第4章 覆工の役割と施工方法および養生方法
写真 4. 4-1 坑内散水作業状況
いる.その中で覆工養生に関する調査結果を抜粋し,まとめたものを表4.4-3に示す.これよ り,脱型前の養生については保温という目的を達成するためであり,施工方法も限定されてい る.また,脱型後の養生よりも実施されている現場が多いことが分かる.一方,脱型後の養生 については施工方法がまちまちで工法も定着していない.
表 4.4-3 覆工養生アンケート結果[3]
項目 脱型前の養生 脱型後の養生
実施 現場
23 現場(全体 57 現場の 40%)で実施されて いる.
18 現場(全体 57 現場の 31%)で実施されてい るが,脱型前の養生よりも実施現場は少ない.
主な 養生 方法
施工方法も限定されており,技術も定着して いる.
・ 型枠部のシート養生とヒータによる給熱
・ 断熱養生シート
・ エアー式バルーンの採用
・ 型枠取りはずし時期を遅らせる対応
施工方法はまちまちで,定着しているとは言い 難い.
・ 通気の遮断
・ ミスト噴霧
・ 散水による養生
・ 坑内の湿度を一定に保つ養生
・ 断熱養生シート,養生バルーンによる養生
・ 被膜養生剤の使用
(3)覆工コンクリートの養生方法
表4.4-4~4.4-5には,型枠取りはずし後における代表的な養生方法を示した.バルーン工法
[8]は,覆工コンクリート養生の改善の草分けとなってもので適用実績も多い.しかし,保
温効果は期待できるが,保水養生に留まっている.プラスチックフィルム養生[9]は乾燥に ともなう練混ぜ水の逸散を防止する典型的な保水養生である温度制御噴霧式養生法[10]は,
文字どおり噴霧する水温を調整しながら保水養生を行うことが特徴的である.システマチック 養生台車[11]は,使途による保水養生と湿潤養生マットを養生時期によって変えることで保 温,給水の適用時期を効率的に実施している.
バルーン工法から始まって,ここで紹介した技術の他にも給水方法(散水,噴霧),シート材(マ ット,パネル,フィルム)などの工夫を行なった技術もある.ここで重要なことは,コンクリー トの養生目的あるいはその効果として,湿潤養生や湿度90%以上等の記述が見られるが,本開 発の区分では,これらはいずれも保水養生であり,給水養生ではない.
表 4.4-4 トンネル覆工コンクリートの代表的な養生工法(1)
工法の
名称 バルーン工法[8] プラスチックフィルム養生[9]
養生の
分類 シート養生(7 日間) シート養生(28 日)
養生方法
セントル用とコンクリート用の 2 種類のバ ルーンを使用.
前者は,セントル妻部と通行路を覆う.
後者は,専用台車を用いてトンネル断面と同 形バルーンで覆う.
コンクリート表面に噴霧した後高密度ポリエ チレンフィルムを密着させる.シート端部をテープ で密閉し長期的密着を確保.アルミ製パイ プ支柱とナイロン糸でフィルムの剥離防 止.
概要図
品 質
温度 保温養生効果あり,覆工内外温度差なし. 初期数日を除いて保温効果は小さい.
湿度 初期 2 日まで 95%以上,その後 80%まで低 下.
坑内湿度 78.2%に対し,フィルム内は 99.0
~99.9%.
強度 材齢 7 日反発度 1 割増加. 標準養生に対し 11.2%増加.
ひず み等
材齢 21 日まで気中養生より減少. 透気速度の平均は気中養生に比べ若干低 下.
その 他
温度ひびわれ抑制効果を期待. -
施工課題
適用実績 200 件以上と最も実績が多いが,養 生効果は小さい.給水は不可.
1 スパンの施工を 3 人/日の人員を要すため,効 率化が必要.シートの落下が懸念.
給水は不可.
表 4.4-5 トンネル覆工コンクリートの代表的な養生工法(2)
工法の
名称 温度制御噴霧式養生法[10] システマチック養生台車[11]
養生の 分類
シート養生 散水養生(噴霧)(7 日間)
シート養生(2 日) 湿潤養生マット(4 日)
養生方法
遮水シートとコンクリートとの間の 30~60cm の密閉空間に工業用微霧発生用ノズルを 3m ピ ッチ,周方向 4 段に配置.湿度 90~100%を維 持.噴霧水温度によって温度制御.
外気遮断シートを敷設した台車.
厚さ 2cm のステラシートを湿潤状態に保 持するため,天端部および両肩部に有孔パ イプを通水する仕組みの台車.
概要図
品 質
温度 噴霧水の温度を調整することで養生温度調整. 無養生に比べ表面温度を 10℃程度高く保 温.
湿度 湿度 90~100%の湿潤状態. 坑内湿度 30%に対し,平均 70%程度.散 水時一瞬 100%.
強度 標準水中養生の 95%程度. 反発度は水中養生の 90%.
