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各地点での中央語規則まとめ

第7章 サ行イ音便における中央語規則の地理的対応

3. 各地点での中央語規則の比較

3.5. 各地点での中央語規則まとめ

ここまで、中央語規則を一つずつ取り上げて見てきたが、ここで中央語規則①~④に従 っているか否かを一つの表にまとめてみると、以下の表 17 のようになる。前節までで規則 のまとめの表として挙げたものを、煩雑な記号はまとめ(〇と×の混在は△にするなど)、

比較しやすくしている。

表 17 の記号は、○が中央語規則に従っているもの、△が一部中央語規則に従っているも の、×が中央語規則に従っていないものである。今回取り上げた数地点だけでも、中央語 規則に従うかどうかで違いがあることがわかる。今回の地点のなかで一番規則に従ってい るのは鹿児島本土の串木野・川辺・枕崎である。次いで富山県までが比較的規則に従って いる地点であると言えるだろう。少し従っているものに鹿児島本土の指宿・知覧、甑島と

表 17 中央語規則のまとめ 地点

規則

富山県

鹿児島本土 (串木野・

川辺・枕崎)

鹿児島本土

(指宿・知覧) 甑島 屋久島 種子島 高知県 中央語

規則① 〇 〇 × × × × ×

中央語

規則② △ 〇 △ 〇 △ × ×

中央語

規則③ × △ △ △ △ △ ×

中央語

規則④ 〇 〇 〇 × × × ×

表 16 中央語規則④まとめ 富山県

鹿児島本土 (串木野・

川辺・枕崎)

鹿児島本土

(指宿・知覧) 甑島 屋久島 種子島 高知県

〇 〇 〇 ×

音便

× 音便

× 音便

× 音便 中央語

規則④

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続く。そして屋久島、種子島、高知県は殆ど規則に従っていない地点であることが分かる。

ちょうど表 17 の左側の地点ほど規則に従っており、右に行くほど規則に従わない地点とな っている。

また、表 17 で同じ×の記号がついていても、その内実は同じではない。高知県と鹿児島 県は×が多いように見えるが、高知県はほぼ全てのサ行動詞が音便化するために、規則に 全て従わないのであり、鹿児島県では、地点により語により音便化する語がバラバラなの である。

4.中央語規則の地理的対応

前節まで、中央語規則を一定の基準とし、中央語規則①については全国的な分布を見て、

規則全てについては第 4 章~第 6 章に挙げた調査結果を用いて、各地点でその規則が当て はまるかどうかをみてきた。ここでは、それらを用いて、各地点は全国的な分布で見たと きに、どのような傾向があるのかを見ていきたい。

本章の 2 節で、GAJ では富山県は B グループ、高知県・鹿児島県は C グループに当たる と述べたが、前節で見たように、全国的な分布でみると同じグループでも、その内実、中 央語規則への従い方は、C グループの高知県・鹿児島県で異なるように、同じではないこと が分かった。

今回の調査結果では、高知県や鹿児島県は中央語規則に従っていない地点が多いが、こ れは下の図 1 から作成した模式図で言うと C グループに当てはまり、変容している地域で あるため、中央語規則を守っていないのだと考えられる。

D C B A′ B A 九州中程 九州 中国 近畿・四国 中部 東日本 2 次変容 1 次変容 保存 中央語 保存

一方富山県は B グループに当てはまる。この地域は、中央語を保存している、すなわち 中央語規則を守っている地域である。第 2 章の先行研究で見た岐阜県も、ほぼ中央語規則 を守っている地域であることからも、B グループに含まれる地域では、中央語を保存してい るため、中央語規則を守っている地点が多いのではないかと予想される。

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5. おわりに

本章では、まず GAJ を用い中央語規則①がどのように全国に分布するのかを、地図を作 成して見た。その地図を元に仮説を立てたが、今回の記述調査の地点では、全てのグルー プを検証することはできなかった。そこで第 4 章から第 6 章までの記述調査の結果を横断 的に比較し、上掲の中央語規則が地理的にどう反映されているのかを考察した。結果、以 下の 2 点が明らかになった。

(1)B グループである富山県の結果と鹿児島県・高知県の結果を比較すると、富山県は全 域で中央語規則に比較的従っている。B グループに含まれる地域では、中央語を保存し ているため、中央語規則を守っている地点が多いのではないかと予想される。

(2)C グループである鹿児島県・高知県では、比較的中央語規則に従わない。その従わな い内実も異なっており、高知県では規則に関係なくすべての語が音便形となってしま う崩壊の仕方をしているのに対して、鹿児島県では、比較的従っている地点も一部あ り、また全て非音便形となる地点、高知県のように全て音便形となる地点と、地点に よって様々な崩壊の仕方をしている。

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