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幼児・就学前教育改善プログラム

 「国家幼児教育計画」は,パラグアイ幼児教育改革の大きな要になっている.その中で も,現在の取り組みとして非常に大きな位置を占めているのぶ,「幼児・就学前教育改善プ ログラム(Prog臓鵬a de〕M匂oramiento護da E穫uc罐艇6n l㎡〔錘泌y㎞置搬)2004一露608」

である。なぜなら,実際に予算を伴った活動として改革の中心となって現れているからで

ある。

 このプログラムは,幼児教育の質の向上を貝的に,パラグアイ政府が米州二三銀行から の借款により実施している大プロジェクトである蝕.

 この改善プ撲グラムの5つの醤標として,就学蔚の一般化,幼児教育分聾の人材の知識・

技術の改善,0−4歳の子どものケアの質の改善,規範とカジキュラムの実践化と適正化,6 歳未満の子どもの総合的発達における家族と共同体の教育機能の強化,以上が挙げられて いる。このプログラムは4つの構成要素に分けられ取蓼組みがなされている.まず購成 要素1.」は,教育省の政策形成と制度的強化である.この要素の擾的としては,幼児・就 学前教育のための政策の作成を支援することと,情報システムと祉会コミュニケーション を発達させることとなっている。半田要素2.」としては,人材(教員)の概修・養戒で,

その劉的は幼児・就学前教育レベルの教員の技術・知識の質の改善である.購成要素3.」

は就学前教育における教育提供の改善であり,その員的は質を伴った公平な提供を保証し ながら,就学前教育の就学率の普及,一般化である。門門要素4.」は,乳幼児期のノン・

フォーマル形式のケアである。この目的は,5歳未満の子どもの保育において,ノン・フ ォーマルの総合的モデルの多様化と有効化を通して,乳幼児期の発達に向けた,公共政策 の導入を推進するように指導することである.

 改善プログラムを具体的に推進するために,教育省の内外に7っのチーム㈱が編成され ている。その7つとは,①阿児および就学前教育の韻度的・規範的枠組み(チーム)」(融6段 Nom隻a伽。 Inis鹿UC10℃戯de Ia E伽ca面駐1漉楓yP鵬8CO㎞),②「現場レベルでの教育 革新開発(チーム)」(De8a㎜恥de I㎜ova歯抽eεe虚u{滋ivo eu e13u嚢a),⑳「(現職)教 員の養成・研修チーム(Bomaci加D㏄e蜘e鍛Se㎡伽)」,④「家族一学校間の関係強化(チ ーム)」(:Fo漁㎞曲疑艶de la Relaci6簸Fa雛澁a−Esc騒ela),国家教育プロセス評緬櫃度

(SN匡PE)㈱による⑤「就学前教育の教育的質の評価(チーム)」(療aluぬ6n de la麟面虚 educ段tive del p聡es㊤01ar), SNNA内に⑥「ノン・フォーマル保育(チーム)」(Ate面6盤no j硬皿al a lap蝕ra h血随cia),教員養成局内に⑦門門教育の教員養成(チーム)墨

趣α憩ac沁雄IE㎏極de dooentes)である㈱。

 幼児教育局職員の話によると㈱,それぞれのチームに指定モデル校ぶあ弩,チームのメ ンバーが定期的(およそ月に1度の翻合で)に訪問,研修,モニタリングを実施している という。露004年から2008年まで各年度計画が立てられており,その年によって研修等の 焦点化される県(1年で数県が選ばれ,その県の教員全員が対象で研修が行われたり,一定

数の指定モデル校のみに集中的に研修・評価などをしたりする等々)や,焦点課題が設定 される。例えば2007年のテーマは,教育革新チームは「読み書き,算数iであり,養成・

研修チームは「魑魅連携」である。また⑦の教員養成チームでは,2種類の資格のない現役 教員に対して,資格取得のための研修を行っている。1つは,高卒の教員のための『職業 化(pm蝕io臓1並a磁6h)」研修で,もう1つは初等教育の教員資格者のための「専門化