ひず み等
内外温度差によるひびわれ抑制効果を期待. 内部ひずみ,有効応力は圧縮側.
表面ひずみもばらつき大.
その 他
細孔構造の緻密化が進行. 結合水量差が見られない.
施工課題
必要水量 144ℓ/hr と多い.また,ノズル閉塞防 止用対策が必要であり,大型架台が必要となる ためコストも増大.
湿潤養生マットへの均一な給水が困難.水を含 んだマットを保持するため,架台が大規模にな る.
4.4.4 養生以外の覆工コンクリート品質向上対策
トンネルの工事は,掘削,ずり出し,坑内運搬,支保工,覆工などの様々な過程を得て完成 する.しかし,最終的にはトンネルの出来栄えを代表するのは,覆工コンクリートの最終仕上 がり状態である.ひび割れや縞模様あるいは継目の目違いなどは,仕上がりの評価に大きく関 わる.
覆工コンクリートは,設計基準強度は18N/㎜2と一般の鉄筋コンクリート構造物に比べて低 く,水セメント比が大きいため,やや貧配合の傾向がある.また,打設した翌日には型枠支保 工を取りはずすことから,コンクリート表面が極めて早期に露出することとなる.このため,
十分な湿潤養生行なえず,コンクリートが有する“本来の性能”を発揮できていないことが想 定される.覆工コンクリートは無筋コンクリートが一般的で,コンクリートの中性化や塩分に よる鉄筋腐食が問題となることは少ないが,施工中の温度ひび割れあるいは乾燥収縮ひび割れ が,問題視されることがある.特に,コンクリート片の剥落事故では,ひび割れが進行しては く落したり,ひび割れに浸潤した雨水が凍結融解作用によって剥落を助長したりすることが指 摘され,ひび割れに対する認識が高まってきた.
このように覆工コンクリートのひび割れを抑制すること,耐久性の高いコンクリートとする ことが社会的にも求められており,最近では,覆工コンクリート自体の品質を向上させる試み が各所で行われている.例えば,高性能AE減水剤を使用して単位水量を減じて乾燥収縮ひび 割れを抑制したり,単位セメント量を減じて温度応力を低減したりする試みがある.また,膨 張コンクリートとすることで乾燥収縮量を減じたり,短繊維を混入してひび割れを抑制したり 剥落を防止するなど,主として材料面からの取り組みがある.
施工面からの取り組みでは,天端部の締固めを行なう引抜きバイブレータなど締固めの工夫,
坑内温度を高めたり,脱型後のコンクリート表面にバルーンやマットを設置して保温したり,
養生マットやシートとコンクリート面の間に散水や噴霧を行って,この部分の湿度を100%程 度まで高める保水養生など各種の工夫されている.また,脱型後のコンクリート表面に水分の 逸散を抑制する養生剤や,コンクリートに含浸して表層のコンクリートを改質する改質材を塗 布する工法なども試みられている.
4.5 覆工コンクリートの養生効果に関する既往研究
近年では,坑内環境を改善するために大型換気設備の導入が進み,坑内温度および湿度が低 下しており,コンクリートに対する坑内環境は悪くなっている.そのため,乾燥収縮が原因と されるひび割れが発生している.本節では,覆工コンクリートの養生方法によって得られる養 生の効果を,養生環境の改善という観点で検討した.
4.5.1 養生温度および湿度特性
(1)コンクリート養生バルーンによる養生
先ず多くのトンネルで施工実績があるセントルバルーンおよびコンクリート養生バルーン [8]について述べる.セントルバルーンは,打ち込み後のコンクリート温度を高く保つことがで きる.覆工コンクリートにも初期強度の発現に不利な高炉セメントを用いる傾向が高まってき たことから,18時間前後で脱型強度を得るためには,コンクリートの練り上がり温度の低い秋 季から春季にかけては有効である.しかしながら,打込み温度が高くなる夏季においてはむし ろ養生温度を下げる方が,長期的な温度ひび割れの抑制には有効である.また,一般的な道路 トンネルでは覆工厚は20~40cmであることから覆工コンクリート内部と表面の温度差はもと もと小さく,表面ひび割れの原因とはならない.
脱型後の温湿度効果については図4.5-1に示すように,コンクリート養生バルーンによりコ ンクリート表面温湿度を坑内温度より高く保てる.しかし,覆工コンクリートにとっては脱型 強度が得られ次第,できる限り低温で養生されることが好ましく,養生終了時(材齢7日程度) には坑内温度とほぼ平衡することが理想的である.
(2)プラスチックフィルムを用いた養生
壱岐ら[9]のプラスチックフィルムを用いた養生方法では,フィルム端部をテープで接着し,
空気の侵入を防止し長期的な密着性を得ている.図4.5-2~4.5-3に示すように,ある程度の保 温とコンクリート表面の湿度を100%に保つ効果はあるが,シートの貼り付け状況の観察では,