LIGHT EMITTING DIODE
3.3 封止剤&接着剤
封止剤は、LED チップ及び金ワイヤやバンプの保護をする役割と光取出し効率を向上させる役 割を持つ。また蛍光体を保持する分散媒(バインダ)としても用いられる。
接着剤は、主に LED チップの接合を目的としている。ここでは、絶縁性接着剤に絞って説明を する。
封止剤 分散媒
接着剤 図 3.3-1 封止剤 及び 接着剤の場所
3.3.1 材料・部品の物性及び特性(性能)
LED 用封止剤および接着剤の原材料は、一般にエポキシ樹脂・シリコーン樹脂が主流である。
エポキシ樹脂・シリコーン樹脂ともに、主剤・硬化剤・充填剤・酸化防止剤・離型剤など選定で物性 は大きく異なる。さらに、白色 LED を製造する際に、蛍光体を用いるが、この蛍光体の種類によ っては封止剤との相性があることも考慮したい。また、LED チップ・リードフレーム・ケース材等 との密着性をはじめ、各々の LED パッケージに適合した材料を選定することなど、白色 LED 製品 の性能・信頼性等への影響は、この封止剤の選定が重要なポイントとなろう。主な原材料の硬化物 性を表 3.3.1-1 に示す。
表 3.3.1-1 主な原材料の物性値
項 目 エポキシ樹脂 ソフトシリコーン樹脂 ハードシリコーン樹脂 備 考
ガラス転移温度(℃) 50~160 ~-20 ~60 TMA 法
線膨張係数<Tg 以下>(10-6・K-1) 60~90 測定不可 70~160 TMA 法 線膨張係数<Tg 以上>(10-6・K-1) 130~200 150~300 150~300 TMA 法
熱伝導率 (W・m-1・K-1) 0.2 0.2 0.2 レーザーフラッシュ法
曲げ弾性率 (MPa) 2000~3500 測定不可 700~2000 JIS K6911
曲げ強度 (MPa) 60~2000 測定不可 ~60 JIS K6911
接着力<AL-AL>(MPa) 3~20 ~1 ~5 JIS K6911
吸水率<煮沸 2hr> (%) 0.3~2.0 測定不可 0.3~2.0 JIS K6911
体積抵抗率 (Ω・cm) >1015 >1015 >1015 JIS K6911
硬 度(Shore A/D) D 60~90 A 20~50 A 50~90 ASTM A/D-2240
屈折率 1.47~1.60 1.40 ~1.53 1.40~1.53 アッベ式
上記物性に関しては、それぞれの添加量・硬化条件の違いにより、変動があるため確定値として は表示できない。また、測定不可の箇所については、測定器の機能レベルをオーバーしてしまい、
計測が難しいことを示す。
3.3.2 各材料の特徴(利点・欠点)
(1) 封止剤
封止剤に用いる熱硬化型樹脂は、金属触媒を用いた付加重合反応が主流であるが、窒素化合物・
リン化合物・硫黄化合物などが介在すると硬化阻害を起こす欠点をもつ。硬度が低いものは、透湿 性(水分・水蒸気等を通す)があることから、チップあるいは銀ダイボンダーペーストまで直接水分 が浸透し、マイグレーションを起こすなど電気特性に悪影響を与えることもある。
LED チップから封止樹脂への光取出し効率を上げるためフェニル基やハロゲン化合物(-Cl、-Br、
-I)などを投与することで屈折率を上げる取組みが行われているが、結合エネルギーが比較的小さ く、熱・紫外光などの外的エネルギーが入ってしまうと簡単に切れてしまうなど、信頼性において は注意が必要である。
① エポキシ樹脂
一般に、接着性・電気特性(絶縁性)が良好であり、従来から LED 封止注型剤として使用頻度 が高い。ただ、耐光性・耐熱性が劣るといわれ、特に、紫外発光チップには弱い。Tg(ガラ
0 1 2 3 4
電気特性
5
熱伝導性
耐熱性
耐紫外線性
熱衝撃性
耐寒性 強靭性
べたつき性 硬さ 接着性
透湿性
エ ポキ シ樹脂 ソ フ トシ リコ ー ン 樹脂 ハー ド シ リコ ー ン 樹脂
図 3.3.2-1 各特性における優劣度
ス転移温度)以下では、内部応力がかかり、チップ・金ワイヤ等にストレスを与えることか ら、チップ破壊・金ワイヤ断線等を起こすこともある。パッケージの形態や被着体の種類・
エリア状態により、エポキシ樹脂・硬化剤の設定が違ってくるが、一般に、ビスフェノール A グリシジルエーテルが用いられる。耐熱性・耐候性・変色改善として、脂環式エポキシ樹脂 も用いられる。
② シリコーン樹脂
ポリシロキサン骨格を主とした樹脂で、特に耐熱性・耐光性は非常に良好である。そのため、
紫外発光チップでの劣化が小さい。しかし、極性が小さいので接着性が弱いことは否めな い。熱衝撃性についても、硬度が低い樹脂硬化物タイプ(ソフトシリコーン樹脂)では安定 しているが、硬度が高い硬化物タイプ(ハードシリコーン樹脂)では、エポキシ樹脂同様内 部応力を生じる。シリコーン樹脂での内部応力が生じると、上記記載どおり接着力が小さ いので、クラック・剥離等の原因になるため、注意が必要である。
