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アクアカーテンの覆工コンクリートへの適用

7.1 はじめに

本研究では,養生シート,吸引装置,給水装置から構成されるアクアカーテン養生システム を開発し,鉛直壁面にアクアカーテンを適用する方法(浸水養生)について,第5章でその詳 細を述べた.

型枠を取りはずした覆工コンクリートに対して給水養生できる方法は,近年開発が進みいく つかの工法があるが,トンネルだけでなく一般の構造物の鉛直面や傾斜面にも適用している工 法は少ない.何故ならば、トンネル覆工コンクリートにおいては,養生シートを上向きに設置 する必要があることや、養生時間が12~24時間程度であり養生の対象となるコンクリートが 若材齢で強度が小さく、アンカー等の冶具による養生マットや養生シートを固定するための反 力をコンクリートから得ることは、覆工コンクリートの品質確保の面から課題が多いためであ る.また,トンネル覆工コンクリートの養生においては,トンネル掘削作業と並行して養生作 業を行う必要があり,その作業環境も明かり工事と比較して著しく悪い.

アクアカーテンではコンクリート表面に水膜を形成させることが重要であるが,水膜の広が り方はトンネル形状や縦断勾配等に影響を受けやすい.さらに,コンクリートの吸水量は型枠 取りはずし後,時間経過とともに変化するなど,検討課題も多い.

本章では,アクアカーテンを覆工コンクリートに適用できるように養生システムの更なる開 発を行い,トンネル内という特殊条件下でも確実に且つ再現性の高い工法を提案する.先ずト ンネル工事の特殊性を考慮しトンネル覆工にアクアカーテンを適用する際のシステム概要を検 討する.そして,アクアカーテンの施工を行なう上で必要となる資機材である,浸水養生シー ト,吸引装置,給水装置,シート展帳台車について検討する.次にアクアカーテンの施工計画 について,基本条件の整理のためシステム設計,施工フローを検討し,さらに詳細な施工方法 や各種設備の仕様について検討する.最後に,養生方法としてアクアカーテンを採用したトン ネル現場における覆工コンクリート高品質化の取り組みとその効果について述べる.

7.2 トンネル覆工用アクアカーテンの主要資機材の開発

7.2.1 システム構成

トンネルの覆工コンクリートは,打込み後12~20時間程度の早期に脱型される.そのため,

脱型後の覆工コンクリート表面は急激に乾燥し,セメントの水和反応の十分な進行が妨げられ ている.このため,覆工コンクリート表面に間欠的に給水し水膜を形成させるアクアカーテン を採用することが,覆工コンクリートの品質向上に有効である.トンネルにアクアカーテンを 適用する場合のシステム構成を図7.2-1に示す.なお,一般構造物と比較してトンネル工事の 特殊性を考慮し,以下の工夫を行っている.

・ 養生水は重力の作用により,天端から左右両脚部へ流下する.均一な吸引力確保のため両 脚部に吸引口を設ける.

・ 浸水養生シート落下防止用にφ40 ㎜の塩ビパイプを用いたフレーム材を設置する.なお,

本フレームは,トンネル周方向の気密性確保および給水チューブ固定支持材としての機能 を持つ.

・ 浸水養生シートの展張に際しては,トンネル通行車両に影響を与えないよう専用の浸水養 生シート展張台車を利用する.

図 7.2-1 トンネルでのアクアカーテンシステム構成 排気

吸引機 集水タンク 給水ポンプ

坑口側,切羽側には気密確保用 マルチフレームを設置 吸引により

シートを密着 養生水は、再利用可能な循環システム

吸引・給水設備

覆工面を流下した養生 水は 吸引口より空気と ともに回収

マルチフレームの機能

・養生シートの仮押え

・停電時の落下防止 給水ホースは 覆工天端部の 中央に配置し 間欠給水 気泡緩衝シートと覆工面

との間に 水膜を形成 養生シートは、端部に気密部を

設けた一枚ものを製作

シート展張台車 排気

吸引機 集水タンク 給水ポンプ

坑口側,切羽側には気密確保用 マルチフレームを設置 吸引により

シートを密着 養生水は、再利用可能な循環システム

吸引・給水設備

覆工面を流下した養生 水は 吸引口より空気と ともに回収

マルチフレームの機能

・養生シートの仮押え

・停電時の落下防止 給水ホースは 覆工天端部の 中央に配置し 間欠給水 気泡緩衝シートと覆工面

との間に 水膜を形成 養生シートは、端部に気密部を

設けた一枚ものを製作

シート展張台車

トンネル覆工コンクリートへ適用するアクアカーテンは,浸水養生シート,ユニットフレー ム,吸引設備,給水設備,フレーム組立・移動に使用する専用台車から構成される.

