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大船渡市魚市場(大船渡漁港)

ドキュメント内 漁港水産物情報システム調査研究 (ページ 160-196)

2.1 漁港・市場の概要

市場名:地方卸売市場大船渡市魚市場 開設者:大船渡市

卸売業者:大船渡魚市場株式会社 買受人:85社(2018年8月時点)

(1)震災からの復旧

大船渡市魚市場は岩手県の拠点的な魚市場であり、大船渡市をはじめ岩手県沿岸南部の 漁業者の水揚基地となっているほか、沖合の三陸漁場で操業する廻来漁船の水揚基地とし ても機能している。魚市場に水揚げされる水産物は、鮮魚として市内で小売されているほ か、築地市場をはじめとした消費地市場などにも流通している。また、一度に多く水揚げ されるサンマやサバなどは地元水産加工業の加工原料として利用されている。

1999年に周辺の魚市場を統合し、県内外から集まる水産物を原料にした水産加工業が盛 んな県南地域の流通拠点としての役割を担ってきた。しかし水揚げ量は、1984年の7万ト ンをピークに減少し、 近年は約5万トンで推移していた。消費者へ新鮮で安全な水産物 を安定的に供給するために、衛生管理の強化、陸揚げ等の効率化が課題であった。

そこで、高度な衛生管理や鮮度管理に対応した新たな市場の整備に向けて、1999年度に

「大船渡魚市場整備基本構想」「大船渡魚市場整備基本計画」が策定されるとともに、具 体的な計画の検討を進め、「流通構造改革拠点漁港整備事業基本計画書」が2008年3月 水産庁より承認された。これに基づき、2008年度より流通構造改革拠点漁港整備事業とし て、閉鎖型建物構造の高度衛生・品質管理に対応した魚市場の整備が進められ、震災復興 を経て、完成・供用に至った。

2008年~2013年度にかけて魚市場本棟の建設工事(第1期工事)が進められ、この 間、東日本大震災により工事現場が被災し、工事の中止などがあったが、2014年4月に完 成・供用開始されている。また、2014年~2015年度にかけて、旧魚市場の解体とサンマ やイナダ等の水揚げ専用となる南側岸壁上屋の建設工事(第2期工事)を進め、2016年2 月から供用開始されている。2016年4月には、優良衛生品質管理市場・漁港として認定さ れている。

(2)高度衛生管理施設・設備等

市場の配置及び衛生管理施設・設備等を図2.1.1に示す。衛生管理対策として、屋根付 岸壁、閉鎖型荷さばき場、清浄海水導入施設等を整備し、鮮度保持に効果の高い海水シャ ーベット方式の製氷施設を併設したほか、場内の車両は電動のフォークリフトとしてい る。自然換気システムやLED照明などは省エネルギーにも配慮している。地域の活性化に も資する魚市場を目指し、展示室や多目的ホール、飲食施設等も一体で整備されている。

大船渡市魚市場webサイトでは水揚げされる水産物の情報や施設の概要などを公開すると ともに、一般見学や施設利用にも対応している。

157 (3)市場取引業務等における電子化・ネットワーク化 1)電子化・ネットワーク化の概要

高度衛生管理型漁港・市場の整備とともに、電子化・ネットワーク化を進めており、そ の状況を図2.1.2に示す。魚市場内を無線LANで結ぶシステムを導入し、卸売業務の効率 化と衛生管理・鮮度管理の充実強化を進めている。入札や計量・衛生管理の処理に、約 100台のタブレット端末を活用し、毎日の入船・入荷情報や入札結果を場内の大型モニタ ーに表示するほか、安全・安心な水産物に関する情報はインターネット、webサイトを通 じて発信している。

図2.1.1 大船渡市魚市場(大船渡漁港)の衛生管理施設・設備(上:1階、下:2階)

158 2)場内情報通信環境と集中管理

魚市場の事務室に中央監視・管理用のサーバーが設置され、すべての情報を集中管理され ている。サーバーには、市場取引、衛生管理、清算業務(経理・財務諸表等が含まれている)

に係るデータの送受信、処理、記録・保存、ネットワーク化の機能が入っている。電気・水 道等公共料金は各設備に付いている制御盤で管理されているが、これらの使用量や料金に 関わるデータは、サーバーに記録・保存されている。

