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対策における指針の違い

第 3 章  医療安全に対する医療安全管理者と現場の

3.4   対策における指針の違い

インシデントの原因が明確にされ、「水薬のルールを忘れたこと」という原因を防ぐための 対策が創られる際に、現場から二つの意見が出てきた。

ある問題に対して複数の異なる立場からの回答を対比して考えることは、問題に関する深 い洞察と、解答に関する直観を引き出すことがあると考える。

以下の内容では、医療安全管理者の解決策と、医療現場が希望する解決策について、

なぜそのように考えるのかをインタビューしたのちに、結果を思知の書式にしたがい思構造 として分節化して表現したものである。 図

3-4、図3-5

に、それぞれの意見の思考プロセスを 表現している。

3-4

は医療現場が期待する解決策についての思考構造を表している。

3-4

看護師

K

さんの意見の背景にある論理構造

思考構造を分解し、簡潔に内容記述できる程度に分解してある。1行をステートメン トと呼んでいる。内容の欄だけを読むと、Kさんの考えがわかる。

表のタグと根拠の意味を簡単に説明する。タグはステートメントが思考の中で果た す役割を表している。例えば、ステートメント1、2は、

「水薬のインシデントを医療安全の観点から分析した結果を表しているので、事実と いうタグが付与」されている。ステートメント3の

は、理論や原理など、正しいことが保証できる知識であるので、前提というタグが付 与されている。ステートメント5は、

根拠に示されている3、4の二つのステートメントから導かれたことなので、推定とい うタグが付与されている。思考の構造を明らかにするうえで最も重要なことは、指針 を見い出すことである。指針は、一見、前提と同じように感じるが、前提が正しいこと が保証させるのに対し、指針は正しいとは限らない。ステートメント

10

は、

ルールの意識を高めることをあきらめ、インシデントを防ぐことを優先するという内容 で、これは必ずしも正しいとは限らないが、Kさんの意見の重要な根拠になっている。

Kさんの意見は、この指針に基づき、

11

番のステートメントで表現されており、判断タグが付与されている。

このように、思考の構造にタグと根拠を付与することにより、意見の背景にある思考

が明確になる。

3-5

医療情報スタッフ

J

さんの意見の背景にある論理構造

3-5

は医療安全管理者の意見の背景にある思考構造を表している。

水薬インシデントの異なる対策の考え方は思知で論理的に表現されている。現場の意見を

表している指針は、現場のスタッフのルールの意識を高めることより、インシデントを防ぐこと

を優先することである。一方、医療安全管理士の意見を代表している指針は、致命的でない

インシデントを防ぐことよりも、現場のスタッフのルールの意識を高めることを優先することで

ある。ここで留意されたいのは、医療安全管理者は、この意見の表明によって全く医療安全

対策をしなくていいと考えているわけではなく、医療現場が極端に情報システム依存するこ

とへの問題提起、アンチテーゼとしてこのような意見を述べていることである。現場と医療安

全管理士の医療安全に対する価値観はそれぞれの指針で表明されている。このような個人

の指針の差異によって作られた異なる対策を直面しているときに、医療安全に対する理解を

深めるために、異なる指針を対立し、葛藤することが不可欠だと考えている。次に、安全対

策に対する理解の深化を促すための葛藤を説明する。