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26.01 ノーベル女性のイニシアティブがビルマ女性連盟との協賛で2010年3月2日に、

ビルマの女性に対する犯罪の国際法廷を開催したが、そこでは次の報告があった。

「200,000 人を超える女性や少女たちがビルマから東南アジアの他国に売られて おり、特に中国への人身売買が多い。これは、ビルマ連邦国民連合政府(NCGUB)

による情報である。一般に、女性たちは極度の貧困や教育の欠如、自分と家族の 経済的自立手段のなさなどのため、人身売買の“商品”にされやすい」 [62a] (p7)

26.02 米国国務省が2010年6月14日に発表したTrafficking in Persons Report 2010(人 身売買レポート2010、USSD TiPレポート2010)のビルマのセクションには、以 下の記載がある。

「ビルマは人身売買の“輸出国”であり、男女それに児童が売り出されている。

特に、他国での強制労働、ならびに女性と児童の場合には強制売春に使用されて いる ・・・ ビルマ国内での人身売買も、いまだに特に深刻な懸念事項である。軍部 は児童兵士を非合法に徴用しており、今もビルマ国内での強制労働の犯罪集団の 主なものといえば、軍隊である。政府ならびに軍部が強制労働を直接に利用する という慣行が、いまだに広範に行われており、深刻な問題である。ことに、少数 民族を標的に行われている。軍部とそれ以外の政府部門の役人たちが組織的に、

インフラストラクチャーの開発や国営の農業・商業事業に男女・児童の強制労働 を利用している。軍用の荷運びにも、利用している。少数民族が暮らす国境地帯 も含め、軍隊の駐在人数が多い地域に暮らす民間人は、特に強制労働に徴用され る危険が高い」 [7d] (ビルマ)

26.03 2008年11 月7日付で女性差別撲滅委員会は、結論となる所見を発表している。

それはビルマ政府与党が人身売買に対抗する策を講じていることを賞賛するもの であったが (パラグラフ5)、以下のとおり懸念をも表明している。

「・・・ ビルマでは、女性ならびに少女の売買や性的搾取がいまだに続いており、

それに関して我々は懸念を表明する。本委員会はさらに、2005年制定の人身売買 禁止法が悪用されており、一部の罪のない人々が冤罪で逮捕された事実にも、懸 念を表明する。さらに本委員会は、国外に売られていった被害者がビルマに帰国 した場合の、国境地域での保護手続きが不適切であることにも、憂慮している。

特に、中国からの帰国の場合に、これが著しい。ミャンマー政府は同国内外への 移動の根本にある原因に対処できておらず、そのため人身売買という問題にも真 剣に対応できていない。この事実にも、憂慮している」 [32a] (パラグラフ26) 26.04 USSD TiPレポート2010には、以下の記載がある。

「ビルマ政権は、国境を越えて中国やタイに売買される性的人身売買の犠牲者が 帰国した場合に、それを保護するよう努めている。だが政府は、国内での人身売 買や国際的な強制労働用の人身売買に関しては、その犠牲者の保護のために、そ れと分かる努力を実施していない ・・・ ビルマが国際的な人身売買の防止のため に行った努力は限られたものであり、さらに蔓延している国内での人身売買の防 止のためには、これといった努力をしていない。特に、政府軍の役人や少数民族 の武装集団が、強制労働や児童兵の徴用を行っている。本報告の対象期間におい て、ビルマ政府は看板やチラシ、ビデオを使った啓蒙キャンペーンを継続してお り、国営テレビではMTV Exitキャンペーンが制作した人身売買を取り上げたドキ ュメンタリーを放送した。ビルマ政府の報告によれば、2009年には新たに人身売 買防止のための部門を3つ設立、防止対策への支出を全体で40%増大したそうで ある。本レポートの対象期間において、政府は中国ならびにタイと、人身売買に 関する了解の覚書を締結している」 [7d]

「児童」、「児童兵士」の項も参照。

26.05 このTiPレポートには、以下の記載もある。

「ビルマでは強制労働がもっとも深刻な人身売買に関する問題であると認識され ているが、当局の発表では捜査や告訴の対象となった人身売買のケースの大半で は、女性や少女が関係しており、強制結婚をさせられたり、その手前まで連れ出 されている。ビルマ政府は法律を一方的に適用し、実は恣意的に対処している。

法律はあっても、その執行則がないのである。同様に、人身売買の被害者の権利 を尊重するような、独立の司法制度がない。ビルマ政府の発表では2009年、人身 売買のケース155件を捜査し、410人の個人を告訴、88人の有罪が確定したそう である。2008年の告訴件数が発表では342件であったことからすれば、件数は増 大している。だが、こうした数値には強制的に用紙にするための誘拐12件も含ん でおり、これは国際基準では“人身売買”には当たらない。さらに法廷手続きが オープンでなく、被告人に認めらるべきプロセスを欠いている。ビルマ政府は過 去に、不定期の移住を人身売買と混同していたことで知られている。そのため、

合意による出国者やそれを援助した者たちを、処罰してしまっていた。また本レ ポートの対象期間において、警察は密輸のケースを人身売買の数値から除外する よう、いくばくかの努力をしたと発表している。また、ケースの扱いにおいても 透明性を向上させた、としている」

