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地方自治体における消費者教育推進の人的構成 212

ドキュメント内 著者 柿野 成美 (ページ 92-104)

第1節 分析の枠組み

本章では、第一のリサーチクエスチョン「地方自治体における消費者教育推進体制の人的 構成はどうなっているのか?」を検証するため、地方消費者行政内部において消費者教育を 推進する人材として行政職員、消費生活相談員、「消費者教育コーディネーター」等の消費 者教育に専門的に従事している人材を「消費者教育の専門的人材」213として着目して質問紙 調査を実施した。また、それらの人材が、(1)誰がどのような形で消費者教育を担っている のか、(2)上記の 3 人材にはどのような関連性があるのか、(3)専門的人材の配置におけ る課題は何かという視点から分析を行い、構造的な実態把握と課題整理を行った。

調査対象は、都道府県(47か所)、政令市(20か所)、県庁所在市(政令市を除く31か 所)の消費者行政担当部局であり、消費者教育担当者宛てに質問紙「地方消費者行政におけ る消費者行政に従事する人材と専門性に関する調査」を郵送した。調査時期は2015年7月、

回収率は100%であった。加えて、必要に応じて訪問もしくは電話でのヒアリングにより記

述内容の確認を行った上でデータを整備し、SPSS Statisticsを使って統計分析を行った。

以下、本章では、第 2節で消費者行政内部に配置された人材の実態、第3節で配置され た人材相互の関連性、第4節で消費者教育推進に向けた今後の課題について考察する。

第2節 消費者行政内部に配置された人材の実態

はじめに、行政内部で消費者教育に充実する行政職員、消費生活相談員、消費者教育の専 門的人材の3人材の実態について明らかにする。

1.行政職員

(1)職員数と担当業務割合

図表4-2-1は、消費者行政全体の常勤職員数(A)、そのうち消費者教育を担当する職員数

(B)である。都道府県では全体平均19.21人の職員数のうち、消費者教育を担当する職員 は5.68人となった214。分散分析の結果、各項目で自治体間に有意差が見られ、消費者教育

212 本章は、柿野(2016b)をもとに執筆した。

213 質問紙調査では行政職員、消費生活相談員について質問した後、「貴自治体において、行政職員以外 に、行政機関内に消費者教育の充実のための人材を配置していますか」と質問した。ここでは消費者教 育の充実のために専門的に働いている人材として「消費者教育の専門的人材」として位置づけている。

なお、3人材はそれぞれに完全に独立している。

214 なお、この数は専任者ではなく、個別に消費者教育の業務割合を記入した上で該当人数を計上してい

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を担当する職員数は政令市が最も多かった(P<0.01)。その一方、いわゆる「一人担当」と 呼ばれる実態も都道府県2か所、県庁所在地3か所で見られた215

また、記載された業務割合を合計した数字を C に示した。この数値は人数の多寡だけで は分からない実質的な消費者教育の業務量を示している。都道府県平均では 289.17%(専 任者で換算すると2.89 人相当)になったが、最小値は30%、最大値は1200%と自治体間 の格差が如実に表れた。全サンプルで業務割合合計が100%に満たない(1人分の仕事にな っていない)自治体は、都道府県4か所、政令市3か所、県庁所在市14か所あり、絶対的 に消費者教育への関わりが希薄な自治体があることが明らかとなった。

図表 4-2-1 消費者行政職員(A)・消費者教育担当職員(B)・消費者教育担当業務割合

の合計(C)216

(出所)筆者作成

(2)消費者行政在職年数

図表4-2-2 には、消費者教育を担当する職員の消費者行政在職年数を示した(2015年 7

月現在)。都道府県では主に事業計画や予算を担当する本課で平均1.3年、教育や啓発の実 務を行う消費生活センターは平均1.64年と、本課の在職年数が短い217。また、分散分析の 結果、消費生活センターの平均値において自治体間で有意差が見られ、政令市2.67年が最 長であることが分かった。

中には、県庁所在地で 8年勤続しているという例もあるが、多くは都道府県の場合2年 もしくは3年、政令市や県庁所在地では 3年強で異動する平均的な姿が描かれた。担当者

るため、10%から30%といった低い業務割合で多くの人数がかかわる場合には数値が高くなる点に注 意が必要である。

215「一人担当」の問題点は、担当者の異動により事業継続が困難になること、加えて人口規模が小さくな るほど「一人担当」が他の業務を兼務するため、消費者教育としての事業の継続性が一層弱まることで ある。

