6. 実証実験結果
6.4 評価・考察
6.4.4 実施・評価プロセスの妥当性の検証
本節では、オンラインコースとしての「国際コミュニケーション論」の効果として、
事前に想定していた課題は解決されたのか、またその原因は何かについて、実施・評価 プロセスの視点から分析することで妥当性を検討する。
(1)
評価・考察方法
表 6-20は青山学院大学国際政治経済学研究科国際コミュニケーション専攻において 想定していた課題と、その解決のために「国際コミュニケーション論」で取り入れた 手法である。その次に実施・評価プロセスにおける妥当性の検証方法を述べる。
表 6-20 想定された課題と妥当性の検証方法
課題 解決策 実施・評価のプロセス 検証方法
(a)多忙な社会人大学 院生が多い
非同期分散環境
CSCLの促進
SRL支援
非同期CSCL
社会人のドロップアウト率 CSCLの内容の偏り
メンタリング (b)海外の研究者との
共同の教育の場が少 ない
国際共同開発 国際共同実施
海外 SME とのコミュニケーシ ョン促進
海外 SME とのコミュニケーシ ョン状況
(c)他専攻の単位取得 に心理的障壁がある
広報活動 メンタリング
広報のためのビラ、ウエッブサ イト構築
週末を含む複数の事前説明会実 施
メンタリングの工夫
説明会参加人数 メンタリング状況
(d)これまでにeラー
ニング授業を行って いない
事前実証実験 海外事例に学ぶ
事前実験の成果に基づいたメン タリング
学習形態への評価
(a)多忙な社会人大学院生が多い
社会人学生が授業に出席し続けることが難しいこと、社会人学生とフルタイムの 学生の間に交流の場が少ないこと、そして前提知識の差が解消されにくいという
3つの問題から、グループの割り振りやメンタリングに工夫を凝らした。
社会人大学院生のドロップアウト率や
CSCLにおける発言数を検証の際の評価基 準として用いる。
(b)海外の研究者との共同の教育の場が少ない
コースの主体となった国際政治経済学研究科国際コミュニケーション専攻は、海 外の高等教育機関と協定を結んでおり、共同研究、教育が行われている。が、海外 の
SMEによる授業は、多くが大学院生にとって出席の困難な集中講義形式であった。
そこで、本コースによって海外の
SMEとの共同の、教育の場の確立を図った。
海外
SMEとの連絡の記録を見て、それがスムーズに行われていたかどうかをこの 試みの成否の判断材料とする。
(c)他専攻の単位取得に心理的障壁がある
国際コミュニケーション専攻は国際政治経済学研究科の他の二専攻と国際マネジ メント研究科の講義を、科目数は限定されているが履修可能である。が、他専攻の 単位取得を試みることは異質な環境に飛び込むことであり、それが障壁となってい た。本コースはオンラインで開講することでその問題を解消できると考えられた。
他専攻の院生の学習活動などから、この試みの成否を判断する。
(d)これまでにe
ラーニング授業を行っていない
これは、なによりも学習者が
SRLや
CSCLに慣れていないということを意味して いる。そこで、学習形態としての本コースの評価を分析して初めての
eラーニング 授業としての評価を探る。
(2)
対象とする実証実験データ
以下のようなデータを用いるが、課題の性格上、質的データが中心になる。
(a)ログ
LMS
各機能、html 教材、ストリーミングビデオサーバ
(b)提出課題内容毎週の課題(12 回分)、期末タームペーパー
(c)掲示板ディスカッション内容
協調学習、メンタリング
(d)e
メールによるコミュニケーション内容
(e)学習者アンケートプレアンケート、ポストアンケート
(f)教員インタビュー半構造法による。可能な者については学習者インタビューも実施した。
(g)プロジェクト記録
会議録、説明会議事録、出納記録など
(h)学習コンテンツhtml
ファイル、PDF ドキュメント、ビデオ(VOD)、音声ファイル
(3)評価・考察
(a)多忙な社会人大学院生が多い
終了者
11名中、フルタイムの院生
4名に対し社会人は
7名、課題の平均点は社会 人がフルタイムの院生を約
5点上回り、学習活動では社会人はフルタイムの院生の
3倍以上発言していた。
以上のことから、本コースは社会人院生にも受講しやすかったと推定される。
(b)海外の研究者との共同の教育の場が少ない
12
回の授業のうち、7 回分を海外の
SMEが担当し、そこで課され、提出された課 題は全て
SMEに送られ、6 名中
5名の
SMEからコメントが送り返された。これに ついて学習者の反応は良好だった。
(c)他専攻の単位取得に心理的障壁がある
他専攻からは
2名が受講し、1 名が終了した。もう
1名は時間の都合上学習に参 加できなかったが、e メールでの定期連絡など、意欲が認められた。終了した
1名 の学習活動履歴からは、他専攻という障壁を感じている様子が見受けられなかった。
(d)これまでにe
ラーニング授業を行っていない
ポストアンケートで学習形態について
4項目の評価質問を尋ねたところ、学習者
から概ね高い評価を得た。特に、「よく準備されていたコースである」という質問項
目に対しては、5 段階評価で
3.8を超す平均値を記録した。SRL 中心のコースとして
は、これは非常に高い評価であるといえる。
3.80 3.67 3.40
3.87
3.80 3.40 3.40
3.80
1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 このコースを友人にも勧めたい
もし機会があれば、この形式のコースを再び 受講したい
この講義のスタイルは自分に合っている よく準備されていたコースである
終了者 全体