専門分野でしかつかわれない用語で専門語辞典にのっていないものは,意 外におおいようである。たとえば,つぎのような「ビビリ」をのせている辞 典はない。
(1) この場合刃先がびびってきさげを当てた跡が小さい波形の面になる ことがある。これは刃先の角度θが鋭すぎるか,厚みが薄いかまたは角 度θが大きすぎるかのいずれかによるものである。したがってこのびび りを除くためには,方向を90。かえてきさげをかけるとよい。 (『仕上げ
{/拝業法』P.50)
(2) 旋盤{悪業を行なっていると,ビピり現象といって,工作物と工具と の聞に相対的に振動数の大きな細かい振動を生ずることがあり,溺つた 表面に細かいしま模様が表われたり,切削が円滑に進行しなかったりす る。(『機械〔Msp.95)
(3) ビビリの有害なことはいうまでもないが,たとえはっきりしたビビ リがなくても,いわゆるビビリ勝手な(ビビリが起きる寸功の状態)切削 や,振動のある切削は,寿命に非常に悪い影響を与える。(『知りたい切 削の急所謹P.37)
また,「案内」ということばは,一般罵語としては人を対象とし,動作的 意味をもっているが,
(4) ジグとは,工作物に取り付けて正しく刃物を案内する道を設けた道 具であり,また案内のある刃物の取り付け道具ともいえるものである。
(『仕上げ作業法diP.7e)
(5)切り始めは左手のおや指を案内として、 右手だけで5,6回往復す ると,浅いがまっすぐなみぞがっく,これを案内にして両手で大きく切
160第5章 専門語の採集 る。(「鋳造作業法』p.209)
(6) (9) けがき針
図2−6(a)のように定規や型板などを案内として工作物にけがき線を引 くもので,工具鋼の丸棒の先端を針のようにとがらせ,一端はかぎ状に 曲げて穴のけがきに使いやすくしてある。(『機械工作法di p.14)
などの「案内」は,ものを対象とし,それ自身もの的な意味をあらわす。そ
一 一
して,「案内〜」「〜案内」という複合語はおおいが,そのうち辞典にのって いるのは半分くらいにすぎない。
(7)図4−37はこの装置で,往復台の横送り装置をはずして,所要のこう (勾)配に調整した案内板の案内片と刃物台とを連結する。(r機械工作法$
p. le7)
(8)⑥◎,②部は案内こまと案内こま取付け具です。(r現場のアイデ アSP.50)
(9) 卓子上には案内定規,滑動定規(留切定規)等がある。(r木工作業法』
p・ 84)
(10)案内装置は勢断寸法により,調節できるようになっている。この案 内装置は押切りによって取り付けられたものと,そうでないものとがあ る。(『板金工作法』P.58)
(11) ターボ型送風機は,遠心送風機の羽根車の外周に,案内羽根を設け たもので,高圧の窒気を送ることができる。(『機械工作法謬p.318)
(12) ドリルの肩がはいってしまうと案内部ができるからぐらつきはしな いが,方向をかえることができない。(『仕上げ作業法Sp.8◎)
(13) これは案内弁式と呼ばれるもので,油タンクの油がポンプによって 案内弁(バルブ)に送られ,この弁の先についているスタイラス(接触子)
がモデルに接触しつつ前後にわずかの変位をすると,案内弁からの油が 油圧シリンダに送られてならい刃物台が移動する。(『機械〔1〕』p.92)
(14) これにのこの刃を添え3〜4回のこを動かすか,または三角やすり で(b)のようにみぞを入れると,のこ刃の案内みぞができ,簡単に切り込
161 みができる。(『仕上げ作業法』p.94)
(15)普通,この装置は機械のうしろ側にあって,第2−55図のように案内 道A,およびこれにはまり込んでいる案内子Bがある。(r機械〔E )sP.86)
(16)ベッドすべり面は,往復台や心押し台の案内面になるので,きさげ 仕上げまたは研削仕上げをして平面度・平行度などの精度をよくする。
(『機械工作法thp.95)
(17)直線切断機の小形のものは,切断線に沿って置かれた案内レールの 上を移動し,切断を行なう。(聡:接法』p.127〜128)
(18) あらさは細かいほど良妊であり,自動切断,または案内輪を使絹し た場合の手動切断,案内輪なしでの手動切断などにより,それぞれ異な ってくる。(『溶:接法』p.135〜136)
(ig)鎖案内によって鎖は鎖車の中に入るが,鎖は図7.6に示すごとく,
鎖車の軸に直角の方向に引くことが肝心である。斜めに引くと鎖がはず れる場合がある。(『鋳造作業法sp.196)
(20) 工作機械は切りくずを発生するが,これがすべり案内面や軸受部に はいらないよう,機械自体でも防ぐようになっている。(y機械〔痘』p.