216 Aは消費者行政の職員数合計(人)、BAのうち消費者教育を担当する職員数合計(人)、CB 担当する業務のうち消費者教育の業務割合合計(%)である。なお、分散分析の結果、A,B,Cいずれの平 均値も自治体間で有意差が見られた(P<0.01)

217 本課と消費生活センターの位置付けは自治体ごとに異なるが、二つが明確に分かれている場合が多い 都道府県の違いを明らかにするために区分して示した。

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数が多ければ異動による業務継続にも影響が少ないが、それが少ない自治体では効果的な 事業継続が困難になることも想定されよう。

図表4-2-2 消費者教育を担当する職員の在職年数(平成27年7月1日現在)218

(出所)筆者作成

(3)業務内容

次に、図4-2-3で消費者教育担当職員の業務内容を見よう。ここでは政令市と県庁所在地

に有意差が見られなかったため、二つをまとめて示した。

都道府県の担当職員の業務内容の1位は「啓発資料の作成」、2位は「教育委員会・学校 等との連絡調整」、3 位は「講座の企画・運営」となった。この他に、都道府県が主に担っ ている事業内容として、「庁内関係部局との連絡調整」、「消費者教育推進計画の策定」、「教 育教材の作成」、「地域の消費者リーダー等の担い手育成」、「消費者教育推進地域協議会の運 営」があり、全体的に政令市・県庁所在市と比較して大きな円を描いた。一方、政令市・県 庁所在市の1位は「講座の企画・運営」、2位「講師派遣業務」、3位「啓発資料の作成」と なり、都道府県と重なる内容が1位、2位を占めた。

都道府県と政令市・県庁所在市では、一方で重複し、他方で役割分担しながら消費者教育 の施策を実施していることが分かった。都道府県と市町村の役割分担の重複はこれまでも 様々な場面で指摘されてきたが、限られた人材を有効に配分するためにも、今後一層その役 割分担を明確にしていく必要があるだろう。

218 消費生活センターと本課の機能が一体化している自治体は、消費生活センターとして計上した。ま た、分散分析の結果、消費生活センターの在職年数の平均値で自治体間の有意差が見られた(P<0.5)

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図表4-2-3 消費者行政担当職員の業務内容

(出所)筆者作成

2.消費生活相談員

(1)消費者教育への従事割合

図表 4-2-4 に消費生活相談員の関わりを示した。全体で 95.9%の地方自治体で消費生活

相談員が消費者教育に関わっていた219。ほとんどの自治体が関わっている中、関わっていな い自治体からは「消費生活相談業務が多忙であるため」、「啓発を専門に行う消費生活啓発等 がいるため」といった理由が示されていた。

図表4-2-4 消費生活相談員の消費者教育への関わり

219 この数字は関与している自治体の割合であり、そこで業務に当たる消費生活相談員全体の95.9%が関 与している訳ではない点に留意が必要である。

(出所)筆者作成

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(2)業務内容

図表4-2-5に消費生活相談員が担当する消費者教育の業務内容を示した。圧倒的に出前講

座の講師であることが分かる。全消費生活相談員のうちどの程度が講師として活動してい るかを今回は調査していないが、相談業務を受ける一方で、その経験に基づいて「悪質商法 の被害に遭わないために」といったテーマで講師として活動する消費生活相談員の姿がう かがえる。

また、リーフレットの作成についても都道府県3割、政令市・県庁所在地22.7%で消費生 活相談員が関わっている。教育委員会との連携は都道府県では見られなかったが、政令市・

県庁所在市の6%で消費生活相談員が担当しているという実態が明らかになった。

図表4-2-5 消費者教育に関わる消費生活相談員の業務内容(N=94)

(出所)筆者作成 3.消費者教育の専門的人材

(1)配置状況

図表4-2-6は、行政職員及び消費生活相談員以外に消費者教育充実のために消費者行政内

に配置する専門的人材の状況を示した。その結果、都道府県15か所(33.3%)、政令市3か 所(16.7%)、県庁所在市1か所(3.6%)で人材が配置されていることが明らかとなった。

人員総数ベースでみると、44人の確認ができた。

現段階ではまだ限られた存在であるが、特に都道府県や政令市の中には、「検討中」の回 答も複数見られた。これは消費者教育の基本方針(2013年閣議決定)において、「消費者教 育コーディネーター」の存在が明示されたことから、今後もさらに増加する可能性がある。

ドキュメント内 著者 柿野 成美 (ページ 92-104)