(e8p曲ci60)」研修である。以上のように教育省は,有資格・無資格にかかわらず,現 職教員に対する養成・研修を様々な方向から実施している。つまり.前節の最後で論じた 問題点でもある「教員の質」には,かなり力を入れて取り組んでいると言える。

 これらの予算配分は,「構成要素1.」から順番に,190万ドル,270万ドル,1,670万ド ル,100万ドル㈱となってもり,「構成要素3.」の取り組みがとりわけ重要視されているこ とが窺える。この中にはインフラと教室の設備,教具や教員の養成・研修にかかる費用が 含まれている。実際に「改善プログラム技術資料」働によれば,5年間(200←2008)で

写真3絵本(グアラニー語のものもある) 写真4奮布されたボールで遊ぶ教員とテ    撮影日=2007年8月24日      クニコ(F校)撮影日:2007年8月288

1,000の教室(保育室)の新設と,500の既存の教室の改築ωが挙げられている。

また,同資料の中で,全ての就学前教育施設に,教材の基礎セット「積み木.人形劇セッ ト,ボール,数字カード,文字カード,人形2体,絵本20冊」を配布と挙げられている慨  この改革プログラムの中で,現場の教員にとって最も重要で,具体的に関わりのあるも のは,新しいカリキュラム,そして『幼児教育要領』である。改革開始直後の1995年に.

この『幼児教育要領』以前にも『La Refbma Edu麟血va en el aula−1)6㎞eamjen㎞l Cu舳e8団1・EEB 1995(現場からの教育改革,幼児・初等教育用カリキュラム指針)』

が出されているが,学校基礎教育(EEB)のごく一部として,前置き的に(合計8ベージ の概要)なぞらえられているに過ぎない。その一r方で.『幼児教育要領』は,幼児教育独自 のもので,A4判の38ページにおよび,幼児教育の基本的な枠組みをまとめている。その

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写真5 『(斬)幼泥教育妻領』

内容は,「教育の目的,歴史,基本理念,教育原理,段階,カリキュラム構成,総合指導法 則」から成り立った,今後の新しいパラグアイの幼児教育の姿勢を示す画期的なものであ

る。「権利の主体として子ども」が中心酌な基本理念となっている。

 またカリキュラム構成としては,学びのための3つの経験領域が掲げられている。①人 格的・社会的発達,②思考,表現,コミュニケーション,③自然・社会・文化的環境との つながり(関係)である。それぞれの中に「アイデンティティ,自律,共生,健康」「話し 言葉・書き言葉,芸術的表現,算数」,「自然環境,社会・文化的環境」の分野に分けられ ている。(この領域は写真5右に,象徴的なイラストで示されている)この3つの領域がそ れぞれ楕円で示され,3つが重なる中心部分に子どものイラストが描かれている。そして3 領域の周囲には「子どもの社会的・文化的状況」とされ,中心は「学びの主体的な主人公

としての子ども」と書かれている。そしてこの図の下に「3つの領域は同様の重要性を持 ち,子どもの愛情的,情緒的,社会的発達を基礎とした,総合的知識(形成)を員指す」

としている。

 この改革プログラムは,国家政策として借款を抱え,ある意味では未来への犠牲も抱え,

大いなる野望を含んだ,国の未来を賭けた大プロジェクトであるとも言える。そのため,

国家としても,かなり具体的な経済指標を伴った目標が掲げられている。まず「プログラ ム終了時における教育的利益」としては,「就学前教育の粗就学率を100%に,純就学率を 90%に。小学1年生の留年率を8%減少。インフラの活用による大きな効率性。クラスの平 均生徒数を改善し,人的資源の最適化を図る」が挙げられている。また「量的な経済的利 益」としては,2008年以降の,「年180〜330万ドルの費用の節約。人的資源(教員)の有 効な活用による費用の節約(年240万ドル)」と示されている幅

