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第 4 章 過労死等の防止のための対策の実施状況

第 2 節 啓発

6 メンタルヘルスケアに関する周知・啓発の実施

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ストレスチェック制度の適切な実施のため、実際に事業場においてストレスチェックの導 入など実施事務に携わる方々向けに、より具体的な運用方法等を解説した「労働安全衛生法 に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」を作成しており、全国の産業保健総合支援 センターにおいて、産業医、保健師等の産業保健スタッフや精神科医等に対して研修を実施 した。

加えて、中小企業等向けに、ストレスチェック制度のねらい、内容、導入方法等を簡単に 理解していただけるよう、「ストレスチェック制度簡単導入マニュアル」を作成し、広く配布 した。

これらの様々な資料や研修を通じて、ストレスチェック制度の周知・啓発を進めている。

このほか、事業者向けの支援として、ストレスチェック制度の実施が努力義務となってい る労働者数 50 人未満の小規模事業場においても取組が進むよう、複数の小規模事業場がスト レスチェックや医師による面接指導を共同で行う場合にその費用を助成する事業を開始した。

また、ストレスチェックをITを利用してオンラインで実施する場合に活用していただけ るよう、ストレスチェック実施プログラムを作成し、厚生労働省の Web サイトで無料配布を 開始したほか、企業向けの相談対応として、(独)労働者健康福祉機構(平成 28 年4月1日か ら(独)労働安全衛生総合研究所と統合し、(独)労働者健康安全機構となっている。)による「ス トレスチェック制度サポートダイヤル」の開設、労働者等からの相談対応として、ストレス チェック制度を含むメンタルヘルスに関する相談や過重労働による健康障害に関する相談に 対応するための電話相談「こころほっとライン」を開設した。さらに、職場のメンタルヘル スに関する様々な情報を提供し、職場のメンタルヘルス対策の促進を行うため、 働く人のメ ンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」を運営しており、事業者、産業医等の産業保 健スタッフ、労働者やその家族等に対して、ストレスチェック制度に関する資料のほか、メ ンタルヘルス対策に関する基礎知識、事業場の取組事例等、職場のメンタルヘルスに関する 様々な情報提供を行うとともに、労働者等を対象としたメール相談サービスを実施しており、

平成 27 年4月~平成 28 年3月の間のアクセスは約 480 万件、メール相談は同期間で約 6,500 件であった。

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(参考)メンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」(http://kokoro.mhlw.go.jp/)

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コラム8 ストレスチェック制度の創設

1 ストレスチェック制度の背景・意義

近年、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み又はストレスを感じている労働者が5 割を超える状況にある中、事業場において、より積極的に心の健康の保持増進を図るた め、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成 18 年3月 31 日付け健康保持増 進のための指針公示第3号。以下「メンタルヘルス指針」という。)を公表し、事業場 におけるメンタルヘルスケアの実施を促進してきたところである。しかし、仕事による 強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が、平成 18 年度以降 も増加傾向にあり、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することがますます重要 な課題となっている。

こうした背景を踏まえ、平成 26 年6月 25 日に公布された「労働安全衛生法の一部を 改正する法律」(平成 26 年法律第 82 号)において、心理的な負担の程度を把握するた めの検査(以下「ストレスチェック」という。)及びその結果に基づく面接指導の実施 等を内容としたストレスチェック制度(労働安全衛生法第 66 条の 10 に係る事業場にお ける一連の取組全体を指す。)が新たに創設された。

この制度は、労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気付きを 促すとともに、職場改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働 者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止すること(一次予防)を主な目的とし たものである。

さらに、労働者本人だけでは解決が難しいストレスの要因については、ストレスチェ ックの結果が高ストレスの場合、面接指導を受けることで、就業上の措置につながり、

さらに、ストレスチェックの結果が職場ごとに分析されれば、職場環境の改善にも結び つくことになる。労働者にはストレスチェックを受検する義務はないものの、ストレス チェック制度を効果的なものとするためにも、なるべく全ての労働者がストレスチェッ クを受検できるよう、事業者は労働者にとっての受検の意義を理解してもらえるように 努めることが大切である。

また、事業者にとっては、ストレスチェック制度を導入することで職場環境の問題点 を把握することが期待でき、職場環境の改善に向けた具体的な検討がしやすくなる。さ らに、労働者のストレスが軽減され、職場の改善が進むことで、労働生産性の向上など、

経営面でのプラス効果も期待され、積極的にストレスチェック制度の導入・活用を進め ることが望まれる。

2 ストレスチェック制度の留意事項

実施に当たっては、事業者は以下の点に特に留意して取り組むことが求められ、事業 者、労働者及び産業保健スタッフ等の関係者が、制度の趣旨を正しく理解した上で、互 いに協力・連携しつつ、ストレスチェック制度をより効果的なものにすることが重要で ある。

① 安心して検査を受けてもらう環境づくり

ストレスチェックの結果は、労働者の同意がなければ事業者に提供してはならな いことや、検査の実施の事務に従事した者に対しては守秘義務が課されているとい った労働者のプライバシーへの配慮を求めた法律の趣旨を踏まえる必要がある。

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また、ストレスチェックは、自記式の調査票を用いて行うため、労働者が自身の 状況をありのままに答えることのできる環境を整えることが重要である。安心して 答えられる環境にないと、労働者や職場の状況を正しく反映しない結果となるおそ れがあることに留意しなければならない。

② 安心して面接指導を申し出られる環境づくり

面接指導の申出がしやすい環境を整えないと、高ストレスの状況にある労働者が そのまま放置されるおそれがあるので、労働者が安心して医師の面接を希望する旨 申し出られるように配慮する必要がある。

③ 労働者に対する不利益な取扱の防止

個人のストレスチェック結果に基づく面接指導の結果を踏まえて事業者が講じる 措置の中には、労働者にとって不利益となりうるものの、それ以上に労働者の健康 確保の観点から必要性が高いと思われる措置など、措置の内容によっては合理的な 取扱である場合も考えられる。しかし、事業者が、面接指導の結果を踏まえて何ら かの就業上の措置を講じるに当たっては、その面接指導の結果に基づき、必要な措 置について医師の意見を聴取するという法定の手続きを適正にとった上で、措置を 講じる必要があり、こうしたプロセスを経ずに就業上の措置を講じてはならない。

④ ストレスチェック制度に関する労働者の健康情報の保護

ストレスチェック制度を効果的に運用できるかどうかは、事業者と労働者の信頼 関係が基本にあることはいうまでもないが、ストレスチェック結果等の労働者の健 康情報が適切に保護されるかどうかも極めて重要な要素になる。ストレスチェック 制度に関わる産業保健スタッフを中心とする関係者は、自ら適切な健康情報の保護 に努めるとともに、事業者による不適切な取扱がなされることのないよう、十分に 留意することが必要である。

⑤ 検査を受ける労働者以外の方への配慮

例えば、ストレスチェックを受けた労働者の所属部署の責任者にとっては、そのスト レスチェック結果を人事労務管理能力の評価指標として用いられる可能性があるため、

そうした責任者に不利益が生じないよう配慮する必要がある。

ストレスチェック制度のリーフレット

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7 職場のパワーハラスメントの予防・解決のための周知・啓発の実施