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巻いた皮 収穫したじゃがいも

3 作業場

写真10漉きカンナ・刃

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道具に見られる生業複合

生業複合の実態は作業場の道具にも表れている。

①農具から張り替え道具への転用により、より切 れる道具を作りあげていることである。

漉きカンナの刃は、コンパインの古い刃を利用 している。この刃はハガネでできており丈夫だか らである。磨いてカンナの刃に加工し裁断して使 っている。(写真10)に示すように刃の中央にある 六角形の穴は、コンパインの刃の中央にあいてい るものである。農業を営んでいたからこそ転用す る発想が生まれたと思われる。また、資材を有効 活用する知恵である。このカンナを作った人も専 門の鍛冶屋ではないという。隣の村の農家の人で あったらしい。専門的な道具製作においても生業 複合の実態が見られる。

②太鼓皮の張り替えには麻ロープを使う。何重に も掛けマンリキでねじるため強いロープが必要だ が、それに麻紐が適している。しかし麻紐はビニ ール製に比べて高価で、ある。それで、麻を植えロ ープを作ることにしたという。麻を植える場所は ある。農作業も経験豊富である。さらにこの地域 は従来から麻作りが盛んであったことを見逃すこ とはできない。農業の地域性が生業の複合性にも 関係し、ロープ製造に結びついた。

①今は使つてないが、ビンキリはタバコの葉を刻む 道具で あった。八日市周辺ではタバコの栽培が行わ れていたといい、その道具を転用していたのである。

さらに、生業複合の実態は道具だけではなく、技 術・技能の習得にも影響を与えてきたと思われる。 太鼓屋さんは広い回に畝を作るときの苦労ととも に次のことも話してくれた。うねを作るときは鋤を 土に立てて入れる。土を掘り返し、掘った土を積み 重ねていく。一定の速さで長くまっすく内に畝を作っ ていく作業は「まるで体が機械みたいに動いた」と いう。道具を体と一体化させ作業する「技能

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は生 業を複合的に営むことで、培われてきたといえる。 生業の地域性が生業複合に反映され、道具や技 術・技能へと更なる複合を生んで、いる。

近江文化を支える太鼓製作妓術とその背景

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まとめ

本研究では、旧愛知川"汀の太鼓屋の調査を通して 次のことを明らかにした。

①滋賀県は民俗芸能・行事の宝庫といわれ、太鼓 はその中心的存在である。近世太鼓づくりの技術 は継永され、高められて滋賀県の民俗文化を支え ている。

②太鼓製作工程や道具を写真や実iJ!lJ図を加え詳細 に記録した。そのことから、道具を工夫し自作し てきたことや、他の生業から転用してきたこと、

資材を活用してきたことなどが明らかにできた。 またこの記録は伝統的手工業の側面からしても貴 重なものである。他地域との比較研究に活かせる

し、製作工程や道具の変遷の研究もできる。

③道具や作業場の実態調査を通して、太鼓製作が 生業複合によって支えられてきたことを示した。

さらに太鼓製作技術の具体性を示すこともでき た。技術は、道具を扱う職人の体と一体化する

「技能」として高められてきた。

④生業研究は人びとが生きてきたその事実に基づ いた研究でなければならない。そのことを太鼓製 作という生業を通して明らかにした。培われてき た技術・技能に生きてきた事実が表れている。

太鼓づくりは歴史的に被差別部落の生業であっ た。その生業を通して培われた技術・技能が継承 され、高められてきた。このことはこれまでいわ れてきた「厳しい差別

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貧困」というだけの一面 的・画一的な部落史観の限界を打破する多様な姿 を示している。

⑤教育内容の創造という視点で考えると、 「太鼓 づくり jの教材化は、学習内容を多様に発展させ ることができる。生業の視点で部落問題学習に取 り組むことができるし、楽器としての演奏、ミニ 太鼓づくり、作った太鼓の展示会など、感性を高 める教育が展開できる。そのことはまた、多様な 切り口から部落問題学習を実践することにもなる。 以上のようにまとめることができる。なお、旧愛 知川町の太鼓製作の歴史的背景についての報告は次 の機会に行いたい。

1群馬県立歴史博物館監修『図説 はにわの本j (東京美術社 1996年)に写真が掲載されている。 埴輪は東京国立博物館所蔵。頭部を欠いた半身 像で、肩から紐でつるした太鼓を左手で押さえ、

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右手は棒を握るしくさをしている。

2締め太鼓は、皮をあらかじめ丸い鉄枠に綴じ付 けておきこれを胴の切り口にあてて両国の皮を 紐で締める。

3真野法界寺で使われている太鼓

4板に講をほり、講の形に木を突出させ、木を組 み込む工法。釘を使わない。

5直径2、3cm で、長さは 20~30cm の棒で、ある

参考文献

し 大 塚 虹 水 1990 W滋賀の百祭』京都新聞社 2、嘉田由紀子 2002W環境社会学 環境入門91.

