• 検索結果がありません。

位置情報投影プロジェクタ

第 4 章 1 次元情報投影プロジェクタ

4.1 位置情報投影プロジェクタ

本節では、1次元情報投影プロジェクタの実現について述べる。この1次元情報プロジェクタは空 間位置情報取得のための位置情報を空間に投影する機能があり、マーカと組み合わせることで、マー カのプロジェクタからの相対位置を検出が可能となる。

4.1.1 位置情報投影プロジェクタの概要

ユビキタスネットワークにおいて情報入力装置についても各種の研究が行われている。これらの研 究のうち、人の周囲の環境において、非接触で動きや位置情報を計測可能な研究は重要な位置を占め ると考えられる[30]。

例えば、人間の意図を判別するために人間の手の動きパターンを記録し、ユビキタスデバイスの位 置変化を入力として利用するようなモーションキャプチャ装置と呼ばれる機器である。

この中で、光学式とは複数の高精度ビデオカメラを固定点に設置し、測定点に受動的、能動的に発 光するマーカを配置する方式である。受動型のマーカでは多数のIDを区別できないため、多数の受 動型マーカを多数使用する場合[31]には、マーカを区別するための認識問題が発生する。逆に能動型 のマーカを用いてIDを区別する場合、ID判別のためのシーケンスが必要なため、時間がかかる。以 上のことから計測フレームレートとマーカの数との間にトレードオフが発生することが問題となる。

一方磁気式とは、測定範囲に、静的、動的な磁界を生成し、測定点に置かれた磁気センサを貫通す る磁束の変化により場所を特定する方式である[32]。受信部は小型で6軸のデータを取得することが できるが、この方式では、周囲に金属の影響により、精度が劣化することが知られている。機械式と は、関節の回転角度の計測を行いながら、2点間の距離、角度などを計測するシステムである。比較 的高い精度が得られるが、実物があるために、大きく、またタスクの邪魔になることもあり、現在で は一般的ではない。

また、内界センサであるジャイロ[33]、磁気コンパスについては時間的なドリフトが発生すること と、それを抑制するためのキャリブレーションが難しい。

上記のシステムを表にまとめると表4.1で示すようになる。

以上のように、各種の位置センサが開発、市販されているが、市販のモーションキャプチャ装置は どれも非常に高価である。また、安価な内界センサを用いて、十分な精度をもつモーションキャプ チャシステムも実用化されていない。

このような中で、上記の問題を解決できるモーションキャプチャシステムが筆者ら[17][37]によっ て提案されている。

表4.1: モーションキャプチャ装置の分類 方式 一例 値段 精度 動作範囲

光学 VICON 高 高 広

機械 ADL-1 中 中 狭

磁気 Polhemus 中 中 中

内界センサ CROSSBOW 中 低 広

Projector

Tags Pos=0

Pos=255

図4.1: 1次元情報投影手法

このシステムでは、空間に1次元情報を高速に投影することができ、分割ピクセル寸法が10[mm]

となるような詳細な情報の例として、各ピクセルの位置情報を投影するものとする。

特殊な部品を用いず、ほぼすべての機能にデジタル的処理のみを用いることにより、単純な機構で 安定したモーションキャプチャ装置を実現可能とした。

本章ではそこで使われたプロジェクタ、マーカシステムについて、設計手法と実際に衣服などを通 した場合の実験を行い、性能を評価した。

本章の構成は2節にてモーションキャプチャ装置の概要、3節にて今回実装した装置の設計につい て、4節において実験をおこない、5節にてまとめを述べる。

4.1.2 システム概要

まず、モーションキャプチャシステムを設計するに当たっては、以下のような方針を立てることと した。移動しながら、人の動きを記録するような用途を想定しているためである。

高分解能を求めないが、簡素で持ち運びが可能である。

高いフレームレート(1[kHz]程度)。

䉫䊧䉟䉮䊷䊄

శḮ 䊙䉴䉪

䊧䊮䉵

ⓨ㑆䈮䉫 䊧䉟䉮䊷䊄

䊌䉺䊷䊮 ᛩᓇ

図 4.2: 本プロジェクタの機構

マーカの数によってフレームレートが左右されない。

従来研究において、このようなシステムとしてはLEDとPSDを用いた、UNCのHiBallシステム [34]があり、非常に広い範囲にわたり高い精度を持つシステムとして知られているが、高価であるこ とと、LEDタグの数によって、フレームレートが変わってしまう問題がある。

一方、安価な位置情報取得手法として考えると、RFIDと光通信を組み合わせたRFIG[8]などがあ げられるが、あらかじめ複数のRFIDを準備する必要があり,今回の用途とは異なる研究である。

