3.2.1 カーボネート系液体電解質/難黒鉛化炭素負極界面での反応解析
・難黒鉛化炭素負極作製方法と電気化学評価方法
負極合剤の組成は負極活物質 90.5wt%、導電剤 4.7wt%、バインダー4.8wt%とした。負極活物 質として難黒鉛化炭素、導電剤としてアセチレンブラック(電気化学工業製)、バインダーとしてポリ フッ化ビニリデン(PVDF)を用いた。PVDFはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に9wt%溶解したものを用 いた。上述の組成の合剤を混練して得られたスラリーを、塗布機を用いて10 μmの銅箔に塗布し、
120°Cで乾燥後、電極密度が1.0 g/cm3となるようプレスして負極を作製した。
作用極として、16 mmφの負極を用い、対極及び参照極にはリチウム金属を用いた。作用 極、対極及び参照極は、それぞれ30 μm厚のセパレータ(宇部興産製)を介し対向させた。作 用極及びセパレータは、予め電解液中に含浸させておいたものを用いた。電解液としては、
EC、DMC、EMCを体積比で1:2:2に混合したEC1DMC2EMC2に、VCを0.8 wt%混合した溶 液に、LiPF6を1M溶解させた溶液を用いた。
充放電評価は、充放電装置(東洋システム製、TOSCAT3100)を用い、以下の条件で5サイ クル実施した。
○充電:下限電圧 0,0.1,0.2,0.4,V vs. Li/Li+、電流 1.5 mA、定電流定電圧条件(保持時間 2.5 時間、休止30分)
○放電:下限電圧 2.7 V、電流 1.5 mA、モード 定電流条件(休止30分)
・難黒鉛炭素負極上生成物の成分分析
充放電評価済みの負極を DMC中に3秒浸漬後、25°C下で真空乾燥させた。乾燥後、負 極 生 成 物 の 成 分 分 析 に は 、TOF-SIMS(飛 行 時 間 型 二 次 イ オ ン 質 量 分 析 法)、
STEM-EELS/EDX(走査型電子顕微鏡-電子エネルギー損失分光法/エネルギー分散型 X 線分
光法)、XPS(X線光電子分光法)、7Li-固体NMR(核磁気共鳴分光法)を用いた。
TOF-SIMS(ION-TOF製、TOF.SIMS 5)分析により、負極電極表面に付着した反応生成物の
構成成分について調べた。一次イオンはBi3++を用いた。測定電極試料はArガスで満たされ たグローブボックス中で作成し、電極試料はArガス雰囲気を保ったままTOF-SIMS装置ま で搬送した。
STEM-EELS/EDX(日立ハイテク製、HD-2700)分析により、負極電極表面に付着した反応 生成物の構成成分について調べた。FIB(日立ハイテク製、FB-2100)により、サンプルを100 nmまで薄膜化した。加速電圧40 kV、イオン源Ga液体金属イオンである。その後、球面収
52
差補正 STEM-EELS/EDX分析を行った。加速電圧は、200 kV である。測定電極試料は Ar
ガスで満たされたグローブボックス中で作成し、電極試料はArガス雰囲気を保ったトラン スファーベッセルに封入し、各分析装置まで搬送した。
XPS(島津/KRATOS製、AXIS-HS型)分析により、表面及び深さ方向の組成及び結合状
態から負極電極表面に付着した反応生成物の構成成分について調べた[14,15]。測定条件はX 線源にモノクロAl(管電圧;15 kV、管電流;15 mA)、レンズ条件はHYBRID(分析面積;
600×1000 μm2)、走査速度は20 eV/minである。試料の表面からの深さ分析を行うエッチン
グには、Arイオン銃を使用した。イオン銃設定条件は、加速電圧3.0 kV、励起電流15 mA、
ラスターサイズは2 mm × 2 mmである。Arイオン銃のスパッタ速度はSiO2膜換算で約2.0
nm/min である。各試料のワイドスキャンスペクトルを測定した後、C、F、Li、O、P 元素
についてナロースキャン分析を行い、組成及び結合状態について調べた。ナロースキャン スペクトル測定は、エッチング時間1分、90分の2点で行った。測定電極試料はArガスで 満たされたグローブボックス中で作成し、電極試料はArガス雰囲気を保ったままXPS装置 まで搬送した。検出した束縛エネルギーの補正方法について説明する。XPS測定ではX 線 を照射することによる試料表面でのチャージアップのため、測定される束縛エネルギーに ずれが生じてしまう。そのため、束縛エネルギーの補正は、測定結果のC 1sピークのC-C、
C-H結合が285 eVになるようにした。
7Li-固体NMR(日本電子製、JNM-GSX400 FT-NMR)分析により、負極中のLi核の電子状態
