第 4 章 EGR クーラの性能回復挙動
4.2 コールドスタート試験による EGR クーラの性能回復
4.2.3 堆積物の成分分析と示差熱分析
前項の試験結果から,コールドスタートのすす堆積試験によって熱交換性能 0
100 200 300 400
0 10 20 30 40
No.15 No.16 No.17
Repetition number of JE05 mode test N Heat transfer coefficient aW/(m2 K)
JE05 mode 1470sec - 1640sec average Exhaust gas flow
No.15:22g/s, No.16:18g/s, No.17:12g/s
Hot start Cold start Hot start Cold start Hot start
の回復が起こることが明らかになった.従ってホットスタート試験後,コール スタート試験後および性能回復後のそれぞれにおいて,すす堆積層の性状が異 なることが予測される.この違いを分析するために,ホットスタート試験とコ ールドスタート試験の新たな組み合わせによるすす堆積試験を行った.使用す るサンプルは溝形状 AのEGR クーラとし,試験番号はNo.18~No.22とした.
各試験の運転サイクルの条件を表4-1 に示す.またEGRクーラを流れる排ガス 流量は,いずれの試験でも JE05 モード運転の高負荷運転期間の平均値で 16g/s とした.
Table4-1 Test condition and mass of deposits after fouling test
Fig.4-3 Transition of heat transfer coefficient by JE05 mode test
図4-3に各試験における熱伝達率の推移を示す.サンプルNo.18はホットスタ ート試験を 20 サイクル繰り返した結果,No.19 はその後にコールドスタート試 験を1サイクル追加した結果であり,No.20とNo.21はホットスタート試験のサ イクル数を10とした場合の結果である.またNo.22はコールドスタート試験の みを10サイクル繰り返した結果である.No.18~No.21ではホットスタート試験 の繰返しによって熱伝達率は低下するが,No.19およびNo.21のいずれの試験で も,コールドスタート試験を 1 サイクル追加するだけで,熱伝達率は第 1 サイ クルと同等にまで回復した.一方 No.22 のコールドスタート試験では,すすの 堆積は生じるが熱伝達率の低下はほとんど起きていない.繰返し試験後に EGR
0.24 0.34 0.60 0.23 0.72
Mass of deposits [g]
Hot start 10cycle + Cold start 1cycle 21
Cold start 10cycle 22
Hot start 10cycle 20
Hot start 20cycle + Cold start 1cycle 19
Hot start 20cycle 18
Test condition No.
0.24 0.34 0.60 0.23 0.72
Mass of deposits [g]
Hot start 10cycle + Cold start 1cycle 21
Cold start 10cycle 22
Hot start 10cycle 20
Hot start 20cycle + Cold start 1cycle 19
Hot start 20cycle 18
Test condition No.
0 100 200 300
0 5 10 15 20
No.18 No.19 No.20 No.21 No.22
Repetition number N Heat transfer coefficient aW/m2K
JE05 mode 1470sec - 1640sec average Exhaust gas flow = 16g/s
クーラに堆積したすすの質量を表 4-1 に示した.ホットスタート試験によって
0.6g~0.7gのすすが堆積するが,コールドスタート試験を1サイクル追加した後
の堆積物の質量はその半分以下であり,コールドスタート試験によってすすの 質量が減少したと考えられる.
上記のすす堆積試験の終了後,得られたすすの堆積物に対して成分分析と熱 重量分析を行った.分析に使用するすすは,金属成分が混入しないようプラス チック製の掻き出し器具を用いて EGR 排ガス流路全体から採取した.No.20~
No.22の試験によって堆積したすすに対してDry-Soot やSOF等の分離測定を実
施した.分析には MEXA-1370(HORIBA)を用いて行った[7,8].その分析結果 を図 4-4 に示す.いずれの試験においてもすすの大部分を Dry-Soot が占めてお り,その割合は 82%~89%であった.運転条件によって大きな差が見られるの はSOF(Soluble Organic Fraction)の割合であり,コールドスタート試験のみを 10 サイクル行った No.22 が12%で最も大きく,続いてホットスタート 10 サイ クルと追加のコールドスタート試験を1サイクル行ったNo.21が9%,最も割合 が小さいのはホットスタート試験のみを 10 サイクル行った No.20の 6%であっ た.
Fig.4-4 Composition of deposits
図 4-5は No.20~No.22の試験で堆積したすすの示差熱分析(DTA)の結果で
ある.DTA の電圧は標準試料との温度上昇の差であり,この値が大きくなるこ とはテスト試料の発熱を意味する.No.20およびNo.21においてはほぼ同じ温度 域で質量減少が起きていたが,No.22はそれよりも低温側で質量減少が起きてい た.またDTAの電圧値においてピーク電圧が正側であることから,すすの質量 減少が酸化分解によるものであることがわかる.なお温度 200℃以下において DTA の電圧値が大きくなっているのは,この温度域ではすすに変化は起きない と考えて,昇温速度を意図的に速めたためであり,特別な意味は持っていない.
JE05モード運転を用いた本研究のすす堆積試験では,EGRクーラ入口での排ガ
0%
20%
40%
60%
80%
100%
Hot 10cycle Hot/Cold Cold 10cycle
Other Sulfate Dry-soot SOF
No.20
(Hot10)
No.21
(Hot10+Cold1)
No.22
(Cold10)
ス温度は高負荷運転時でも350℃程度であり400℃よりも低いため,堆積したす すが高温の排ガスによって酸化していることはさほど考慮する必要はない.ま た低温酸化の問題もあるが,すすが堆積する伝熱面上は排ガス温度よりも相当 低温となっているため,これも本論では考慮しないこととする.従って,熱伝 達率の回復は SOF成分の蒸発による堆積層の物理的性状の変化や,堆積層の物 理的な離脱が中心と考えられる.
Fig.4-5 DTA analysis of deposits