l ビンキリの皮力パー
へり切り
l r ¥
太 鼓 台 2尺2寸用
10cm
10cm
唾工主コ
太 鼓 台 小 太 鼓 用
U 戸 三 三 副 ミ コ
亡二コL 二仁二コ セン
ニベ取り台
30・人間文化
10cm 裏漉き台
ジョウギ
ロ リ
10cm
L‑5E‑L 」
漉きカンナ
図2 主な道具の実測図
と、縦板の下に付けた刃が皮に切り目を入れていく。 横板は上下させ、切る位置を変えることができる。 構造的にはジョウギと似ているが、印を付けるのが 釘か両刃の刃かのちがいである。
他に、木槌やカケヤ、クサピを使う。カケヤは 大・中・小と 3種類の大きさがあり、クサピは4種 類の大きさがある。
以上調査した道具に電動のものはなく、道具はす べて自身の手で動かす。また、ほとんど自作である。
父親の代から長く使っているものもある。 父親が太鼓屋を始めたころ、道具は特別な物は使 わず、日常生活にある物を応用して使っていたとい う。皮を漉く台には竹の棒を、切るとき、漉くとき には出刃包丁をという具合にである。その後、少し ずつ使いやすいように工夫されてきているが、扱う 道具は極めて単純な構造で数も少ない。道具を作る ときは廃材を活用し、修理を重ねて長期にわたって 使う。材料や道具の進歩に頼るのではなく、扱い方 を工夫してきたことが分かる。道具を扱う太鼓職人 の技術が長年にわたって高められてきたといえる。
2‑3
太鼓の製作工程2‑3‑1
皮なめし太鼓皮の張り替えは大きく 5段階に分かれる。
「胴修理
J r
皮づくりJ r
仮張りJ r
本張りJ r
仕上げ」である。皮づくりの前段階に「なめす」工程があり、
と畜場から買った「原皮」の体毛や皮下脂肪などを 取って 「太鼓皮」を作る工程をいう。皮なめしは重 労働なので今はしていない。東京の皮革製造業者か
ら、太鼓皮を買っている。
「なめす」は「鞍」と書き、皮を柔らかくするこ とである。現在は「クロムなめしjといって重クロ ム酸と塩酸を使って化学的に作る。なめされて柔ら かく加工されたものを「革」と書いて「皮」と表記 を区別する。「皮」には毛皮という意味があるから である。かぱんや靴、衣服などには染色された 「な めし革jが使われる。しかし太鼓の場合には、 「なめ し皮」と表す。これは、本来のなめし工程とちがう からである。太鼓用はなめし剤を使わず、毛と脂を 取っただけの硬い皮である。「太鼓皮」と記すことで 区別することもある。本研究でも「太鼓皮」と記し ている。皮なめしの道具にニベ取り台とセンがある。
ニベ取り台 原皮を裏返して台の上に置き皮下脂肪 や血をこそげとる(ニベ取り)ときに使う。マツの 木の一枚板で、表面がカマボコ状に丸くなっている
近江文化を支える太鼓製作技術とその背景
ので、この板を 「カマボコ板」ともいう。皮のすべ りがよく刃物のあたりがいし、。父親の代から使って いるので、支え台の一部は破損し、別の板で補修し
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吏ってきた。昔は台の代わりに太い竹を使用したと いう。節を取り、原皮を乗せた。セン 「カマボコ板」にj伶うように弓形になってい る。皮の裏についている脂肪や血、体毛をこそげと る。昔は出刃包丁を使ったという。