(2) 接着剤
接着剤としては、チップ自身の熱及び光エネルギーが非常に集中してしまうため、熱及び光に 対して変色する問題が後をたたない。ここでは、熱及び光に対して変色が少なく、かつ接着性の よい材料が要求される。エポキシ樹脂は、接着性は良好だが、熱及び光による変色を伴ってしま う。シリコーン樹脂では、熱及び光による変色は小さいが接着性が弱い。もともと、エポキシ樹 脂・シリコーン樹脂ともに、原材料自身の熱伝導率が低い。そこで最近では、熱伝導性の高い素材 を導入して、放熱性対策をした接着剤の開発も進められている。但し、粘度上昇・外観の問題等も あり課題は多い。
3.3.3 封止剤&接着剤の信頼性確保のための留意点 (1) 1 次的要因について
封止剤も接着剤も、チップと接合しているところであるため、高密度の熱エネルギー及び光エ ネルギーに直接さらされる部材であることから、LED パッケージを設計する上で、信頼性向上の 鍵を握るところである。ただ、前述したように各材料にも長所・短所があるので、その性能に注視 する必要がある。
エポキシ樹脂の場合、シリコーン樹脂に比べ熱劣化が激しいといわれている。図 3.3.3-1~図 3.3.3-4 に、環境温度 120℃及び 160℃でのエポキシ樹脂及びシリコーン樹脂の透過率劣化を示す。
ここで示すエポキシ樹脂は、環境温度 120℃で透過率減衰がほとんどなく、環境温度 160℃では、
400nm 近郊において短時間で透過率の減衰が始まる。つまり、チップ温度を 100℃以下に押さえ込 むパッケージ設計・基材の選択ができれば、極端な熱変色を起こすようなことはないはずである。
大電流仕様チップを使用する場合、現時点ではシリコーン樹脂が主流である。しかし、環境温度 によっては、エポキシ樹脂でも有効であることは留めておきたい。
:初期 :100hr :300hr :500hr :1000hr 図 3.3.3-1 エポキシ樹脂硬化物 120℃における透過率劣化
透過率(%)
波 長(nm)
:初期 :100hr :300hr :500h 図 3.3.3-2 エポキシ樹脂硬化物 160℃における透過率劣化
透過率(%)
波 長(nm)
:初期 :100hr :300hr :500hr :1000hr 図 3.3.3-3 シリコーン樹脂硬化物 120℃における透過率劣化
透過率(%)
波 長(nm)
:初期 :100hr :300hr :500hr :1000hr 図 3.3.3-4 シリコーン樹脂硬化物 160℃における透過率劣化
透過率(%)
波 長(nm)
(2) 2 次的要因について
封止剤及び接着剤の剥離・クラックの発生の要因としては、樹脂そのものに内部応力が発生する ことと接着力の弱さによるところが大きい。一般に、樹脂を硬化する際のサイクルモデルとして、
図のような軌道を描くことが知られている。
要するに、異なる材質の境界に働く内部応力(σ)は線膨張係数(α)の差と弾性率(E)の積を温度 範囲で積分して求めることができる。部品(C)に働く樹脂材料(M)による内部応力は次式のように なる。
(式 3.3.3-1)
∫ ⋅ ( − ⋅ Δ
= E ( T ) α
M( T ) α
C( T ) T
σ )
σ
:内部応力
α
M :樹脂材料の線膨張係数α
C :部品の線膨張係数E
:弾性率
T
:温度Δ T
:温度変化温度(T)での内部応力(σ)は、(Tg)<ガラス転移温度>以下のガラス状領域で発生するため、Δ T は(Tg)から(T)までの温度差に相当する。
( T T ) ( T T )
E
K ⋅ ⋅
M−
C⋅
g−
= α ( ) α ( ) σ
σ
:内部応力図 3.3.3-5 硬化サイクル(モデル)
α
M :樹脂材料の線膨張係数α
C :部品の線膨張係数E
:弾性率
K
:特定定数T
:温度:ガラス転移温度
T
gこの式から、部品にかかる内部応力を下げるには、樹脂材料の線膨張係数(αM)(注:ここでの 線膨張係数は、Tg以下の線膨張係数をいう。)を下げて部品の(αC)に整合させるか、樹脂材料の 弾性率(E)を下げることが必要であることが分かる。Tgの低い原材料を選択して低応力化が可能で あるが、耐熱性・機械強度の低下に繋がってしまうので注意が必要である。シリコーン樹脂に関し ては、Tgが極端に低く、内部応力についての概念は考えなく、剥離現象等の問題はあまり考えな くても良さそうであるが、ポリシロキサン骨格の極性のない官能基をもつため、現状では接着性 は弱い。
また、水蒸気を通してしまうこと(透湿しやすい)が問題となり、本来の封止材としての機能を 有していないので、用途を熟慮したうえでの選定が必要である。