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 第3章の実験結果をまとめる。まず,【授業前の個人の意見】から項目①をまと めると, 初めて習う「微分積分」であるが,生徒たちはテキストから「微分」「積 分」「△(デルタ)」などキーワードとなる言葉を見つけ,その意味を探したり,

テキストに載っている例を読んで,それに納得や驚きを見せていた。また,過去 に習った知識がこれから習う微分積分と関わっていることを知ることができた生 徒もいた。これは今までなら教師が生徒に「小学校で習った円の面積の公式の原 理は微分積分なんだぞ」と教えていたのだが,生徒自身がテキストに書かれてあ る文字をたどって自らそれを発見することこそが生徒(参加者)が読書行為(イ ベント)に参加していることにつながるのである。つまり,〈仲介者〉=教師が いないことで,生徒はテキストと向き合うことができる。そうすると,生徒はテ キストを読んで分かった所を自分自身ではっきりとさせることができる。

 項目②では,その項目の記述を見ると,生徒たちは分からなかったことを主に 書いている。「私はここが分からない」というように疑問点がはっきりしていると,

後の話し合いでそれを他者に聞くことができる。また,この項目では,生徒の興 味・関心をうかがうことができる。例えば,微積を発見した経緯まではテキスト には書かれていなかったが,生徒たちはそれを発見するまでのエピソードにも興 味があったと思われる。

 ③の項目はほぼ感想という感じである。しかし,数学の授業ということで,物 語から直ぐ計算へと頭が切り替わっていた生徒もいた。また,「これから習うこと は分かった。じゃあ,計算になるとどうだろう」と考える生徒が生徒の感想を見 るとちらほらといた。

この用に,プリント(図6)の3っの項目に答えるという活動を通して,まず,

生徒はテキスト『微分積分のアイデア』に出会い,そのテキストを「読む」とい うイベントに参加する。そこで生徒は「読み」の参加者となり,テキストと交流 を始め出す。

 グループ発表では,他のグループの意見を聞く機会でもあり,自分のグループ の意見を他グループに伝える機会でもあった。Eグループは発表しているDグル ープの意見を聞いて,次に自分たちが発表する内容について再度話し合い行って いた。その内容は「微分は細かく分けていくと0に近づくのか,それとも0にな るのか」である。この話し合いはDグループの発表者が「微分は細かく分けてい くと0に近づくが,0にはならない」と発表したことから,Eグループは自分たち が発表する内容である「0になる」と書いたカードについて,グループ内で話し出

した。話し合った結果,発表時には「0になるのではなく,0にならない」と結論 が出た。山元(2005)の言葉を用いるとこれは「刺激一反応」である。つまり,

EグループはDグループの発表を聞き,刺激を与えられた。そして,グループ内 で自分たちが持っている意見と他者の意見を反応させ,新たな意見を作り出した。

 Dグループは発表内容を言葉だけではなく,下記の図(図7)も使って発表を 行った。分かりやすく発表しようというグループの発表の工夫が見られた。

図7 Dグループの図形

 Kグループの発表中には,ある生徒が隣の生徒に「△κって変化されるんじゃな い?増えた面積の量っておかしくない?」と質問していた。隣の生徒は理解して いたので,その生徒に説明を始めた。最終的に質問した生徒は増えた面積の量が

ムヴであることを理解した。

 どのグループもテキストを読んで既習の内容(円周率・面積・体積など)が微 分・積分と関わりがあることを知ることができた。

 授業後の感想をまとめる。

 通常の数学の授業と言えば,1人の教師が教科書を用いて約40人の生徒に教えると いう授業であった。しかし,本実践では,テキスト『微分積分のアイデア』(資料1)

を用いて6,7人の生徒のグループを作り,話し合うという授業を行った。

 話し合いについては,自分の意見をもち,グループの話し合いで他の生徒の意 見を聞くことで,自分では気付かなかったことに気付いたりする。生徒の授業後 の感想を見ると,多くの生徒がこのことについて書いていた。話す内容は数学の 授業ということもあり,数学に関する事ばかりであった。しかし,通常の数学の 授業では,話し合いをしょうと言っても,互いに答えの教え合い,答え合わせの ようになって,なかなか意見交換まではいかない。また,授業後の感想を見る限 り,生徒たちは同じテキストを読んでいても,互いに感じていることが違うと書 いている生徒もいれば,分からないところは同じなんだと書いている生徒もいた。

生徒たちにとっては同じ意見をもっている他の生徒がいると安心感があり,異な った意見をもっている生徒がいると「そういう考え方もあるんだ」と新しい考え に気付かされたりしていた。

 本章では授業の様子や生徒の感想から「読み」方略の効果を述べていく。まず,

「こういう授業の進め方はしたことがなかったので新鮮でした。」,「普段あまりす ることがないので新鮮でした。」という生徒からの感想から実践高校では数学の授 業で話し合う機会が少ないことが分かった。これは予想していたことであり,授 業の始めは話し合いに慣れていないので何を書いていいのか分からない,、何を話

