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専門語の国際性

ドキュメント内 専門語の諸問題 (ページ 61-74)

第2章  学術用語の国際比較……一

第3節  専門語の国際性

 つけたりとして,これら各国語の物理学用語にみられる国際性についての べる。

 当然といえば当然のことだが,ヨーロッパ各国語のあいだにみられる共通 性は,かなりたかい。物理学用語65語を,何力紙語に共通の要素をふくむか

という点で分類すると,

4力国語に共通 3  

2 11

共通の要素なし

38語

9語

14語

4語

という結果になる。以下,例をあげて説明する。

(4力国語に共通)

 「大気」 atmosphere, atmosphさre, Atlnosph激e, aTMocΦepa

      第3節専門語の国際性57  「写真乳剤j phoセographic emulsion,6mulsion photographique,

  photographische Emulsion,⑳Torpa(わ四ecKa兄棚yみbc期

のように,完全におなじ要素だけからなるものが20,全体の約1/3である。

「大気」「写真乳剤」以外の18例は,ヨ本語だけをあげる。

  アルファ 分極 電歪 多形 エルゴード仮説 凝集力 ヒステリシス   方位角 干渉計 検糖計 球面取差 毛管現象 二色性 グノモン投影

  法国衰蓄電池特{生インピーダンス磁気モーメント

 また,

 P電力j electric power, puissance 61ectrique, elektrische Le圭s−

  tUng, 9neKTPHKeCKaH MOIIIHOCTb

 「輝度温度」 brightness temperature, te撚p色rature de lumina亘ce,

  Leuchttemperatur, flpxocTHafi TeMnepaTypa

のように,表現の一部だけが共懸のものが18語ある。これらは,大体,po−

werのような基本語の部分は言語ごとにちがい, electricのような,より 高級な要素が國際的なものである。「電力」「輝度温度」以外の16例は,やは

り日本語だけをあげる。

  アンペア圓数 ブリネルかたさ 第二冊子化 電子対消滅 正規方程式   インピーダンス整合 起磁力 マクロブラウン運動 面心格子 オーム   の法則 ポテンシャル障壁 爾姓イオン 正コWイド 双極放財 定常   状態 誘電余効

 このように,65語中の38語,すなわち半分以上が,全体的にか部分的にか,

4つの言語に共通の要素からなりたっているのである。

(3力国語に共通)

 ここでは,全体として一致するものと,部分的に共還なもの.との区別をつ けずに,とにかく共通性のあるもの,という形でかぞえることにする。3力 国語に共通,ということは,いいかたをかえれば,つまり1力国語だけがべ つの表現をとっているもの,ということになる。

 フランス語だけがべつ(2語)

 58 第2章 学術罵語の国際比較   調節作用  上音

  「調節作用j acc◎modation, ajustement, Akkom(Xiation, aKKoMo−

  Aau猛fi

 ドイツ語だけがべつ(4語)

  圧力中心 放射性捕獲 位相空間 ランプスケール

  F圧力中心」 center of pressure, centre de pression, Druckmit・

  telpunkt, lleHTP ILaBneHHfl  ロシア語だけがべつ(3語)

   反射角 作用量変数 比旋光度

  「反射角J  angle of reflection, angle de r6f董exion, Refiexions−

   winke1, yrOll OTpa>KeHllfi

 フランス語・ドイツ語・ロシア語が共通で英語だけがべつ,という例が1 つもないのは興味がある。

(2力匡}語に共通)

 いちばんおおいのは,英語とフランス語が共通のものである。(12語)

   剛体 白色X線 光圧 角倍率 屈折 仕事率 失透 相互作用 主応    力 うず糸 許容遷移 重力単位

  「棺互作用」 interaction, interacti◎n, Wechselw圭rkung, B3aMMo・

    り    2xeMCTBIIe

 英語とドイツ語に共通のもの(2語)

   過電圧 パッキング

  「過電:圧」 overvoltage, surtension, Uberspannung, nepeHaHpfi}Ke−

   H}le

  ドイツ語とロシア語に共通のもの(1語)

  「白色X線j white X−rays, rayons X a spectre continu, weiBe    R6ntgenstrahlen,6enoe peHTreHoBcKoe li3nyqeHHe

(まったく共通の要素がないもの)

  4力国語ともべつの表現をとっているのは,つぎの4語である。

      第3節 専門語の國際性 59  「電圧j  voltage, tension, elektrische Spannung, Hafl茎)fi》KeHue  「応力j stress, tension, Spannung, Ha叩躍>KeHIIe

 「すべb面」 slip Plane, face de glissement, Gleitebene, RAoc・

  KOCTb CXOAb>KeHI・lfi

 「翼j wing, aile, F殖gel, KPbMO

 以Mの結果を表にまとめると,つぎのようになる。ただし,

  e 一 d r 2

は,英語・ドイツ語・ロシア語に共通のものが2語であることをしめす。ほ かの例も,これにならって考えていただきたい。

f一ff∫⊥ ¶Gd︻d︷.Gd rrr

r

38

Q4312 9α14

      66

 合計が65語から1語ふえているのは,「白色X線」を,英語とフランス語,

ドィッ語とロシア語,というように,2国語に共通なものとして2度かぞえ たからである。

 2国語聞で共通度のたかいものからならべると,

英語とフランス語 英語とドイツ語 英語とロシア語

フランス語とUシア語 フランス語とドイツ語

蕉口蒙四

7 5 45語

瓢口一雀口

44 42語

五償

曇一1 4

 60第2鷲 学術用語の麟際比較

  ドイツ語とuシア語  41語

という順になる。英藷がほかの言語と共通の(つまり,国際的な)要素をおお くもっていること,とくに,おなじゲルマン語に属するドイツ語とのあいだ よりも,ロマンス語に属して系統のちがうフランス語とのあいだでの共通度 がたかいことは,注臼すべき点であろう。このことは,学術用語における国 際姓が言語本来の系統関係よりも,共通のヨーロッパ文化という,いわば

