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第4章  考察

第1節  コンピュータ利用による自習問題の効果

1.心情表現のコンピュータ上での疑似体験

 風船をもらってニコニコしている幼児がいる。一緒にいる大人は、その子どもに 向かって「良かったね。風船もらってうれしかったね。」と声をかける。このよう に、大人が幼児の心情を代弁して述べるという状況は、日常生活でよく見られる場 面である。心情表現を代弁してもらった幼児は、意識的にしろ無意識的にしろ「こ んな時にこういう心情語を使うのだ」と学習しているに違いない。次に同じような 体験をした時に、その子どもは先に学習した心情語を大人の表現をまねて使用す

る。その表現が周りの人に伝わり理解されるという強化を得て、子どもはその心情 表現に自信を持つ。このような体験が繰り返されることの中で、幼児は心情表現を

自然に身につけているのではないだろうか。

 心情表現を体験すると言った場合、その「体験」には、2つの面があると考えら れる。一つは、心情表現が適切に行われる場面を体験することであり、あと一つ

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は、心情表現を自らが行う体験である。上述の例から考えれば、まずは、心情表現 が適切に行われる場面を体験することが、子どもにとって重要な意味を持ってい る。 「ことばのシャワー」という表現があるように、適切に使用された心情表現を 繰り返し体験することが重要である。しかしながら、日常生活で心情語は適切に使 用されている言えるだろうか?子ども達が「むかつく」・「うっとい」などと、単 発的な心情語を口にすることは多くても、その心情語が、背景となる出来事ととも に適切に表現されることは少ない。おとな同士の会話の中では、心情表現は慎まれ る傾向にある。適切な心情表現を体験する機会は、日常生活では少ないと言ってよ

いだろう。

 コンピュータ上での疑似体験ではあるが、本児は自習問題を通して、心情語が適 切に使用されている場面を何度も体験することができた。さらに、心情選択問題に

より、場面に応じて心情語を使用するという体験を繰り返すことができた。心情選 択問題の結果を見れば、本児にとって、ある一つの出来事と心情語を結びつけるこ とは困難ではないことがわかる。出来事と心情語が結びつけられないのではなく、

むしろ出来事と心情語を結びつけて使用する機会が不足していたため充分な強化が 与えられず、心情表現に自信がもてない、能動的に心情表現を行えないといった結 果となっていたと考えられる。コンピュータ上で、出来事に応じた心情語を使用す るという体験を何度も繰り返し、その都度、強化(コンピュータの音声による賞賛 のことば)が与えられた。 「rよくできました』というメッセー・一一ジをコンピュータ は指示通り何回も表示することができる。技術的にはほとんど価値はないが、学習 指導という点では、これも価値あるメッセージなのである。」・「学習困難児やハ ンデキャップをもった子供たちには、特にそのできたという成就感をあたえなけれ ばならない」と赤堀(1997)1)が述べるように、繰り返しが伴ってはじめて習得さ れる学習では、学習を支えるものは、子どものできたという喜びであり、習得のた めに数多くの繰り返しが必要な障害児の学習指導では、強化の手段を含めて、コン

ピュータがドリル学習としての効果を発揮するものと言える。

 累算はコンピュータ上での疑似体験を繰り返すことで、出来事に心情を結びつけ て考えることが自然なかたちでできるようになり、その結果、出来事と心情を結び つけて表現することも可能になったと考えられる。

 例えば、10月末に指導者から音楽会当日の睡眠時間を尋ねられた場面で、亡児

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は、 「やっぱり緊張してたんかなあ、いつつもより早く目がさめて、ああまだ早い わと思って、また寝て、7時過ぎに起きた」と答えている。単に時間を答えるので はなく、早く起きる原因となった自分の心情を付け加えて表現できている。

 また、文章表現で自分以外の友人の様子を記述する際にも、出来事と心情を結び つけた表現が見られた。

今日のR君は、朝から、イライラして、怒っていました。実は、僕が、悩んで 考えている時とか、一緒にしゃべったりとかは、普通です。艦2黒籍ゑ黒毒血..

二心之藷三〜Ω一二一霜准烹1三、一∫煎ゑ盈』蕊一三ゑな2孟φ軌一』窯滋1二二ξ;黒1即

けど、もう一つは、N君と、 T君の2人と、時々か、毎日、ケンカをして、こっ ちが、ビックリするのが、毎日か、時々します。

      (11月7日の文章より抜粋)

 友人のR君が「イライラして、怒っている」という出来事だけを記述するのでは なく、 「怒っている」という心情の背景となった出来事(R君と普通クラスのG君 たちとのやりとり)を結びつけて考えている。さらに、そのやりとり時のR君の心 情を推し量って「しゃあないな」と共感している。

