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第 4 章 過労死等の防止のための対策の実施状況

第 2 節 啓発

4 過重労働による健康障害の防止に関する周知・啓発の実施

長時間働くことにより労働者が健康を損なうことがないよう、疲労の蓄積をもたらす過重 労働を是正するとともに、事業者が労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重 要である。このため、国は、都道府県労働局や労働基準監督署が行っている監督指導や個別 指導、集団指導において、過重労働による健康障害防止の重要性を啓発し、「過重労働による 健康障害防止のための総合対策」(平成 18 年3月 17 日付け基発 0317008 号)に基づき、事業 者等に対して「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」の周知を図 った。

さらに、平成 27 年に新たに作成した大綱の内容を紹介するパンフレットでは、働き過ぎに よる健康障害を防止するために、事業者の取組のほか、睡眠時間を確保し、生活習慣病の予 防などの健康づくりに取り組むことも重要であることを盛り込み、これらについて周知啓発 を行った。

上記3に記載した平成 27 年4月から 12 月までに監督指導を行った 8,530 事業場のうち約 15%に当たる 1,272 事業場で、健康診断を行っていない等過重労働による健康障害防止措置 が未実施であることを確認したため、是正・改善に向けた指導を行った。さらに、監督指導 実施事業場のうち、6,971 事業場に対して、長時間労働を行った労働者について、医師によ る面接指導等を実施することなど過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導した。

過労死等防止啓発月間である平成 27 年 11 月に実施した過重労働解消キャンペーンの取組 の一環として、事業主、労務担当者等を対象に、自主的な過重労働防止対策を推進すること を目的としたセミナーを、全国 26 か所で、計 35 回開催した。

加えて、平成 26 年 11 月に、厚生労働省 web サイトに労働条件ポータルサイト「確かめよ う 労働条件」を開設し、労働基準法等関係法令の概要などについての基礎知識や労働条件 に関する相談窓口などの情報を掲載することにより、労働者、事業主等に対して広く過重労 働による健康障害防止のための情報発信を行った。

また、平成 27 年9月の全国労働衛生週間準備月間及び 10 月1日~7日の本週間において、

過重労働による健康障害防止のための総合対策の推進を重点事項として掲げ、国民、事業者 等に対する意識啓発を行った。

5 「働き方」の見直しに向けた企業への働きかけの実施及び年次有給休暇の取得促進 (1) 業界団体や企業への働きかけ

長時間労働の削減が喫緊の課題とされる中、平成 26 年 10 月には長時間労働の抑制による 過重労働の解消や休暇の取得促進を始めとする「働き方改革」に向けた取組の推進を業界団 体に働きかけを行った。また、平成 27 年4月には働き方を含めた生活スタイルの変革を図る ことを目的として、「夏の生活スタイル変革(ゆう活)」の取組についても同様に働きかけを

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行った。

また、「働き方改革」の実施には、労働基準法に定められた最低労働条件の遵守にとどまら ず、各企業の実情に応じた働き方そのものの不断の見直しが必要であり、そのためには企業 トップによる強いリーダーシップが不可欠である。そこで、業界及び地域のリーディングカ ンパニーを訪問し、各企業のトップと意見交換を行うことで、直接「働き方」の見直しに向 けた働きかけを実施している。

(2) ポータルサイトの運営による情報発信

企業の働き方・休み方改革の自主的な取組を促すため、平成 27 年1月 30 日に「働き方・

休み方改善ポータルサイト」(http://work-holiday.mhlw.go.jp/)を開設し、働き方・休み 方改革に先進的な取組を行っている企業の取組事例や、企業が働き方・休み方の現状と課題 を自己診断できる「働き方・休み方改善指標」を活用した自己診断機能、働き方・休み方改 革に取り組む地方自治体の取組事例等について紹介している。

(サイトトップページ例) (自己診断結果例)

