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(2)応答的会話行為に関する教:育技術の形態的手法例

 応答的会話行為の具体的事例は、19事例24箇所あり、児童の行う会話 形態により、次の3つに分類できる。それは、ア.発表的会話行為、

イ.相談的会話行為、ウ.討論的会話行為である。

ア.発表的会話行為の具体的事例は、次の5事例7箇所があげられる。

(1)S4hl 39では、儘70》次のような教師の指示により発表している。

 「指示3.A君は、どうやって見つけたのか教えてくれる」①  「指示5.発表は1人1個です。では、3つ見つけた人どうぞ」②

(2)口恥147では、《註71》次のような教師の指示により発表している。

 「指示1.「イ』の店、『加の店だというわけを説明しなさい」③

(3)整恥161では、〈k72》次のような教師の指示により発表している。

 (読み方について)「指示4.調べたことを発表して下さい」④  「発問1.朝廷は、どうして法然や親旧を弾圧したのですか」(3  名がノートを見ながら発表する)⑤

(4)S4h167では、く註73》次のような教師の指示により発表している。

 (人ロピラミッドのグラフかち)「わかることを発表しなさい」⑥

(5)整襲181では、儘74》次のような教師の指示により発表している。

 (①キャベツをつくる。②えんぴつをつくる)「発問1.②と㊤の  ちがいを説明しなさい」⑦

イ.相談的会話行為の具体的事例は、次の5事例6箇所があげちれる。

(1)S4kl 5では、くs75》次のような教師の指示により相談している。

 (車の部品について)「指示2.これらの部品を、できている材料        一59一

 でグループ分けをしなさい」①

(2)S4h17では、く■76》次のような教師の指示により相談している。

 「発問1.『四大工業地帯の工業生産額の割合』というグラフから、

 何がわかりますか。グループで考えなさい」②

(3)S4h41では、儘77》次のような教師の指示により相談している。

 「指示2.この中かち『工場』を表していると思われるものを、一  つ選びなさい。選んだ理由を. グループで考えなさい」③

(4)整勲47では、《註78》次のような教師の指示により相談している。

 (グラフについて)「指示3.班をつくて話し合いなさい」④  (なぜ15回も作るのか)「指示5.班で相談しなさい」⑤

(5)聖血60では、《註79》次のような教師の指示により相談している。

 「指示2.この古墳の大きさは、どのくちいありますか。班の人と  話し合いなさい。(およそ3分)」⑥

ウ.討論的会話行為の具体的事例は、次の9事例11箇所があげちれる。

(1》聖血26では、(註80》次のような討論がなされている。

 「発問 ペリーの乗った黒船は、太平洋を通って日本にきたのか、

 それとも大西洋まわりできたのか」について①

 「黒船に帆はついていたのか?」をめぐっての意見が対立した。②

(2)整恥64では、く註81》次のような討論がなされている。

 「発同3.公園の電気は、誰がつけるのだろう」ということに対し  て、5つの意見に分かれ、対立し、討論になった。③

(3淫雨74では、く註82》次のような討論がなされている。

 「発問1.たくさんのパンが1日でできるひみつは、何ですか」を  めぐって、機械派と協力派の論争になった。④

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(4瞳馳99では、〈ft83>次のような討論がなされている。

  「発問 この貿易船の船主はどんな階級の人だと考えちれるでしょ   う」に対して、5つの意見が出され討論となった。⑤

(5)整恥113では、くft84》次のような討論がなされている。

  「発同2.縄文人の寿命は、現代人の寿命より長いと考えちれます  か、それとも短いと考えちれますか」に対して、討論が続いた。⑥  (6)整恥119では、〈385》次のような討論がなされている。

  「発問6.大仏造りに集まった人たちは、大仏を造ちされたのです  か。それとも、自分かち造ろうと集まったのですか」に対して、子   どもたちの意見は対立して、討論になった。⑦

 (7)墾M24では、《註86》次のような討論がなされている。

  「発周2.平安貴族の食卓には、小刀があったそうです。これは何   に使ったのでしょう」に対して、3つの意見に集約された。⑧   「発問3.平安貴族と縄文人をくらべてみると、どちちが長生きだ  つたでしょうか」に対して、討論がなされた。⑨

 (8)整恥127では、儒8η次のような討論がなされている。

  (出された6つの意見に対し)「指示1.(おかしい)と思うもの   があったち、反論しなさい」との指示に基づき反論が出される。⑩  (9}S1h135では、く註88》次のような討論がなされている。

  「発周6.収入より支出が多い状態を赤字といいますが、この校長   先生の家の赤字は、この月に限ったことなのか。それとも、いつも   このように赤字なのか。どちらだと考えられますか」に対して、学   級は半分に分かれて討論を始めた。⑪

 以上のように、応答的会話行為の具体的事例は、19事例24箇所あり、

これちは全て「教師の指示・発問」を契機に生起している事例である。

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2,.応答的学習基礎行為に関する教育技術の学習方法論的特性

 本項では、前項の具体的事例をもとにして、児童に応答的学習基礎行 為を生起せしめた「教師の指示・発問」についての教育技術を考察する.

