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第3章  心情表現を目指した文章表現指導 第1節 指導の概要

第4節  指導の結果

 文章表現指導の結果については、コンピュータ利用による自習問題への取り組み の結果、本児の文章表現の変化、という2つの側面から述べる。

1. 自習問題の結果 1)構文練習問題の結果

 語句を正しい順序でつないで文章を完成するという問題に対して、本丁が語順を 間違えることは最初の試行から見られなかった。語句の選択にあたっては、選んだ 語句を音読して確かめながらマウスを動かしていた。問題文や、完成した文章につ いても、同様に音読する場合が多くみられた。

 指導者が同席した場合の一問あたりの所要時間は20秒〜1分、自習した場合の一問 あたりの所要時間は2分〜5分程度となっている。 (自習の場合の所要時間は、本児 が記録カードに記録した時間をもとに計算した。)所要時間の、試行の回数による 変化はあまり見られなかった。

 三児にとって、コンピュbOタをワープロ以外で使用する初めての経験であり、問 題をコンピュータ画面に立ち上げるまでに1、2回操作ミスをしたことがあった が、2週間で8回自習することができた。1週目は、本児への負担を考慮して問題の 種類を構文問題1と構文問題2の2種類で設定した。本児の自習問題への取り組み の結果が良好であったため、2週目は問題の種類を構文問題1から構文問題4の4

種類に増やした。

 取り組む問題の量については指示しておらず、好きな種類の問題だけを選んで 行ってもよかったわけだが、本児は設定してある問題すべてについて問題練習を 行っていた。母親によれば、夏休みの午前中、いつもなら母親とテレビを見たりし て過ごしている時間に、自室で一人で問題練習に取り組んでいたという話であっ た。このような本丁の取り組みから、本児がコンビt,・一一タ利用による構文問題に関 心を示し、積極的に自習している様子がうかがえた。

一39一

2)心情選択問題の結果

 8月の中旬より心情選択問題の自習を開始し、指導者が1週間に1回本児の家庭 を訪問した際に球児の問題への取り組み(誤答の数・所要時間)を確認し、心情選 択問題の種類を1から4まで変更していった。各問題の初回の試行と最終回の試行 は、指導者が同席して行なったが、その他の回は、本児が一人で自習することがで き、コンピュータの操作ミスは見られなかった。

 本児の場合、誤答を選択することはまれであり、正答を選択するまでに時間がか かるという傾向であった。正答を選択するまでの所要時間は、問題練習を重ねるこ

とで短くなっていった。以下に問題の種類ごとの結果を示す。

慶風選丞曝題1i

 8月17日から8月26日までに5回取り組む。初回より最終回まで、誤答を選ぶこと

はなかった。

 初回において、問題2で非常に時間が かかっている(表1参照)。問題2の

「のび太くんは、家族旅行でディズニー ランドに行きました」という出来事は、

三児が7月末に体験したばかりの出来事で ある。体験があるということで、答えが 得やすいだろうという指導者の予想に反

して、本児にとっては回答に困る問題と

表1問題の所要時間(秒)

問題 初回 2回 3回 4回 最終回

1 62 33 25 10 12

2 324 32 15 11 8

3 25 29 18 8 8

4 15 20 16 8 8

5 11 19 10 7 9

6 19 29 15 12 12

7 17 20 14 9 8

8 13 26 18 21 9

9 31 17 17 25 16

10 8 27 13 10 13

平均 52.5 25.2 16.1 12.1 10.3

なってしまった。心情選択問題練習の初回の2問目であり、1分を経過しても本児が 考え込んでいる様子なので、回答を導くために同席した指導者と一緒に考えること

とした。以下にその時の会話のやりとりを示す。

    Nくんはディズニーランドに行ってどうだった?

はじめ、とまどっとったなあ。

    えっ?いつのこと?どうした時にとまどってたの?

おばちゃんのところに入って、玄関で、どうしようかなあって悩んでた。

一40一

    おばさんの所に泊まって、次の日にディズニーランドに行ったの。

    ディズニーランドの中に入ってからはどうだった?

何乗ったかなあ?

    ジェットコースターとかに乗った?

二つ乗ったかなあ。ガッガッて、上がって行く時がもうこうなって、(緊張した 表情で体をこわばらせる。)下りてきて、はあ一としたら、またガッガッて。

    じゃあジェットコースターに乗ってどうだった?

こわくはないけど・・…

    パレードは見た?ミッキーマウスには会えた?

ミッキーマウスじゃなくて、違うのがいた。パレードは、夜見てキラキラしてき

れかった。

    ディズニーランドに行っていろんな乗り物にも乗れたし、きれいなパ     レードも見たね。

    Nくんは旅行でディズニーランドに行ってどうだったのかな?