聞き取ったなめし工程は次のとおりである。 ニベ取りは、休みなくやっても、皮I枚に3時間 ほどかかり、取った脂肪はバケツ 2、3杯にはなる。 首の後ろ辺りは特に脂肪が厚く取りにくいという。 ニベ取りを充分行っていると毛も取りやすいのだと し、つ。
ニベ取りが終わると水洗いし、 近くの)11の流水に さらして浸けておく。その関は川に何度も見に行く。 天気や水量の変化により原皮が流れたりするからで ある。2週間もすれば、表の体毛が取れやすくなる。 水を含んだ皮は重く、家まで、運ぶのが一苦労だった
という。この後センで体毛をこそげ取っていく。力 を入れすぎると 「銀面
J
(皮の表面)に傷がつき、使い物にならなくなる。
次にこの皮を乾燥させる。パイプで大きな台を組 み、その上に皮を広げる。皮の端を紐で結んで止め る。その後このパイプ台を作業場の扉や壁に立てか けて自然乾燥させる。パイプ台は二人で運んだそう だが、その重さは大変なものだ、ったという。
なめし作業は冬が適している。夏だと皮が腐りや すいという。水を使う冬の作業は厳しく重労働であ る。原皮を数枚購入したときは、原皮のままで置い ておくと臭いが近所に広がっていくので、短期間に しあげるのだという。また、 ニベ取りや脱毛などの 作業をするときは周囲を囲つでしたともいう。ニベ 取りの作業は周辺に気を遣って行われてきた。
2‑3‑2
胴修理 (写真6 )
胴修理は皮を張り替える前に必ず行う作業であ る。一番多い作業は歌口の研磨である。歌口を滑ら かにすることによって皮と密着し、音の響きがよく なる。
胴の形を補正することもある。胴の厚みがちがっ ていると、長年打つ聞にゆがみがでる。木の薄いほ うに 「ふくれるjのを抑えるために反対方向にカス ガイを入れておく。カスガイを入れたまま上から皮 を張る。
人間文化・ 31
例(1)
歌口の研磨
写真6 胴修理
裁断
写真7 皮づくり
また、歌口にすでに修理の埋め木をしてある太鼓 もある。その場合は内側から、鉄片を当てて胴が割 れないように補強する。鉄片が胴の曲がりに沿うま で何度も打ち出し、ボルトで太鼓胴に打ち付ける。 肯い皮をはずしてみないと胴修理が必要かどうか はわからない。皮を張ったら見えない箇所だが、音 に影響が出るので必ず修理をする。修理に使う木の 端材や鉄片は使えそうなものを日常的に残している という。ここにも張り替えの知恵が生かされている。
2‑3‑3皮づくり (写真7)
皮づくりは、音を出す太鼓の皮に仕上げることで ある。「裁断
J r
水に浸けるJ r
裏漉きJ r
コウガイ入 れ」の工程がある。裁断 皮は牝の牛がいいとされている。牝は皮のき めが細かいという。皮は首の方にしわがある。この あたりは皮の力が強いので伸びにくく、いい音がで る。主に大きい太鼓に使う。て、ん部の方は伸びやす く、薄い部分もある。皮は太鼓を打っている聞にも 伸びてくるので、でん部の皮を使うときは、強く張 り、途中で皮が伸びて音が変わらないようにする。 裁断するときは、太鼓の大きさや皮の傷などを見 極め、どの部分を使うかを判断する。裁断した皮は 一晩水に浸ける。一晩浸けると皮は柔らかくなる。
32・人間文化
例(3)
ハンマーで鉄片を曲げ、胴に合 わせて付ける。
胴を補強
. . . . .
