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第一節 課題

本研究で明らかになったことをより精微なものにするためには、次のような課題が 残されている。第一に、具体的に初等教育全般を見通すカリキュラム開発を進めてい く必要があろう。そして、そこでも、理論研究と学校現場の実践とが、 (異交通)の関 係を保ちつつ,常にカリキュラム開発が深化,改善されるよう、相互に理解し、協力 しあう体制づくりにも力を注いでいかねばなるまい。第二に,本研究では、安と千葉 の相互理解過程を題材にした初等教育高学年用の教材開発の試論を提示するにとどま り,本格的に授業の展開や実践、学習者の心性・態度形成過程などの評価について考 察できなかった。具体的なカリキュラム開発に着手するためにも、今後の課題である と考える。第三に、第一部では教師の国際理解教育に対する認識改善を目的として検 討してきたが、第二部で検討した初等教育の国際理解教育の学習を行うためには,敬 師の側にも、ここに掲げた目標にある心性・態度が培われていなければならない。そ のためには,教員養成や研修の段階で,充実した国際理解教育の内容が構成されてい

く必要があろう。

第二節 すべての生命の共生の実現に向かうために

従来の国際理解教育研究の多くに、共生の重要性が取り上げられてきた。

国,民族、宗教そして国際社会。これらはそれぞれ全く異なる社会的・文化的集団 としての役割や意味、形態をもっているが、どれも、そこに所属する国民や民族,信 仰に限らず,すべての人々の一人ひとりの(生)を支える、または、助ける機能を持 っていなければならないものである.それらは、決して自集団、他集団を問わず、一 人ひとりの生を危ぶむような影響を与えてはならないものである。しかし、その機能 を創り出したり,変えたりするのは,一人ひとりの人間、とくに,その集団に属して いる人間である。そして,それは直接国や民族の中枢にかかわらなくても、草の根レ ベルから始めることができる。そのためには、先述したように、まず、一人ひとりの 行動が,国や国際社会を変えうるという、国や国際社会とのつながりを理解しなけれ

ばならない。それでは、どのように国や国際社会を変えていくことが望まれているで あろうか。国際理解教育は、その究極目的として、世界平和と同時に世界中に住む多 様な人々が、どこで生活を営もうとも、共によりよい生活を営む、共生の実現を掲げ

ている。これは、とくに近年の国際理解教育研究で取り上げられるようになった。 『学 習 秘められた宝』のなかでも,最重要課題として掲げられているのである。しかし

ながら、言葉が与えるイメージが先行し、それが重要であるということについて,具 体的な検討が為されなかった。共生が意味することも,幅広くとらえられ、これとい った定義が非常に難しいことも、具体的な検討にいたらなかった原因であろう。

本研究でも、共生のあり方についての検討までは至らなかったが、ここで付言した い。共生とは、互いの価値の理解と尊重を基盤として、その価値を侵害することなく、

また平和を分かち合いながら住み分ける、その住み分け社会・文化こそが,多様な人々 との共生のあり方であると考える。ここで、 (平和を分かち合う)と述べたが、それは、

単にモノ・カネ,知識や技術の分かち合いを意味するのではない。ここで言う分かち 合いとは、先述のオルビンスキーのスピーチにある「自分のもつ自由を,世界をもっ と住みやすい場所にするために使いたい」という部分に現れている精神である。これ は、自己がもつ自由を利用して,世界中に住む人々と自由を分かち合いたいと置き換 えることができるであろう。ここで言われる自由とは、自己の精神や生活のあり方、

他から得る情報,空間を行き交いする選択ができるということではなかろうか。そう した自由が得られる状況にある国や国際社会であるかという判断をしたり、自己や他 者が置かれた立場を十分に理解していなければ、自己が自由であるか否かの判断はで きない。この意味では、自己は(自己からの自由)をえる必要がある。共生のあり方 を模索するためには,平和のみならず、自由とはなにか、それぞれの国や民族、宗教、

文化といった人々の生活基盤からの深い検討を要する。

また,共生する対象となるのは,過去に生きた、あるいは未来に生きる人間,同時 代に生きていながらも、生活の場が異なる人間、あるいは,広くとらえるならば、生 活圏の全く異なる生命体をも含む、生きる場の異なる人間、生命体である。これらの 生命と共に生きるということを検討する必要もある。本研究では、これらの検討には とうてい及ばないが,今後,もっとも検討を要するテーマとなるであろう。

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