一方電波のみを用いたシステムではUWBを用いた研究などが行われており[36]、タグまで電波が 届く時間を測定することにより座標が取得できる。将来的には安価になる可能性を秘めている。

また、見えない発光パターンを投影するという研究としてはCOTTINGら[35]による、通常のプ ロジェクターに情報を埋め込む投影する研究が行われているが、位置情報の投影が主ではないため方 向性が違うと考えられる。

このような研究に対して、本方式では上記の条件を満足するために、以下のような特徴をもつシス テムを実現し、新しいモーションキャプチャへの応用を進めたいと考えた。

市販の部品のみを使い、小型軽量で安価な構成。

マーカ受光部は1つのみで、小型。衣服の下に隠れても良い。

マーカの数には左右されない計測フレームレート。

本システムは図4.1のように空間に水平方向に1次元グラデーションコードパターンを投影するこ とが基本となる。1次元情報投影プロジェクタとしては以下のような構造となる。模式図を図4.2に 示す。

図4.3: プロジェクタの外観

ࢥࣥࢹࣥࢧࣞࣥࢬ ᑐ≀ࣞࣥࢬ

㹊㹃㹂 ࢫࣛ࢖ࢻ࣐ࢫࢡ

3RV 3RV

図 4.4: プロジェクタ内部の説明

写真のスライドプロジェクタと同様の機構で空間に位置情報を含んだグレイコードマスクパター ンを投影する。

時系列で複数のマスクを切り替えることにより、複数の情報を時分割方式にて送信する。

ここでは、光切断法などで使われる空間コード化と同様の短冊形状の繰り返しパターンを用い、解 像度が異なるグレイコードによる複数のマスクを投影する。例えば8[bit]の分解能が必要な場合には 8種類のマスクを順次投影することになる。図4.2による説明では、図中、上から順に光源を発光さ せることで、空間に異なるグレイコードを投影することが示されている。ここで、投影情報にバイナ リを用いる場合に比べ、グレイコードを用いることによる利点として、隣接するコードとのハミング 距離が1となり、エラーに強い位置情報を取得できることがあげられる。

例えば、受信位置が移動している場合や、コードの境界上で静止した場合においては、受信信号が 不安定になり隣接したコードが混信するが、必要な情報を受信できる。

一方、マーカ側ではプロジェクタの前方に置かれた1つの受光センサを用いてプロジェクタからの 変調光を受ける。この光は時分割でプロジェクタからの方向に応じて異なるグレイコードパターンを 構成しているため、順次光情報を受信することで現在のプロジェクタとの角度情報が取得できる。 

この手順では受信側と送信側が個別に同期等を取る必要が無いので,受信器の数が変わっても、計 測手順は変わらない。つまり、計測レートは受信機の数によらず一定となる。

図4.5: 使用したスライドマスク

図4.6: 可視光LEDを利用したプロジェクタでの投影

TSOP 7000

EmbbededCPU 18LF2620

24MHz

9V Bat t er y

32Mbi t Fl as hROM

Wir el es s Modul e I R- r ay

Remot e cont r ol r ecei ve- I C

図4.7: 受信側の構成図

図4.8: 受光側マーカの外観

4.1.3 1次元プロジェクタの設計と実装

上記の特徴を持つモーションキャプチャなどに用いることが可能な位置情報投影システムを試作し た。このシステムの主な仕様を表4.2に示す。以下にプロジェクタとマーカの詳細について述べる。

プロジェクタ機構部

図4.3右に今回実装したプロトタイプのプロジェクタの外観を示す。内部構造は図4.3左のよう になっている。構造としては、図4.4に示すようになっており、一番右にIR-LEDが一列に9個並 び、LEDの前にはコンデンサレンズ、スライドマスク、対物レンズが並んでいる。レンズはすべて

130[mm]×15[mm]焦点距離40[mm]のシンドリカルレンズを使用しており、スライドマスク上の短

冊状グレイコード9種類を別々に投影可能な構造となっている。投影範囲はなるべく広く取りたかっ たが、光学系の制限などから、26[degree]となった。

実際に用いたグレイコード投影用スライドマスクパターンを図4.5に示す。中央部にスタートビッ ト用のすべて光を通過する部分と、グレイコードの最上位ビットを左端、次のビットを右端、以後中 央に向かって下位ビット並べている。投影の様子がわかりやすくなるようにLEDを緑色に変更した プロジェクタの写真を図4.6に示す。この写真では、LEDを用いて、写真の水平方向に角度情報を投 影する様子が示されている。

本システムでは、スライドマスクの短冊の角度が正しく平行に投影されることがとても大事であ る。位置関係を維持するために複数のマスクを1枚に統合し、レンズなども大きな1つの部品にまと めることで、平行度を確保している。