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2.カーボネート系液体電解質の低温時のイオン伝導挙動解析

2.1 緒言

リチウムイオン電池(LIB)は高電圧・高エネルギー密度のため、ハイブリッド自動車や 電気自動車用途に適用されている。それら用途では-30°Cから50°Cまでの広い温度範囲で 作動する LIB が求められるが、低温で出力が低下する課題がある。そのため、現状では車 に搭載する電池本数を過剰にすることで、低温下で電池一本あたりの出力が落ちても、車 が駆動するよう設定されている。電池の低温特性が改善出来れば、搭載本数を低減出来る ため、低コスト・体積・重量化が期待できる。それゆえ、低温特性改善は、それら用途展 開に対し非常に重要である。

LIBの低温における性能低下の一要因は、電解液のイオン伝導度の低下が考えられる。そ のため LIB の低温特性改善には、凝固点の低い溶媒から構成される電解液を適用する試み が一般的である。LIBに通常適用されるECは比誘電率が高くリチウム塩解離の観点で好ま しいが、室温を超える凝固点を有するため、比誘電率は低いが凝固点が低いDMCやEMC といった鎖状カーボネート溶媒との多成分混合溶媒が通常用いられる[1]。

Dingらは、カーボネート溶媒の低温特性改善のため2成分系[2-7]や3成分系または4成 分系での検討を進めてきている[8]。Smartらは、1.0M LiPF6 EC-DEC-DMC-EMC [9]を適用す ることで-50°C での性能改善を報告している[10]。更に、リチウム塩含有カーボネート混合 溶媒での固体-液体相図についても報告されている LIB 用電解液へのアプローチとして、

低温特性改善に向けたリチウム塩への取り組みが報告されている。Zhang らは LiPF6 から LiBF4に変更することで、-30°C での電解液と電極界面での電荷移動抵抗を低減し、それに より放電容量を改善したことを報告している[11-14]。

しかしながら、リチウム塩添加による LIB 低温特性への影響、特に低温でのカーボネー ト混合溶液に対するリチウム塩添加効果はほとんど検討されていない。

本研究では、LIB低温特性改善のための電解液改善指針を得るため、カーボネート溶媒と その混合溶液の低温の挙動、およびリチウム塩と溶媒の相互作用に対する組成の影響を明 らかにすることを目的とした。そのために、EC, DMC, EMC混合溶媒及び1M LiPF6溶液の 相転移とそれにかかわる変化を、示差走査熱量計、7Li核磁気共鳴分光法、およびラマン分 光法などで評価した。

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2.2

実験方法

・サンプル溶液調整方法

EC、DMC、EMCおよびLiPF6 (Aldrich Inc.)は、全て含水率・不純物がリチウムイオン電 池用に精製された電池グレードものを用いた。表2-1 は本研究で用いた溶媒の特性、即ち、

構造、比誘電率および凝固点をまとめたものである。1M LiPF6 電解液は、アルゴンボック ス中で、LiPF6をカーボネート混合溶媒であるECxDMC0.5-0.5xEMC0.5-0.5x (x= 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, and 0.6, in volume ratio)に1M 溶解し作製した。

2-1. 適用した溶媒の構造式および諸物性

・イオン伝導度評価方法

東亜電波製、CM-60Vデジタル電気伝導率計を用いて測定した。Arガスで満たされたグロ ーブボックス中でサンプル溶液5 mLをガラス瓶に入れ、電極をサンプル溶液に挿入した後 に、テフロンテープで封止した。さらに、サンプルを恒温槽内で一定時間保持後、測定を 開始した。測定温度は25°C 0°C -15°C -30°Cとした。保持時間は、イオン伝導度の変化 が起こらない時間とし、25°Cと0°Cでは1時間、-15°C及び-30°Cでは1時間30分とした。

・示差走査熱量評価方法

メトラートレド製、DSC823 を用いて測定した。Ar ガスで満たされたグローブボックス 中で、サンプル溶液10 mgを密閉型Al製パンに封入し、Arガス流速50 ml/minの条件下で で評価した。測定開始温度は、-80°Cとした。昇温速度は2 °C/minで、最大温度は50°Cと した。

Ethyl methyl carbonate

(EMC)

O O O

Dimethyl carbonate (DMC)

O O O

Ethylene carbonate

(EC)

O O

O

Dielectric constant 90 3.1 2.9

Freezing temperature(℃) 39 0.5 -55

Structural

formula

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・粘度評価方法

CBCマテリアルズ製、DIGITAL VISCOMATE VM-100を用いて測定した。Arガスで満た されたグローブボックス中でサンプル溶液5 mLをガラス瓶に入れ、粘度計端子をサンプル 溶液に挿入した後に、テフロンテープで封止した。さらに、サンプルを25°C恒温槽内で1 時間保持後、測定を開始した。測定温度は25°C~-40°Cまでとした。

7Li核磁気共鳴分光(7Li NMR)評価方法

JEOL製JNM-GSX400を用いた.1 mol/dm3 LiCl 重水素溶液を外部標準として、155.37 MHz

で9.39 Tの条件にて測定した。サンプルは、Arガスで満たされたグローブボックス中で、5

μLのクオーツセルに封入した1M LiPF6 電解液を用いた。

・ラマン分光評価方法

JASCO 製RFT-400フーリエ変換ラマン分光計を用い、1.024 μm励起レーザーを出力800

mW でサンプル溶液に照射した。サンプル溶液から 180°C 後方にラマン散乱された光を分 光器で測定した。全てのスペクトルは分解能1 cm-1で積算数100回スキャンした。

・比誘電率評価方法

日本ルフト製比誘電率メーターModel 871用いて評価した。

・解離定数計算方法

解離定数ΔGsolvは、下記ボルン式を用いて計算した。

- (2-1)

ここで、ε は比誘電率、rはリチウムイオンイオン半径であり宇恵らの報告値0.076 nm [15]

を用いた。

r )]

/ 1 ( 1 [

ΔGsolv  69.4 

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