第5章 建築物の倒壊による近隣への影響に関する実証分析
5.2 実証分析2-1
5.1.3 分析の進め方
DID
分析モデルの構築に当たって、コントロール変数を「緊急沿道ダミー」と「緊急近隣 ダミー」とするか、「緊急以外ダミー」とするか検討するため、「実証分析2-1」として、「緊急以外ダミー」を考慮したすべての地価ポイントを対象に、「沿道耐震化率」および「公 表後ダミー」を考慮しない
OLS
モデルでの推計を行う。実証分析2-1の結果を踏まえて、分析モデルを構築し、道路沿道・近隣地点の影響を観察するため、「実証分析2-2」とし て、緊急輸送道路沿道・近隣の地価ポイントを対象とする
DID
分析モデルの2つのモデル での推計を行う。また、住宅利用のものとそれ以外のものとでは、耐震化率が地価に与える影響は異なるこ とも想定されることから、公示地価ポイントにおける利用現況のうち、住宅を含むものと住 宅以外のものに分類して推計を行う。さらに、それぞれの利用現況において、用途地域によ っても分類を行う。具体的には、利用現況が住宅を含む場合には、すべての用途地域の場合、
商業地域を除いた場合、商業地域、近隣商業地域、工業地域、工業地域・工業専用地域を除 いた住宅系用途のみの場合の3つの分析を行う。
表
15 基本統計量(実証分析2-1)
最小 平均 最大 標準誤差
ln公示地価 10.47 12.95 17.74 1.001
利用現況:住宅含む 0 0.823 1 0.381
利用現況:現住以外 0 0.487 1 0.500
緊急沿道ダミー 0 0.075 1 0.264
緊急近隣ダミー 0 0.316 1 0.465
特定沿道ダミー 0 0.063 1 0.243
特定近隣ダミー 0 0.195 1 0.397
緊急以外ダミー 0 0.530 1 0.499
道路道路幅員 0 9.954 50 8.858
駅前広場接面ダミー 0 0.012 1 0.111
地積 47.0 463 126956 3940
容積率 50.0 275 1300 201
低層住宅地ダミー 0 0.349 1 0.477
中高層住宅地ダミー 0 0.239 1 0.427
商業地域ダミー 0 0.226 1 0.418
近隣商業地域ダミー 0 0.116 1 0.320
準工業地域ダミー 0 0.060 1 0.238
工業・工業専用地域ダミー 0 0.009 1 0.094 都心主要4駅距離 79.4 13156 46603 11331 ln都心主要4駅距離 4.375 8.971 10.75 1.175
最寄駅距離 19.0 645 4751 592
ln最寄駅距離 2.945 6.101 8.466 0.906
建物倒壊危険度 1 1.828 5 0.923
都心3区ダミー 0 0.078 1 0.268
都心8区ダミー 0 0.116 1 0.321
所在地ダミー (省略)
鉄道沿線ダミー (省略)
年次ダミー (省略)
観測数 10,105
5.2.2 推計結果
推計結果は表
16-1(利用現況:住宅含む)、表 16-2(利用現況:住宅以外)のとおり
である。利用現況に関わらず、特定沿道ダミー、特定近隣ダミーでは、有意にマイナスの結 果が見られ、一方で、緊急近隣ダミー、緊急以外ダミーでは、有意にプラスの結果が見られ た(いずれも有意水準1%)。つまり、特定緊急輸送道路に近いほど、一般道路よりも緊急 性が高い道路ほど、地価に対するマイナスの度合いが大きいという結果となっている。この理由としては、緊急輸送道路のうち、特に沿道の建築物の耐震化を推進する必要のあ る道路として指定されたものが特定緊急輸送道路であり、特に重要な幹線道路であって物 流の要であることから交通量も多いことが予想される。そのため、騒音、振動、排気などに ついては、前面道路幅員だけではコントロールできず、影響を強く受けている可能性がある。
また、同道路には高速道路など高架部分も含まれることから、日照などの影響を受けている 可能性もある。しかし、尾關(2012)でも指摘されるように、緊急輸送道路には、高速道路、
国道、都道だけでなく、区道や市道に多い狭幅員の道路など多様な道路が指定されており、
地価に対するマイナスの影響について、特定緊急輸送道路、一般緊急輸送道路の指定の影響 なのか、それとも騒音等の影響なのか、区別して観察することは困難である。なお、これら の環境をより重視すると思われる住宅利用と比べて、あまり環境を重視しないと思われる 住宅以外の利用の方が、絶対値が大きい結果となっていることにも留意が必要である。
表
16-1 実証分析2-1の結果①利用現況:住宅含む
被説明変数:ln公示地価実証分析
2-1 [推計式 2-1]
利用現況:住宅含むすべての地価ポイント (1)
すべての用途地域
(2) (3)
商業地域除く 住宅系用途のみ
β t値 β t値 β t値
特定沿道ダミー -0.102 [-7.51]*** -0.098 [-6.12]*** -0.082 [-3.61]***
特定近隣ダミー -0.028 [-3.71]*** -0.025 [-3.34]*** -0.010 [-1.25]
緊急近隣ダミー 0.080 [7.73]*** 0.083 [7.07]*** 0.150 [8.68]***
