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心身状況・排泄状況別にみた排泄環境の実態

前章では、〈重複〉〈身体〉〈知的・発達〉の3障害別に障害児の排泄実態及び排泄環 境に関するアンケートの結果をまとめた。排泄自立度及びおむつ使用状況は年齢や障 害程度により異なる。したがって、障害種別のみではない他の要因、例えば、立位・座 位・首のすわりなどの運動機能、医療的ケアの有無や排泄障害の有無などさまざまな 要素を考慮し排泄環境に関する実態を把握する必要がある。そこで、本章では前章の アンケート結果を用い、心身状況や障害の特徴が類似する障害児の類型化(グループ 化)を試みている。さらに、各グループ別の排泄環境を把握するため、排泄時の姿勢や 移動方法・住宅改修の有無や障害児・介助者のトイレでの排泄希望と実際などの傾向 を示している。また、第 3 章と同様に自宅内での排泄環境と比較するため、通園・通 学先及び外出先との比較も行っている。

4.1 障害児の類型化の方法

障害児は成長と発達に個人差があり、年齢のみまたは障害の程度のみで排泄実態を 把握することは難しい。さらに、障害程度、身体機能や知的能力といった心身状況及び 排泄状況により排泄環境が異なる。そのため、身体機能、意思伝達能力、医療的ケアや 排泄障害の有無、排泄時の告知などのアンケート調査で得られた情報を用いて、障害 児を類似する障害程度及び心身状況別にグループ化(類型化)を行う。なお、第 3 章 の結果より、〈知的・発達〉は〈重複〉ならびに〈身体〉とは身体機能や排泄状況が大 きく異なるため、〈重複〉ならびに〈身体〉とは独立させて以降分析・考察をすすめる。

〈重複〉ならびに〈身体〉については、それらをさらに身体機能や排泄状況から、さ らに分類できる可能性があると考えた。よって、この二障害(分類)を一つのデーター として扱い、再度以降の手法によって新たな分類を試みた。

(1)分析方法

心身状況や排泄状況及び障害の程度など、多数の調査項目がある場合、数多くの障 害児の分類にはクラスター分析などが用いられるが、最も一般的なクラスター分析は 説明変数が順序尺度のみでしか分析を行うことができない。したがって、本項では、通 常、主成分分析手法のうち、順序尺度以外の単位や次元の異なる項目同志の関係が理 解しやすく、数値変数間の線型関係が問われないカテゴリカル主成分分析を用いた。

分析には PASW Statistic を用いた。カテゴリカル主成分分析は、前章の結果より

身体機能や医療的ケアの有無、おむつ使用率、排泄告知などで排泄状況が著しく異な る〈知的・発達〉を含めず、〈重複〉及び〈身体〉のみ 353人を対象に行った。

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(2)分析過程

カテゴリカル主成分分析の分析過程を表4-1 に示す。はじめにアンケート調査の「性 別」「おむつ使用の有無」「光に敏感」ほか感覚・姿勢など、移動方法など該当するすべ てとなる 24 項目を投入した。しかし、「性別」など一つの変量が極端に大きな成分負 荷を示し、他の変量間の成分負荷の違いが見い出せなくなったもの、もしくは「光に敏 感」など極端に分散が少ないため、分析が収束しなかったものなどがあったため、こう した項目を除外した。その結果、解釈が可能となった「年齢」「体重」「医療的ケアの有 無」「側わんの有無」「立位」「座位」「寝返り」「首のすわり」「意思伝達方法」「尿意」

「便意」「排泄障害の有無」の 12項目を今後の類型化に用いる説明変数とする。

なお、確認のため〈知的・発達〉を含めて 3 障害でのカテゴリカル主成分分析を行 ったが、〈重複〉〈身体〉と〈知的・発達〉を同等に分析しても身体障害または知的障害 の 2 極に分類することしかできなかった。そのため、カテゴリカル主成分分析から、

第 3章で傾向が異なる〈知的・発達〉を除いた。さらに、〈知的・発達〉のみでカテゴ リカル主成分分析を行い〈重複〉及び〈身体〉と同様に分類し(年齢高く最重度、年齢 低く最重度、年齢高く中軽度、年齢低く中軽度の 4 分類)に分け、排泄環境に関する 分析を行ったが、顕著な相違がみられなかったため、本項では細分類せず〈知的・発 達〉を一分類として分析の際には追加する。

