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思春期の美術教育カリキュラムの実際

ドキュメント内 思春期における美術教育の一考察 (ページ 64-70)

第3章  思春期の美術教育カリキュラムの作成

第3節  思春期の美術教育カリキュラムの実際

 第2節の「思春期の美術教育カリキュラム作成の視点と手順」をふ まえて、私の過去の実践を再整理し、 「中学校の美術教育カリキュラ ム」の実際がどのように展開するかを最後に明らかにしておく。ただ、

本論のテーマと密接な絵画表現に絞って実証的考察を行うこととする。

〈中学校ユ年〉 テーマ『人間』

 中学1年は、 「自分とは何か」 「自分は何のために生きているの か」を考えはじめる入り口にあたる。ゆえに、この学年のテーマを

『人間』とする。

4.月 目標【自分を出す】

①「自己紹介は絵で表そう」

  学級のスタートは、自己紹介から始まるが、様々な授業でも自己紹  介がおこなわれる。自己紹介は、コミュニケーションの第一歩であり、

 自分を振り返る絶好の機会である。自己紹介に飽きてしまった生徒も、

 絵で表すとなるとまた新鮮である。 「自分の顔」を中心に自分の趣味  や生活を自由に描かせる。絵だけでなく、文字、記号なんでも使い、

 描き方は自由とする。教師は、まずは生徒が教師に伝えたい気持ちを 刺激してコミュニケーションを

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 も描いてみせて、人間が「描  く」ことの発達段階(スクリブ

ルや頭足人表現を経て発達してくることなど)を示してやれば、生徒 はこれまでの自分の発達を振り返ることもでき、また、緊張感もほぐ れてくるものである。とにかく恥ずかしがらずに自分の気持ちを出し、

みんなに伝えるように、 「うまい・へた」ではなく自分を出していく ことが美術であるという雰囲気を作り出すことから始める。

そして、この[自己紹介の絵]をもとに、これにある造形要素を加え れば、より表現が深まっていくことを徐々に気づかせていく。一つは、

より明快に伝えるためにはどうすればよいかという「デザイン」的、

平面的表現の方向であり、もう一つは、より深く実感を持たせるには どうすればよいかという「絵画」 「彫塑」への立体的表現の方向であ

る。 (下図)

 それは、この[自己紹介の絵]を学級に掲示し、学級のみんなとの コミュニケーションを図るという目的で次に向かうのである。

①[自己紹介の絵]→→→→→→→→→→→→→

    ,

  自分の趣味     」

②[○○している自分]

    ・

⑤[イラスト・ポスター]

   」

自分の顔の特徴    」

③[自画像]

   ,

④[自分の頭芋]

 ②[○○している自分]は、「自己紹介は絵で表そう」で「表出」

したものを「学級掲示」という目的によって、みんなによりよく伝え ようという気持ちを刺激し、 「表現」へと導く。そのためには「自分 の顔」だけでなく、自分の趣味の紹介から、 「動き」のある自分のイ メージを捉えることによって、自分の普段の生活に目を向けさせる。

その中にはこの時期に始まるクラブ活動や、普段の生活の実体がよく 現れる。また、個々の生徒の空間

表現の発達段階もつかむことがで きる。そして、それに造形要素を 加え、すっきりしたものをめざし ていくと(単純化、強調)、より ょく伝わり、学級掲示物や、印刷 物の表紙、カット、授業内容の説 明イラスト、ポスターなどこれか らの学校生活に於いて利用出来る ものであるという事がわかる。こ こまでは、現代のよく見慣れた

「イラスト」文化によって「表 出」から「表現」はスムーズに行

われる。

ある。問題は、

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    しかし、それは主に外的な操作によって生まれてきたもので         自分の姿を見つめる という内的コミュニケーショ ンの中で留まっている 本当の自分の姿 である。

5月 目標【自分を見つめる】

③[自画像(スケッチ)]

   自分の本当姿を見つめる ということは、思春期では注意を要す  るが、  自分の顔の特徴 を[自己紹介の絵]で、集団の中で明らか  に開かれたものにしておくと、目、鼻、口、耳といった人間としての  共通部分をそれぞれの個性として捉えるようになる。そして、それぞ  れ個々の部分を探究(スケッチ)して行けば、自分で見えない部分で  ある耳や横顔、後頭部などの発見に至る。それを、他の生徒とのコミ  ュニケーションを通して観察することによって、今まで見えなかった  部分の発見、つまり 顔 というものの正面性だけのとらわれから、

