円管や矩形断面を有する流路内で流れに中立浮遊する粒子について,レイノ
ルズ数Reが約1<Re<100の範囲では,粒子は流れに対し垂直方向に移動し,
下流において流路断面内の特定の位置に集中することが知られている.円管内 流れを対象として行われたSerge & Silberberg(35)の実験により,円管内ポアズ イユ流れでは管半径の約0.6倍の位置に集中することが報告され,“Serge & Silberberg effect”として知られている.
これは,壁面方向に作用する力と管中心方向に作用する力のつり合いによる ものであり,主にMagnus lift force, Saffman lift force, Shear gradient lift force, Wall
effectの4種類の力が粒子には作用している.本研究で想定する血管内のレイ
ノルズ数は0.6~1程度であり,血管内を遊泳するマイクロデバイスにもこれら の力が作用すると考えられる.
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2.2.1 Magnus lift force
流体中で回転する円柱や球に作用する力.
Fig. 2.4のような流速Uの一様流中において,一定の角速度Ωで回転してい
る円柱が静止している場合を考える.円柱表面で滑り速度がないと仮定する と,円柱上部と比較して,円柱底部の流速は小さくなる.このときベルヌーイ の定理より,圧力は円柱上部よりも底部で大きくなる.その結果,円柱には上 向きの揚力FLiftが作用する.円柱に作用する揚力の単位長さ当たりの大きさは 式 (2.2.1) のようになる (36) .
𝐹𝐿𝑖𝑓𝑡
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ = 𝜋𝜌𝑚𝑑𝑈⃗⃗ × 𝛺⃗ (2.2.1)
流体中で回転する剛体球も同様に,圧力差による揚力が発生する.この揚力は Magnus lift forceと呼ばれる(37).
𝐹𝐿𝑖𝑓𝑡
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ = 1
8𝜋𝜌𝑚𝑑3𝑈⃗⃗ × 𝛺⃗ (2.2.2)
球が静止ではなく,流体中を𝑣⃗⃗⃗⃗ 𝑝で平行移動する場合,𝑈⃗⃗ は相対速度(𝑣⃗⃗⃗⃗ − 𝑣𝑓 ⃗⃗⃗⃗ )𝑝 で 置き換えることができる.
𝐹𝐿𝑖𝑓𝑡
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ =1
8𝜋𝜌𝑚𝑑3(𝑣⃗⃗⃗⃗ − 𝑣𝑓 ⃗⃗⃗⃗ ) × 𝛺⃗ 𝑝 (2.2.3)
Magnus lift forceが作用する方向は,相対速度と回転軸のベクトルによって定義
される平面に垂直である.球体が𝛺⃗⃗⃗⃗ 𝑠で回転する場合,角速度ベクトル𝛺⃗ は,流 体と球の間の相対回転速度で置き換えられる.
𝛺⃗ = 𝛺⃗⃗⃗⃗ − 0.5∇ × 𝑣𝑠 ⃗⃗⃗⃗ 𝑓 (2.2.4) その結果,Magnus lift forceは以下のようになる.
𝐹𝑀𝑎𝑔
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ =1
8𝜋𝜌𝑚𝑑3(𝑣⃗⃗⃗⃗ − 𝑣𝑓 ⃗⃗⃗⃗ ) × (𝛺𝑝 ⃗⃗⃗⃗ − 0.5∇ × 𝑣𝑠 ⃗⃗⃗⃗ ) 𝑓 (2.2.5)
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Fig. 2.4 Magnus lift force
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2.2.2 Saffman lift force, Shear gradient lift force
流路内に速度勾配が存在し,流体中を移動する球との間に速度差がある場 合,球には流れとは垂直な方向に揚力が作用する.この揚力はせん断速度によ って分類され,Fig. 2.5のような単純せん断速度場においてはSaffman lift force が,Fig. 2.6のような放物線速度分布においてはShear gradient lift forceが作用す る.
Saffman lift force(38)
単純せん断速度場において球形粒子に作用する流体力で,レイノルズ数が小 さく対流項が無視できるストークス流れでは式(2.2.6)の揚力が作用する.
𝐹𝑆𝑎𝑓𝑓
⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ = 1.61√𝜇𝜌𝑓𝑑2(𝑣⃗⃗⃗⃗ × 𝑣𝑓 ⃗⃗⃗⃗ ) × 𝜔𝑝 ⃗⃗⃗⃗ 𝑟
√|𝜔⃗⃗⃗⃗ |𝑟 (2.2.6)
Fig. 2.5 Saffman lift force
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Shear gradient lift force
放物線速度の場合,流体と球の間の相対速度には非対称性が発生し,壁面側 の流速が大きくなり,圧力が低下する.これによる壁面方向へ向かう揚力が発 生する.この揚力は,壁から離れる方向に作用するWall effectと釣り合うま で,球を壁面方向に移動させる(39),(40).
Fig. 2.6 Shear gradient lift force
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2.2.3 Wall effect (41)
一般に,流体中の物体に対する壁の影響は,流れに対して平行と垂直の両方 向の物体の動きの減衰と,ならびに垂直方向の移動運動が存在する.ここで は,物体を壁面から遠ざける移動運動について記述する.
粒子径が流路径よりはるかに小さい場合,粒子は主に単一の壁の影響を受ける (Fig. 2.7).球体が壁面に向かって移動すると,速度が低下する.これは,抗力 係数の増加に相当する.壁面へ向かう,クリープ流中の球体の抗力係数に対す る一次補正は以下のようになる(42).
𝐹𝑊𝑎𝑙𝑙 = 3𝜋𝜇𝑓𝑑𝑝𝑣𝑝,𝑊𝑎𝑙𝑙𝑓 (2.2.6) 𝑓 = sinh𝜃𝑤∑ 𝑛(𝑛+1)
(2𝑛−1)(2𝑛+3)× [ 2𝑠𝑖𝑛ℎ[(2𝑛+1)𝜃𝑤+(2𝑛+1)sinh (2𝜃𝑤)]
4𝑠𝑖𝑛ℎ2[(𝑛+0.5)𝜃𝑤]−(2𝑛−1)2𝑠𝑖𝑛ℎ2(𝜃𝑤)− 1]
∞𝑛=1 (2.2.7)
ここで,𝜃𝑤は,球体中心から壁面までの距離𝑙𝑤と粒子径𝑑𝑝の比の関数である.
式 より,球体が壁面に近づくと作用する抗力が著しく増加することを示して いる.
また,球体が壁面に平行に速度vpで静止流体中を移動している場合,壁から の揚力によって球体は式 の速度で壁から離れる(無次元距離d*≪1,d*= ρ𝑓l𝑤v𝑝/μ)(43)(44).
𝑣𝑝,𝑤𝑎𝑙𝑙 = 3
64𝑅𝑒𝑠𝑣𝑝,𝑝𝑎𝑟𝑎{1 −11
32𝑑∗2+ ⋯ } (2.2.8)
ここで,Resは粒子速度と粒子径によって定義されるレイノルズ数で,Res=
ρ𝑓𝑑v𝑝/𝜇である.これをさらに単純化したものが式(2.2.9)であり,これより球体 の速度は,壁面近傍において一定であることを示している.そして,これは CherukatとMcLaughlinの実験により検証された(Res=3.0まで)(45).
𝑣𝑝,𝑤𝑎𝑙𝑙 = 3
64𝑅𝑒𝑠𝑣𝑝,𝑝𝑎𝑟𝑎 (2.2.9)
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Fig. 2.7 Wall effect
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