表4-1 カテゴリカル主成分分析の主な分析過程

投入した説明変数 投入数 除外項目 分析結果と評価

・身長・体重・性別・年齢・手帳の有無

・立位・座位・寝返り・首のすわり・意思伝達方法

・医療的ケアの有無・排泄障害の有無・おむつ使用の有無

・音に敏感・光に敏感・皮膚が敏感・側わん

・関節可動域制限・緊張や拘縮

・多動・強いこだわり ・尿意・便意・排泄自立度

24 なし

分散が小さく、収 束に時間がかかり 分析不能

評価△:不可

・身長・体重・年齢

・立位・座位・寝返り・首のすわり・意思伝達方法

・医療的ケアの有無・排泄障害の有無・おむつ使用の有無

・音に敏感・光に敏感・皮膚が敏感・側わん

・関節可動域制限・緊張や拘縮

・多動・強いこだわり ・尿意・便意・排泄自立度

22 ・性別

・手帳の有無

分散が小さく、収 束に時間がかかり 分析不能

評価△:不可

・身長・体重・年齢

・立位・座位・寝返り・首のすわり・意思伝達方法

・医療的ケアの有無・排泄障害の有無・おむつ使用の有無

・側わん・尿意・便意・排泄自立度

15

・音に敏感

・光に敏感

・皮膚が敏感

・多動

・強いこだわり

・関節可動域制限

・緊張や拘縮

収束し結果が得ら れたが、結果の解 釈がしにくい 評価〇:不十分

・体重・年齢

・立位・座位・寝返り・首のすわり・意思伝達方法

・医療的ケアの有無・排泄障害の有無

・側わん・尿意・便意

12

・排泄自立度

・おむつ使用の有無

・身長

結果の解釈が容易 かつ適切になった 評価◎:十分 評価理由:×:分散が小さく収束せずに分析不能、              △:分析が小さく収束に時間がかかり分析不能

〇:分析が収束し結果を得られたが、結果の解釈がしにくい、 ◎:分析が収束し結果が得られ、かつ解釈可能

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(3)分析結果

カテゴリカル主成分分析を行い、解釈可能となった結果を図 4-1 に示す。ただし、

「尿意」と「便意」は近似直線状になったため結合プロット間の空間距離が大きいほう の「尿意」のみを表示し、以下同様に、二次元プロットでは同一線上である「座位」「医 療的ケアの有無」及び「排泄障害の有無」は「座位」のみを表示、「立位」と「首のす わり」は「立位」のみを表示する。図 4-1より、次元1(横軸)の値が大きくなるとよ り身体機能及び知的能力が重度となり医療的ケアを必要とする障害児が多くなる。次 元2(縦軸)の値が大きくなると年齢が大きくなり、体重も増える傾向がわかる。

4.2 障害児の類型化と各グループの特徴

障害児の類型化を行うために、前項の結果をもとに第Ⅰ象限にプロットされた障害 児のグループを G1、第Ⅱ象限を G3、第Ⅲ象限を G4、第Ⅳ象限を G2とし、4グルー プとして分類する。障害児の分布状況を図4-2に示す。さらに、第 3 章の結果から、

〈知的・発達〉は〈重複〉ならびに〈身体〉とは身体機能や排泄状況が大きく異なるた め、〈知的・発達〉を〈重複〉ならびに〈身体〉とは独立させた〈知的・発達〉を加え、

5分類とした。なお、以下〈知的・発達〉を「I/D」と表記する。(知的障害 Intellectual Disability/発達障害 Developmental disability の略)。各グループの特徴を表4-2に 示す。なお、各グループの人数は G1が82 人(〈重複〉73人、〈身体〉9人)、G2が 74 人(〈重複〉61 人、〈身体〉13人)、G3が100人(〈重複〉76人、〈身体〉24人)、G4 が 97人(〈重複〉84人、〈身体〉13人)、I/Dが259人(全員〈知的・発達〉)である。

G1は、年齢が高く、身体機能及び知的能力ともに最重度であり、医療的ケアを必要 とする障害児の割合が多く、排泄の告知を行わない障害児が約 70%である。簡略化す ると「高年齢、身体障害及び知的障害ともに最重度、医療的ケア多」である。

G2は、年齢が低く、身体機能及び知的能力ともに最重度である。医療的ケアを必要 とする障害児の割合は60%程度であり、排泄の告知を行わない障害児が約60%である。

簡略化すると「低年齢、身体障害及び知的障害ともに最重度、医療的ケア半数程度」で ある。

G3は、年齢が高く、身体機能は中軽度から重度であり、知的能力は軽度までとなり、

知的障害がない障害児もいる。医療的ケアを必要とする障害児はほとんどいない。排 泄の告知を事前に行う障害児が約 70%である。簡略化すると「高年齢、身体障害重度 及び知的障害中軽度もしくは無、医療的ケアほとんど無」である。

G4は、年齢が低く、身体機能及び知的能力はともに重度であるが、医療的ケアを必 要とする障害児の割合は約 20%である。排泄の告知は行わない障害児が約 60%である。

簡略化すると「低年齢、身体障害及び知的障害ともに重度、医療的ケアほとんど無」で ある。

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I/Dは、年齢はさまざまであり、身体障害はなく知的障害が軽度から最重度まであり、

医療的ケアが必要な障害児はいない。排泄の告知を事前に行う障害児が約 60%である。

簡略化すると「身体障害無、知的障害又は発達障害中軽度から最重度、医療的ケア無」

である。

図4-2 障害児の分布状況

-2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

図4-1 カテゴリカルポイントの結合プロット -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 1.5

1.0

0.5 0.0 -0.5 -1.0

-1.5 1-4

16,17 45㎏以上

15㎏以下 事後に知ら せる 分から ない

分から ない でき ない

でき ない でき ない あり

でき る なし でき る

口話 サイ ン 事前に知ら せる

でき る

支えがあればでき る 表情

知ら せない

手伝えばでき る

支えがあればでき る

G 1

G 2 G 3

G 4

体重 立位 座位

側わん 意思表示

尿意 寝返り 年齢

次元1

次元2 次元1

次元2