第 4 章 娯楽を目的とした読み
4.2 実験 1-1:紙の書籍,iPad,Kindle,ノート PC での読みの効率の比較
4.2.2 実験方法
実験計画 実験のデザインは表示メディアの種類 (紙の書籍,iPad,Kindle,ノート PC) を参加者間要因,測定条件 (ページめくりの有無) を参加者内要因とする 4×2 の 2要因混合計画である.
参加者 実験参加者は日本語を母国語とする 22~42 歳 (平均 30.9 歳) の男女同数 の24名である.参加者の募集はPC 利用歴3年以上,矯正視力0.7以上を対象に行っ た.各メディア条件に参加者を6名ずつ割り当てた.参加者は全員iPadも Kindleも 所有していなかった.
材料 村上春樹の『カンガルー日和』 (講談社文庫版) から,「カンガルー日和」「チ ーズケーキのような僕の貧乏」「あしか祭り」「駄目になった王国」の短編小説4編を選 んだ.これらは7~9 ページの作品で,縦書きで2978~3831字の長さであった.
課題 傍線 部分 もと ここ り,
傍線
~57
精 た.
作
iPa いて うよ
題 図4-1に 部分は音読 と,それ以外 に,音読時 で音読時の 黙読時の読 部の文字数 7 文字 (平均
読させるた 特に急ぐ必
業環境 以 Book:紙 iPad:Ap
×1024), Kindle:A 重量は53 PC:Pana
×768),
ad では,ス も紙の書籍 うにし,その
に示すよう 読,その他の 外の部分を と黙読時の の読書速度は 読書速度は各 数は,ページ 均33.0文字
ため,読書後 必要はなく,
以下の4 種類 紙の書籍 (文
pple iPad W 重量は68 Amazon Kin
36g. asonic Let's
重量は117
スワイプまた 籍でページが
の速度はデ
に文書のペ 部分は黙読 読むのに要 の各々の読書 は各メディア 各メディアの ジの最初で 6 字) であった
図
後に 1 分間以 自然な速度
類の表示メデ 文庫本)
Wi-Fi 16G 0g. ndle DX.表
s note CF-T 9g.
たはタップ がめくられる
フォルトで
41 ページの最初
読することを 要した時間を 書速度 (1 分 アでのページ の表示品質の
6~52 文字
.読書時の
図 4-1 課題
以内で内容 度で読むこと
ディアを利用
モデル.表
表示サイズは
T7CW.表示
によりペー る様子を模倣 である3段階
初と最後の1 を求めた.こ を分離して算 分あたりに読 ジめくりの のみの影響を
(平均26.9 の音声はIC
題の例
容を要約して とを求めた.
用した.
表示サイズは
は10.1インチ
示サイズは1
ジを切り替 倣したアニ 階中の2番目
文に予め傍 これは,ペー 算出するため 読んだ文字数 影響を受け を受けた読書 9 文字),ペー レコーダで
て口頭で報告
は9.7インチ
チ (解像度は
12.1インチ
替えてもらっ ニメーション 目に設定した
傍線を引いて ージめくりを めである.こ 数) を算出で けた読書速度 書速度とい ージの最後 で記録した.
告することを
チ (解像度は
は1366×7
(解像度は
った.いずれ ン (紙模倣)
た.タップで ておき,
を含む これを できる.
度であ える.
で15
を求め
は768
68),
1024
れにお を伴 でのペ
42
ージめくりアニメーションの開始から終了までの時間は平均0.33秒であった[5] .タッ プではタップ可能領域が最大になるようにし,このときタップ可能領域は画面左下端か
ら横7.4cm,縦12.6cmの長方形の領域であった.前のページに戻る場合は,画面右下
端から同様の広さの領域内でタップを行う.また,スワイプではページをめくる方向に 指を3cm以上動かすことでページめくりがなされる.
Kindleでは,ページの切り替えに「NEXT PAGE」ボタン,「PREV PAGE」ボタン を利用してもらった.PCでは,アローキーかマウス操作のいずれかの手段によってペ ージを切り替えてもらった.Kindle のページ切り替えに伴う表示更新の時間は平均 0.99秒であった[5].文庫本以外のメディアでは文庫本をスキャンしたPDF 文書を用い,
横向き画面に見開き 2 ページを文庫本と同サイズで表示した.スキャンには富士通社 のScanSnap S510 を用い,スキャンの解像度は600dpiにした.また,PCではOS と してWindows XP,PDF文書の閲覧にはAdobe Reader 9を用いた.iPadでは文庫本 と同じ右開きの方向にページをめくることができ,紙模倣の視覚効果を備えた「i 文庫 HD」を文書の閲覧に用いた.iPadやKindleで読んだ際の端末の向きや文書の表示状 態,ページめくりの様子は図4-2から図4-4に示すとおりである.
図 4-2 紙模倣を伴うスワイプ (紙模倣スワイプ) によるめくりの様子
5 10回のページめくりをビデオで撮影し,コマ送りしながら目視で開始と終了を確認した.
