第5章 建築物の倒壊による近隣への影響に関する実証分析
5.1 実証分析2の方法
5.1.2 使用するデータ
使用するデータは、国土数値情報(地価公示(2013~2017年)等)、地域別危険度(東京 都)、東京都における特定緊急輸送道路沿道の耐震化率(2015年
7
月末時点、2016年6
月末時点)とする。特定緊急輸送道路データの作成に当たっては、ArcGISを用いて、国 土数値情報における緊急輸送道路データと東京都HPにおいて公表されている特定緊急輸 送道路図を重ね合わせ、抽出した上で、当該道路沿道の耐震化率情報を主要交差点間毎に 与えることによって作成した。さらに、作成した特定緊急輸送道路データと地価公示デー タ、鉄道駅データ、地域別危険度データを結合した上で、パネルデータを作成している。(1)トリートメント変数・コントロール変数
特定緊急輸送道路・一般緊急輸送道路それぞれの沿道地点・近隣地点のダミー変数と して、先行研究(尾關(2012))を踏まえ、特定緊急輸送道路または一般緊急輸送道路 の中心線より
30m以内に存在する地価ポイントの場合「1」とし、それ以外のものを
「0」とする「特定沿道ダミー」、「緊急沿道ダミー」を作成し、特定緊急輸送道路また は一般緊急輸送道路の中心線より
30mを超え、150m以内に存在する地価ポイントの場
合「1」とし、それ以外のものを「0」とする「特定近隣ダミー」、「緊急近隣ダミー」を作成した。このほか、「特定沿道ダミー」、「緊急沿道ダミー」、「特定近隣ダミー」、
「緊急近隣ダミー」のいずれにも該当しない場合「1」とし、それ以外のものを「0」
とする「緊急以外ダミー」を作成した。
また、東京都が公表している特定緊急輸送道路沿道の耐震化率をもとに、耐震化率
70%未満を 65、70%以上 80%未満を 75、
80%以上 90%未満を 85、90%以上 100%
未満を
95、100%を 100
とする「沿道耐震化率」を作成する42。さらに、東京都が 特定緊急輸送道路沿道の耐震化率の公表 後の年次(2016年、2017年43
)の場合
「1」とし、それ以外のものを「0」と する「公表後ダミー」を作成する。これ
らの変数について、交差項を作成した。 図8 緊急輸送道路沿道範囲の考え方44
(2)敷地属性のコントロール
地価ポイントの敷地属性を表すものとして、「地積(㎡)」、「容積率(%)」、「前面道 路幅員(m)」のほか、現況利用が商業系の敷地においては、駅前広場に接面するもの もあることから、「駅前広場接面ダミー」を作成した。
(3)地域特性のコントロール
最寄駅や都心部までの距離、用途地域など、地域特性が地価に与える影響が大きいと 思われることから、「ln(最寄駅からの距離(m))」、「ln(都心主要4駅距離(m))」、「用途地 域ダミー」、「建物倒壊危険度」、「所在地ダミー」、「鉄道沿線ダミー」を作成した。
42 公表前の沿道耐震化率については、はじめて公表された2015年7月末時点の沿道耐震化率と同値とする。
43 公表は、2015年7月末時点、2016年6月末時点の耐震化率であるが、地価公示は1月1日を基準日とす ることから、それぞれ、2016年公示地価、2017年公示地価と結合する。
44 尾關(2012)より引用している。
(4)都心部の地価上昇率のコントロール
推計に当たって、地価上昇率の大きい都心部による影響をコントロールするため、
2013
年から2017
年にかけての地価上昇率の特に大きい都心部を分類した。具体的に は、千代田区、中央区、港区からなる都心3区の場合「1」とし、それ以外のものを「0」とする「都心3区ダミー」、さらに、新宿区、渋谷区、文京区、目黒区、品川区 からなる都心8区(都心3区除く。)の場合「1」とし、それ以外のものを「0」とす る「都心8区ダミー」を作成し、年次ダミーとの交差項を作成した。
