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地平面の性質

ドキュメント内 【PDF】シュッツ『相対論入門』 (ページ 102-105)

■座標特異領域 (p.390〜) Schwarzschild座標ではr= 2M のときメトリックgrr = 12M/r1 の分母がゼロ になる.[座標に依らない]幾何学的意味を調べ,この特異性が幾何学それ自体によるのか,座標の質が悪いこ とによるのかを考える.

■落下粒子(p.391〜) r=R(≥2M)からr= 2M の面に,動径沿いにまっすぐ落下する粒子を考える.簡 単のためE˜ = 1の場合を考えると,落下に要する固有時間∆τ

(dr dτ

)2

=2M

r ,∆τ =

2M R

dr

(2M/r)1/2 = 2M 3

[( r 2M

)3/2]R

2M

より有限である [これが座標系に依らない幾何学的性質に当たる].一方,r = 2M の近くを考えてε r−2M(0)とおくと,対応する座標時間は

dt

dτ =U0=g00U0=g00p0

m =g00(−E) =˜ (

12M r

)1

E˜= (

12M r

)1

, (∵E˜ = 1)

∴dt= dτ

12Mr = dr (12Mr ) (2M

r

)1/2 = (ε+ 2M)3/2dε (2M)1/2ε

となって,ε→0とすると発散する.これは座標時間の質が悪いことを意味する.

r= 2M の内側(p.392〜) 次にr= 2M の内側を考えてε≡2M −r(≥0)とおくと[εは微小でなくても 良い],Schwarzschildメトリックは

ds2= ε

2M −εdt22M −ε

ε2+ (2M −ε)2dΩ2 で与えられる.よってr= 2M の内側では

rが変化して得られる座標曲線は時間的世界線(線に沿ってds2<0)

tが変化して得られる座標曲線は空間的世界線(線に沿ってds2>0) となり,やはり座標の質が悪い.

落下粒子は時間的世界線をたどらなければならないから,r= 2M の内側ではたえずrが変化し,r= 0に 到達する.またr= 0はr= 2M の内側のあらゆるヌル世界線の未来にあるから,光子もまたr= 0に戻さ れる*8r= 2MをSchwarzschild地平面と呼ぶ.

*8このことはKruskal-Szekeres座標を用いた座標図(11.11(p.396))において明らかになる.

図24 Schwarzschild座標で見た粒子の世界線と局所的光円錐

■座標系(p.393〜) Schwarzschild座標の座標図では,各点での光円錐の傾きdt/drは 0 = ds2=

( 12M

r )

dt2+ (

12M r

)1

dr2, ∴ dt

dr =± 1 12Mr

なので(dθ= 0,dϕ= 0),遠方で±1であり,rが2M に近づくにつれて傾きは急になり,r→2M のとき

±∞となる.粒子の世界線は光円錐の内側を通るので,その傾きはより急である.これが,粒子が面r= 2M に達するのに無限大の座標時間を要することの幾何学的描像である(図24参照).

実は地平面は時空の一点であり,Schwarzschild座標の質の悪さはこれを線r= 2M,−∞< t <∞に引き のばしていることに由来している.

■クルスカル-スゼッケル座標(p.394〜) Kruskal-Szekeres座標u, v は,座標図上での局所的な光円錐の傾 きが時空点の位置に依らないような座標であり,

(u, v) =







 ( r

2M 1 )1/2

er/4M (

cosh t

4M,sinh t 4M

)

(r >2M) (

1 r 2M

)1/2

er/4M (

sinh t

4M,cosh t 4M

)

(r <2M)

によって定義される.実際,Kruskal-Szekeres座標u, vを用いた場合の球対称時空のメトリックは ds2=32M3

r er/2M(dv2du2) +r2dΩ2 によって与えられ,座標図上の局所的光円錐の傾きdv/duは

ds2= 0 dv=±du より±1となる.ただしds2の式におけるr

( r 2M 1

)

er/2M =u2−v2 によって,uvを用いて表されているものと見る.

Kruskal-Szekeres座標u, vでの座標図は図25のようである(θとϕは一定として省略してある).

r= (一定)の線

図25 Kruskal-Szekeres座標u, vでの座標図

領域Iのr= (一定)>2M の線要素は±1より急な傾きを持ち,空間的.

領域IIのr= (一定)<2Mの線要素は±1より緩やかな傾きを持ち,時間的.

t= (一定)の線

原点を通る直線となる*9

粒子の世界線は±1よりも急な傾きを持つから,

r >2M の領域Iからr <2M の領域IIに入ると再び戻ることはなくr= 0の線に達する.

r= 0は 点 であるが,それは特異領域であり次元を考えることはできないから,

r= 0が線で表されていることは問題ない.

その境界線r= 2M, t=が地平面である.

(r, t)時空図ではこれがr= 2M,−∞< t <∞に引きのばされている.

物体は有限の固有時間で地平面に達する.

しかし固有時間の一定間隔ごとに物体が電波を出すと,

それを遠方で受け取るとき長い座標時間に引きのばされるので,

遠方の観測者は物体が地平面に到達するまでに無限の時間がかかると結論する.

*9直線の式は

v/u= tanh(t/4M) (r >2M) で与えられる.

11.2 について

■Kruskal-Szekeres座標でのメトリックの式(11.67)の確認 r >2M のとき式(11.65)より du=er/4M

4M {

r/2M

(r/2M)1cosh(t/4M)dr+√

(r/2M)1 sinh(t/4M)dt }

,

dv=er/4M 4M

{

r/2M

(r/2M)1sinh(t/4M)dr+√

(r/2M)1 cosh(t/4M)dt }

なので

du2dv2=er/2M (4M)2

[ (r/2M)2

(r/2M)1dr2− {(r/2M)1}dt2 ]

=er/2M (4M)2

r 2M

[ 1

1(2M/r)dr2− {1(2M/r)}dt2 ]

を得る.

一方,r <2M のとき式(11.65)より du=er/4M

4M {

r/2M

√1(r/2M)sinh(t/4M)dr+√

1(r/2M) cosh(t/4M)dt }

,

dv=er/4M 4M

{

r/2M

√1(r/2M)cosh(t/4M)dr+√

1(r/2M) sinh(t/4M)dt }

なので

du2dv2=er/2M (4M)2

[

(r/2M)2

1(r/2M)dr2+{1(r/2M)}dt2 ]

=er/2M (4M)2

r 2M

[ 1

1(2M/r)dr2− {1(2M/r)}dt2 ]

を得る.

以上よりr >2M, r <2Mのいずれに対してもSchwarzschildメトリックの式(11.1)は,Kruskal-Szekeres 座標u, vを用いた式(11.67)に書き換えられる.

ドキュメント内 【PDF】シュッツ『相対論入門』 (ページ 102-105)