「にもかかわらず、警官の能力や訓練が限られており、しかも司法制度が透明性 に欠けるため、当局が発表している人身売買に関する数値すべてが本当に人身売 買のケースなのか、定かではない。汚職や説明責任の欠落がビルマにはまだ蔓延 しており、社会のあらゆる面に影を落としている」 [7d]

「司法制度」および「汚職」の項も参照。

26.06 ビルマにおける女性や児童の売買に関するさらに詳細な情報は、モン族人権財団

のレポートにある女性と子どもの権利プロジェクト(WCRP)による2010年8 月 付の報告“他に行くところがない - ビルマ南部における性的人身売買と人権侵 害の調査”のThe light of women and children in Burma(ビルマでの女性と子ども の惨劇)を参照。 [34d]

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27. 医療問題

医療処置や医薬の利用性に関する概観

27.01 2008年9月のHREIBレポートには、以下の記載がある。

「ビルマでは医療支出が大変小さく、同国のGDP(国内総生産)の0.5%程度に低 迷している。ビルマ キャンペーンUK(という団体)の推定では、2007年にビル マ政府が年間に支出した医療費は、国民一人当たり37セントに過ぎない。・・・ 同 国ではまた、医療専門職の不足にも悩んでおり、栄養不良や疾病に苦しむ国民が 広くいるにもかかわらず、その緊急のニーズに対応できる医療専門者がいない。

2007年、世界保健機構の報告によれば、ビルまでは10,000 人につき3人しか医 師がいない。看護師は4人、歯科医は0.3人、検査技師は0.4人だけである。新生 児のうち、資格ある医療関係者の付き添いで生まれるのは 68%だけである。ビル マの児童の10人に一人は、5歳の誕生日を迎える前に死亡してしまう」 [64a] (p28)

27.02 同じくHREIBレポートには、以下の記載もある。

「「ワクチン接種を行える機能がある病院やクリニックが少数しかなく、そのため にビルマでは危険な感染症が蔓延しており、多くの子どもたちがその危険にさら

されている。妊娠中の女性たちも、非衛生で危険な状態で、資格ある医療関係者 の付き添いもなしに出産するより選択がなく、母子ともに生命の危険にさらされ る。爆発性の武器類により重傷を負った子どもたちには、充分な医療施設がない ために、感染や過剰な出血、治療されないままの苦痛などが悪化し、一層の苦し みにあえぐことになっている。栄養不良や脱水症、下痢(原文は、diarrhea)その 他の容易に処置できる問題を抱えた児童たちが、(処置がなされないために)予防 できる死を迎える可能性が拡大している」 [64a] (p17)

27.03 Irrawaddyが2009年10月8日に報じたところでは、「ある政府の省の役人による 話では、病院のベッド数は100,000人あたり62である。政府の目標は、2010年 までに100,000人当たり75床である ・・・」 [26f]

27.04 同じくIrrawaddyの記事には、以下の記載がある。

「全体として、ビルマ国民は公営の施設においてすら、医療費の支払いに窮して いる。政府による医療サービスを受ける費用を払える人たちも、医療の質の劣悪 さや設備と医薬の欠乏に苦情をこぼす。あるラングーンの住民は、こう述べてい た。“入院ともなると、自分でコットンやガーゼを買っていかねばならない。公営 の病院は、何もしてくれない。医療のための経費を分かち合おう、などといった スローガンが、病院に張り出されている。公営病院であっても、何一つ無料では ない。それが実情だと、ビルマに住む人なら誰でも知っている”」 [26f]

27.05 ビルマの亡命政権であるビルマ連邦国民連合政府(NCGUB)の調査と文書部門で

ある人権文書ユニット(HRDU)では、2009年11月にビルマ人権年鑑2008を発 行したが、それには以下の記載がある。

「SPDC(ビルマの国家平和発展評議会)はビルマ全土での医療施設を改善したと 主張しているが、現実はそうではない。確かに各種民族地域や農村部に新たなク リニックが設けられており、例えば、カレン州の一部でもそうなのだが、実際に は地元の人々に対する無報酬の強制労働で建設されたものである。さらにせっか く建設した村のクリニックも、スタッフがおらず備品も支給されないため、使用 されないまま空しく建ち続けていることが多い。 ・・・ その一方、都市部では公営 病院は資金が足りず、汚職にまみれ、特に深刻な状態の患者を治療できずにいる。

民間のクリニックではそうした患者を治療できるところがあるが、その大半は高 額である。また、死亡する可能性がある患者は、費用を支払うことができても受 け入れない場合がある。自分たちの評判を落としたくないためだ。実際、2008年 2月にモン州でそうしたケースがあったという報告がある」 [51a] (p509)

「汚職」の項も参照。

27.06 パートナーズとFBR が2010年4月付で発表した“避難生活で過ごす児童期: 人

権とビルマの国内難民児童に対する国際的犯罪”というレポートには、次の記載 がある。「医療施設に医薬がないことが、あまりにも多い。ビルマでは概して、医 学治療を受けることは難しく、高価なものである」 [29a] (p34)

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