(5)年次のコントロール
地価は、景気その他の社会経済情勢等の影響を受ける可能性があるため、「年次ダミ ー」を作成し、これらの影響をコントロールすることとする。
表
14 説明変数(実証分析2)
変数名 内容 出典
公示地価 2013年~2017年の公示地価 A
特定沿道ダミー 特定緊急輸送道路の中心より30m以内に存在する地価ポイントの場合 1、それ以外の場合0をとるダミー変数
A、B
特定近隣ダミー 特定緊急輸送道路の中心より30m超150m以内に存在する地価ポイント の場合1、それ以外の場合は0をとるダミー変数
A、B
緊急沿道ダミー 特定緊急輸送道路を除く一般緊急輸送道路の中心より30m以内に存在す る地価ポイントの場合1、それ以外の場合0をとるダミー変数
A
緊急近隣ダミー 特定緊急輸送道路を除く一般緊急輸送道路の中心より30m超150m以内 に存在する地価ポイントの場合1、それ以外の場合は0をとるダミー変 数
A
緊急以外ダミー 特定沿道ダミー、特定近隣ダミー、緊急沿道ダミー、緊急近隣ダミーの いずれにも該当しない場合1、それ以外の場合は0をとるダミー変数
B
沿道耐震化率 (特定緊急輸送道路のみ)
特定緊急輸送道路沿道の耐震化率をもとに、70%未満を65、70%以上
80%未満を75、80%以上90%未満を85、90%以上100%未満を95、
100%を100とする。(公表前の場合、2015年7月末時点の沿道耐震化率
とする。)
B
公表後ダミー 特定緊急輸送道路沿道の耐震化率公表後の年次(2016年、2017年)の場合 1、それ以外の場合0をとるダミー変数
B
地積 地積(㎡) A
容積率 指定容積率(%) A
前面道路幅員 前面道路幅員(m) A
駅前広場接面ダミー 駅前広場に接面している場合1、それ以外の場合0をとるダミー変数 A
用途地域ダミー 用途地域に関するダミー変数 A
鉄道沿線ダミー 最寄駅の鉄道に関するダミー変数 A
最寄駅からの距離 最寄駅までの距離(m) A
都心主要4駅距離 都心主要4駅(新宿、東京、池袋、渋谷)までの距離(m) A 建物倒壊危険度 建物倒壊危険度1~5(5段階)(※2013年のものを採用) B
所在地ダミー 所在地に関するダミー変数 A
都心3区ダミー,都 心8区ダミー
千代田区、中央区、港区からなる都心3区、新宿区、渋谷区、文京区、
目黒区、品川区からなる都心8区(都心3区除く。)の場合1とし、それ 以外の場合0とするダミー変数
A
年次ダミー 2013年~2017年 A
※A:国土数値情報、B:東京都HP
5.1.3 分析の進め方
DID
分析モデルの構築に当たって、コントロール変数を「緊急沿道ダミー」と「緊急近隣 ダミー」とするか、「緊急以外ダミー」とするか検討するため、「実証分析2-1」として、「緊急以外ダミー」を考慮したすべての地価ポイントを対象に、「沿道耐震化率」および「公 表後ダミー」を考慮しない
OLS
モデルでの推計を行う。実証分析2-1の結果を踏まえて、分析モデルを構築し、道路沿道・近隣地点の影響を観察するため、「実証分析2-2」とし て、緊急輸送道路沿道・近隣の地価ポイントを対象とする
DID
分析モデルの2つのモデル での推計を行う。また、住宅利用のものとそれ以外のものとでは、耐震化率が地価に与える影響は異なるこ とも想定されることから、公示地価ポイントにおける利用現況のうち、住宅を含むものと住 宅以外のものに分類して推計を行う。さらに、それぞれの利用現況において、用途地域によ っても分類を行う。具体的には、利用現況が住宅を含む場合には、すべての用途地域の場合、
商業地域を除いた場合、商業地域、近隣商業地域、工業地域、工業地域・工業専用地域を除 いた住宅系用途のみの場合の3つの分析を行う。