コウガイ入れ コウガイとコウガイの聞にもロ ープを通す。皮を縫い足して使 うこともある。
裏j鹿き 水に浸けて柔らかくなった皮の裏似JIを漉き カンナで削り取って厚みを均一にする。漉き板の上 に皮を裏向けて置く。漉きカンナを両手で持ち、両 手に均等に体重をかけ漉いていき、厚みは手でつま んで確認する。カンナの刃を立てて漉きおろすので、
皮を切らないように力加減をする。皮を手でつまみ ながら、必要な箇所にカンナをかけていく。シュー ッ、シューッという音とともに薄皮が転げ落ちる。 漉き取られた薄い皮は捨てるが、昔は細かく刻み、
畑の肥料に使っていた。
コウガイ入れ 皮の周りに切り込みを入れ、コウガ イを差し込む。皮をコウガイに巻きつけ麻紐を掛け る。皮の薄いところは、折り返して二重にして止め る。皮を継ぎ足してコウガイを止める部分もある。 継ぎ足しでも、後で切り取るので影響はない。麻 紙 は力を加えても伸びず丈夫で適している。裏漉きか らコウガイ入れまで、 60cm程度の太鼓の片面製作に 約1日かかる。
コウガイとコウガイの問にも切り込みを入れ、こ こにはロープだけを通す。皮の周聞にロープを小間 隔に通すことにより、皮が均等に伸びるようにして いる。この作業は自身が考案したものだという。皮 に均等に力を加えるようにする工夫である。
近江文化を支える太鼓製作技術とその背景
①太鼓台を組む。ます、柱を 2本すつ井けたに 3段組む。一番下の柱は、安定ょくするために 間隔をあけて置く。次に、板を丸い形に組み合わせ、縦・横交互に2段重ねて柱の上に置く。
②
③
⑤コウガイと太鼓台の柱にロープを掛 皮を踏んで伸ばす。 f卦けたロープを締めなおす。 二重にロープを掛ける。
ける。 チェーンは天井の梁
から吊るしてある。
⑥
⑦
⑧⑨
マンリキを差し込み1固まわ 塩ビ管(約50cm)にマンリキ 木槌を打ち下ろして伸ばす。 天日で乾燥。胴が割れないよ うに布で震うo 2,3日で乾燥 する。
したあと、 ③のようにもうー を差し込みまわす。マンリキ 度皮を踏んで伸ばす。 Iel:1回すつまわし1周する。
写真8 仮張。
2‑3‑4仮張り (写真8)
仮張りは水張りともいう。皮を水に浸けた後、太 鼓の形にあらかじめ伸ばしておく段階である。水に 浸けた皮は伸びやすく、胴にj合わせて乾燥させると その形に形成される。この段階でできるだけ仲ばし ておくという。
ここでは、 直径約伺cm、高さ約7C畑、胴の厚さ約5 cmの標準的な宮太鼓の仮張り工程について説明する。
胴に乗せた皮は一晩水に浸けた後なので、 柔らか くしなやかである。それが、力を加えることでどん どん伸びていく。掛け終わったロープをもう一度締 めなおすだけでもすでに皮は伸びている。
かかとで皮を押し出すように何度も踏むと、皮は すり鉢のように大きくへこむ。伸びた皮をロープで 引っ張り、次はマンリキでロープをねじる。マンリ キを回すことも2回目になると手の力だけではでき なくなる。塩ビ管に差し込み、てこの原理を応用し て回していく。ねじられたロープは木のように堅く なっている。
最後に木槌で皮を伸ばす。「響きを入れると皮は ググッと下がる」という。
このように胴の形に沿って、皮を伸ばしていくが、
仮張りの段階でどれぐらい伸びたのだろうか。
歌口から下への長さで調べると、 二重にロープを
掛けた段階で約13cm下がっていた。仮張りを終えた 段階では、 17cm‑20cm下がっていた。皮の厚いとこ ろは伸びにくく、薄いところはや
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びやすい。本張り ではさらに1cmぐらい下がるという。強く張るために は、できるだけ仮張りの段階で伸ばしておくという。2‑3‑5本張り (写真9)
本張りの観察調査を行なった太鼓は、直径約125 cm、高さ約150cmの大太鼓で、ある。胴はケヤキで作
られており、厚みが12cmもあった。胴の左右に外径 30cmもある大きなカンが付けられ、それぞれのカン の上下にも外径llcmの小さいカンが2個ずつ付けら れている。
本張りには、「皮をさらに伸ばす
J r
音を確認しながら伸ばす
J r
鋲を打つJ r
余分な皮を切るJ
工程がある。必要に応じて夫婦二人で作業をする。 (1)皮をさらに伸ばす
仮張りした皮を‑s胴からはずすと、ロープを掛け て伸びを固定していたのが、少し縮んでしまう。この 太鼓の場合、胴に皮を乗せたとき元の位置より 3cm上 に収まった。この状態から伸ばす作業が始まる。
ロープを掛けて伸ばす工程は仮張りと同じである が、太鼓が大きいので重労働になる。体全体を使っ てロープをかけ、外に引き出すようすが写真からわ
人間文化・ 33