特に、教育技術としての「教師の指示・発問」が、いかなる特性を有し ているのかを明ちかにしたい。

 応答的学習基礎行為に関する教育技術は、児童の応答的記述行為に関 する教育技術と、応答的会話行為に関する教育技術に大別できる.これ らは、ともに学習内容を理解していく手段として、児童に対し基礎的な 学習行為を促すものである。

 前者の応答的記述行為に関する教育技術は、第1に、前段階において 提示された記述を視写するものと、第2に、学習内容理解の手がかりと なる情報箇所を表号的に記述するものと、第3に、学習教材に対する理 解内容を作文的に記述するものに分類できる。

 第1の前段階において提示された記述を視写するものは、表現行為の 訓練的特性を持った、応答性の低い学習行為である。例えば、公民館の 利用状況を取り上げた事例では、児童からの意見発表を教師が板書とし て、まとめたものを児童が視写している。《註89》このような板書は、発 表された意見をいかに表現するかを範示したものと解することができる。

それを視写することにより、児童は表現方法を理解していくことになる.

また、「悪人正機説」の一文を取り上げた事例では、文語形式の語句を 正確に視写している。〈ftg o>これは仮名つかいや意味内容に対する興味 を持たせているのであろう。このように臨写的記述行為は、学習理解内       一62一

容の表現行為というよりも、前段階的な記述行為であると言えよう。

 第2における学習内容理解の手がかりとなる情報箇所を表号的に記述 するものは、基礎的情報や難解語句の選択をもとに、その箇所を丸や四 角で囲んだり、下線を引いたり、矢印をつけたりする表現行為である。

例えば、人ロピラミッドを取り上げた事例で偉、「このグラフを見て、

へんだな、なぜだろうなと思うところに矢印をつけなさい」との指示を 契機にグラフに注意が向けちれ、その読み取りがなされている。儘9D

これは、児童が選択した情報に対し簡潔な覚書きとして表号的に記述す ることを求めたものである。このように表号的記述行為は、学習理解を 深めていく上での補助的機能を果たしている表現行為であると言えよう。

 第3における学習教材に対する理解内容を作文的に記述するものは、

各学習段階において、多様な目的を持って行われている表現行為である.

例えばk学習課題設定段階では、「わかったこと、思ったことなど何で もいいからノートに書きなさい」という指示がなされている.儘92》

学習展開段階では、「予想をたて、わけも一緒に書きなさい」という指 示がなされている。くftg3》学習整理段階では、学習のまとめや、《訥4》

授業の感想文を書いたりしている。くftg 5》また、応用的には情報収集の 手段として手紙を書いたりする作文的記述行為が行われている。〈ag 6>

このように作文的記述行為は、児童にとって、自分の考えをまとめたり、

記録しておくことにより、学習理解を深める応答性の高い学習行為であ ると言えよう。

 後者の応答的会話行為に関する教育技術は、第1に、教師の指示に従 って発表や説明を行うものと、第2に、教師の指示に従ってグループ内 で相談をするものと、第3に、教師の指示や発問を契機に学級内で討論 が行われるものに分類できる。

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 第1の教師の指示に従って発表や説明を行うものは、表現行為の基本 的なものであり、相談や討論の前段階的なものでもある。例えば、「社 会科がにがてな子」に対して、ノートを見ながら発表させたりしている 事例がある。儘97》これは、意見発表の際に、それが容易になるよう教 師が配慮したものであると言えよう。このような発表形態は、会話的行 為の訓練的特性を持ったものである。

 第2における教師の指示に従ってグループ内で相談をするものは、学 級内で討論をする前に、自分の考えや意見を修正したり、追加したりす ることがなされるものである。例えば、野辺山のレタスづくりを取り上 げた事例では、「この資料を見て気がついたことをノートに書きなさい」

と指示した5分後「班をつくって話し合いなさい。新しく気がついたこ とはノートに書き加えなさい」としている。く註98》この事例では、班で 相談することの積極的な意義は、自由な雰囲気での意見交換であると言 えよう。このように相談的会話行為は、学級内討論の前段階的なものと して、自由な会話ができるように配慮したものと把握することができる.

 第3における教師の指示や発同を契機に学級内で討論が行われるもの は、児童にとって学習内容に対する理解を深めるものである.特に、二 者択一的に設定された発同は、論点が明確になり、活発な学習活動を促 すものとなっている。《註99》反対に、選択肢が多くなった事例では、討 論が最終的に水掛け論になったものもある。く註100》これは、事象に対す

る基礎的な知識の有無と共に、発問の在り方を示唆していると言えよう.

 このように応答的学習基礎行為に関する教育技術は、主として児童が 学習内容に応答する手段としての学習行為を促す指示・発問である.こ れは児童が表現活動を通して、学習理解をより深める教育技術として位 置づけられる。

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