緊急以外ダミー 0.072 [7.14]*** 0.067 [5.90]*** 0.144 [8.46]***
前面道路幅員 0.010 [17.36]*** 0.012 [17.11]*** 0.015 [16.03]***
駅前広場接面ダミー 0.075 [1.87]*
地積 0.000 [16.59]*** 0.000 [14.99]*** 0.000 [13.78]***
容積率 0.001 [24.75]*** 0.001 [11.03]*** 0.001 [7.25]***
低層住宅地ダミー 0.038 [4.71]*** -0.006 [-0.68] -0.013 [-1.33]
商業地域ダミー 0.003 [0.21]
近隣商業地域ダミー -0.023 [-2.54]** 0.019 [2.06]**
準工業地域ダミー -0.056 [-5.32]*** -0.029 [-2.89]***
工業・工業専用地域ダミー
ln都心主要4駅距離 -0.135 [-16.21]*** -0.154 [-17.69]*** -0.158 [-15.90]***
ln最寄駅距離 -0.147 [-41.03]*** -0.154 [-42.42]*** -0.177 [-42.91]***
建物倒壊危険度 -0.020 [-4.92]*** -0.003 [-0.66] -0.005 [-0.96]
都心3区ダミー 1.029 [19.13]*** 0.764 [12.79]*** 0.834 [13.57]***
都心8区ダミー 0.709 [15.14]*** 0.778 [17.29]*** 0.763 [14.92]***
定数項 14.130 [141.54]*** 14.356 [140.72]*** 14.375 [123.51]***
決定係数 0.940 0.941 0.946
補正決定係数 0.938 0.940 0.945
観測数 8320 7295 5880
* p<0.1, ** p<0.05, *** p<0.01
※所在地ダミー、鉄道沿線ダミー、年次ダミー、都心 3 区×年次ダミー、都心 8 区×年次ダミーは省略する。
表
16-2
実証分析2-1の結果②利用現況:住宅以外 被説明変数:ln
公示地価実証分析
2-1 [推計式 2-1]
利用現況:住宅以外すべての地価ポイント (4)
すべての用途地域
(5) (6)
低層住宅地除く 住宅地除く
β t値 β t値 β t値
特定沿道ダミー -0.185 [-9.64]*** -0.188 [-9.66]*** -0.198 [-8.95]***
特定近隣ダミー -0.105 [-7.18]*** -0.102 [-6.85]*** -0.100 [-6.02]***
緊急近隣ダミー 0.076 [4.81]*** 0.076 [4.79]*** 0.076 [4.35]***
緊急以外ダミー 0.076 [4.64]*** 0.080 [4.84]*** 0.063 [3.37]***
前面道路幅員 0.012 [17.16]*** 0.012 [17.16]*** 0.012 [15.81]***
駅前広場接面ダミー 0.482 [13.76]*** 0.480 [13.57]*** 0.468 [12.63]***
地積 0.000 [-2.44]** 0.000 [-2.41]** 0.000 [-3.00]***
容積率 0.003 [41.75]*** 0.003 [41.29]*** 0.003 [38.57]***
低層住宅地ダミー 0.313 [9.07]***
商業地域ダミー -0.339 [-14.76]*** -0.338 [-14.58]*** -0.250 [-4.53]***
近隣商業地域ダミー -0.144 [-8.30]*** -0.145 [-8.26]*** -0.033 [-0.63]
準工業地域ダミー -0.092 [-4.17]*** -0.091 [-4.08]*** 0.029 [0.55]
工業・工業専用地域ダミー -0.175 [-3.71]*** -0.179 [-3.77]***
ln
都心主要4
駅距離 -0.224 [-17.90]*** -0.222 [-17.37]*** -0.212 [-14.45]***ln
最寄駅距離 -0.161 [-22.09]*** -0.162 [-21.81]*** -0.163 [-19.85]***建物倒壊危険度 -0.087 [-11.09]*** -0.084 [-10.58]*** -0.088 [-9.87]***
都心
3
区ダミー 0.915 [6.51]*** 0.489 [2.91]*** -0.183 [-0.73]都心
8
区ダミー 0.951 [6.73]*** 0.519 [3.07]*** -0.069 [-0.27]定数項 14.445 [71.57]*** 14.844 [67.01]*** 15.253 [49.59]***
決定係数 0.901 0.900 0.898 補正決定係数 0.898 0.897 0.894
観測数 4925 4805 4005
* p<0.1, ** p<0.05, *** p<0.01
※所在地ダミー、鉄道沿線ダミー、年次ダミー、都心 3 区×年次ダミー、都心 8 区×年次ダミーは省略する。