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「バイオガソリン」の販売

農作物や木材等を原料とするバイオマス燃料は、燃焼時に発生す るCO2の排出量が計上されないカーボンニュートラル効果の点か ら、地球温暖化対策に効果があるエネルギーとして各国で注目を集 めています。わが国においては、京都議定書目標達成計画(2005年4 月)の中で、輸送用燃料において50万S(原油換算)のバイオマス由 来燃料の導入目標値が定められました。

石油業界は、資源エネルギー庁の要請に基づき、06年1月、この 計画の実現に協力するため、「2010年度において原油換算21万S

(バイオエタノール約36万S)のバイオエタノールをバイオETBEと してガソリンに配合する」ことを目指すことを決定しました。

バイオマス燃料の導入に際しては、「消費者優先」「安心・安全・公正」

「国産国消」を基本方針に据え、責任ある燃料供給者として、国からの要 請およびエネルギー供給構造高度化法(以下、高度化法)に定められた 導入量を遵守するため、着実に準備を進めているところです。07年1 月には石油連盟加盟各社でバイオETBE等の共同調達を行うための組 合(JBSL:バイオマス燃料供給有限責任事業組合)を設立したほか、07 年度は関東圏50ヵ所のSSで、08年度は大阪、宮城を含む100ヵ所の SSでバイオガソリン(バイオETBE配合)の試験販売を実施しました。バ イオガソリンの試験販売(国の補助事業)は08年度をもって終了し、石 連加盟各社は「10年度のバイオETBE84万Sの導入」を円滑に進める ため、本格導入の前年である09年度は20万SのバイオETBEの導入 を開始しました。

さらに、バイオETBE配合率など適正な情報提供を行うため、表示ガ イドラインを策定しました。これは、石連加盟の元売系列のSSにおい て、バイオETBEをガソリンに配合した「バイオガソリン」の名称とマー クを表示して販売する際の取り扱いを定めたものです。消費者の皆様 に安心してご利用いただけるよう環境整備に努めています。現在(14 年12月時点)は、約3,320ヵ所のSSでバイオガソリンが販売されてお り、原油換算21万Sの導入を完全達成いたしました。

また、バイオマス燃料の導入については10年11月に施行された 高度化法において、17年度には原油換算50万S(バイオエタノー ル約82万S)のバイオエタノールをガソリンに直接、もしくはバイ オETBEとして混和し、自動車用燃料として利用することが定められ ました。

しかしながら、バイオマス燃料として注目されているバイオエタ ノールについては、国内生産には耕作地や生産コスト面の限界があ る中で世界的に輸出余力があるのはブラジル一国のみであること、

さらに天候や食料品価格などの影響を受けずに安定供給が可能か

(供給安定性)、原料が農産物であるためコストが高く、熱量がガソリ ンに比べて3割程度低いこと(経済性)などの課題があります。

また、バイオエタノールを直接ガソリンに混合すると、少量の水分 混入でも油とエタノールの相分離が生じ、燃料品質の変化(オクタン 価の低下)、流通・販売施設や自動車部材の劣化など、安全性を脅 かすことになります。また、直接混合はガソリン蒸気圧の上昇も引き 起こすため、光化学スモッグの原因となるHC(ハイドロカーボン)な ど有害物質の排出量増加が考えられます。バイオエタノールに関し ては、CO2対策ばかりが強調されている面がありますが、その一方 で大気汚染対策をどうするかも忘れてはなりません。

一方、バイオETBE方式はこのような問題が発生することはありま せん。また、従来通り製油所(生産段階)でガソリンとバイオETBEを配 合して出荷されるため、ガソリン税の脱税や粗悪ガソリンが流通する こともありません。従って、石油業界ではバイオエタノールを自動車 燃料として利用するにあたっては、消費者の安全・安心を確保するた め、引き続きバイオETBEとしていく予定です。

■バイオガソリン(バイオETBE配合ガソリン)

