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パラグアイにおける幼児教育改革     の現状

第1節フィールド・ワークから見えるもの

 教育改革や新プログラムの意味は,ひとつの国にとって決して小さくはない。それは経 済(パラグアイの二丁プログラム」は国家の大借款によるものである)や二会状混に深

く関与しているからである。しかしながら教育はもう一方で,人間を形成するための.個 人の幸せを追求するための営みでもある。子どもの権利,権利の主体,幸せ,最善の利益鱒 を尊重する改革とその実践化が求められるのである。

 筆者は20◎7年夏に,パラグアイ幼児教育のフィールド・ワークを実施した.それは,前 章までで見てきた幼児教育改革が「改善プログラム」後半段階において,現場レベルでど のように遂行,継続されているのか,また,どのような成果や課題,葛藤誤あるのかを,

確かめてみるためであった。フィールド・ワークの概要は次の通りである.

1)内容:

  ①幼児教育施設(主に就学前教育)の見学・観察。教員へのアンケート,ミニ・イ    ンタヴュー。

  ②幼児教育技術指導員(地方テクニコ)へのアンケート,ミニ・インタヴュー。

  ③幼児教育局(DED局長,職員等へのミニ・インタヴュー   ④教員養成校αFD)の授業観察.

  ⑤日系の幼稚園2ヵ所の見学・観察。教員へのミニ・インタビュー

2)時期:200?年8月22日〜9月6霞。

3)場所:幼児教育施設,教育省・幼児教育局(D環).教員養成校(IFD), 貝系幼稚園

実際のサンプル例として,便宜上,学校く施設)名,教員名,テクニコ名を,以下のよ うに名付けた。

一幼児教育施設:A校,B校, C校, D校, E校, F校, G校, H校,1校,」校, K校         (日系:S校,T校)

一教員名(上記の施設に対応):a,b,¢,遭, e,£g,瓦i,」, k  合計11名          (このうち,iのみが男性教員で,他の10人はすべて女性教員である)

一テクニコ名通,血,n, o, p, q,■ 二丁7名(全て女性)

一教員養成校αFD):Y校

 フィールド・ワークは上記①を中心に実施した。そのため,筆者が観察したパラグアイ の幼児教育旛設11ヵ所についての詳細を,下記のように示しておく。

 一種類(段階)=就学前教育10ヶ所,幼児園(3〜5歳児渉在園する施設の,主に4歳児

        を観察)1ヶ所⑬校)

 一セクター:公立9ヵ所(うち1ヵ所は厚生省内の施設の就学前教育),

     私立補助2ヵ所(B・E校。うち8校は宗教系の学校)

一場所く地域・県名):都市部11力齎鋤,農村部0ゑ翫。首都アスンシオン①.醗.

         セントラル県(A,H:,互,よ憩,ほルディジェーラ渠鰺,◎,

         コロネル・オビエド県伊.(藁)。

一時問帯:午前の部4ヵ所(D,G,1, K校).午後の部?ヵ所《A, B. C. E,筑H.

    」校) 〔1校につき,約3時間〜$時問半の観察〕

一クラスの子ども数:22.7人(11タラスの平均)

一担任数:1人担任が8ヵ所。2人担任は£ヵ所《F,G)だった。 A校にはアシスタン       トぶ1回目た、(AF,Gの子ども数はそれぞれ,30,33.欝人だった》

 パラグアイの幼児教育はそのほとんどが,特にフォーマル教育においては,午前⑳部と 午後の部に分かれている.公立では,そのほとんど淋学校墓礎教育の徳設《詞敷地内)の 中にあり,一部では教室も共用されている臨時鶏帯は,2006年まで3時購録育であった が,黎0◎7年2月に省令(N{L22449106)により4時潤保育と定められた。ただし,2の07年 8月現在においてはまだ移行段階であるため,筆者の見学した幼稚園では大部労瀞3時糊〜

3時間半の保育ぶ実施されていた.2008年からは,全ての幼稚國において4時霧保育ぶ嶽 されるように義務付けられる予定である.筆者の訪悶した時,それに反回している教員勇 話は数力衝で闘かれた.理由としては主に,保育の下平時間平なくなることと.子どもの 体力が持たない(幼稚園での4時聞の授業は長すぎる》,という考えぶ多いよう回った、

 見学した幼児教育施設においては,様々な共通部分三見られた.彪とえば,一戸の保育 の流れとしては,内容的には主に下記のような活動と時問子分になっている。《現在3時購

〜3時間半の保育時間。活動の時間,順番は学校・園によって多少変容渉ある)

 一1臼の始まりの集まり(目時,天気,艮常的な会話)15〜30分,

 一自由遊びぐ休憩,㎜eo④,おやつの後ぶ多い)野一40分,

 一おやつ1◎曙。分

 一主要な活動(読み書きと製作が中心)30分〜60分,

 一机の上で何種類かの決まった遊び〔全員が集まる憲で.括動の後〕蜷〜雛分,

 一休息(机の上で頭をふせる)5分

 一テーマに沿った「お話」を聞く住要な活動に含まれること渉多い):1{ト舗分.