うれしかったかなあ。

(本児は選択肢の画面を見ながら答えた後、 「うれしかった」の選択肢をクリッ クした。)

 この会話が示すように、本児は出来事を時間の順序にしたがって想起するという 傾向を持っている。そのため、家族旅行でディズニーランドに行った体験を振り 返って考えた時に、まず、おばさんの家に泊まったときに戸惑ったことを思い出し た。次に、翌日ディズニーランドでどんな乗り物に乗って、その時自分がどう感じ たかを一つ一つ思い出そうとしたのである。そのため、どの場面を手がかりに心情 語を選択すればよいのか判断がつかず、体験を振り返るが故に時間が大幅にかかる

という結果となった。指導者との会話後、 「うれ しかった」という選択肢を自分で選ぶことはでき たが、所要時間は324秒となり、他の9問の所要時 間の平均が22.3秒置あるのに比べると大幅にか かっている。しかしながら、2回目からは、問題 2についてもどの場面を手がかりにするのかがわ かったものと思われ、他の問題と所要時間は変わ        図10 問題2の所要時間の推移        一41一

32止   ______.,_

300 Q50 Q00 P50 P00 T0

@ 0 §   _

らなくなっている(図10参照)。問題2の初回の所要時間については、問題文その ものが本児にとって特殊な要素を含んでいたため、他の問題とは区別して考える必 要があるだろう。

 2回目の所要時問の平均は25.2秒であり、初 回の平均所要時間52.5秒に比べれば正答を得る までの時間が短くなったように見えるが、実際は そうではない。問題ごとに比較をしてみると、時 間が減少しているものは10間中3問であり、他の 7問については平均8.5秒増加している。例え

ば、第10問では8秒から27秒に大幅に時間が増加  図11問題10所要時間の推移 している(図11参照)。所要時間が減少した3問

は、初回の所要時間が他の問題に比べ大幅にかかっているとも言える。この2回目 の所要時間の増加については、出来事文の内容(体験の有無・挿し絵の有無)によ る偏りは見られない。所要時間の増加は、初回は指導者が同席している状態、2回

目からは本児の完全な自主学習という、学習のスタイルの違いによるものである。

これは、最終回に指導者が同席した状態での所要時間が平均10.3秒と、初回および 他の回に比べ速く回答できていることからもう

かがえる。

 出来事文の内容については、10難中5問を本 貫の体験のある出来事、5問を体験のない出来事 で構成したが、所要時間の差はほとんど見られ なかった。挿し絵の効果についても、挿し絵の 有無による所要時間の差は見られなかった。

 問題練習を重ねることで所要時間も短くなっ

ており(図12参照)、誤答もなかったため5回    図12平均所要時間の推移 の実施で終了した。

1

欄27

曾一一醤…給43一

一42一

塵選麺画

 8月26日から9月17日までに4回取り組.む。ほ ぼ3週間を要することになった理由として、初め の1週間は、本児がEメールをの開始したこと で、コンピュータに向かった際にメールのことば かりが気になって自習問題に取り組めなかったこ と、2週目3週目は、中学校の2学期の授業が始 まり、夏バテと体育大会の練習による疲れで本児 が体調を崩してしまったことが挙げられる。自習 の回数は少なかったが、初回から最終回まで誤答

…{卜一一一一一一一一一一一

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図13平均所要時間の推移

がなく、所要時間も短くなっていたため、次の段階の問題に移行した。 (図13 参

照)

 初回において問題7の所要時間が52秒と他の問題に比べ時間がかかっているが

(表2参照)、これは出来事文の「大きらい なネズミ」ということばに関連して、同席し ていた指導者に向かって「ネズミもいや、犬

も、ネコも…  」と本児が身震いしながら 話をした結果であり、心情語の選択に迷って 時間がかかったわけではない。心情語の3選 択肢を設定するにあたり、出来事文に対して

【正答・誤答・誤答】というパターン、 【正 答・正答に近いもの・誤答】というパターン

表2問題の所要時間(秒)

問題 初回 1回 2回 最終回

1 37 18 11 15

2 22 16 12 12

3 28 28 25 15

4 34 25 22 12

5 36 18 15 19

6 29 14 14 10

7 52 22 18 13

8 28 21 20 16

9 21 21 18 14

10 23 16 10 15 平均 31 19.9 16.5 14.1

の2種類を、5問ずつ構成した。このパターンの違いによる所要時間を比較すると、

【正答・正答に近いもの・誤答】というパタ■一・・ンの方が、若干速く回答できるとい う指導者の予想と異なる結果となった。すべての問題で、2回目の所要時間が初回 の所要時間を上回ることはなく、多少の起伏はあるものの、最終回に向けてなだら かに減少している。

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