場内は無線LANによりどこにいてもシステムにアクセスできる環境である。市場職員と 買受人はタブレットを使用して、システムにアクセスし、市場取引業務を行う。魚市場よ り買受業人1社に対して数台のタブレットが提供されている。買受人の控室にはかつて伝 票を渡すボックスがあったが、現在はこの中にタブレットと電源・充電器が備えられてい る。

3)市場取引業務における電子化・ネットワーク化

(入荷予定情報の収集と提供)

入船情報は直接魚市場へ、あるいは船上からいったん陸上の会社事務所や番屋から連絡 が入り、これらを職員が入力する。入船予定の情報が電話で入ってくる。その情報をパソ コンから入力する。

(荷受け・選別・計量・販売原票作成)

陸揚げ後,漁獲物は選別される。市場職員は、計量して〇〇丸(船名)が〇〇(魚種・サ イズ)が何トン(数量)獲れたかタブレットから入力して水揚げ伝票をつくる。これで、何

図2.1.2 市場取引における電子化・ネットワーク化

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時にどこで販売が行われるか、買受人の下見ができるかが決まることになる。

(フォークリフトによる計量システム)

移動式スケール(台秤)で計量する場合には、その結果をタブレットから入力する。ス カイタンクについては、RFIDが取り付けられ個体管理ができることから、計量スケール付 きフォークリフトにより自動的に実重量が計量され、サーバーへ自動記録される。

(販売(入札・せり)・取引結果の公表)

入札については、買受人がタブレットを携帯しながら、商品の下見を行う。入札開始の 案内があると買受人はタブレットから商品番号と単価を入力して入札する。入札では、1 回だけということではなく、何回かトライできるしくみになっている。入札室内では、市 場職員が応札状況を見ながら、締め切り時間に近づくとマイクでアナウンスし締め切り、

そして自動的に落札者が決まる。

入札結果は、ⅰ.場内モニターに表示されるとともに、ⅱ.入札室からアナウンス、

ⅲ.市場職員が商品の陳列されている付近において、タブレットを見ながら読み上げ、そ してⅳ)落札者名を手書きした紙をタンクに貼付する。買受人は自分が応札したものは自 分でタブレットから見ることができる。

せりについては、せり人の発声で進行し、購入したい買受人も発声で講じる従来方式で あるが、せり人に随伴している市場職員がロット別に逐次結果をタブレット入力する。

(荷渡し・搬出)

荷渡し・搬出~トラックスケールで計量する場合には、荷出し・搬出時に自動計量される。

荷渡しする時には,どの人にどれを渡すかをタブレット内の情報で確認してから行う。

4)webサイト、インターネットによる市場取引結果および水揚げ統計情報の提供・公表

市況日報や水揚げデータなどのその日の市場取引結果や月別、年別、魚種別、漁業種類別 等に集計した水揚げ統計情報等を関係機関にインターネット(電子メール)で報告するとと もに、当該漁港(産地市場)のwebサイトに掲載し、これら情報が目的に応じた利用に対応 する、PDF、Excel、CSV形式のダウンロードが可能なシステムである。

5)衛生管理の確認、記録・保存における電子化・ネットワーク化

衛生管理のゾーンごと担当職員は、業務の合間を見ながら、」現場にタブレットを携帯し、

衛生管理項目について状況を確認、その結果を入力して記録している。タブレット操作では、

キーボード入力の他、必要に応じて備考欄への記入や撮影した写真を差し込むことができ る。確定した記録については、上位担当者が確認し記録・保存する。なお、記録・保存した 内容は改竄できない仕組みになっている。

6)施設・設備の管理における電子化・ネットワーク化

施設・設備の管理のため、ライブカメラが設置されており、魚市場のwebサイトで公開し ている映像もある。魚市場の指定管理者として、利用者からテナントの賃貸料、貸出してい る電動フォークリフト、スラリー氷、電気・水等公共料金などの使用料金を徴収している。

160 7)産地市場トレーサビリティ情報の充実

販売情報の電子化により産地市場でのトレーサビリティ情報を充実させている。購入し た商品がいつどこで漁獲されたものであるか買受人が取引先から求められる場合があり、

発行した販売通知書をもとに市場で取り扱った商品の生産履歴を特定し、産地情報の証明、

市場での取引情報の提供などを行う体制を整えている。しかしながら、輸出のための証明書 作成に必要な漁獲・陸揚げデータを提供できる体制には至っていない。

ドキュメント内 漁港水産物情報システム調査研究 (ページ 160-196)