LIGHT EMITTING DIODE
3.7 光学部品
LED 照明用の光学部品は、集光特性や光拡散特性が重要な特性であり、使用目的・用途に応じた 光学設計がなされている。使用される主材料は、ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMA)、ポリカ ーボネート(以下、PC)、ポリスチレン(以下、PS)樹脂等の熱可塑性透明樹脂が一般的である。こ れら主材料に必要に応じて光拡散剤、紫外線吸収剤等が添加され、射出成型法、押出成型法、プ レス形成法等により設計された形状に成形される。光学部品に用いられる主な熱可塑性透明樹脂 の光学的性質、熱的性質1-4)を表 3.7.1-1 に示した。
透明樹脂の中で取りわけ透明性が高く、屈折率波長依存性が小さく(アッベ数が大きく)、広く 用いられている PMMA を例に取り、温度(熱)による特性変化、光による特性変化により材料特性が どのように変化するかについて詳述する。
3.7.2 温度(熱)による特性変化5) (1) 全光線透過率
PMMA の汎用グレードである射出成型グレード、押出グレードの全光線透過率は、広い温度範囲 でほとんど変化せず、透明性を維持する。一方、PMMA の耐衝撃グレードの全光線透過率は温度の 上昇に伴い若干低下する。一般に透明性が高い PMMA においても、グレードによっては使用環境温 度により透明性が変化する場合があり、材料選定の際に注意が必要である。
20 40 60 80 温度(℃)
80 90
100 汎用グレード
耐衝撃グレード
全光線透過率(%)
20 40 60 80 温度(℃)
80 90
100 汎用グレード
耐衝撃グレード
全光線透過率(%)
(2) 屈折率
PMMA 汎用グレードは、ガラス転移温度(105℃)以下で、8.5~11.0×10-5・K-1の屈折率温度係数 を示し、光学ガラス等の無機材料と比べると 2 桁大きな値となる。これは、樹脂の線膨張係数が 無機材料と比べて大きいためである。光学部品を設計する際は、使用環境温度を考慮する必要が ある。
PMMA の屈折率と温度の関係5)を以下に示した。
(式 3.7.2-1)
2 7
4
2 . 1 10
10 1 . 1 4933 .
1 t t
n = − ×
−− ×
−n :屈折率
図 3.7.2-1 PMMA の全光線透過率の温度依存性(板厚:2mm)
(3)線膨張係数
PMMA 汎用グレードの線膨張係数の温度依存性6)を図 3.7.2-2 に示した。線膨張係数は温度によ りやや変化し、温度が高くなる程大きくなる。また、金属と比較して絶対値は 1 桁大きい。例え ば、1m 長さの PMMA 汎用グレードは、20℃の温度変化に対して約 1.5mm の伸縮がある。光学部品 を設計する際は、使用環境温度だけでなく、温度変化量も考慮する必要がある。
PMMA の線膨張による PMMA の伸びと温度との関係を(図 3.7.2-2)に示す。
(式 3.7.2-2)
( )
25
3
1 . 5 10
10 8 .
6 t t
l = × Δ + × Δ
Δ
− −Δl :伸び(%)
Δt :温度変化量(℃)、-70~70℃
(4) 熱伝導率
PMMA の熱伝導率の温度依存性を図 3.7.2-3 に示した。熱伝導率は、温度とともに若干上昇する。
何れの温度範囲でも、熱伝導率は金属等と比較してはるかに小さい。
2 4 6 8 10 12
-60 -40 -20 0 20 40 60 温度(℃)
線膨張係数(10-5 ・K) 2 4 6 8 10 12
-60 -40 -20 0 20 40 60 温度(℃)
線膨張係数(10-5 ・K)
図 3.7.2-1 PMMA線膨張係数の温度依存性
0 10 20
0.14 0.16 0.18
温度(℃)
熱伝導率(W・m-1K-1)
0 10 20
0.14 0.16 0.18
温度(℃)
熱伝導率(W・m-1K-1)
図 3.7.2-3 PMMA の熱伝導率の温度依存性
(5) 機械的性質
PMMA の機械的性質にも温度依存性がある。引張り特性、曲げ特性は、温度とともに変化する。
図 3.7.2-4 に PMMA 汎用グレードの中で比較的分子量の高いキャストグレードと比較的分子量の低 い押出グレードの引張り強さ、曲げ弾性率の温度依存性を示した。分子量の違いにより値は若干 異なるが、引張り強さ、曲げ弾性率は温度と共に低下する。
PMMA だけでなく、光学部品に用いられる熱可塑性樹脂は使用環境温度、温度変化により諸物性 が大きく変化することが知られている。材料選定の際に注意しなければならない。
3.7.3 光による特性変化6)
LED パッケージは用いられる LED チップ、蛍光体、封止剤の種類により、発光スペクトルが異 なる。どのような LED パッケージに対しても同等の光学特性を発現させるためには、表 3.7.1-1 に示した光学材料に用いられる熱可塑性樹脂の屈折率波長依存性が小さい方が好ましい。PMMA は、
他の熱可塑性透明樹脂に比べて高いアッベ数を持ち、波長による屈折率の変化が小さいことも光 学材料として使用される理由である。アッベ数は式 3.7.3-1 で算出される。
C F
D
D n n
V n
−
= −1
(式 3.7.3-1)
VD:アッベ数
nD:ナトリウム・フラウンホーファー線の D 線(589nm)での屈折率 nF:ナトリウム・フラウンホーファー線の F 線(486nm)での屈折率
n
C:ナトリウム・フラウンホーファー線の C 線(656nm)での屈折率キャストグレード 押出グレード 押出グレード