 一身体・リズム・運動的な遊び0〜30分,

 一丁・絵本10塗0分

 *最後の3項職こついては,その学校によって全く実徳されていないところもある。

共通項の申でも,パラグアイの幼児教育の特徴と思われるもの一つずつを緬かく見てい くことにしよう。まず,冒を引くのは(おそらく『日本的」観点から言えば.縫い」とい う意味において)f宗教」的部分であろうく90%ぶカト夢ックであるこの国にとっては.ご

写真1 初等敦青と併設された就学前施設1

(撮影日=2007年8月28日)

く日常的なのかもしれないが)。つまり「おやつ」

 (基本的に,学校や園で食事はしない)の前の  「お祈り」である。これは公立・私立に関係な くほぼ100%行われていた銚また国歌(これは 主に,小学校との合同の集会において)や,旗 の歌,宗教的な歌が歌われている学校も数ヵ所

あった。

 次に「制服」に関しては,全ヵ所で「ある」

という答えだった(教員もほとんどがあるよう だった)。ただし,そのうち5ヵ所が「あるが,

義務ではない。子どもの家庭の経済状況によっ ては無い子もいる」との返答だった。(教員へのアンケートより)

 おやつは,どこでも各自が家庭から持参している。中身は駄菓子的なものが多い。また,

キオスクや「can㎞e」と呼ばれる,学校内にある小さな店屋(軽食・お菓子などを売って いる)に,ジュースや駄菓子を買いに行く子もかなりいる。ただし牛乳の無料配布は,そ の学校の所属県庁から配布される学校もある(テクニコによると,c8ntine力撫い所は特に そうである,という話である)。

 二二国語教育,あるいは母国語の尊重に関しては,観察したクラスには大抵,母国語が グァラニー語である子どもが数人いるが,担任教員は,とくに大きな問題とは感じていな いようであった(インタビューより)。クラス全体ではスペイン語による会話,授業だが,

最初は理解できなくても,教員がスペイン語で会話,説明した後に,必要に応じてグァラ ニー語で補足している。また,その子がグァラニー語で話しかけてきた時には同じように 返す,などすることにより,徐々に理解できるようになるし,阿児もグァラニー語も理解 できるようになる,というのが大半の教員の見解であった。また(観察の中でもしばしば 見られたのだが),意識的にグァラニー語を保育の一部に取り入れている授業内容や時間帯 もあった⑧。例えば,絵本,歌,リズム遊びの時,などである。

 「障害」児に関しては,観察した学校には,多少の「問題」咽難」を抱える子どもはい たようだが,診断が下されているような「障害」児はいなかった。しかし教員とのインタ

ビューの中では,障害児が入ってくる年度もあり,拒否はしないが加配も無いのでそのと きはかなり大変だということであった。

 保育の内容面で目を引くのは,読み書きを中心とした「知識」教育が占める割合が非常 に高いということである。読み書きに加えて何かを学ぶという形の「知識・認識」的部分 が多い。上記の一日の保育の流れを見ても,保育時間の3分の1〜半分近い時間が使用され ている。日本の保育内容と大きく違うところであろう輪その上で室内の装飾に目を転じて みると,どこの学校も装飾の内容,形式は非常に類似している。一般的に言えることはま ず,絵と文宇の組み合わせによるものがほとんどで,アルファベット,31までの数宇,月・

曜日の名前,天気,季節,出席表(自分の名前),等が必ずといっていいほど貼られている ことである。これらの大部分は教師の手によるものか,何かの雑誌や資料から取ってきた もの,と見られる⑧。子どもの手によるものはそれほど無く,1スペース(たいていドア1,

2枚分)に子どもの作品(その時期に子どもが描いたものと見られる,何かのテーマに沿っ たもの)が展示されている程度のところが多かった。これらは当然ながら,「tra㎞巾jと呼 ばれる子どもの「作品集」とも連動しており,そこでも文字・数字(読み書きに関連する)

や「認知」的な製作(図形,季節,… )が中心となっている。これに対して,「㎜」

と呼ばれ,る休憩時間には,子どもが自由気ままに遊べ,その表情も,いわゆる「tm㎞亟。」

の時間とは対照的であり,のびのびとしている。つまりは,自由に遊べる時間と,読み書 き,製作を中心とした「授業j的な「勉強」時間とは,一線を画しており,全く違うもの であるという印象が持たれる。

碧 ノ豊慌轡

r・パ舗『

  i唖暢し罵圏

・〆r触触 1

   、   鳥

写真2お絵描き(机の上にもアルファベットが  写真3子どもの作品(粘土で文宇を表し 貼られている)翼校.撮影日:2007年8月28日  たもの)」校 撮影日:2007年8月31日

 室内にある教材・遊具については,前章で示したように,2006年に教育省からかなりの 教材が配布されたようで,以前に比べると,格段に増えていた。特に,絵本㊥と,子どもが その上に乗って遊べるボールは,その汚れ具合から,よく使われている印象を持った。た

写真4外部講靡による体責の掻桑(A校)

   撮影日:2007年8月22日

だし教員によっては,どこかにしまってお くなど,使用方法を良く理解していない者 もいるということであったωb

 一方で,観察した11ヵ所のうちでも,個 別的な取り組みや特徴的なものが焼点か見

られた。まずは,担任以外の外部講師によ るどちらも約30分ずつであった。A校で は他に「ダンス」の授業もあるという話で あった。講師に対しては Rubro ωがな いので,公立のA校では保護者たちが授業

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