(3) 働き方・休み方改革シンポジウムの開催

働き方・休み方改革に向けた気運の醸成を図ることを目的として、平成 27 年 10 月から 12 月の間に、全国5都市(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)で「働き方・休み方改革シンポ ジウム」を開催し、働き方・休み方改革に関する学識者による講演や、企業による自社の働 き方・休み方改革の取組事例等について発表を行った。

(4) 時季を捉えた年次有給休暇取得促進

年次有給休暇を取得しやすい時季(夏季及び年末年始)のほか、翌年度の年次有給休暇の 取得計画の策定時期である 10 月を「年次有給休暇取得促進期間」として、年次有給休暇の取 得促進のための職場環境づくりについて、重点的な広報を行った。

平成 27 年度は、以下のとおり広報を実施した。

・ 都道府県、労使団体(219 団体)に対する周知依頼 ・ 専用 Web サイトの開設

・ インターネット広告・ポスターの駅貼り広報(940 か所)

・ 厚労省人事労務マガジン、月刊誌『厚生労働』による広報 など

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(インターネット広告例)

(5) 地域の特性を活かした休暇取得促進のための環境整備

地方都市等において、関係労使、地方自治体等の協働による協議会を設置し、地域のイベ ント等に合わせた計画的な年次有給休暇の取得について、企業・住民等に働きかけを行って いる。

平成 27 年度は、以下の地域で、ポスター、リーフレットや地元ラジオ番組などによる周知・

啓発、シンポジウムの開催、労務管理の専門家による地域の事業場訪問など、休暇取得に向 けた働きかけを実施した。

静岡県、同島田市・川根本町 「県民の日」(8月 21 日)を始めとする 8 月の期間に合わ せた取組

熊本県人吉市 「おくんち祭」(10 月 9 日)に合わせた取組

愛媛県新居浜市 「新居浜太鼓祭り」(10 月 15 日~18 日)に合わせた取組 埼玉県秩父地域 「秩父夜祭」(12 月3日)を始め、秩父地域の秋の紅葉、

冬の氷柱などのイベントに合わせた取組

山形県新庄市 毎年実施される「新庄まつり」を始め、新庄・最上地域 のイベントに合わせた取組

(埼玉県秩父地域 啓発ポスター) (愛媛県新居浜市 啓発ポスター)

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コラム7 地域のイベント等に合わせて年次有給休暇の取得を促進

厚生労働省では、地方自治体などと連携を図りながら、地域のイベント等に合わせた 計画的な年次有給休暇の取得を企業、住民等に働きかけ、地域の休暇取得促進の気運の 醸成を図っている。

熊本県人吉市では、平成 25 年度から平成 27 年度まで、国宝・青井阿蘇神社において 毎年 10 月9日に行われる「おくんち祭」に合わせて、休暇の取得促進に向けた働きか けを行った。

(具体的な働きかけ)

・ ポスター掲示や、企業、住民等へのリーフレット配布、おくんち祭当日の地元ラ ジオ番組の放送等を通じて、休暇取得促進を広く周知・啓発

・ 労務管理の専門家が地域の企業を訪問し、年次有給休暇の計画的付与制度等の周 知、休暇を取得しやすい環境整備の働きかけを行うとともに、休暇取得促進の好事 例を収集

・ 企業、住民等に対するアンケート調査を実施し、これらをもとに、今後の休暇取 得促進に向けた提言リーフレットを作成、配布

3か年の継続した取組により、経営トップと従業員の双方が、年次有給休暇を取得す ることで、従業員の心身の健康につながる、モチベーションが向上する、社内の雰囲気 が良くなるといった年次有給休暇を取得することのメリットをより認識し、おくんち祭 等に合わせて事業場を一斉休業としたり、経営トップや管理職が従業員に休暇取得を奨 励したりするなど、休暇を取得しやすい職場環境づくりに向けた取組を行うなどの効果 が見られたところである。

(熊本県人吉市 啓発ポスター)

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(熊本県人吉市 提言リーフレット)

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