5.2 2 次元情報投影プロジェクタの応用
5.3 情報投影プロジェクタの考え方による 3 次元ディスプレイの実現
図5.27: 回転円盤式立体視テレビシステム
情報投影プロジェクタによるアプリケーションの一例として、情報を非常に高速に投影できるとい う特徴を生かし、多数の視差映像を同時に受像、提示可能な3次元テレビジョンシステムを考案し、
実装した。
提示部は、空間の異なる方向に対して異なる映像情報を表示することができ、異なる方向から覗き 込むことで、その方向に応じた動画像を視聴できる。一方受像部は、入射方向別に2次元映像を取得 することが可能である。この2ユニットを接続することで、光線方向別の複数の2次元映像を離れた 場所に提示可能な、「3次元テレビジョンシステム」を実現する。
本システムに使用されている構成要素は2次元投影型情報投影プロジェクタそのものである。異な る点は、投影する情報はデバイスのためではなく、人のための通常の映像情報という部分である。つ まり本論文中で提案した、空間にタグを投影する、情報通信を行う、位置情報を投影するといった目 的とは合致していない。
しかしながら、情報投影プロジェクタの応用という意味で関連事項であるため、本論文の最後に取 り上げる。
本節ではこの3次元テレビジョンシステムについて、概要、設計手法、実装法について述べる。
5.3.1 3次元テレビジョンの概要
本システムは3次元テレビの基礎となるシステムで、カメラ部では光線の受光位置に加えて、入
を制御している、多数視差表示装置である。本提示方式の原理についてはすでに検討が行われている [60]。
ここで取り上げたカメラとディスプレイを繋ぐことにより、見る視点位置によって異なる映像を表 示可能となる。本システムを利用することで、両眼立体表示に加えて運動視差も提示することが可能 である。
本システムは図5.27のような要素から構成される。本システムでは高速で明滅可能な2次元LED 式プロジェクターを用いて、各LEDから異なるビデオ信号を送信し、それを外部の円盤により機械 的に走査することで、光線方向を制御できる表示部を実現している。また、まったく同様の手法をカ メラ側にも用いることで、光線方向を選択し受光可能なシステムを構築し、双方を接続することで多 数視差映像テレビジョンシステムを実現した。
本システムの構造は約80年前に発明された機械式走査型テレビ[59]と類似している。機械式走査 型ディスプレイとは図5.28で示されるようなシステムである。
図中のシステムはTelevisorと呼ばれる製品であり、図中メジャーの長さは700[mm]を示している。
中央の丸くはみ出したところにニポーディスクが入っており、右の小窓に投影用レンズ、その後ろに はランプがあり、映像信号の強弱に応じてランプを明滅する構造となっている。ニポーディスクの回 転に合わせて2次元的に画面を走査し、2次元映像が見えるという仕組みだった。
撮像装置についてもほぼ同一の仕組みを利用しており、ニポーディスクの前に結像用レンズ、後ろ に光電管があり、特定の点の輝度を受光しながらその点の位置を走査していくことにより、映像信号 を作成している。
それに対して、本システムでは光源以外は、機械式走査型ディスプレイと同じ構造をしている。こ の光源の違いとは、ランプの代わりに2次元LEDプロジェクタを置いていることである。この光源 を用いることで、方向依存情報の提示を行うことが可能となり、見る方向によって異なる映像を投影 可能な3次元テレビジョン装置を実現することができた。
この本システムのカメラ部について説明する。カメラ部においては、特定の光線方向のみから構成 される2次元映像情報を複数取り込むことが可能である。取得できる光線の角度やその同時取得可能 な映像数はフォトダイオードの位置、数に依存する。
一方、表示部の特徴は複数の動映像を覗き込む角度に応じて2次元映像を表示可能であり、その角 度から見た場合の立体図形の投影図を表示するように作られている。その結果、ユーザーが本システ ムを覗き込む時には、両眼立体視及び、運動視差をもった映像を観察できる。同時に投影可能な画像 数はLEDアレイの画素数に依存する。また、テレビとしての解像度は、回転する円盤(ニポーディ スクと呼ばれる)に空けられた穴の数によって決定される。
5.3.2 3次元テレビの設計と実装
第5.3.1章で説明した手法を用いて、3次元テレビを設計、実装を行った。このシステムの概要を
図5.29に示す。
各デバイスをそれぞれ説明する。
図 5.28: テレバイザー外観(NHK放送博物館所蔵)
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図5.29: 立体テレビブロック図
ニポーディスク
画像を伝送するために小さな穴を経由して映像がスキャンできるように作られた円盤であり、構造 としては螺旋状に小穴と、同期を取るための円周上に一定間隔の穴が空いている。回転させると図 5.30のように一定の領域を順次走査することができる。
ここで座標系の原点を円盤中心とし、座標を図のように(θ, r)で表す。画面の垂直幅をV、空けた
Q
Q
U ȟU
ȟ
図5.30: 機械的走査概要
穴の数nとした場合k番目の穴をh(k)で表記し、その座標を求めると h(k) = (2π(k−1)/n, r1+V(k−1)/n) で表記できる。
使用時にはこの円盤を秒10回から30回程度回転し、移動する穴の位置に合わせて映像を投影する ことで、2次元映像を構成できる。
LEDプロジェクタ
本システムでは映像を投影する装置として、図5.29の右上に示す、2次元LEDアレイ型プロジェ クタを用いている。構成は、第5章で示した、2次元情報投影プロジェクタと同様のシステムを用い ている。フルカラーLEDアレイを用いて、それを格子状に合計64個配置したシステムである。各 LEDに対して明滅を制御しているのはFPGA(Field Programmable Gate Array,Xilinx社Spartan3A スターターキット使用)である。一方、LEDアレイ基板の出力光を投影するレンズとして焦点距離
75mm直径53.5mmのACROMAT凸レンズを用い、平行光を取り出している。その様子を図5.31に
示す。このLEDプロジェクタの出力にニポーディスクを配置することにより、特定の点(ニポーディ スクに空けられた穴)を通る複数方向の光線だけを取り出すことが可能となる。ニポーディスクは回 転しているため、穴の位置が変化するために、その穴位置に合わせて光源を明滅させることで、同時 に複数の映像を投影している。
と、同時に図5.29の右下で示したところにフォトダイオードカメラがある。これは映像を受像す る装置であるが、第5.3.2章で示したものと全く逆に、図5.31の光源をフォトダイオードに置き換え た装置である。それにより、特定の点を通る複数の方向の光線を受光することが可能となる。