料を分析した.
ND:検出されず,-:該当せず
a) クロマトグラフ分析で類縁物質E*と一致した.
b) クロマトグラフ分析で類縁物質I*と一致した.
c) クロマトグラフ分析で未変化体([14C]-Org 25969)と一致した.
d) 観察されたピーク間で,明確に分離された成分を伴わないもの.
59%に相当した.微量成分である M6
及びM7(それぞれ類縁物質 E*及び類縁物質 I*と同時溶出)
の尿中での割合は各サンプル採取時点で同程度であり,M6及び
M7
でそれぞれ5~10%及び 5~
12%であった(表 2.6.4-28).それぞれ 0~24
時間では投与量の5~6%及び 6~7%に相当した.分
離度の低い微量放射性成分である
M2~M5
の尿中での割合は,それぞれ抽出液中放射能濃度の5%
未満であった(投与量の
3%未満)
.微量成分であるM1
は雌性ラットの尿中で投与後6~24
時間 にのみ定量可能であり,抽出液中放射能濃度の12%(投与量の 0.2%)であった.
0 . 0 5 . 0 1 0 . 0 1 5 . 0 2 0 . 0 2 5 . 0 3 0 . 0 m i n 0
1 0 0 2 0 0 3 0 0 c p s
M3 M4
M5
M6 M7
M8
M2
時間(分)
放射能(cps)
ラット尿:
3
~6
時間0 . 0 5 . 0 1 0 . 0 1 5 . 0 2 0 . 0 2 5 . 0 3 0 . 0 m i n 0
1 0 0 2 0 0 3 0 0 c p s
M3 M4
M5
M6 M7
M8
M2
時間(分)
放射能(cps)
ラット尿:
3
~6
時間図
2.6.4-15
雄性Wistar
ラットに8 mg/kg
の[
14C]-Org 25969
を静脈内投与後3
~6
時間に 採取したプール尿のHPLC
ラジオクロマトグラム表
2.6.4-28 Wistar
ラットに8 mg/kg
の[
14C]-Org 25969
を静脈内投与したときの尿中の[
14C]-Org 25969
とその他の放射性成分の放射能の割合放射能の割合(%:抽出された総放射能に対して)
性別 試料採取
時間 M1 M2 M3 M4 M5 M6 a) M7 b) M8 c) Other d) 0~3時間 ND ND ND ND 3.1 8.2 9.2 75.0 4.5 3~6時間 ND 1.4 1.9 3.1 4.4 9.6 10.9 62.9 5.8 雄
6~24時間 ND ND ND ND ND 5.4 8.7 53.2 32.7 0~3時間 ND ND ND ND 2.9 7.0 7.9 79.5 2.7 3~6時間 ND ND ND 4.9 4.6 10.2 11.9 48.6 19.8 雌
6~24時間 11.5 ND ND ND ND 6.2 4.7 61.9 15.7 平均の保持時間 4.5分 11分 12.5分 13.5分 14分 16分 17.5分 21分 - ラット3匹からのプール試料を分析した.
ND:検出されず,-:該当せず
a) クロマトグラフ分析で類縁物質E*と一致した.
b) クロマトグラフ分析で類縁物質I*と一致した.
糞
ラット糞試料の代表的なクロマトグラム(雄性,投与後
0~24
時間)を図 2.6.4-16に示す.血 漿中及び尿中と同様に,すべてのラットの糞中で検出された主要放射性成分はM8
であり,Org 25969
の未変化体と同時溶出された.糞中でのM8
の割合は雄性ラットで50~57%,雌性ラッ
トで
46~56%であり,投与後 0~48
時間において,それぞれ投与した放射能の2%及び 3%に相当
した.微量成分である
M6
及びM7(それぞれ類縁物質 E*及び類縁物質 I*と同時溶出)の糞中で
の割合は両サンプル採取時に同程度で9~11%及び 5~8%であり,投与後 0~48
時間でそれぞれ投与量の
0.7%未満及び 0.5%未満に相当した.抽出液中放射能濃度の最大 8%に相当した M1
及びM7a(血漿及び尿中では観察されなかった放射性成分)を除き,残りの糞中放射能は個別成分に
分離されなかった.0 . 0 5 . 0 1 0 . 0 1 5 . 0 2 0 . 0 2 5 . 0 3 0 . 0 m i n 0
1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0 9 0 1 0 0 1 1 0 1 2 0 1 3 0 1 4 0 c p s
M2 - M5 M6
M7 M7a
M8
M1
時間(分)
放射能(cps)
ラット糞:
0
~24
時間0 . 0 5 . 0 1 0 . 0 1 5 . 0 2 0 . 0 2 5 . 0 3 0 . 0 m i n 0
1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0 9 0 1 0 0 1 1 0 1 2 0 1 3 0 1 4 0 c p s
M2 - M5 M6
M7 M7a
M8
M1
時間(分)
放射能(cps)
ラット糞:
0
~24
時間図
2.6.4-16
雄性Wistar
ラットに8 mg/kg
の[
14C]-Org 25969
を静脈内投与後0
~24
時間の プール糞抽出液のHPLC
ラジオクロマトグラム投与液
[
14C]-Org 25969
投与液も代謝分析HPLC
システムにより分析した.投与液中のM6,M7
及びM8
の割合は,それぞれ%, %及び 73.0%であった.投与液の調製に使用した[
14C]-Org 25969
原液(約
4℃で水中に保存)も被験サンプルと同様の期間保管した後に HPLC
システムで分析したところ,M6及び
M7
の割合はそれぞれ10.2%及び 13.4%であった.上述のような投与液及び原
液中の相対量は,血漿,尿及び糞サンプル中で観察されたM6
及びM7
の割合よりわずかに低か った.放射能濃度に差があるため,原液,投与液,血漿,尿及び糞中の放射能の割合に関するデ ータを絶対値として解釈することは非常に困難であるものの,このことから,類縁物質の少なくとも一部は血漿,尿及び糞サンプルの保存及び分析中に生成され,したがって
必ずしもin vivoにおいて生成される代謝物ではないと考えられた.このような放射性成分はおそ
らく放射線分解/酸化により生成されたと考えられる.
