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規制改革の進展

わが国の経済社会の国際化に合わせて石油関連の規制改革が進 展し、2001年末をもって石油業法が廃止されたことにより、石油産 業は名実ともに自由化されました。

わが国の石油産業に対する規制は、石油の重要性に鑑み、1962 年7月に制定された「石油業法」を基本法として、安定供給を最優先に 進められてきました。その後、石油業法を補完する法律として、「石油 備蓄法」、「揮発油販売業法(揮販法)」、「特定石油製品輸入暫定措 置法(特石法)」が制定され、行政指導を含め、石油の輸入・生産・販 売にわたる広範な規制が行われてきました。

しかし、わが国における規制改革が進み、内外価格差の解消が課題 となる中で、石油産業に対する規制のあり方についても見直しが求め られるようになりました。その結果、87年から92年にかけて、石油業 法・揮販法に基づく行政指導・運用について一連の規制改革が実施さ れ、96年3月末の特石法の廃止以降、石油政策は安定供給の確保と ともに、市場原理に基づく効率的供給の実現が目標となりました。

その後、石油審議会は、98年6月、今後の石油政策の方向性に関 して、01年の実施を目途に事業許可・設備許可などの需給調整規 制および標準額による価格規制の廃止などを骨子とする報告を取り まとめました。さらに、同報告を受けて、石油審議会は備蓄・緊急時 対応のあり方を検討し、99年8月、緊急時における具体的対応措置、

国家備蓄原油の増強などを提言しました。また、同報告では、「厳しい 経営環境下においても安定的に事業を営む強靭な石油産業の存在 は、セキュリティ対策上も極めて重要である」としています。

上記報告などを踏まえ、01年12月末に石油業法が廃止、さらに 石油備蓄義務の履行確保の強化などにより、緊急時対応のための基 盤強化を図るため、石油備蓄法の一部改正が行われ、02年1月から 新石油備蓄法(「石油の備蓄の確保等に関する法律」)が施行されまし た。その結果、石油産業に対する主要な規制は、備蓄面から新石油備 蓄法、品質面から品確法(「揮発油等の品質の確保等に関する法律」)

に限られることとなりました。

このように規制改革が進展する中、脱石油政策の推進、人口の減 少、少子高齢化、さらには原油価格の高騰やリーマンショック以降の 景気の後退による省エネ意識の高まりもあって国内の石油製品需要 が減少し、精製能力の過剰が問題となりました。石油業界が自主的に 精製能力の削減に取り組む一方、「エネルギー供給構造高度化法(高 度化法)」に基づき重質油分解装置の装備率を一定程度以上に高め ることが決められました。これにより石油各社は14年3月末の期限ま でに規制的手法による精製能力削減を求められることになり、すでに

一部精製能力の削減や製油所の廃止が決まっています。

さらに、14年7月には高度化法の新たな判断基準が告示され、石 油各社には17年3月末を最終期限として残油処理装置装備率の向上 に向けた取り組みが求められることになりました。

自由化後の環境変化

規制改革、特に特石法廃止を契機として、わが国の石油産業は、流 通市場において価格競争が激化したことなどにより、市況が低迷し、

企業収益が悪化するなど、厳しい経営を余儀なくされてきました。こ のため、石油各社は、精製・物流部門の合理化・効率化や販売・管 理部門を中心とする大幅な人員削減、組織の見直しなど、経営全般に わたるコスト削減に取り組んでいます。

また、特石法や石油業法の廃止といった規制改革を経て、生産・輸 入・販売の各段階における自由化が進展する中で、わが国の石油市 場は市場メカニズムに基づく事業活動がますます重要になっていま す。市場メカニズムの導入は、本来、市場を通じた資源の適正配分が なされることで生産・供給システムの効率化を促すことが期待され ているわけですが、そのためには何よりも市場が有効に機能するた めのインフラとして適切な情報が広く開示されていることが必要で す。しかしながら、規制時代における石油に係わる需給情報は国が実 施している統計情報に限られており、かつ、これはマクロの経済動向 を把握するためのデータの収集・発表を目的としているため、市場メ カニズムが有効に機能するための要件を兼ね備えた情報とは言いが たく、特に迅速性の観点からテンポの早い石油需給状況を的確に反 映した情報という点で不十分な状況でした。

こうした状況のもと、03年1月、石油連盟では、正確性・迅速性・緻 密性を満たす適正な統計情報として、週単位で石油の供給状況を示す データを収集・発表する「石連週報」(「原油・石油製品供給統計週報」)

をスタートさせました。その後、東日本・西日本別の生産などの供給 データおよび輸出データ、製油所の実質稼働率を順次追加するなどして

「石連週報」の更なる拡充を図っています。これによって、リアルタイム の供給情報を市場に提供することで市場メカニズム機能を十分に活か す環境整備を図り、透明な市場が構築されることを期待しています。

エネルギー間の公平、平等な競争条件の整備確保 規制改革の進展に伴って今後ますますエネルギー間競争の激化が 見込まれる中、税制や備蓄義務等において石油は他のエネルギーに 比べて競争上著しく不利な扱いとなっています。

