第4章 考察
第2節 今後の課題
のペースで表現ができるという自学自習ならではの効果が働き、それが表現への自 信にもつながっている。
自学自習という学習形態を中心とした文章表現指導において、コンピュータは
「新奇性効果」として働くだけではなく、本児の「学びを支援する道具」として多 いに有効であったと言えるだろう。
「今、メールで自分の事と、誰々にいじめられたと、言えないことが、話せられ ない事が、思い出して、打てる{書くこと}が、頭の中で、ぱ一つと浮かんできま す。」という本児の言葉が示すように、文章表現を魅力ある活動として本児が捉え ることができたことは、今回の指導での大きな収穫であったと考える。
て「自分の意図を適切に伝えられないこと」を挙げ、「話題を次々と変えたり、関 連のない情報を加えて質問に答えたりする」といった例を示している。本章の文章 での心情表現には、まさに「関連のない情報」が多く含まれている。
テーマにもとづいて出来事や心情を取り出し、自己の心情に軽重をつけて表現で きるようになることが、今後の課題として考えられる。
2. コンピュータ利用による自習教材の問題
心情選択問題において、使用される心情語に対し正答・誤答という枠組みをはめ てフィードバックした。また、あらかじめ設定した心情語の中から出来事に応じた 心情語を選択させた。自習という学習を進める上で仕方のないことではあるが、本 来自由であるべき心情表現をパターン化してしまうという危惧がある。本児の場 合、内言として持っている心情語も多く、心情表現においても自分で納得できるこ
とばを探すという方向に向かったため影響はなかったが、心情表現を画一化してし まうおそれがないとは言えないだろう。
子どもの表現を引き出すためにコンピュータを利用することは同じであっても、
寺野(1996)3)は、指導者がコンピュータを操作し、rInspiration」というアウト ラインプロセッサを用いて、子どもの思考を即座に文章としてフィードバックする という指導をしている。この場合、子どもの心情表現も枠にはめられないものとな るが、指導者の存在なしには行えない学習となっている。
自習教材という枠の申で、子どもの思考にいかに柔軟に対応していけるのかが、
コンピュータ利用による自習教材作成の上の今後の課題である。
3.指導方法の効果
本研究では、心情表現方法の獲得、心情表現の場の設定という2つの側面から指 導を展開させたため、2つの指導方法が同時期に重なってしまうということがあっ た。例えば、作文形態の手紙文への変更と構文練習問題への取り組みの開始はほと んど時期が同じであって、心情語が表出できたことにどちらが影響したのか厳密に 分析できていない。
指導法の効果を検討するためには、1つの指導法を1つの変数として扱い、指導 の結果を確実に測る指標を設定する必要がある。今回の指導では、指導法を変数と 一73一
して扱っておらず、指導結果の指標とした三児の文章も定期的に書くことを強制し ていない。また、指導法の結果が文章中にすぐに現れるのかといった懸念もある。
指導方法の効果を検討するためには、実験的な指導の展開が必要とされるであろ う。また、他の軽度知的障害児に対しても同様の指導を行い、検討を加える必要が あると考える。
〈引用文献>
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〈参考文献一覧〉
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9)鯨岡峻「特殊教育におけるコミュニケーション重視の意味」 『平成5年度特殊教 育シンポジウム報告書テS一・・…マ「コミュニケーション障害への援助」』国立特殊 教育総合研究所,1994
10)鯨岡峻『原初的コミュニケーションの諸相』ミネルヴァ書房,1997
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(2) , 2000
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巻末資料 N児の記述した日記および手紙文(全文)
二千年平成十二年六月二十九日木曜日
r今日は、一時間目は、hrで、須磨の水族園に、行きます。」とC先生が、hr
で、言いました。それとC先生の車と、T先生の車に、四人と、五人に、わかれて、乗っていきまし た。須磨の水族園に、行ったのは、九時帯一十時間で、三十分間まで、車に揺られながらいきまし た。須磨の水族園に、入って、M 学級の生徒は、受付で、お金を、払って入ったり、身体障害手帳 を、見せてλってもいいです。イルカショーを、後半から、ちょっと見ました。↑ 君と、R と、 N と、僕です。午後五時一一一一午後七時間でと、 三十日金曜一続きで、7時間で、日記です。」(237
字)注1
2000年【平成12年]7月2日[日]曜日
一昨日と、一昨日と、昨日は、期末テストです。」1年生一一一一一一3年生間での、17クラスの普 通クラスは、教科のテストです。」障害児クラスのM学級は、M学級の数学は、長さと、計算問題等 します。」国語は、作文「日記」は、昨日は、学校「スクール」中で、します。」校外[外]に、で ていきます。]二野は、体育は、プールで、泳ぎました。」技術は、七タを、作りました。」1,2 時間目です。」3時間目は、運動[スポーツ]部活動[クラブ]の応援会「壮行会」です。」明日は、b週の 月曜1校時一一一一一一・3校時間で、3時間授業で、終了です。」午後4時OO 一一一一・一一一一午後5時間 で、日記終了です。」 (259字)
二千年[平成十二年】七月五日水曜日
今日ハ、一時間目ト、二時二目ハ、体育デ、プールを、シマシタ。」アルキマシタ。」ツカレテナイ カラ、タオレテマセン。」hrハ、タナバタノ、カザリを、シマシタ。」二時間授業デス。」
午後五時一一一一一午後九時十六分間デ.日誌デス。1シュウリョウデス。1(88字)
二千年平成十二年七月六日木曜日
今日は、一時間目は、体育で、プールに、入りました。」M 学級のクラスで、入りました。最後で
す。」
二時間圏は、hrでは、家庭科見たいな授業を、M学級の先生N先生と、C先生二人で、N君と、T 君と、Yさんと、 Kさんと、 R君と、自分です。」午後五時五十四分一一一一一午後七時二十分日誌
(125字)
2000年[平成12年]7月7日金曜日
r今日は、朝と、帰りshrを、頑張りました。」1,2時間目は、音楽のO先生の授業は、フェ ニックスと、tomoro[ツモロー】と、時の旅人誓うたいました。」手話歌も、やりました。」
交流クラスの社会科の1先生の授業は、テストの答えと、勉強して、終わりました。」3時上目は、
8先生の英語は、1年生教科ファットジス「これは、何ですか?」イッツア「これは、こうゆうもの です。」書いたり、ゆったりは、口でゆったり、ノートに、書いたりしました。」4時間目は、国語 は、T 先生の授業は、新聞裏と、表に、乗っている床と、事件と、今夜の番組欄を、見たりしまし た。」漢字を、したりして、います。」清掃「掃除」は、隣のトトロ曲の後半で、掃除機等しまし た。」頑張ってしたよ。」午後3時半一一一一一午後6時05分間で日記パソコンです。」(330字)
2000年[h1217/8[土]曜日
来週の月曜臼の時間割は、水曜日の1一一一一一・ 3時間目の授業と、土曜日の3時間目の授業道徳技 術国語hrの、4時間授業です。」O先生に、M学級の6人からの手紙書いたんです。」早く元気
注Lカ字数は、本文αみをカウントした。文末のrOO時一一一〇〇時まで」という記述は本児の時間 へのこだわりを現しており、すべての日記文に出てくるが文字数からは除いた。また、r」は、本児 が文章を打つ時に意味を持って使用しているためそのまま記載し、「○○から○○まで」の意味で用
いている一一一一は最大5回までに統一した。
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