 表示ガイドラインの概要

2. 「バイオガソリン」表示ガイドライン 1. 目 的

①バイオETBE配合率は1.0vol%以上 であること

②最低保証するバイオETBE配合率を 表示すること

③バイオETBEのバイオ由来性が証明 されていること

石油連盟加盟の元売系列のSSにおいて、「バイオガソリン」

の名称とマーク(右下)を表示して販売する際の取り扱い を定めたもの

バイオマス燃料への取り組み

ア︵

■主要国のバイオエタノール自給率

(注): 日本は2012年度、それ以外は2013年のデータに基づく

出所: 「バイオ燃料持続可能性基準の運用等に関する研究会(2014年3月)」

100%

80%

60%

40%

20%

0% ブラジル 米国 日本

0%

100%

3%

97%

EU 19%

81% 93%

7%

国産

■蒸発ガス(HC)の増加と光化学スモッグの発生プロセス 輸入

紫外線 光化学スモッグ

(光化学オキシダント)の発生

光化学反応 HC(炭化水素)の増加

SS

①LCAの温室効果ガス削減効果(ガソリン比50%以上)

②食料価格への影響(食料競合)の回避

③生態系への影響の回避 石油業界のバイオ燃料の取り組み(バイオETBEの導入)

①輸入一次基地  の整備

(注):2007年度から2年間は国の補助事業(流通実証事業)として実施した

2008年夏:契約 利用開始

②外航船の調達

2008年7月 2009年9月 ブラジルにて覚書締結。

米国会社とETBE購入契約。 国産エタノール取引開始 2008年夏:契約 運航開始

③内航船の調達 2008年冬:契約 運航開始

2017年度  普及拡大(最終)

2009年度 

導入拡大 2010年度  本格導入開始

原油換算50万

S

バイオETBE 194万

S

[     ]

原油換算21万

S

バイオETBE 84万

S

[     ]

バイオETBE 20万

S

[     ]

バイオ燃料の持続可能 な利用の確保に向けた

対応を推進・強化

2007年度 SS:

50ヵ所

2008年度 SS:

100ヵ所

2007年4月〜2009年3月  試験販売

流通実証事業(注)

バイオガソリンの 販売 バイオETBEの

導入

国内インフラの 整備

バイオETBEの 供給

バイオ燃料の持続可能性基準について

バイオ燃料に対しては、当初、温室効果ガスの排出削減のための有 効な手段として大きな期待が寄せられましたが、最近では食料との競 合、生態系等の環境への影響の問題が指摘されています。こうした現 状を把握するため、石油業界は各国の取り組み・問題点・課題等に 関して調査を野村総合研究所に委託し、07年12月、「バイオ燃料に ついて」を取りまとめました。

また、08年当初より、食料価格の高騰の原因のひとつとして世界 的なバイオ燃料利用の拡大が指摘されたことから、バイオ燃料の食 料競合問題が大きくクローズアップされました。世界的にバイオ燃料 利用が拡大する中で、欧米諸国や国連においてもバイオ燃料の利 用・開発における食料競合や森林破壊等の環境問題、ライフサイク ル全体での温室効果ガスの削減効果など、持続可能な利用・開発に 向けた議論、基準の策定が進められています。こうした動きを受け、

08年10月より、経済産業省は農林水産省、環境省、内閣府の参加を 得て、「バイオ燃料持続可能性研究会」を設置、調査・検討が開始され ました。ここでは、わが国でバイオ燃料を導入拡大していくにあたり、

持続可能性と供給安定性を考慮することが重要との観点から、欧米 諸国の動きや運用方法などを調査し、バイオ燃料の温室効果ガス削 減効果、バイオマスの栽培に伴う土地利用変化、食料との競合、供給 安定性などのあり方といった、わが国の基準策定の際に備えるべき 課題について取りまとめがなされています(「日本版のバイオ燃料の 持続可能性基準の策定に向けて(2009年4月)」)。