石油石炭税は03年4月より、エネルギー起源CO2排出抑制策の抜 本的拡充などエネルギー政策の見直しとエネルギー間における負担

規制改革と石油産業

の公平性を図るため、石炭を新たに課税対象に追加し、LNGと輸入 LPGへの増税がそれぞれ実施されました。

さらに、12年10月から地球温暖化対策のための税として、CO2

排出量に応じ、段階的に石油石炭税の課税が強化されることが決定 され、石油の税率は16年度には2,800円/S(LNG、LPGは1,860円 /t、石炭は1,370円/t)となる見込みです。石油業界として、既存の1兆 円を超す地球温暖化対策予算の精査が先決と主張してきましたが、税 ありきで課税強化が決定されてしまいました。石油石炭税は原油段階 の課税であり、税の回収・負担はすべて石油会社の責任となります。

また、石油業界は市場原理に基づいた自由競争となっており、電力や ガス業界と異なり、税を含めたコスト回収の仕組みがありません。石 油業界としては、石油消費に関わる税は、本来的には最終消費者が負 担するものであると考えられることや、国内需要が減少する中で、石 油の担税力は限界に達していることから、増税分を確実に回収できる ような政策的配慮が必要であると要望しています。

また、自動車燃料であるにも係わらず、ガソリン代替燃料であるア ルコール燃料(アルコール100%)などの新燃料やCNG自動車に使 用される燃料(圧縮天然ガス)には、軽油引取税やガソリン税等が課 税されておらず、課税の公平性を著しく欠くこととなっています。

石油備蓄については、石油危機以降、エネルギーセキュリティ対策

のひとつの柱としてその充実を図り、また、東日本大震災を契機に、国 内災害にも機動的に対応可能な備蓄制度となるよう備蓄法の改正が なされるなど、大変有益な政策となっています。しかしながら、石油以 外の輸入エネルギー資源については、LPGは50日の備蓄義務があ りますが、今後需要が伸びると考えられている天然ガスの備蓄は義 務化されていません。これはエネルギーの安定供給の確保に係わる 問題でもあり、今後早急に対応がなされる必要があります。

一方で、09年6月には、低炭素社会構築に向けた取り組みを進め るため、エネルギー供給構造高度化法が成立、石油代替エネルギー 法も改正され、石油のみに過重な税負担を負わせることで代エネを 進めるこれまでの考え方は改められています。こうしたエネルギー政 策も踏まえつつ、エネルギー間の競争条件について、国民経済的に 見て有効な競争原理が働く公正なマーケット形成のため、イコール フッティングを実現することが重要となっています。

石油産業再編への動き

メジャーの世界的な再編の流れや、国内金融業界の再編、さらには 特石法廃止後の国内石油業界の競争激化などを背景に、わが国石油 産業においても、石油精製・元売会社の再編に向けた動きが活発化 し、1999年4月の日本石油と三菱石油の合併を契機にして、過去に

■石油関連規制と規制改革の推移

87年7月   二次精製設備許可の弾力化 89年3月   ガソリンの生産枠(PQ)指導の廃止 89年10月  灯油の在庫指導の廃止

90年3月   SS建設指導と転籍ルールの廃止 91年9月   一次精製設備許可の運用弾力化 92年3月   原油処理指導の廃止

93年3月   重油関税割当制度(TQ)の廃止

97年7月    石油製品輸出承認制度見直し 包括承認制の導入・輸出の自由化 97年12月  SSの供給元証明制度の廃止

98年4月    有人給油方式のセルフSS解禁 86年1月  特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)

  ガソリン・灯油・軽油を一定秩序のもとで輸入を促進する観点から制定

2009年2月  品確法の一部改正

  特定加工業者の「登録制」「品質確認義務」

2010年7月   高度化法に基づく化石エネルギー原料の有効利用の促進に関する判断基準   重油分解装置の装備率を2013年度末までに13%程度まで引き上げ(第一次告示)

2010年11月   高度化法に基づく非化石エネルギー源利用の判断基準   2017年度までの揮発油に混和するバイオエタノールの利用目標量設定

2014年7月   高度化法に基づく原油等の有効な利用に関する石油精製業社の判断基準   残油処理装置の装備率を2016年度末までに50%まで引き上げ(第二次告示)

77年5月  揮発油販売業法 ガソリンなどの安定供給と品質管理の徹底などを目的として制定

96年3月  特石法の廃止 石油製品の輸入自由化

2001年12月  石油業法の廃止 需給調整規制の廃止

2009年8月  エネルギー供給構造高度化法(高度化法)

76年4月  石油備蓄法 石油の安定供給確保の観点から制定

2002年1月  石油の備蓄の確保等に関する法律(新石油備蓄法)

2012年11月   石油備蓄法改正

62年7月   石油業法 原油輸入の自由化に対応、石油産業の基本法として制定

96年4月    石油備蓄法改正

96年4月    揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法) 揮発油販売業法の改正     ①強制規格、SQマークの導入 ②指定地区制度の廃止など

73年12月   緊急時石油二法

国民生活安定緊急措置法/石油需給適正化法 石油危機の経験を踏まえて制定

平常時 1960

2010 1975 1985

1990

1995

2000 2005 1965

緊急時

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