アクアカーテンの覆工コンクリート適用時の各部位名称を図7.2-2に示す.

・ 浸水養生シート :気泡緩衝シート(不織布含む)を用いたトンネル用1スパンシート

・ 吸引設備 :吸引ファン,除水除塵機,吸引管,吸引ホース,吸引口,ワイド吸引

・ 給水設備 :給水タンク,給水ホース,給水取り出し口,給水チューブ

・ ユニットフレーム:メインフレーム,つなぎ材

・ 気 密 処 理 :気密フレーム,下端マスカー,目地脚部ゴムマット

図7.2-2 覆工コンクリート適用時の各部位名称

循環水設備

圧力調整バルブ

吸引ホース 吸引口

除水除塵機 吸引ファン ワイド吸引

吸引主管 浸水養生シート

給水チューブ

(不織布一体型)

給水チューブ 接続ユニット

給水水槽 マスカーシート

メインフレーム

メインフレーム

メインフレーム

気密フレーム

つなぎ材

気密フレーム

7.2.2 浸水養生シートの開発

(1)トンネル覆工における施工上の特殊性

トンネル覆工コンクリートに用いる養生シートは,表面に凹凸をもつ負圧部と表面が滑らか な気密部からなる浸水養生シートを採用する点では一般構造物と同様であるが,以下に示すよ うな課題があることから,トンネル覆工コンクリート専用の浸水養生シートを製作するものと する.

・ トンネル工事では掘削作業がクリティカルとなるため,覆工コンクリート養生作業におい ては,掘削作業に関連するずり出し作業や重機の入れ替え作業を妨げるものであってはな らない.

・ 覆工コンクリートの施工箇所は狭隘であり,養生作業の段取りを行うスペースが限定され ているだけでなく,多くの作業員を導入しても施工速度は向上しない.

・ 養生シート展張作業は高所で,且つ上向き作業が多く,安全衛生面でも困難を伴う.

(2)トンネル覆工用浸水養生シートの設計

浸水養生シートは,気泡緩衝シートと不織布より構成され,対象とする覆工打設スパンを1 枚の養生シートで覆い(200~250㎡),吸引により発生した負圧でコンクリート面に養生シー トを密着させる.

このため,シート端部の気密を確保することは極めて重要であり,トンネル覆工の断面形状 に合わせ,シート端部には写真7.2-1に示すような気密部を設けるほか,マスカーシート,気 密ゴムマットによる気密を確保する.養生シートの加工例を図7.2-3に示す.

溶着部

気密フィルム

気泡緩衝シート

不織布

写真7.2-1 浸水養生シートの構成

図7.2-3 浸水養生シートの構成

7.2.3 吸引装置の開発

トンネル覆工は同様な施工条件の下,繰り返し作業による養生作業を行うことになるため,

吸引装置の盛り替え作業が多い.一般構造物の明かり作業と比較し,坑内の低照度下での作業 となるため,吸引配管接続時に異物が混入し,吸引装置を破損することが懸念される.また,

コンクリートと養生シート間の空気や養生水を吸い出すことから,電気系統へ水の侵入や錆に よるトラブルが懸念される.

そのため,吸引装置は気密性を確保するだけでなく,異物混入にも耐え,運搬性や耐水性に 優れたものである必要がある.このような条件を満足する吸引装置は,市販品として現存しな かったため,本研究では吸引装置の開発を行う.

吸引装置は,覆工脚部左右に各1台配置し除水除塵機と1セット組で使用するため1スパン に2台セットとする.除水除塵機は吸引ファンの直前に接続し,空気と水,吸引管内の小砂利 やゴミを分離することで,ファンの過負荷や損傷を防止する.また,分離した余剰水は底部に 設置した排水弁により排水できる.吸引ファン及び除水除塵機の設置例を図7.2-4に示す.分 離型は初期タイプのものであり構造も単純である.一体型は分離型の改良モデルであり,排水 弁も内蔵し配管もなく移動作業が楽になる.

【ターボファン仕様】

電 源:三相 200v,60Hz,0.4KW 最大風量:6.0m3/min,

最大静圧:4.3kPa,

重 量:16.5kg/台

分離型

一体型

【除水除塵機】

・吸引ファンに直接吸引管を接続した場 合,養生水や配管内に残っていた砂利や 養生水が進入し,ファンを損傷する.そ のため,以下の機構を有する除水除塵機 を設置する.

図 7.2-4 トンネル覆工用吸引装置概要図

水や砂利等は落下

吸引管より 吸引機へ

 排水弁

除水除塵機 ターボファン