 以上のような取り組みの中で,現在パラグアイの幼児教育関係者たちは(当然,パラグ アイ国民全体の未来への「投資」ともなっているわけだが),「改革」という嵐の中を突き 進んで行っているのである。この理想は改革の中で,現場レベルでどのように影響してい るのだろうか,それは次章に譲っていくことにしよう。

〔註〕 第2章パラダアイの幼児教育改華

第1節 国際化時代におけるパラグアイの幼児教育法政

(ゆ奥山恭子「子どもに関わる法制度と実態一人権条約・各州憲法・民法滋奥由恭子・角瑚  灘樹編『ラテンアメリカ 子どもと社会』新評論,}§94年,p24露

戯文部科学省HP h::〃 搬ext o融《恥§o㎡00むBO3h伽⑫◎07年鴛鴛蛤鐸にア

クセス)より.この取り組みはユネスコが取紛まとめの国際機開となってお蓼,ユニセフ.

世界論叢9鰭獺織が醗含む綱政府機臨醗6等も鞭的鵬加て・意

紛奥由,前掲書,ρ244

⑳江原裕美fラテンアメリカにおける国際教育協力の現駿と課題」,奮姥鞍載育学研究第誕

 号』2005, 茎}p.53−55

紛うテンアメ批力を㌦つでぐぐることめ問題もあろう瀞.それなりの意義も見出せると思わ れる、まずは斉藤が述べているように,にの地域を1つの文化圏として威堂させている 黄通の文化的要素3があるからである。斉藤はそれを嗜藷的共通性,宗教酌基盤,独得 の伝統的な価値体系と行動様式の共有」として挙げているσラテンア丁壮力文化麹⑳毅  育研究」『比較教育学研究』第27号,20◎1,p.器・認).この文化的類継牲を±台に.江

原もこの地域は『共通する歴史」を有しており,教育にもf業通の問題を抱えていること」

 を指摘している(江原裕美「南米5力国の教育法下鞍一比較の有効駐ゐ董.蹄京法学墨三 号,2004,ρp.45・46)またトレスも「ラテンア二野勇の公教育は覇ら掴こ幽雛点におい  てかなりの要素を共有」しているとし,「多様性の中の共通性が20世紀の標徴であろう」

 と述べているくカルロスA.トレス「20世紀のラテンアメ夢力の教育一その威功と失臨  『教育社会学研究ぶ第?8集,2◎06,三二健二訳).

㈲斉藤泰雄「ラテンアメリカにおける基礎教育の問題と敗革閣題」贈立教育磯骨鋸要避.

 129号,2000,p罫110−113

(7)斉藤泰雄「ラテンアメリカにおける基礎教育の開発20年の成果と課題纏国宣敦育研究

 所糸己要目, 13王筆}, 2◎02, pp.100−101

愈斉藤,前掲論文ヨ2000(ρp.106−108)と,200頭整μ玉00−101)ともに触れられている極 働斉藤,前掲論文,£000,罫1◎5

㈱ただし,このr義務的」という表現および定義には曖昧さぶ残る。原文では,鐸趨

 Prees¢01磯_(絡)_鋤ipc1孤ido en l段edu㈱{面駐鮒顧。墨躍三二綬to撫..儲)…♂ 《傍隷筆

 者)という未来形が使用されている(この訳は,三下裕美他三三稗 パラダアイ共魂  国の教育基本法(全訳)」『帝京法学雲22(1)号二号36号),帝京大学法学会.馨趣融1によ  るもの)。盆oa3−5年当時,筆者が何度か教育省職員にも就学前教育が義務で毒る⑳かど  うか尋ねたが,人によって答えが違っており,明快な返答は得られたことぶ無かっ艶。

 一方,服CA(前掲書。現地識ンサルタントとの共濁調査によるもの)鈴巻末資群縦録  A)によれば,儀務教育」と明示してある、一般醸こは国際機開などの贅料で絃儀務

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