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実践1のまとめと実践llへの視点

§ 翠

第5節  実践1のまとめと実践llへの視点

  第1項 実践1の成果

 本実践では,26回忌4名が教材文を批判的に読むことができた。数としては少ない。

しかし,中学年の学習者でも批判的に読むことは決して無理なことではないことがわ

かった。

  第2項 実践1の課題

   1.教材文に対する問題意識の喚起

 教材文を読んだ感想の分析から,学習者が教材文に対して問題意識を十分に持たな かったことがわかる。

 筆者の述べ方に対する自らの考えの記述を分析すると,吟味・検討する課題の問題 点を適切に認識していない学習者や,教材文を絶対視している学習者が見られた。こ のことも教材文に対して問題意識を抱いていないことの表れである。

 その原因は,学習者の既有知識と教材文との間に差異を効果的に作り出すことがで きなかったことにある。学習者の既設知識と教材文の特性を見極め,授業設計を行う 必要がある。

   2.書かれていることを把握する読解指導

 筆者の述べ方に対する自らの考えの記述を分析すると,教材文に書かれていること の理解が不十分であったり誤っていたりすることがわかった。

 批判的な読みが適切に行われるためには,教材文に対しての十分な理解が必要であ る。このことは先行研究でも指摘されている。森田(2011)は,「『評価読み』は,これ まで説明してきたように,『確認読み』と無関係ではない。むしろ,質の高い『評価読 み』をするためには,これも質の高い『確認読み』が必須である。両者が絡み合って,

実際の読みが始められ,進められ,完了するのである。」と述べている50。書かれてい ることを把握する読解指導を十分に行った上で,批判的な読みの活動を設定する必要

がある。

   3.学習への見通し

 第3節の授業の実際で述べたように,批判的な読みの自らの考えを記述する時に「ど うしていいかわからない」「何を書いていいかわからない」「難しい」という声が多く あがった。これまで,文章に書いてある情報を取り出すことは行っていても,叙述を

50前掲書49に同じ,p.32

もとにして自らの考えを組み立てるという経験がないためか,困惑しているようだっ た。授業者が単元の初めに,最終課題として筆者の述べ方について考えたことを書く という目標を示したものの,学習者は目標を具体的に理解できていなかったのである。

 このことから,批判的な読みとはどのようなことか,何ができるようになればいい のか,具体的に把握させる必要があると考える。

 なお,寺井(2007)は,筆者の述べ方を批判的に読むことの難しさについて次のよう に述べている51。

 実は,指導することが文章の内容から表現の形式や方法,工夫というレトリックに移行する ことによって,思考操作の抽象度が上がり,必然的に学習の難度が上がってしまう。書かれて いる内容を読むことは,知識や経験などを関わらせて興味を持ちやすく理解もしゃすいが,表 現の方法だけを取り出して,どのような意図や戦略,効果や価値があるかを考えることは,文 法の学習と似た分析的,抽象的な思考操作が必要となり,結果的に学習が難しくなってしまう。

表現の形式や方法,工夫を分析し操作できるのは,文章の内容について意味を十分に頭に蓄え た状態が必要で,これがなければ抽象度の高い思考操作が必要な授業についてこられるのは能 力の高い児童,生徒に限られる。

 本実践で批判的に読む対象を筆者の述べ方とした。その筆者の述べ方について吟 味・検討することは抽象度の高い思考操作を必要とし,学習の難易度が高いというこ

とである。そして,寺井は筆者の述べ方を学習者にとって身近なものにするための方 策として,下学年の教材の活用や表現活動と読解活動を関連させることを提案し,次 のように述べている。

 では,レトリックを読む学習指導を児童,生徒にとって易しくするにはどうすればよいのか。

それには,語彙や文章,論理の易しい文章を教材文にすることや,表現の文脈に児童,生徒を 立たせることなどが考えられる。

 本実践で問題に挙がった学習の見通し不足を解消するためには,寺井が示している ように,下学年の教材の活用が考えられる。下学年の教材ならば,批判的に読むこと が容易になる。その活動を通して批判的な読みについて具体的に理解させることが可 能になるだろう。下学年の教材を使ったプレ学習が課題解決の方策として考えられる。

51寺井正憲「説明的文章の学習指導における新しい地平」『実践国語研究』2007 no.284

第3項 実践皿への視点

  1.実践1の課題を克服する授業設計

・学習者の既有知識と教材文との間に差異を効果的に作り出す。

・書かれていることを把握する読解指導を行ってから批判的な読みに移る。

・プレ学習を行い,学習の見通しを具体的に捉えさせる。

   2.仮説検証のための資料収集

 実践1では,仮説検証のための資料を十分に集めることができなかった。実践Hで は,仮説検証に必要な資料収集を行う必要がある。

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