その後、わが国としての具体的な基準策定と運用実施に向けて、7 月には「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」を 設置、検討が開始され、10年3月の中間取りまとめにおいて、①わが 国の具体的なバイオマス燃料の持続可能性基準のひとつの方向性と して、「ガソリンのGHG(温室効果ガス)排出量に比較し、LCAの GHG削減効果を50%以上」とすること、②バイオマス燃料のエネル

ギーとしての供給安定性について、上記持続可能性基準を満たすバイ オマス燃料が、現時点でブラジルからの輸入や一部国産の燃料に限定 され、エネルギーセキュリティの観点からも、高い自給率を目指すこと が必要であること、③食糧との競合について、関係省庁が連携し、原因 分析と対処法を検討していくことが必要であること等が示されました。

また、高度化法に基づき導入されるバイオマス燃料の持続可能性基準 も、同中間報告で示された方向性を踏襲するものとなっています。

このように、バイオマス燃料の持続可能性について、わが国でも検 討が進められていますが、諸外国においても同様に検討が進んでいま す。特に欧米において、バイオマス燃料用の作物の生産のために、当該 土地で従来生産されていた作物などが別の土地で生産されることに 伴う土地利用の転換影響としての「間接的土地利用変化(ILUC)」に係 る研究が進められた結果、穀物由来(第一世代)のバイオマス燃料の GHG削減効果について疑問が呈され、EUおよび米国での穀物由来

(第一世代)のバイオマス燃料に対する導入制限が課せられることにな りました。また、穀物由来のバイオマス燃料から、廃棄物等を原料とす る次世代バイオマス燃料へのシフトを進めるために、導入インセンティ ブを拡大する動きもみられます。

無資源国である日本のエネルギー政策は、3E(供給安定性、環境 適合性、経済性)の同時達成が基本です。バイオマスを自動車燃料と して利用するにあたってもそれは例外ではありません。今後バイオ燃 料の普及拡大を進めるにあたっては、「安定供給」に対する配慮が極 めて重要であるとともに、長期的には、食料と競合しない草木植物な どを原料とする低コストの生産技術の開発が重要です。石油業界は、

上記中間取りまとめを踏まえて決められた持続可能性基準を遵守し、

国際情勢の動向や、研究等も踏まえつつ、バイオエタノールを食料や 環境にマイナスの影響を与えない範囲で、再生可能なエネルギーと して有効に活用していきたいと考えています。そのために実現可能 性を踏まえた地に足のついた取り組みを今後とも続けていきます。

※Life Cycle Assessment: ライフサイクル全体(生産・使用・廃棄)の環境影響(必要とするエネ ルギー・素材資源量や発生する環境負荷(二酸化炭素、SOx、NOxなど))を、評価する手法。

■EUにおけるバイオ燃料政策見直しの動き(持続可能性基準)

第一世代(穀物由来)

バイオ燃料の制限 サブ目標 次世代バイオへの

インセンティブ  間接的土地利用変化(ILUC) 

改訂後(2013.9.11欧州議会採決)

2020年 10%目標のうち、

穀物由来燃料比率を6%に制限  次世代バイオ2.5%

 ・廃食油、獣脂、残さ物、

非食用セルロースは2倍カウント  ・藻類、産業廃棄バイオマス、

麦わらなどは4倍カウント 考慮する な  し

な  し

次世代バイオ燃料(廃棄物、残さ物、

非食用セルロース)は2倍カウント

考慮せず 現  行

*バイオ燃料用作物の生産によって、これまで生産 されていた作物が、別の土地で生産されることに 伴って生じる影響のこと

(例:エタノール原料のサトウキビ増産→大豆畑 を転換→大豆畑を開墾→森林伐採) 

【目的】EUでは、土地利用変化による食料 価格の高騰、GHG排出量の増加 に歯止めをかけるため、第一世代

(穀物由来)バイオの使用を制限し、

次世代バイオ燃料へのシフトにつ いて検討が進められている。

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