182)
(21)ベッド案内面上をサドルが左看に,テーブルは工作物を取り付けて サドル上を前後に移動する。(r機械工作法diP.127)
「案内〜」という複合語をのせてないのは,意味がすぐわかるから,その 必要がないからかもしれない。 しかし,「ビビリ」については,そのような 理由からではなく,俗語と考えたか,一般語と考えたか,どちらかの理由で おとしたものであろう。
これらは,上にあげたような教科書類に何度もでてくるのだから,俗語と はいえない。一方,国語辞典には「案内」も「「ビビリ」ものっておらず,一 般語でないことも,あきらかである。
べつの例をあげると,「すて〜」という表現がある。これらも専門語辞典 にのっていない。
162第5章専門語の採集
(22)工作物には,加工線以外に2〜3mmの三下をおいて同様な捨て線
をけがく。これを捨てけがきという(mu 2−153にこれを示す。)。(『仕上げ作 業法』P.61)
(23)加工物が鋳物面ですから,本肖駒にはいる前にチャックする面の捨 削りが必要です。(『段取の実際①旋削作業編』p。15)
(24) きり穴や,ねじの下穴のけがきをする場合には,その中心を出して 穴の直径に等しい円をけがくことが一般に行なわれているが,第3−33図
は,その穴の薩径よりさらに2〜3mm大きい円をけがく。この円を捨
てコンパスといい,穴あけした後,穴の位置の正・不正を知る厨安とす る。(r機械〔皿〕』p.200)(25)鋳物は冷却するとき,種々の応力を生じ,肉厚に不岡がある場合に は,割れたり変形したりすることがある。これを防ぐためには,木型に 余分な部分をつけておき,鋳物になってから取り去る。これを捨てざん といい,図7−12にその例を示す。(『機械工作法gp.295〜296)
(26)鋳造晶や鍛造晶では,捨て肉をつけて,加工中の剛性を強めたり,
局部的な硬度上昇を防いだりすることがある。(r知りたい切削の急所s
p. 153)
このように,国語辞典のがわでは,しらないために,専門語辞典のがわで は,わかりきっていて,とるにあたいしないとおもうために,どちらからも もれてしまう用語がある。機械工作法の分野から,この種のものをひろうと ともに,いくつかの特徴的な点を注記することにしたい。
これらの用語は,以下にあげるように教科書類を中心とした一一ma的な文献 からひろうことにした。隠語・俗語など特殊なものではなく,この分野で普 通につかわれているものにかぎるためである。
憲離灘灘業繍騰漏斗融業訓練繍究会蜘
v 『機械工作法』(〃 1976年)
労働省職業訓練局編『旋盤作業法』(〃 1975年)
163
〃〃〃〃〃
全国板金工業会編ge板金工作法s(全国板金工業会
ジャパンマシニスト編集部四丁知りたい切削の急所』(ジャバンマシニスト社
1969令三)
〃 『段取の実際① 旋肖弩作業編』(〃 1g70年)
〃 『現場のアイデアdi(〃 1970年)
また,すでに登録されているかどうかをチェックするためにつかった辞 典・朋語集は,つぎのとおりである。
『学術用語集 機械工学編』(1955年)
「「機械用語辞典』(コロナ社 1972年)
『和英独 機械術語大辞典』(オーム社 1974年)
『機械用語集a(H本機械学会 1975年)
『臼中機械電気工業辞典s(向陽社 1972年)
(『日漢機電工業辞典di〔北京 1969年〕の復刻)
『JIS用語集 総集編』(日本規格協会 1968年)
『JIS用語辞典璽 機械編』(H本規格協会 1978年)
『日本国語大辞典』(小学館 1972〜1976年)
これらの辞典に専門語がどの程度のっているかをしめしたのがつぎの表で ある。参考までに,国語辞典2種と和英辞典1種とをつけくわえた。どれに ももれている単語がかなりあること,見出し語をもっともよくひろっている のが中国でできた日中辞典であること,などがわかる。 (M中辞典の語数がお おいのは,編者の努力によることはもちろんだが,これがほんやくを匿的とした「こ
とば典」であるせいもあるだろう。一般の専門語(術語)辞典は,髭出し語の説明で はなくて,見出し語によってあらわされるものの説明に重点をおく。それは特殊な国
「フライス盤作業法di(〃 1975年)
『仕上げ作業法di(〃 1963年)
『鋳造作業法』(e 1959年)
『溶接法』(〃 1968年)
『機械(E)m(労働省職業訓練局 1975年)
1961年)
164 第5章 専門語の採集
語辞典ではなく,特殊な菖科事典である。)
研究社新和英大辞典 学研国語大辞典
広辞苑︵第二版︶ B本国語大辞典
JIs用語辞典機械編
JIS朋繕集総集.編
機械周語 機械衛語大辞典 機械用語辞典 学術用語集
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臼中機械電気工業辞典○○○
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(専門語の贔詞)
専門語,とくにその典型としての学術用語をあつめた辞典をみると,見繊 し語のほとんどは名詞である。「吸収」「循環..1のような動作的な概念でも,
このような名詞形でだしておけば,「吸収するJ「循環する」という動詞形を