について調べた。観測周波数155.37 MHz、測定モードGated non decoupling、積算回数100回、
標準物質LiClで、測定温度は室温とした。測定電極試料はArガスで満たされたグローブボッ クス中で作成し、電極試料はArガス雰囲気を保ったままNMR装置まで搬送した。
53
図番 品名 型式 材質 備考
①a ベース
プレート SUS
①b ロング
ボルト B05-0430 SUS
①c アッパー
プレート SUS センター
Ф3mm
①d ロング
ナット 樹脂
② カラー(下) CLJM4-6-12.5 樹脂
③ 絶縁シート
(1) テフロン
④ 集電体 Cu箔 18μm
⑤ ガイドプ レート
ENJPC4H5-50-18-42-N4 樹脂
⑥ 作用極
(WE) HOPG 16*16
*8Tmm
⑦ カラー(上) WSJM6-4-2 樹脂
⑧ Oリング MPPEM5 フッ素 Ф4.8-8.5mm
⑨ 絶縁シート
(2) テフロン センター
Ф5mm
⑩ 対極
(CE) Li箔 センター
Ф3mm
⑪ セパレータ PE/PP
30μm センター
Ф3mm
⑫ 参照極
(RE) Li箔 センター
Ф3mm
⑬ 絶縁シート
(3) テフロン センター
Ф3mm
図 3-1. 電気化学評価用セル外観
(a)上面図
(c)断面図 (b)A-A’上面図
8 6 5
1b 7 10 11 4
1d
電解液注入口
1a
3
2 4
7 5 6
9 8
12 11 10 1d
13 1c
A A‘
1b
3.2.2 カーボネート系液体電解質/HOPG負極界面での反応解析と副反応抑制
・HOPG負極作製方法と電気化学評価方法
電気化学評価は、作用極として、HOPG(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・
ジャパン合同会社製、type ZYH 12×12×8mm)を用い、対極及び参照極にはリチウム金属を 用いた。図3-1は、電気化学評価用セルの外観図である。図3-1(a)上面図、(b)A-A’上面図及 び(c)断面図である。(c)に示すように、本セルは、集電体上に作用極としてHOPGをセット し、Oリング、絶縁シート、対極Li箔、セパレータ、参照極、絶縁シート、さらにアッパ ーブレードcを積層し、ロングナットdでかしめた。また、図3-1(a)に示すように電解液注 入口として、3-5mmφ の穴を設けた。かしめた後、注入口から電解液(1M LiPF6 in EC1DMC2EMC2(vol%) VC0.8wt%添加、三菱化学製。または飽和LiBr inEC1DMC2EMC2(vol%) VC0.8wt%添加)をパスツールピペットで注入し、イミドテープで蓋をすることで評価用セ ルを組み立てた。
54
HOPGの前処理方法は、配向面により異なる対応を取った。Basal面の前処理は、既報[23]
に従いイミドテープにより表面を剥離した。一方、Edge 面の前処理は、研磨紙上にエタノ ールを滴下し、研磨した。電気化学評価前には、HOPGを80°Cで2時間以上真空乾燥を行 った。各配向面毎の作動面積は、それぞれBasal面11 mmφ(0.95cm2)、Edge面5 mmφ(0.20cm2) とした。
電気化学評価は、ポテンショ/ガルバノスタットと周波数応答アナライザ(FRA)を組み合 わせた電気化学測定システム(ソーラトロン製)を用い、サイクリックボルタモグラム(CV) 及び交流抵抗を評価した。CVは規定温度(0, 25, 50°C)下、走査速度5 mV/sで、OCVから5 mV
vs. Li/Li+まで掃引した。また、交流抵抗は、25°C下、走査速度5 mV/sで、OCVから規定電
位(0.8,0.7,0.6,0.5,0.4,0.3,0.2,0.1 V vs. Li/Li+)まで掃引し、25°C OCV下で印加電圧10 mVにて 評価した。
・HOPG上生成物の成分分析
OCVから規定電位(0.5, 0.2, 0.1 V vs. Li/Li+)まで掃引したHOPGをDMC中に3秒浸漬後、
25°C下で真空乾燥させた。乾燥後、負極生成物の成分分析には、TOF-SIMS、STEM-EELS、
及びXPSを用いた。
TOF-SIMS(ION-TOF製、TOF.SIMS 5)分析により、負極電極表面に付着した反応生成物の
構成成分について調べた。一次イオンはBi3++を用いた。測定電極試料はArガスで満たされ たグローブボックス中で作成し、電極試料はArガス雰囲気を保ったままTOF-SIMS装置ま で搬送した。
STEM-EELS (日立ハイテク製、HD-2700)分析により、負極電極表面に付着した反応生成 物の構成成分について調べた。FIB(日立ハイテク製、FB-2100)により、サンプルを 100nm まで薄膜化した。加速電圧40kV、イオン源 Ga 液体金属イオンである。その後、球面収差
