課題研究「四日市学」は、つねに地域の問題をとりあげ、課題を明らかにし、提案をおこなっ てきた。生徒は、学校の枠を超え、地域の人たちとふれあうことで、教室とは違う学びを経験す ることができた。成果はそれだけにとどまらず、地域にも変化を及ぼした。
第1節 高校生の活動が地域を励ます
資料27 商店街でパソコン教室 四日市商業高等学校の課題研究「四日市学」が
最近、新聞(2013.1.25 伊勢新聞)に取り上げられ た。商店街で開催したパソコン教室のニュースで ある。商店街活性化の研究で交流を続けてきた本 町通り商店街の要請で始めた教室は、今回で2回 目。「わしら、インターネットやソーシャルメディ アの活用と言われても何のことかさっぱり分から ん。とにかくパソコンを教えて欲しい」との声に 応えたものである。情報化社会から取り残された 人たちに比べ、高校生たちは、気がつけば携帯電
話・パソコンを手にしていた世代、慣れ親しんだ道具である。商店街の人たちには眩しい存在だ。
商店街活性化をテーマに 2005 年にスタートした課題研究「四日市学」も、すでに 7 年が経過 した。現在も本町通り商店街との関わりが続いている。「本の町、本町に図書館を!」のまち づくりの提案は、四日市市文化奨励賞を獲得した。また全国大会にも東海地区代表として出場 することもできた。生徒たちは、いくつかの成果を手にしたが四日市学が目標とした「商店街 活性化」は達成できたのか?という問いには、「できなかった」と答えざるをえない。しかし、
今年(2013 年)秋に、新たな変化が始まった。 資料 28 本町通り商店街チラシ それは「教えて店主さん!」右のチラシである。商店街主催で地
域の人たちを対象に開催される料理講習会、案内チラシには「家族 に美味しいお魚をたべさせたい」という方へ「3 月 18 日(月)魚 屋さんに教えてもらおう!美味しい魚の見分け方・さばき方【魚太 さん】」、「3 月 25 日(月)一足先に春のお菓子を味わってみま せんか、さくら餅を作ってみよう!【松花堂さん】」とあった。
「やる気のない商店街」という文章に出会ったことがある。商店 街活性化とは裏腹に、やる気のないお店が多いことを憤る内容であ る。商店街活性化を叫ぶ前に、個々の商店がもっと努力せよという 趣旨である。商店街を活性化させる「魔法」はない、「やる気」が 活性化のカギであるが著者のメッセージであったと記憶している。
上記の商店街チラシに生徒たちの活動の成果が見えた。商店街振興組合の要望ではじめた生 徒たちのパソコン教室が、インターネットだけでなく、お店の人たちの「やる気」に火を付け た。「若い学生さんが商店街に来てくれるだけで嬉しい」と言ったお店の人がいた。商店街と 関わる高校生の存在は、商店街にとって大きな励ましになったということである。
伊勢新聞 2013.1.25 より
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第2節 高校生もまちづくり -市議会との交流-
2010 年 2 月 9 日(火)四日市市文化会 館第3ホールで「第1回 四日市のまち づくりを考える高校生の集い」が開催さ れた。昨年、行われた議会事務局主催の シティミーティングの拡大版である。「課 題研究の成果を学校の枠を超えて積極的 に交流・発信していくべきだ」という各 校担当者の要請に応えてのとりくみであ る。地区校長会が主催し、教職員組合が 後援することとなった。
発表校は四日市農芸、四日市工業、四日市中央工業、四日市商業の4校、司会は桑名西高校 の放送部の生徒が担当、計 20 名の生徒たちが参加した。四日市市からは正副議長を含め 16 名 の市議と議会事務局と文化国際課の職員、計 4 名が出席した。高校側からは北勢地区校長会会 長の谷口四日市西高校校長をはじめ 6 名の教員が参加、運営につとめた。
1時間にわたる研究発表の後、交流会が行われた。発表内容のレベルの高さへの賛辞とともに アドバイスや研究についての要望が市議会側から出た。「財政的に困ったことがあれば遠慮なく 言ってください」や「まちづくりのさまざまなテーマについて皆さんとこれからも議論をしてい きたい」という声も出た。各校の発表は下記の通りである。
発表テーマ 四日市農芸高校 「酒造米 米粉の利用プロジェクト」
四日市工業高校 「河川敷活用モデル」
四日市中央工業高校 「地域河川の水質汚濁調査」
四日市商業高校 「地域ブランドと町づくり」
資料 29 第1回 まちづくりを考える高校生の集いアンケート集約結果 Q1.生徒発表について 良かった点・お気づきの点をあげてください
(1) 四日市農芸高校「酒造米 米粉の利用プロジェクト」
①内容・発表の仕方ともにとても良かった。ドキュメント番組を見ているようで安心して発表を聴くこ とができた(教員)②酒造米の米粉の利用に気づき、パン作りまでいきついたことはすばらしい。試食 がしたかった(教員)③たいへん実用的ですばらしい研究だった(行政)次は販売流通の研究を(議員)
