第 4 章 低ソニックブーム設計技術実証試験へ向けた軸対称供試体のブーム解析
4.2 計算手法と計算条件
計算時間節約のために左右対象流れ (横滑りなし) を仮定した.はじめに,供試体の JAXA より提供された供 試体のSTLファイルから半裁モデルを作成した.その後,非構造格子生成ツールであるMEGG3D (Mixed-Element Grid Generator in 3 Dimensions) [26−29] を用いて図4.2と図4.3のような計算格子を作成した.計算格子は機体近 傍および機体下方の格子間隔を細分化し,遠方場圧力波形推算に用いる近傍場圧力波形を可能な限り詳細に捉え られるようにした.また,外部境界下面は,名古屋大学において行われるD-SEND#1供試体モデルを用いたバリ スティックレンジ試験の試験結果との比較を行うことを想定し,壁面を想定した.CFD解析には東北大学で開発 された3次元非構造圧縮性流体ソルバーであるTAS (Tohoku University Aerodynamic Simulation) code [30−33]を用 いて,近傍場圧力波形を算出した.本手法では,非構造格子上でセル節点有限体積法を用いて,支配方程式であ る 3 次元圧縮性 Euler 方程式を離散化して解いた.さらに得られた近傍場圧力波形データに波形パラメータ法
第 章 低ソニックブーム設計技術実証試験へ向けた軸対称供試体のブーム解析 背景
現在,宇宙航空研究開発機構 では,静粛超音速輸送機 の実現に向けて研究開発が行われてい る.その研究の一つとして,
プロジェクトが進行中である.このプロジェクトは で問題となるソニックブームを半減させるための設計技 術が適用された無人無推力小型実験機を,気球を用いて上空約 まで上昇させる.その後,分離・落下さ せ,落下時に発生するソニックブームを計測して,設計コンセプトの確認・実証を行うことを目的とする.プロ ジ ェ ク ト は お よ び の 二 段 階 の 試 験 か ら 構 成 さ れ , で は 軸 対 称 供 試 体 を ,
では非軸対称揚力供試体を落下させる.
では図 に示すような二種類の軸対称供試体を使用する.低ソニックブーム設計技術が適用され ておらず 型の圧力波形を発生する供試体 と,低ソニックブーム設計技術が適用された 供試体 である.この試験は の予備試験として位置づけられており,計測点に おいて 型波形と低ブーム波形を明確に識別できることが重要となる.供試体の設計マッハ数は ∞ である が,実際の試験では ∞ 付近で発生するブームを計測されることが予想されている.また計測は係留気球を 使用して空中ブーム計測を行うが,その計測位置は 型波形と低ブーム波形を明確に識別できる位置である必要 があり,様々な位置が検討されている.しかし,供試体の飛行マッハ数や,計測位置が変化した場合の解析は十 分に行われていないのが現状である.
本研究では, で使用される軸対称供試体から発生するソニックブームを数値計算により解析し,飛 行マッハ数および計測位置が変化した場合にも計測点において, および 各々から発生するブーム波 形を識別できるか検証を行った.
図 供試体形状
計算手法と計算条件
計算時間節約のために左右対象流れ 横滑りなし を仮定した.はじめに,供試体の より提供された供 試体の ファイルから半裁モデルを作成した.その後,非構造格子生成ツールである
− を用いて図 と図 のような計算格子を作成した.計算格子は機体近 傍および機体下方の格子間隔を細分化し,遠方場圧力波形推算に用いる近傍場圧力波形を可能な限り詳細に捉え られるようにした.また,外部境界下面は,名古屋大学において行われる 供試体モデルを用いたバリ スティックレンジ試験の試験結果との比較を行うことを想定し,壁面を想定した. 解析には東北大学で開発
された 次元非構造圧縮性流体ソルバーである − を用
いて,近傍場圧力波形を算出した.本手法では,非構造格子上でセル節点有限体積法を用いて,支配方程式であ る 次元圧縮性 方程式を離散化して解いた.さらに得られた近傍場圧力波形データに波形パラメータ法
[11,12] を適用することで,遠方場圧力波形を推算し,ソニックブームの評価を行った.
供試体の設計マッハ数がM∞ = 1.4であること,計測されるブームが発生するときの飛行マッハ数がM∞ = 1.7付 近と予想されていることから,飛行マッハ数1.4 ≦ M∞ ≦ 1.7の範囲において0.1刻みで飛行マッハ数を変化させ,
各マッハ数における近傍場圧力波形を推算した.
D-SEND#1試験では,図4.4に示すように係留気球による空中ブーム計測を行う.係留気球の高度は1.5 [km] で
ある.供試体落下地点からの距離Rは,現在R = 5,10,15 [km] の位置で検討されている.本研究ではこれらの 条件に合わせて,各々のRの位置での遠方場圧力波形を推算した.なお,供試体はJAXAが行った落下解析から 図4.5のような速度履歴をたどることが予測されているが,本研究では設計マッハ数がM∞ = 1.4および,計測す るブーム発生時の予測マッハ数M∞ = 1.7に注目し,供試体がこれらの飛行マッハ数で定常落下すると仮定し,遠 方場圧力波形を推算した.
(a) NWM (b) LBM 図4.2 各供試体の計算格子 (正面図)
(a) NWM (b) LBM 図4.3 各供試体の計算格子 (側面図)
図4.4 遠方場圧力波形推算条件概要図
図4.5 JAXAによる供試体落下解析結果
(両供試体とも同じ速度履歴をとるように設計されている)
0 10 20 30
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
Mach
Altitude [km]
NWM700kg LBM630kg
Prear
∆ x
0 . 6
d e 1.8 deg.
1.7 deg.
R H
Blimp @ H = 1.5km
図 遠方場圧力波形推算条件概要図
図 による供試体落下解析結果
両供試体とも同じ速度履歴をとるように設計されている