補正STEM-EELS分析を行った。加速電圧は、200 kVである。測定電極試料はArガスで満
たされたグローブボックス中で作成し、電極試料はArガス雰囲気を保ったまま各分析装置 まで搬送した。
XPS(島津/KRATOS製、AXIS-HS型)分析により、表面及び深さ方向の組成及び結合状
態から負極電極表面に付着した反応生成物の構成成分について調べた。測定条件は X 線源 にモノクロ Al(管電圧;15 kV、管電流;15 mA)、レンズ条件は HYBRID(分析面積;
600×1000μm2)、走査速度は 20eV/min である。試料の表面からの深さ分析を行うエッチン
グには、Arイオン銃を使用した。イオン銃設定条件は、加速電圧3.0 kV、励起電流15 mA、
55
ラスターサイズは2 mm × 2 mmである。Arイオン銃のスパッタ速度はSiO2膜換算で約2.0
nm/min である。各試料のワイドスキャンスペクトルを測定した後、C、F、Li、O、P 元素
についてナロースキャン分析を行い、組成及び結合状態について調べた。ナロースキャン スペクトル測定は、エッチング時間1分で行った。測定電極試料はArガスで満たされたグ ローブボックス中で作成し、電極試料はArガス雰囲気を保ったままXPS装置まで搬送した。
検出した束縛エネルギーの補正方法について説明する。XPS測定ではX線を照射すること による試料表面でのチャージアップのため、測定される束縛エネルギーにずれが生じてし まう。そのため、束縛エネルギーの補正は、炭化水素結合のC 1sピークが285eVになるよ うにした。
・HOPGへのポリマー被覆
ポリエチレンカーボネートのNMP溶液(0.5wt%)を、HOPGのEdge面にスピンコーター
(アクティブ製、ATC-400D )でキャスト(回転速度400 rpm (立上り2 sec 保持 5 sec)後、
2000 rpm(立上り 2 sec 保持 30 sec))し、120°Cで2時間乾燥後、真空にて乾燥した。PECコ ート量は、キャスト回数(0.3 μL/回)で制御した。
56
3.2.3 ジメタリルカーボネート(DMAC)添加によるカーボネート系液体電解質/難黒鉛 化炭素負極界面での副反応抑制
・サンプル溶液調整方法
EC、DMC、EMCを体積比で1:2:2に混合し、DMAC(ヒドラス化学製)を0、0.8 wt%又は
2.4 wt%混合した溶液に、LiPF6を1M溶解させた溶液を用いた。使用材料はDMAC以外、
三菱化学製である。
・負極作製方法
負極合剤の組成は負極活物質90.5 wt%、導電剤4.7 wt%、バインダー4.8 wt%とした。負極活 物質として難黒鉛化炭素、導電剤としてアセチレンブラック(電気化学工業製)、バインダーとして ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた。PVDFはN-メチル-2-ピロリドンに9 wt%溶解したものを用い た。上述の組成の合剤を混練して得られたスラリーを、塗布機を用いて 10 μm の銅箔に塗布し、
120°Cで乾燥後、電極密度が1.0 g/cm3となるようプレスして負極を作製した。
・負極充放電評価
作用極として、16 mmφの負極を用い、対極及び参照極にはリチウム金属を用いた。作用 極、対極及び参照極は、それぞれ30 μm 厚のセパレータを介し対向させた。作用極及びセ パレータは、予め電解液中に含浸させておいたものを用いた。充放電評価は、充放電装置(東 洋システム製、TOSCAT3100)を用い、以下の条件で5サイクル実施した。
○充電:下限電圧 0, 0.1, 0.2, 0.4, V vs. Li+/Li、電流 1.5 mA、定電流定電圧条件(保持時間 2.5時間、休止30分)
○放電:下限電圧 2.7 V、電流 1.5 mA、モード 定電流条件(休止30分)
・負極表面分析
充放電評価済みの負極を電池グレードのDMCで残存した電解液を洗浄し、乾燥させた。
乾燥後、負極の表面生成物の成分分析には、XPS、TOF-SIMS、TPD-MSを用いた。
XPS(島津/KRATOS社製、AXIS-HS型)分析により、表面及び深さ方向の組成及び結合
状態から負極電極表面に付着した反応生成物の構成成分について調べた[14,15]。測定条件は X線源にモノクロAl(管電圧;15 kV、管電流;15 mA)、レンズ条件はHYBRID(分析面 積;600×1000 μm2)、走査速度は20 eV/minである。試料の表面からの深さ分析を行うエッ チングには、Arイオン銃を使用した。イオン銃設定条件は、加速電圧3.0 kV、励起電流15