「後天的な」ものの結果であることをしめしている。

 国際的な学術用語は,ギリシャ・ラテンの語根からつくられ,自国語の基 本語いとは関係のないものであることがおおい。このことを英語のばあいに ついてみよう。ただし,こんどは65項冒の術語ではなく,これを構成してい る単語(または単語相当部分)のひとつひとつを対象とする。たとえば,

  magnetomotive force(起磁力)

のような連語・複合語は,magneto・,・motive, forceの三つの部分にわけ て,それぞれについて意味づけのありなしをみるのである。こうすれば,意 味づけは,あるかないかの2段階であって,部分的に意味づけあり,という

ものはなくなる。英語における各要素の国際性は,つぎのとおりである。

4力国語に共通

3  ,,

2  v

共通のものなし

意、味づけ  意味づけ あ  り な  し

・4ゐQUOり4 り白1001

62

QJ9編4 L−0ρ050◎ 尋一−戸0131

       s4 3s l llg

 この表からあきらかなように,意味づけのない,すなわち自国語の基本語 いとむすびついていない学術用語のおおくは,一箪,国際性がたかい,すな わち多国語間で共通性があるという長所をももっているのである。

 以.上における「国際性」とは,ヨーーロッパ4力国語の範囲におけるものだ った。この概念を,つぎに,日本語までおよぼすとどうなるか。臼本語はま

      第3節専門語の国際性61 つたく別系統の書語だから,これとヨー・ロッパ語とのあいだに共通性がみら れるとすれば,それは借用によるものである。そして,矯本の物理学がおく れて発達したために,借用はヨーUッパ語からB本語へ,という方向にかぎ

られる。つまり,日本語宙体からみれば,国際性とは外来語の問題にほかな らない。

 項自数でなく要素にわけてかんがえると,ここで問題にしている物理学用 語のうち,外来語は18で,「インピーダンス」が2度つかわれているので,

ことなり要素数としては17である。(このほか,「白色X線」の「エックス」があ るが,これは,意味づけの数をしらべたときと同様,はぶくことにする。)

 これらは,大部分,「ポテンシtiル」「インピーダンス」のように英語から きたことが発音のうえであきらかである。または,「モーメント∫オーム」の ように,英語からきたとみても,むじゅんしないものである。「イオン」「エ ルゴード」という2例だけが,発音上,英語以外(おそらくはドイツ語)から とみられるが,これらも英語にion, Ergodicという形があるので,これら の外来語をかんがえるにあたっては,いちおう英語だけを考慮:しておけばよ いであろう。

 外来語18要素は,日本語のなかでは,すべて意味づけがない。英語のなか でみても,意味づけのないものがおおい。

 4力国語に共通  3  

 2 11

 共通のものなし この表がしめすように,

意味づけ  意味づけ あ  り な  し

り御19臼

13

      日本の学術用語としてとりいれられた外来語のお おくは,原語で意味づけがなく(基本語いとむすびついておらず),しかもヨー ロッパ各国語に共通のものである。

 英語の要素119の全部を,日本語と共通(つまり,臼本語に外来語としてはい

62第2章 学術用語の国際比較

っている)かどうか,ヨーuッパ4力国語に共通かどうかという観点から分 i類すると,つぎのようになる。

      日本語  共通で       と共通   ない

  4力国語に共通    15    35   50   それ以外       3    66   69

       is iei 1 iig

 こうして,ヨーロッパ語について国際的といえる単語は,臼本語までふく めてかんがえてもやはり国際性がたかいのである。

 さて,以上,国際姓のありなしを,もっぱら意味と音声形式とがいくつも の言語にとって共通であるか,という面からみてきた。しかし,もっとほか の観点からも,この問題をながめることができる。たとえば,日本語の「ア

ンペア」は,英語のampere,フランス語のampさreなどと,意味と膏声

形式とが共通で表記形式がちがっている。英語とフランス語とのあいだで は,表記形式まで共通なので,それだけ国際姓の度あいはたかいといえる。

(ここで「共逸」というのは,もちろん近似的な意味においてである。言語体系がち がう以上,完全におなじということはありえない。)

 また,「圧力中心」と英語のcenter of pressureとドイツ諾のDruck−

mittelpunktとは,音声形式の点で(もちろん,表記形式の点でも),まったく ちがってめるが,その意味づけのしかた(「表現法」「発想法」rとらえかた」r内 部形式」などといっても,ほぼおなじことをさすだろう)は共通である。意昧づけ の共通性は,なぞり(calque,ほん訳借胴,意味借用)の結果であることがおお いだろうが,2つ以hの言語で独立に名づけたものがしぜんに一致すること もありうる。結果からこの2つのばあいを区別することは不可能で,どちら にしても国際性がます点ではおなじである。

 このように,ひろくかんがえれば,意味と音声形式以外にも,團際姓とい う観点から考慮すべき側面がある。アクレンコは「国際的語いとその研究方

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