岩波書庖

3、群馬県立歴史博物館友の会 1996 W図説 はに わの本』東京美術社

4、滋賀県教育委員会 1998 W滋賀県の民俗芸能』

滋賀県教育委員会

5、滋賀県市町村沿革史編纂委員会 1964 W滋賀県 市町村沿革史 第3巻』第一法規

6、滋賀県同和問題研究所 2001 W近江国愛知郡川 原村校郷皮田村関連文書』 滋賀県同和問題研究所 7、篠原徹 1998 W現代民俗学の視点 民俗の技術

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朝倉出版

8、鈴木明・白井寿光 1978 W揖竜の部落史

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竜の部落史」刊行会

9、拙著 2003W人権総合学習 つくって知ろう 1 かわ・皮・革 かわと小物』解放出版社

10、反差別国際連帯解放研究所 しが 1997 Wもう

42・人間文化

ひとつの近江文化一部落生活文化史調査研究』滋 賀県教育委員会

11、福田アジオ 1990 W可能性としてのムラ社会』

青丘社

12、古川与志継 1999 

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近江の太鼓づくり

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W京都 部落史研究所報

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京都部落史研究所

13、三宅都子 1997 W太鼓職人』解放出版社 14、三宅都子 2001W人権総合学習 つくって知ろ

う!iかわ・皮・革 太鼓』解放出版社

15、安室知 1997 

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生業複合論

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W講座日本の民俗 学 第 五 巻 生 業 の 民 俗 』 雄山閣

謝辞

私は教員をしていたとき、校区にある被差別部落 の生活や生業を教材化してきたが、開き取りは常に 緊張した。しかし、作業場を何度も訪ねる私に、忙 しく作業を続けながらも面倒がらず話してくれた人 ばかりだった。温かさに支えられてきたと思う。今 回も同じ経験をすることができた。太鼓屋さんはメ ジャーで計測したり、写真撮影に協力してくださっ た。また、あれこれ質問する私に誠実に答えてくだ さった。聞き取り調査にはその人の人間性にふれる 出会いがある。その人の確かな生き方を実感できる。 その出会いに支えられて本研究を進めることができ た。また、本研究の全般にわたり、滋賀県立大学の 市川秀之先生に指導していただき、実測には市川ゼ ミの仲間にも協力してもらった。皆さんに深く感謝 申し上げます。

Comment 

日本民俗学においては被差別部落に対する関心は 比較的早くから示されたものの、綿符なフィールド ワークに基づいた研究はさほど進展しなかった。そ れは現実に存在する被差別状況の中でフィールドワ ークを実践することの困難さに起因する部分もある が、むしろ「常民j概念の姪袷からの自己解放を指 向しなかった民俗学自身のなかにその原因が内在し ているとみるべきだろう。

中島111夏子氏は長く大阪市内の被差別部落を校区に 含む小学校の教員を務め、また人権教育の研修や教 材作成にも携わってきた。その経験のなかで被差別 部落における生業への関心が生じ、それが本論文で 対象化された滋賀県下における太鼓製作の研究へと 展開している。

いわゆる部落産業に関する研究は都市の被差別部 落を中心に進展してきたこともあり、部落の生業を 一元的にとらえる傾向があった。太鼓作りなどの皮 革業もその一つであるが、本研究の一つの成果は、 近年の環境民俗学のなかで、議論の組上に上っている 複合生業論という視点を導入することにより、従前 の部落産業に対するステレオタイプな視線に対し て、一定の見直しを提言したことにある。また本論 文には方法而における新しさをみることもできる。

これまでの被差別部落に対する民俗学的あるいは社 会学的研究においては、インフォーマントの「語り

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近江文化を支える太鼓製作技術とその背景

市川 秀之

人間文化学部准救綬 が重視されてきた。既存の研究が解放運動の一環と して、音11務に生きてきた人々の 「語り」を尊重して きたことには十分な必然性があったが、その一方で

「語り」を基盤とした研究成果がどの程度生産され てきたのかには疑問が残る。「語り」を生かしなが ら、そこから新たな論理を紡ぎ出していくことにつ いては、中島氏自身にも葛藤があったと思われる。 本論文では民具学的方法を導入することによって、

道具の融通無碍ともいえる自由な転用や、 一見雑多 にもみえる作業空間の構成秩序などが明らかにされ ている。「語り

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に加えて「モノ」へ着目すること によって、都市部落と農村部落、あるいは部落問に おける生業の具体的比較が可能なものとなる。また このような手法を生業空間だけではなく、イエなど の生活空間にも応用すれば、被差別部落の生活・民 俗研究についても新たな展開が期待できるだろう。 本論文が民俗学的立場からの部落生業論に対して 一石を投じるものであることは確かである。ただ本 論文ではある被差別部落の一人のインフォーマント の「語り」と「モノ」が対象化されているものの、

同種の研究が少ない現状においてはそれにどの程度 の普遍性を見いだせるのかはまだ不透明である。こ こで示された手法に、さらに新たなものを加味しな がら、調査を継続し成果を答積していくことが肝要 であり、中島氏の今後の努力に期待したいと思う。

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