 他の角度から見ることによって、人間の 顔  (頭)の全体性を捉え

の本当の姿が個性として捉えられるようになる。

 しかし、ここから更に[自画像]としての内面への追求はこの段階 では避けるべきである。ここでは、自分の本当の姿が個性として捉え

られ、中学校入学時の新鮮な前向きの姿勢が見られれば十分である。

 ここで内面の表現を急がせることなく、学級の中に良好なコミュニ ケーション環境が出来てくるのを待つ必要がある。つまり、この時期 の集団づくりに於いて民主的な討論・決定の方法を指導するのである。

6月 目標【自分を見つめる】

④[自分の聖像]

  この入学時の新鮮な前向きの姿勢を[自分の顕像]に定着させてお  くことは意味のあることと考える。

  ここで、粘土という可塑性のあるものによって、実感として(触覚  的に)自分の 顔  (頭)の全体性を捉える。中心から粘土をつけて

行くことによって かたまり としての自分の実感を得る。生徒は粘  土が好きである。手で触れること

によって、実感として自分の 顔

 (頭)の全体性が捉えられ、さ

らに鼻、口、耳、目といった部分 を捉えようとするとき、それをつ なぐ肉や、おでこ、ほお、あご、

などの盛り上がりと骨格の存在に 気づくのである。自分で自分の肉 や骨をさわりながら、感じたもの を粘土に込めて行くのである。こ のようにして、

       自分の内なるものへの入り口に立ち、熱い血のかよう

肉体や、微妙な筋肉の動きによる「感情」のあらわれに気づくのであ る。そして、  気持ち(心)をこめて表現すること の意味を生徒と 話せるようになるのである。

7月 目標【表現することの意味を考える】

[美術館へ行こう]

  [自分の頭像]をお互いに鑑賞することによって、それぞれにどん な気持ち(心)や姿勢や態度があらわれているかを話し合うことがで きる(注1)。そこに感動や共感が生まれるが、さらにその感動や共 感を味わえる作品や場所を探す。教科書や美術全集などに求めること

もよいが、実際、本物に触れなければ、実感を得ることは難しい。本 来、美術館は、そういう感動や共感が味わえる場所であるはずなのだ が、そういう感動や共感を求めて、●「美術館へ行こう」を夏休みの課 題とする。

9月 目標【表現することの意味を考える】

  「美術館へ行こう」の課題から出てくるものは、初めて美術館へ行 って、おもしろかった、楽しかった、 (現代美術に接して)わけがわ からなかったが中心である。その中にわずかに含まれる感動や共感を 拾い上げてみれば、その「作者の気持ち」に行き着くのである。 (注

2)作品にあらわれる 作者の気持ちや心 は、国語や音楽でも学習 する芸術に共通する重要な要素であるから、詩や物語や音楽の学習も 合わせて 表現することの意味を考える と効果的である。美術の特 徴は、それを視覚化し、またそれを見て感じとるところにあるのであ るから、4月に[○○している自分]をあらわしたことを思い出しな がら、詩や物語や音楽から受けるイメージを視覚化する練習を始め、

それをもとに[イラスト・ポスター]を制作する過程を通じて表現す ることの意味を考えていく。

 また、イラスト表現に色彩を加えることによって、さらにイメージ

を高めるために、 「色彩」の学習をここで行っておく。

10・11月 目標【表現することの意味を考える】

[合唱コンクール(文化祭)のポスターをつくろう]

コンクールの練習が始まる。最初は、いっしょうけんめい大きな声で 歌うことから始めるが、徐々にどんなイメージで歌うかという曲想を も指揮者を中心に表現できるようになる。つまり、  作者の気持ち を汲み取り、その汲み取ったイメージをどのようにして聞く人に伝え るかという【表現することの意味】がそこにあるのである。このよう に聞く人に伝えようという心を持って歌った合唱には、必ず「感動」

が生まれる。美術においてもこのプロセスを大切にし、自分の中に生

剥謡 「膨纏,s

一ルのポスター」は、単なる行 事内容伝達のポスターではな

く、合唱練習の中で感じた気持 ち(心・イメージ)を、どう見 る人に伝えるかという イメー ジ伝達のポスター である。歌 うときの姿勢や表情、クラスが 一つになったときの感動、曲の イメージなどがポスターにあら われてくる。それを効果的に構

て構想を十分に練り、試行錯誤を繰り返し納得いくまで追求すること がこの段階では必要である。こうして【人間が表現することの意味】

を学ぶことによって、心を込めたものを作り上げようとする姿勢が形

成される。

 そして、出来上がった全員の作品を展示し、その作品鑑賞を通して、

次に 美術を学ぶ 姿勢をつくるのである。

12,月 目標【自分でテーマをつくる】

  [合唱コンクールのポスターの作品鑑賞]から、ポスターの図案を 構想するとき最も苦労したということが出てくる。ポスターに表現さ

ドキュメント内 思春期における美術教育の一考察 (ページ 64-70)

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