 これらの2つの例は、出来事と心情を結びつけて考えることが可児の中に浸透し ていることを現していると考えられる。

2.出来事からの場面の切り出し

 文章表現指導を開始した当初、本門は出来事を時間の順序にしたがって羅列する という記述しかできていなかった。それが手紙という作文形態をとることで、自分 の様子にスポットをあてることが可能となり、さらには、一つ一つの場面について 心情を表現するという「場面の切り出し」注1がうまくできるようになった。この「場 面の切り出し」は、自習問題の中で、出来事と心情語を結びつけた文章に何度も繰

り返しふれた結果であると考えられる。

 平成12年11月1日水曜日

 今日の天気は、雨でした。兵庫県南部では、そうなっていました。」

 「朝6時40分起きてから、トイレに行って鞭は、出なくて尿は、出ました。」

 r今日の朝食は、パンと、牛乳で、全部取り.ました。」 「いつもの用意と、旧

注1 アこで言う「場面の切り出し」とは、文章表現において、一つの心情を単位とした場面の区分が意 識して書けるようになったことを意味している。

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を、磨いてから、少し遅めに出て行きました。学校に、付いたのは、朝8時00 分一一一一朝8時15分迄に、学校へ付きました。W先生と、校長先生とかに、

「おはようございます。」と言いました。胤応a.猛急無〜無.洞潮勲.Ω.、先生④事 藍.細配煮』急な点油壷滋.盒鏡熱瓠、乖氣に黒房∴..灘蕪』乱蕊』欲動J

rK先生が、今、○○町に、N養護学校の先生で、そこで勉強を、教えている所 に、T 君が、2ヶ月間の体験入学を、{9月1日金曜日一一一一10月31日 火曜日}迄勉強と、訓練を、中学部で、お世話に、なっていました。その間に、

K 先生他の先生とかに、お世話になったり、その隣に、病棟で、お世話に、なり ました。そこに、小学部から、高等部迄の友達が、T君には、出来ていました。

本当に、K  先生他の先生方や病棟の看護婦さんや、病棟の先生に、お世話に、

なって本当に、K先生他の先生たちに、見てもらいながら、柔氣な.工.霜がL.骨導

三元二三三二..黒払て鳥融2〜監驚玄3.金且1義㌻.各」ぶ望.1三㌔.2臨ρムζ、..俵蕉怠.

ム額智..備品£ムゑ乱、.揃臨蓋レ〜篇一保護者と、生徒6人と、先生3人で、L薫講鴬櫨 平骨禽1乱縮煮生汗蕊.僕憾..緊蕊」黒』藩蕊蕊.1養護学校の先生方は、初め

てなので、ここは、金工室と、木工室で、技術を、勉強をする所給食室や小学部 1年生一一6年生平と、中学部1年生一一一3年生迄と、高等部1年生一3年生迄 の教室です。2とか、農業と、国語と、数学の勉強と、美術室で、絵とかの作品 作りの美術の勉強も、ありました。歪晶且と鼠二二ゑ=案雁^..作慕藍、..煎烹准望 烹ゑ勉強1凄轟.無勲乱な驚烈.⊥..工静心あ.』蒸黙..∠二上平々}∴..忌④乱之鼠盈二ゑ 二〜簗}_ミ.胤鷹義血.鴛轟轟鼻血盤ロユ黒撫豊轟..痴愚晶晶..2.9.q.1儒」;王感1§.

窪1.謡温か急㍉.魚ゑ}煮盈ゑ』凶滋公諜二階..Eメールは、1養護学校の高等部に、

行って疲れたら、できまん。」「もちろん、Y さんと、僕は、○○○会は、その 疲れで行けない事になります。」「その養護学校の高等部に、慣れてきたら、○

○○会と、Eメールをしたり、行ったり出来ます。」「その前に、そこで、国語 と、数学の実力テストが、あります。」 「そこで、お姉ちゃんの同期に、障害者 の女の子が、1養護学校の高等部3年生に、いる人のお母さんが、行ったので、自 翁儲㍉..藍22ユ1孟烹』蕊。臨調1孟、,.ゑ甑.蕊諺鳶魚血蕊.黒Q焦』蕊.」「お昼

は、家で、食べました。」午後9時52分59秒        (1149字)

 rO先生の元気そうな様子を見た時」、「T君が戻ってきて障害児学級の全員が 揃った時」、 rl養護学校に入った時」、 「コンピューター室がないとわかった 時」、 「姉と同級生の女の子が1養護学校に通っていることを聞いた時」と、一連の 出来事から場面を切り出してその時の心情を記述することはできている。だが、こ の文章では、それぞれの心情が時間の順序で羅列されているだけであり、一つ一つ の心情がどのように出鼻の心の申で響き合ったのか、関連づけられるのかがわから ない表現となっている。場面を切り出すことはできても、次はその場面と場面がど う心情的に結びついていくのか、心情に軽重をつける段階が要求されると言えよ        一65一

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