し合っていいのか分からないという生徒の意見が出ると思われたので,本実践で はニグループに対し一人の補助員(院生)を付けて,グループの話し合いが進ま ない時,彼らが生徒たちのサポートを行った。以下では,生徒の感想と話し合い 時に得た会話より結果のまとめを行う。

まとめ①

生徒から疑問・質問等が出てきて,他の生徒たちがそれらについて考え答える。

いつもの授業では教師が生徒たちに「どうして?」「なぜ?」という質問を出し

て,生徒たちが考え答えるという形式だった。この形式では教師から出た疑問・

質問だけに答えることとなり,生徒自身が抱く疑問等が表に出てこない。こうし た授業では,教師の教えたことだけを生徒が知ることとなるが,「今まではただ単 に教科書の内容を教師が前でしゃべって,それを覚えて理解するという形だった」

という一人の生徒の感想からいつもの授業形態が分かる。

 今までの授業では専門的テキストを見て生徒が理解するのではなく,そのテキ ストと生徒の間に仲介者である教師が入ってしまい,生徒はテキストを読むこと ができなくなっていた。鈴木(1987)は「ローゼンブラットの試みは,読書とい う行為を「批評家・学者・教師」といったエリートの手から,〈一般読者〉の手 に取り戻すことだった。」と述べている。ここから教師がテキストを理解し,ゴー ルまでの道筋を作り,生徒を導くのではなく,生徒自らがテキストを手に取り,

理解に努め,自らゴールまでの道筋を作り出すのである。

 本実践では主に生徒から疑問が出て,他の生徒たちがそれらについて考え答え るという形式だった。グループごとの話し合いではメンバーの一人の質問に他の メンバーが答えることもあった。グループで話し合う質問には「微分積分に関連 していること」のように制限を与えていないので,生徒たちは自身が思ったどん な疑問・質問でも他の生徒たちに話し始める。生徒はみんな同じ文章を読んでい るが,必ずしもみんな同じ疑問が出てくることはないだろうし,自分自身は何も 感じていなかったことでも,他の生徒は不思議に思い質問してくることもあり得 るだろう。

 鈴木(1987)は読者は創造者であると述べている。なぜなら,交流理論において,

読者は作品を喚起するからである。作品とは,イメージ・意味・感情・思想など である。本実践での創造者は生徒たちである。テキストはヒントや鍵,出発点で しかないのである。生徒たちはテキストと交流することで自らの内に作品(テキ スト)を創造するのである。つまり,生徒たちは微分積分のテキストを読んで,

そのテキストから微分積分に関するヒントを得て,自らの中に作品である微分積 分へのイメージや意味などを作り上げていく。

 既に述べたように,本実践ではまとめ①では仲介者である教師からではなく,

読者である生徒から疑問が出てきたことがよいことだと思った。しかし,これに

があった。したがって,生徒から出たすべての疑問・質問に答えることができず,

解決できないまま終わってしまったことが問題である。

 実践校の教員からも「本を読んで生まれた疑問などを,授業で解決してやれる か」という感想が聞かれた。本来なら続けて他の「読み」方略を行い,解決でき なかった疑問を全員で取り組みたかったが,時間の関係上,残った課題を解決す ることができなかった。

まとめ②

生徒は他の生徒の意見や発表を聞くことで,刺激が与えられ,考えるきっかけ が与えられた。

 本実践では話し合う機会を与え,他の生徒との意見や感情などを共有する活動 を行った。その活動の感想をあげると,ある生徒は「個人では出てこなかった疑 問や感想がグループの話し合いで出てきた。また,他のグループの発表を聞いて 知った」と書いている。山元(2005)の言葉を借りると「刺激一反応」である。刺 激とは一人では気付かなかった意見や疑問が他者や他のグループから出てきて,

それを聞くことで,理解が深まったり,互いに気付かない点に気付くことである。

つまり,生徒は自分以外の人の発言により刺激を与えられた。そして,反応とは,

刺激後,自分のイメージやアイデアを他生徒のものと反応させたのちに,そこか らまた新たに生まれてきた疑問等を他生徒と話し合うことで,また,「刺激一反応」

が繰り返される。グループ発表の中でも,疑問に思ったことがあれば,近くの人 に「今言ったことってどういうこと?」と質問したりして,自身から出てきた新

しい疑問について考える活動を行っていた。

 どの生徒も疑問が提示されると,その疑問を解決しようと,他者と意見を交換 したり,互いの意見に共感したりして,テキストを「読んで」生まれてきた疑問 に積極的に取り組む様子が実践からうかがうことができた。

ドキュメント内 数学教育における「読み」に関する研究 (ページ 42-49)

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