① ② ③
⑥
⑤
④
43
図 4-3 紙模倣を伴うタップ (紙模倣タップ) によるめくりの様子
図 4-4 Kindleでのめくりの様子
手続き 各メディア条件とも自由な姿勢で自由な位置にメディアを設定して読むこ とを許し,手に持って読むことも許した.また,各メディアでのページめくりの方法は 参加者の好みにゆだねた.
最初に各メディアで練習の読書を行い,音読を交えた読書に慣れてもらった.また,
読みやすい位置にメディアを設定し,読みやすいページめくりの方法を見つけてもらっ た.
読書速度は個人差が大きい.そこで,全員に最初に文庫本 (題材は短編小説「カン ガルー日和」)で1回読書を行ってもらい,この読書速度をベースラインとした相対的 な読書速度で比較を行った.ここで,「ページめくりを含む部分の相対的読書速度」は 音読時の文庫本での読書速度に対する音読時の各メディアでの読書速度の比率である.
また,「ページめくりを含まない部分の相対的読書速度」は黙読時の文庫本での読書速 度に対する黙読時の各メディアでの読書速度の比率である.
各メディアで3編の短編小説を題材に3回の読書を行わせた.参加者内での各短編小 説の読書の順番の影響については,実験全体で効果が相殺されるようカウンターバラン
① ② ③
⑤
④
① ② ③
スを
4.2.
各 部分 とし ても 切れ
表示 因混合 れに 2要因 った (3,20 他の表 みよ 間に位 りを含 p>.1]
とった.
.3 結果
メディアで の相対的読 ている).グ 同じ).音読 を目視で特
示メディア 合分散分析 おいても主 因の交互作用
ところ,ペ 0)=33.2, p<
表示メディ りも遅かっ 位置し,両 含まない場 ].参考まで
果と考察
でのページめ 読書速度を図 グラフでの縦 読の開始と終 特定した.
図
4-の種類を参 析を行った.
主効果が認め 用も有意で ページめく
<.01]. Hol アでの読み た [p<.05]
両者との間に 場合の読書速 でにページめ
めくりを含む 図4-5に示す
縦方向のバー 終了は,Win
5 メディア
参加者間要因 その結果,
められた [そ あったため りを含む場
lm 法による
みよりも遅く
.また,iPa に有意な違い 速度に表示メ めくりを含む
44 む部分の相対 す(ベースラ
ーは標準誤差 ndowsムー
アごとの相対
因,ページめ 表示メディ それぞれ,F(3 め [F(3,20)=
場合に表示 る下位検定を く [p<.01],
ad条件での
いは認められ メディアの効
む場合も含
対的読書速度 ラインである
差を示してい ービーメーカ
対的読書速度
くりの有無 アの種類,
3,20)=8.9, p 8.9, p<.01]
示メディアの を行った結果
PC 条件で
の読書速度は れなかった 効果は認めら
まない場合
度,ページめ る文庫本での
いる(以降 ーを用いて
度の平均
無を参加者内 ページめく p<.01; F(1,2 ],単純主効 の効果が有 果,Kindle
の読みは B はBook条件 [p>.1].一 られなかった 合も各メディ
めくりを含ま の読書速度を 降のグラフに て音声波形か
内要因とした くりの有無の 20)=13.9, p 効果の検定を 有意であった
条件での読 Book 条件で 件とPC条件 一方,ページ た [F(3,20) ィアとも試行
まない を100 におい から途
た2要 のいず
p<.01]. を行な
た [F 読みは での読 件の中 ジめく )=0.2, 行フェ
45
ーズ間で有意差はなく学習効果は認められなかった [p>.1].
以上の結果から次の3つのことが言える.第1に,ページめくりを含まない場合,メ ディア間での読書速度に違いがない.ページめくりを伴わない限り,メディア間での読 みの速度に違いはないという第2の仮説が支持された.このことから,メディアの表示 品質の違いが読みの効率に影響を与えないことがわかる.
第 2 に,ページめくりを含む場合,Kindle や PC に比べて紙での読みが速い.第1 の仮説のうち,ページめくりの前後において,Kindle や PC に比べて紙の書籍での読 みが速いという点が支持された.Nielsen の実験での Kindle に対する紙の書籍の優位 性はページめくりの操作性に起因していたと考えられる.
第3に,ページめくりを含む場合も紙の書籍とiPadの間で読みの速度に違いがない.
第 1の仮説のうち,ページめくりの前後において,iPadに比べて紙の書籍での読みが 速いという点が支持されなかった.また,この結果はiPadに比べて紙の書籍での読み が速いというNielsenらの実験結果とも一致しない.この理由として,本実験の参加者
とNielsenらの実験の参加者が利用したiPadのページめくり方法が異なっていたため
ではないかと考える.iPad ではページめくりの操作に複数の方法が提供されており,
参加者が選択した操作方法の違いが読みの速度に影響を与えた可能性がある.そこで,
追って述べるように,次の実験ではiPadのページめくりの操作方法を統制して,紙の めくりとの比較を行う.
最後に,メディア間で読みの速度が異なる理由を明らかにするため,ページめくりを 含む読みを,ページめくり直前の読み,音読中断時間,ページめくり直後の読みの3段 階に細分して分析を行った.まずは,音読中断時間の比較を図4-6に示す.