代謝物同定
Org 25969,類縁物質 E*及び類縁物質 I*の標準物質,ラットへの[
14C]-Org 25969
投与に使用した 投与液,並びに排泄試験に使用した3
匹の雄性ラットから採取した0~3
時間のプール尿をすべてHPLC-MS
で分析した.その結果,2 種の 体(類縁物質E*及び類縁物質 I*)が
投与液中にも存在したことが確認された.分析した尿サンプル中にも
Org 25969
未変化体ととも にこれらの類縁化合物が検出され,その存在比率は投与液中とほぼ同程度であった.また,尿に おけるクロマトグラフの主要ピークはOrg 25969
のみに関連していることが確認された.分離が 悪く,投与量に占める割合が低かったことから(8%未満),他のピーク(M1~M5)の同定は行わ なかった.2.6.4.5.3 ラット羊水中の代謝分析【INT00013814,4.2.2.3.9】
妊娠
Sprague Dawley
ラットに,[14C]-Org 25969
を単回静脈内投与又は1
日1
回反復静脈内投与(5又は
15
日間)した.特定の時点で屠殺した妊娠ラットの羊水中に存在する放射性成分をHPLC
により分離し,採取した画分を液体シンチレーション計数法により定量した.[
14C]-Org 25969
の単回又は反復静脈内投与後に採取したラット羊水では,プールした羊水サンプル中のほとんど又は実質的にすべての放射能が
Org 25969
の未変化体と同時溶出した.単回投 与後のサンプルでは,5~6
分という比較的短い保持時間で少量が溶出し(不純物A*と同時溶出),
約
21
分という保持時間のピークが認められたが,これは 類縁物質である類縁物質
E*及び類縁物質 I*のいずれか又は双方に起因すると考えられた.これらの類縁物質は投与液中
でも検出されたが,投与液と羊水内容物のピークの定量比較は行わなかった.羊水中に存在する 放射能の大部分が
Org 25969
によるものと考えられた.2.6.4.5.4
In vivoにおけるビーグル犬の代謝分析及び代謝物同定【NL0055283,4.2.2.5.2】8 mg/kg
(0.10 MBq/kg)の[14C]-Org 25969
を投与する単回投与排泄試験(2.6.4.3.10及び2.6.4.6.2)の一環として,雄性及び雌性ビーグル犬において単回静脈内投与後の血漿及び尿サンプルの代謝 分析を行った.代謝分析は特定の血漿及び尿サンプルについて放射能検出器付き
HPLC
で行い,代謝物同定は既に放射能ピークが同定されているラット尿サンプルとの同時分析により行った.
保持時間に基づいて,分離された放射性代謝物を
M1~M4
としたが,全サンプルですべての成 分が検出されたわけではなく,微量しか検出されなかったものもある.Org 25969,類縁物質E*
及び類縁物質
I*の紫外線吸収により検出した保持時間はそれぞれ約 21,17
及び15
分であった.血漿
投与後
2
時間の間に採取した血漿試料の代表的なラジオクロマトグラムを図 2.6.4-17に,血漿 中の主要放射性成分の割合を表 2.6.4-29に示す.各時点の主要成分はM4
であり,Org 25969の未 変化体と同時溶出した.M4 の割合は雄性イヌで56~73%,雌性イヌで 46~77%であった(表
2.6.4-29).微量成分である M2
及びM3(それぞれ
類縁物質である類縁物質E*
及び類縁物質
I*と同時溶出)の割合はいずれの時点でも同程度であり,それぞれ 4~20%及び 13
~21%であった.最も極性が高い成分である
M1
の割合は0~18%であった.このピークは幅広い
ものであり,M1
は血漿中に存在する放射能濃度が低く分離されなかった多数の微量成分で構成さ れていると考えられる.0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500
0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0
Time (minutes)
Radioactivity (dpm)
M1
M4
M2
M3
時間(分)
放射能(dpm)
イヌ血漿:
1時間
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500
0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0
Time (minutes)
Radioactivity (dpm)
M1
M4
M2
M3
時間(分)
放射能(dpm)
イヌ血漿:
1時間
図 2.6.4-17 雄性イヌに