• 検索結果がありません。

31.01 米国国務省が2011年4月8日に発表したUSSDレポート2010には、ビルマにお ける無国籍者の現状について、以下の記載がある。

「法の規定によれば、両親ともミャンマー国籍である場合には、誰にでもミャン マーの市民権が認められる。だが現実には、ミャンマー政府はこの法律や政策を 執行しておらず、無国籍の人々には無差別に国籍を獲得する機会がない」

「ミャンマー国籍を取得する資格のある“国籍者”として、135の民族が公式に認 定されている。中国系・インド系・ベンガル系・一部のユーラシア系、さらにロ ヒンギャの人々など、国内で生まれたものの、いわゆる非先住民とされる人々は、

この“国籍者”のリストには含まれていない。そのため、非先住であるとの理由 から、完全な市民権を認められていない。そうした人々の中でも、イスラム教徒 であるロヒンギャの人々が最悪の辛酸を舐めており、ロヒンギャの人々はほぼ全 員が、市民権による利益をすべて拒否されている」 [7a] (セクション2d)

「信教の自由」および「民族グループ」の項も参照。

31.02 国連人権理事会は2010年3月10日付で、「ミャンマーにおける人権状況に関する

特別報告者の経過報告」を公表しているが、それには次の記載がある。「ビルマ憲 法の規定は今のところビルマ市民にのみ適用されており、市民権を得るには、両 親ともにミャンマー国籍であるという極めて敷居の高い制限がある。このため、

一部の人々が無国籍になっている。ミャンマーには市民権がない人々が、723,000 人以上いるものと見られる」 [32e] (パラグラフ59)

31.03 出身国情報サービスが、英国外国・連邦省 (FCO)の在ヤンゴン(ラングーン)英

国大使館の担当役人に対して、ミャンマーでの外国人の居住と結婚の権利に関す る質問をした。2010年2月4日付のFCOからの回答書簡には、以下の記載があ った。

「ビルマ国民と結婚した外国人には、ビルマに居住する権利は認められる。だが、

市民権登録が認められることはないし、今後もないだろう(原文のまま)。 (ま たこうした外国人は、ビルマの市民IDカードである国民登録カードも取得できな い) 彼らはあくまで「ゲスト市民」として登録され、完全な市民権は認められ ない。ビルマで外国人として居住するには、同国の移民部で申請が必要になる。

国外のビルマ大使館では、この申請ができない」

「ビルマ国民同士の間での結婚がビルマ国外でなされた場合、ビルマ当局はそれ を承認する。だが、その夫婦にはビルマ大使館での登録が要求される。ビルマ国 籍の女性と外国人の結婚を、当局は認めていない。そうした夫婦の子どもには、

ビルマ市民権が認められない」 [5r]

31.04 このFCO役人が、上記に続く2010年2月10日付のEメールで明らかにしたと ころによれば、「ビルマ国籍の女性と結婚した外国人には、ビルマでの居住権が認 められない。(ビルマでの就労など、他の何らかの手法で居住権を得ない限りは)

ビルマの男性と結婚した外国人には、これが認められている」 (5s)

31.05 国連難民高等弁務官(UNHCR)のRefworld というウェブサイトに2011 年3 月 21 日にアクセスしたところ、1982年10月15日制定のビルマ市民権法の非公式 な翻訳が掲載されていた。 [11a]

ID カード

31.06 タイ・ビルマ国境コンソーシアム(TBBC)は、2005年10月に以下のように報じ

ていた。

「ビルマの法律では、成人の市民全員に国民登録IDカードを発行することになっ

ている。また、病院で生まれた新生児も全員、役所に登録することになっている。

ID カードは、長距離の移動のための切符の購入、地方への旅行でのチェックポイ ントの通過、教育を受けるなどのために必要となる。出生登録カードは、少なく ても身分証明となる。ビルマ東部での紛争の被害を受けた人々や、国内で避難し ている人々は、法的にも不安定な身分になっているが、その事実は、(調査の)回 答者の半数がIDも出生証明も所持していないという現実に現れている。調査した 人数の 44%が ID カードを所持していたが、避難中の市民の間では、この比率が 12%にまで低下する」 [23b]

31.07 USSD IRFレポート2010には、以下の記載がある。

「市民と永住者には、政府が発行した国民登録カード(NRC)の携帯が義務付け られている。これには、宗教や民族の記載がある場合が少なくない。このカード に所持者の宗教を記すべきか否かについて、一貫した基準がないように見受けら れる。市民がその他の書類、たとえばパスポートなどを申請する際にも、宗教を 記載することが義務付けられている。ただし、パスポートそのものには所持者の 宗教は記載されないが。多数の少数民族や少数宗教の人々が、NRCの取得で困難 を体験している。特に、イスラム教徒はひどい困難を強いられる」 [7b] (セクション II)

31.08 ラングーンの英国大使館からの2009年7月15日付の書簡の中で、ある英国外国・

連邦省 (FCO)の役人がUKBA出身国情報サービスからの一連の質問に答えている。

ビルマの国民登録カード(NRC)ならびに市民権審査カード(CSC)の取得に関 する質問である。

「カードを得るための資格とは、どのようなものか?」

国民登録カードを取得するには、申請者の両親と祖父祖母がビルマ国民であるこ とが必要である。

「何歳で、市民はNRCあるいはCSCを申請するのか?」

10 歳になれば、NRCの申請ができる。10歳で発行されたNRCは、18歳になっ た時点で更新し、新しいカードに切り替えねばならない。

「申請時には、どのような書類が必要か?」

必要になる書類は、以下のとおりである。

移民と人口部の発行している申請書に、以下の各書類を添付する。

1. 出生証明書 2. 家族登録カード 3. 区当局による推薦状 4. 町当局による推薦状

5. 家系図(両親それぞれの、曾祖父・曾祖母に至るまでの家系図)

「申請は、どこでするのか?この手続きは公的なものか、それともパスポート申 請と同様に代理人を利用してもよいのか?」

自分の町の移民局で申請する。ここで、その家族登録カードが登録されているか らである。代理人を利用することは、推奨できない。これは、詐称行為が多数発 生してきたからである。

「国外からでも、たとえば英国にあるビルマ大使館からでも、カードの申請は可 能か?」

国外からは、カードの申請はできない。

「以下の各場合、どのような罰則が課せられるのか?

a) カードを所持していない、あるいは偽造カードを所持している。

b) 実際には合法的なビルマ国民ではないものが、カードを所持している」

a) NRCを所持していない者は、ビルマ国内を移動できない。

b) NRCカードを偽造した者は、7年間の服役に処される。

c) ビルマ国民でない者がカードを取得した場合も、7年間の服役に処される。

備考: NRCカードの取得には、面倒な手続きと時間がかかる。場合によっては、

1年間を要する場合さえある。特に、祖父母のいずれかが外国人登録カードを保有 している場合には、そうである。 [5t]

31.09 ビルマの英国大使館に勤務する英国外国・連邦省 (FCO)の役人が、2011年2月2 日付の書簡で ID 証明に関して記したところによれば、「まず、本大使館の理解し ているところでは、ミャンマーつまりビルマの国民が自分のパスポートを紛失し た場合、ID証明書の1つになるのが、大使館が発行したビルマのパスポートであ る。これは低品質のカラー印刷によるA4サイズの書式で、写真が貼り付けてあり、

通常のIDカードとは異なる。IDカードはこれよりもずっと小型で、ラミネートさ れたカードであり、12 歳以上のすべてのミャンマー国民がビルマ国内で移動する 場合に所持が要求される」[5o]

目次に戻る 出典資料目録に進む