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在宅障害児の排泄環境に影響を与える要因

前章では、カテゴリカル主成分分析による障害児の類型化を行い、それぞれのグル ープの排泄実態に即した排泄環境について配慮すべき点についてまとめた。したがっ て、本章では、本研究の目的である在宅重度障害児の排泄環境整備の検討に向け、排泄 場所別及び排泄環境における問題点と関連性が近いと考えられる心身状況及び排泄状 況などの主要因子の抽出を行う。第 3 章のアンケート結果を用い、排泄環境に関連す る質問項目のうち、「住宅改修や工夫」「排泄場所」「排泄環境における現時点での問題 点(第 1位)」の3つについて、それぞれの相関性の高い主要因子を抽出し、排泄環境 整備において重要となる項目を具体的に示す。本章においても、通園・通学先及び外出 先との比較を行っている。

5.1 排泄環境にかかわる主要因子の抽出方法

在宅重度障害児の排泄環境整備の検討に向け、排泄環境に影響を及ぼしている要因 を抽出する必要がある。分析方法を次に示す。

(1)分析方法

排泄環境整備に影響を及ぼす主要因子を把握するため、単位や次元の異なるオブジ ェクト間の関係が理解しやすく、それらの関係を、より少ない多次元空間で表し、理解 しやすいかたちで提示できるカテゴリカル正準相関分析を用いる。分析には、第 3 章 のアンケートデータを使用し、第 4 章と同様に〈重複〉及び〈身体〉のみで分析する。

対象児はすべて 18歳未満である。

分析には PASW Statisticを用いた。カテゴリカル正準相関分析は、前章同様に〈重

複〉及び〈身体〉のみの合計 353人とする。なお、〈知的・発達〉においても同様の分 析を行ったが、本研究のアンケート調査の内容からでは、分散が小さく、収束せず結果 が得られない、または、結果の解釈ができなかったため本章では除外する。

(2)分析過程

分析によって得られた結果と、得られたが解釈がしにくい結果などの整理を行い、

分析過程を表形式で示す。なお、各分析過程の表中にある下線(アンダーライン)は分 析により、追加した説明変数である。

グループ 1 には住環境及び排泄に関する内容を投入し、グループ 2 には身体機能な どに関する内容を投入して相互の関係性を導き出した。なお、説明変数によっては分 析過程でグループ間の移動も行っている。

96 5.2 排泄環境にかかわる主要因子の抽出結果

5.2.1 「住宅改修及び工夫」に影響を与える主要因子

「住宅改修及び工夫」に影響を与える要因を抽出するために行ったカテゴリカル正 準相関分析の分析過程と分析に用いた説明変数を表5-1 に 示 す 。 段 階 を 経 て 分 析 可 能 となるまで説明変数の投入を調整して繰り返し分析を行ったが、本研究のアンケート 調査の結果からだけでは、心身の状況や排泄状況から住宅改修及び工夫に関連する主 要因子は抽出できなかった。

表5‐1 「住宅改修及び工夫」に関する分析過程

5.2.2 「排泄場所」に影響を与える主要因子

第 3 章のアンケート調査では、障害児の排泄場所として、「自宅の排尿場所」「自宅 の排便場所」「通園・通学先の排尿場所」「通園・通学先の排便場所」「外出先の排尿場

グループ1 グループ2

・住宅改修や工夫の有無

・手すりの設置

・便器の交換・便座の交換

・段差解消

・開口部の拡張

・戸、扉の交換

・リフトの設置

・トイレ用車いすの導入

・立位・座位・寝返り

・首のすわり・意思表示

・医療的ケアの有無

・人工呼吸器(必要時)

・人工呼吸器(24時間)

・在宅酸素療法・たんの吸引

・自己導尿

・導尿留置カテーテル

・人工膀胱肛門

・関節可動域制限

・側わん・緊張や拘縮

・強いこだわり・多動

・おむつ使用の有無

・排泄障害の有無

なし

分散が小さく、

収束せず分析不能 評価×:不可

・住宅改修や工夫の有無

・手すりの設置

・便器の交換・便座の交換

・段差解消

・開口部の拡張

・戸、扉の交換

・リフトの設置

・トイレ用車いすの導入

・立位・座位・寝返り

・首のすわり・意思表示

・医療的ケアの有無

・おむつ使用の有無

・排泄障害の有無

・人工呼吸器(必要時)

・人工呼吸器(24時間)

