第5章 結論
6. 外側の層が高い屈折率をもっ円柱についても, 上述の適用限界は, 円柱のすべての層 にわたって平均した屈折率でみれば, 大きな差はなく, 屈折率分布にはあまり依存し
-84-ない.
7. 半径の小さい円柱について, 一層の厚みが1
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8波長以下になると, 最小点の探索が不 安定になり, 正確な屈折率の再構成ができなくなる. これは, 解像限界を示している.8. 雑音が含まれる観測散乱波からも同様な再構成を行った. 一般に, 厳密な散乱波から 正確な屈折率が再構成できる物体に対しては, 致命的な誤差を伴うことは極めて少 ない. 偏波の違いについては, H波入射の際, 雑音による再構成値の誤差が大きくな る. また, 損失性円柱を再構成するときには, 無損失円柱のときに比べ, 雑音による 再構成値の誤差が大きくなり, 特に内側の層で大きい誤差を伴う.
その他に, 軸対称屈折率分布の再構成に関して, 次の結果を得た.
9. 分割数を次第に増やしながら再構成する手法は, 分割数を固定して再構成する手法に 比べ, 高い屈折率を持つ物体に対して有効である.
10. 3層円柱のように, 実際の円柱の境界と再構成のとき設定する境界が一致しない例で も, 平均的な再構成が可能である.
11. 生体のように高い屈折率を持つ円柱について, 物体外部を水として再構成を行うこと で, 精度の良い再構成像が得られる.
第4章では, 非軸対称2層構造の円柱の再構成を検討した.
1. 非軸対称2層構造の円柱についても, 各層で波動関数展開して, 境界整合の手法を用 いることで, 散乱波が算定できることを示した. 但し, その算定には, 軸対称多層円 柱の場合とは異なり, 連立一次方程式を解く必要がある. 第2章と同様な散乱波に関 する平均二乗誤差を用いることにより, 最適化問題として円柱を再構成する手法を示 した.
-85-2. 二種類の円柱に対する再構成例をあげ そのモデルについては, 真値とよく一致した 再構成値が得られることを示した.
3. 観測散乱波に雑音が含まれる場合は, 特に内側の層の精度が悪くなることを示した.
最後に, 本研究に関し, 今後の課題についてまとめる.
1. 第3章では, 適用限界は屈折率の変化に対する散乱波パタンの変化に強く関係してい ることを示した. この関係については 更に 定性的・定量的な評価が必要である.
2. 第3章では 半径が2波長以下の円柱に対して 本手法の有効性を検討した. これよ りも, 大きい円柱に対する検討が残されている. この場合, より多くの展開項数を必 要とし, そのため, より高次のベッセル関数を必要とすることから, 計算時間の増大 や誤差の増加が見込まれる.
3. 第3章では, 事前情報として屈折率がわかっていないという立場から再構成できる範 囲を調べるために初期値として, 自由空間中(円柱外部)の値を用いた. しかし, こ の初期値付近では 最適化すべき関数の変化が複雑であり その点での勾配ベクトル の向きが最小点の方向を向いているかは疑問である. 従って, 初期値の選択法や制約 付最適化法の適用を考慮する必要がある.
4. 本論文では, 最適化の際, 降下法の一つである準ニュートン法を利用した. 降下法が 局所的最小値に陥ってしまうことは, 既に述べたとおりである. これを, 克服するた めに, 降下法とは異なる最適化法であるSimulated annealing法, Genetic algorithm 法などの利用例が報告されている[39-41,49]. しかしながら, その適用性は十分に検 討されていない. その検討は今後の課題である.
5. 第4章では,
一般的形状をもっ物体の再構成へのーアフローチとして非軸対称2層構造の再構成を試みた. しかし, そのアルゴリズムで反復毎に行列の要素を計算しなけ
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-ればならず, 多大な時間がかかる. この計算時間を減らすことは今後の課題である.
また, H波入射についても 未調査である.
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-謝辞
本研究を進めるにあたり 終始懇切丁寧な御指導を賜わり 折りに触れ御鞭縫を頂きまし た九州大学大学院システム情報科学研究科立居場光生教授に深く感謝の意を表します.
本論文をまとめるにあたり, 貴重な助言を賜わりました九州大学大学院システム情報科 学研究科安元清俊教授 西哲生教授に深く感謝の意を表します.
本研究を進めるにあたり活発な御討論をして下さいました大分大学工学部電気電子工学 科工藤孝人助教授, 談話会等を通じ有益な助言を頂きました九州大学大学院システム情 報科学研究科吉富邦明助教授に感謝の意を表します.
研究の諸般に関し, 日頃御協力頂いている藤崎清孝助手を初めとする情報通信講座の 皆様に御礼申し上げます.
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-付録A 散乱問題を記述する積分方程式
一般に, 回折トモグラフィの再構成法は, 非線形積分方程式により定式化される. その 方程式をここに記述しておく.
ここでは, 2次元問題を考え, 問題図を図A.lに示す. 本節では, E波入射のみを扱う.
再構成すべき物体は 誘電体とし , 線形性, 等方性, 非分散性を仮定する. その外部は 自由空間(屈折率no)とする. 入射波をUi , 観測領域Sおいて散乱波をUs , 再構成領域V において全波を 宙 と書くと, 波動方程式(微分方程式)は,
[
マ2 + nok2] Ui(r)
=0ヲ [ \72 + nok2 ] us(r)
=0,
[
\72 +η2(r)が]
世(r) = 0,(A.l)
γεS (A.2)
TεV (A.3)
で与えられる. ここで , kは真空中の波数である.
式(A.l)-(A.3), グリーンの 定理, 外向放射条件より, 次の積分表現を得る.
宙(r) = Ui(r) +
1_
G(r,r')o(r')並(〆)dr'ぅ TεV (A.4)JV
us(r)勾us(r) =
1 _ _
G(r,〆)o(r')宙(〆)dr', rεS (A.5)JV
ここで , G は自由空間におけるグリーン関数である. o(r) = k2(η2(r) - nO)は, 物体の情 報を含んで おり, 物体関数と呼ぶ. 観測散乱波は一般に誤差を含むため別の 記号らを用
いた.
逆問題では, 観測散乱波乱sから物体関数o を求めることが目的である が, 積分項の中 の 全波宮もまた未知であ り o に依存している. このため逆問題は非線形と呼ばれる.
式(A.4), (A.5)は, 一般に, モーメント法[50]を用いて離散化され , 次の ように行列方
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