・在宅酸素療法・たんの吸引

・自己導尿

・導尿留置カテーテル

・人工膀胱肛門

・関節可動域制限

・側わん・緊張や拘縮

・強いこだわり・多動

分散が小さく、

収束せず分析不能 評価×:不可

・住宅改修や工夫の有無

・手すりの設置

・便器の交換・便座の交換

・立位・座位・寝返り

・首のすわり・意思表示

・医療的ケアの有無

・おむつ使用の有無

・排泄障害の有無

・段差解消

・開口部の拡張

・戸、扉の交換

・リフトの設置

・トイレ用車いすの導入

分散が小さく、

収束せず分析不能 評価×:不可

・住宅改修や工夫の有無

・手すりの設置

・便器の交換・便座の交換

・立位・座位・寝返り

・首のすわり・意思表示

・医療的ケアの有無

・おむつ使用の有無

・排泄障害の有無

分散が小さく、

収束せず分析不能 評価×:不可

・住宅改修や工夫の有無

・保護者のトイレでの排泄 希望

・立位

・首のすわり

・意思表示

・医療的ケアの有無

・座位

・寝返り

・手すりの設置

分散が小さく、

収束せず分析不能 評価×:不可 投入した説明変数

除外項目 分析結果と評価

評価理由:×:分散が小さく収束せずに分析不能、              △:分析が小さく収束に時間がかかり分析不能

〇:分析が収束し結果を得られたが、結果の解釈がしにくい、 ◎:分析が収束し結果が得られ、かつ解釈可能

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所」「外出先の排便場所」の 6 カ所について把握している。そこで、自宅、通園・通学 先、外出先のそれぞれの場所について分析を行ったが、収束して結果を得ることがで きたのは「自宅での排泄(排尿・排便)場所」と「通園・通学先での排泄(排尿・排便)

場所」のみである。外出先では「排便をしない」障害児が存在することや、トイレを使 用していても必ずしも便器上での排泄ではなく、トイレでのおむつ交換などトイレ使 用の目的が自宅と異なるためと考え、本項では「自宅での排泄場所」と「通園・通学先 での排泄場所」について分析過程と分析結果を示す。

(1)自宅での「排泄(排尿・排便)場所」に影響を与える主要因子

自宅での排泄場所に関するカテゴリカル正準相関分析の分析過程と、分析に用いた 説明変数を表5-2に示す。また、分析結果を自宅の排尿及び排便それぞれの排泄場所 と心身状況及び障害の程度、排泄の状況などとの相関性を図5-1に示す。

【分析過程】表 5-2

最初に、排泄場所と心身状況及び障害の程度を説明変数として投入したが、結果を 得ることができなかった。そこで、排泄場所には障害状況だけでなく介助者の意向や 生活全般をみる必要があると考え、次に「保護者のトイレでの排泄希望」を投入し、第 七段階において結果を得ることができた。なお、より解釈が容易となる結果を得るた めに第八段階と第九段階を行ったが、解釈がしにくいため、最も解釈が容易となった 第七段階を分析の結果とする。

【分析結果】図 5-1

排泄場所と心身の状況及び障害の程度などとの関連のある説明変数は、「立位」「首 のすわり」「たんの吸引の有無」「側わんの有無」「自宅での排尿場所」「自宅での排便場 所」「自宅での排便姿勢」「保護者のトイレでの排泄希望」「便意」の 9項目である。

さらに、排泄場所に影響を与え、説明変数が近似している項目は以下の 4 通りであ る。

A1.「自宅の排尿場所がトイレ」「立位ができる」「排便姿勢が立位」

B1.「首のすわりがない」「便意がわからない」「トイレでの排泄希望がない」

C1.「便意をほとんど事後に知らせる」「立位は支えがあればできる」「排便姿勢が座 位」「たんの吸引が必要」「側わんあり」「自宅での排便場所がトイレ以外」

D1.「首のすわりがあり」「たんの吸引がない」「便意は知らせない」「介助者(保護者)

のトイレでの希望があり」「介助者(保護者)の希望がわからない」「自宅での排 便場所がトイレ」「自宅での排尿場所がトイレ以外」「便意をほとんど事前に知

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らせる」「排便姿勢が臥位姿勢」「立位ができない」「側わんなし」

それぞれの関連性をみると、排泄場所には心身の状況と介助者の希望が影響してい る。特に「首のすわり」がなく「便意がわからない」重度障害児はトイレでの排泄が困 難であり、介助者(保護者)もトイレでの排泄を希望していない。

さらに、「立位ができる」「排便姿勢が立位」であることが排尿場所に与える影響が大 きいと考える。また、「排便姿勢が立位」である重度障害児はおむつ使用であり、成長 とともにトイレットトレーニングによりトイレでの排泄に移行する可能性がある。

一方で、「便意を事後に知らせる」「立位は支えがあればできる」ことが排便場所に与 える影響が大きい。さらに「たんの吸引が必要」「側わんがある」重度障害児はトイレ 以外での排泄となるものの「便意を事後でも知らせることができる」ため、環境を整え ることで排便のみでもトイレでの排泄の可能性がある。

その他、「首のすわりがある」「側わんがない」「たんの吸引の必要がない」にもかか わらず「排便を知らせない」ために、「排便姿勢が臥位姿勢」である重度障害児は、排 泄場所に与える影響が、排尿と排便で異なり、さらに、排泄告知と介助者のトイレでの 排泄希望の有無が混在している。そのため、排泄場所がトイレ以外であることを何と かしたいと考えているものの、どのように環境を整えたらよいのかわからないと考え る。

以上のことから、自宅での排泄場所に影響を与える要因は「立位」「首のすわり」「便 意」「たんの吸引」「側わん」「介助者(保護者)のトイレでの希望」である。