⑥身近な所にある資源に目をつけたのはすばらしい。味はどうでしたか。パンというネーミングにこだ わらずに新しい名前で商品化してもいいのでは(議員)⑧取り組みが徹底され、専門性も高い。今後も 継続し、諸々のイベントに参加してほしい。実践をさらに深めることによって自信がもてる。実際に市 場に出させるのでは。「継続は力なり」さらに実践を(議員)
(2) 四日市工業高校「河川敷活用モデル」
①プロ顔負けのプレゼンだった。欲を言えば背中を向けての発表が残念(教員) 職人気質を感じる 内容でした(行政)②コンペの発表ではあったが、すばらしい。(教員)工業高校ならではの発表だっ た(生徒)③日本の河川は、急流で洪水や水害が発生しやすいため、危険なもの、生活の場からは、
隔絶された河川が多い。都市の河川を生活空間に近い場所では、もっと河川を利用したいと思います。
河川敷を公共の場とする前に水量も含めた調査を(議員)
(3) 四日市中央工業高校「地域河川の水質汚濁調査」
①緻密な調査結果に驚いた。もう少し元気良く発表できると良いのに(教員)②貴重なデータありが とうございました(行政)③レベルが高かった。市内の水質とともに地域の様子も調査し比較しては
(教員)④専門的な調査をやっていただいて有難う(教員)COP10名古屋大会を前にとても重要 な研究である(議員)水の安心・安全度につながる研究に、継続的なとりくみを期待(議員)⑩専門
写真⑤ 四日市のまちづくりを考える高校生の集い 2010.2.9
- 34 - 用語があってわかりにくかった。(生徒)
(4) 四日市商業高校「地域ブランドと町づくり」
①地元ブランドを東京ブランドと比較したことがとてもユニークだ。資料の文字の一部がつぶれてい た(教員)②四日市ブランド、四日市を愛する心が大事だ。ハードでなくソフトを充実する重要さを 改めて実感した(教員)③ブランドという切り口がおもしろい(教員) ブランドを作ることで全国 に発信すれば、四日市を大切にする心が育つ(生徒)④若さいっぱいのアイデアとパワーが感じた。
すばらしい発表だった。地域にもっとアピールを(教員)⑤よくまとまった発表だった。インタビュー 調査などの研究方法もとても良かった。(教員)
Q2.今回の「集い」企画・運営について
[・継続してほしい15・再検討が必要では0・どちらでも1]
①すばらしい集いで感動した。もっと大々的に宣伝し、多くの人に知らせるべき(教員)②小中高の 生徒も加えては(教員) 学校間のコラボも含め継続を念頭に検討いただければと思う (校長)③ なかなかに手ごたえのある内容だった(教員)④他の学校がどういう活動をしているか今まで知らな かった。これからも継続してほしい。(生徒)
Q3.本日の「集い」で見えてきた課題や展望についてお書きください
①会場設営や受付を生徒の手に委ねるべきでは(教員) ある程度質問にも答えられるように校内でも プレゼンの機会を(校長)②研究の継続を(教員) 新鮮なアイデアを聞くことができてよかった(生 徒)まだまだ勉強不足なので勉強していきたい(生徒)③大人と子どもが同じ土俵で対等に話し合って いたのがすばらしい(教員)④このような会をきっかけに学校間コラボで、実際に四日市ブランドが開 発できればすばらしい(教員)⑧閉じられた空間ではなく広く市民の皆さまや専門家の方も含めた場で の発表や評価をいただいては(行政)⑮産学官の連携も考えてはどうだろうか。シャッター街にお店を 開いてください。家賃はただ。内装は工業高校で(議員) *アンダーライン筆者 参加者[・生徒 20・議員 16・校長 4・教員 22・行政 4・一般 2 ]
今回の交流は、現場の担当者が校長会を動かし、議会事務局にはたらきかけたものである。「集 い」の立ち上がりにおいて、主催をどうするかで若干のやり取りがあった。校長会側は「市が 主催することを希望」し、市側は「校長会の主催」を望んだ。結果は、校長会が要請し、市議 会が応えるという形で落ち着いた。「集い」開催後は、学校側から運営への要望や意見が出た。
特に生徒の一方的な発表で終わり議論にならなかった点や、議会側は感想が中心で提案につい てなんら回答がなかったなどの不満がでた。
アンケート集約結果では、四日市農芸高校の「酒造米の米粉活用プロジェクト」に市議から「⑥ 身近な所にある資源に目をつけたのはすばらしい。味はどうでしたか。パンというネーミング にこだわらずに新しい名前で商品化してもいいのでは(議員)⑧取り組みが徹底され、専門性 も高い。」など、高い評価を寄せられた。市議会議員といっても、それぞれの職業や経歴での 実績を有するものの、研究や提案によっては、生徒たちと同レベルかそれ以下である。精製過 程で生じる米粉が廃棄物として捨てられていたことや、パンの原料として活用する案に感動す るのも肯ける。また、四日市中央工業高校「地域河川の水質汚濁調査」には、「②貴重なデー タありがとうございました」という行政の声もあった。
「Q2.今回の「集い」企画・運営について」は、[・継続してほしい15・再検討が必要で は0・どちらでも1]と、継続に期待が集まった。「①すばらしい集いで感動した。もっと大々 的に宣伝し、多くの人に知らせるべき(教員)②小中高の生徒も加えては(教員) 学校間の コラボも含め継続を念頭に検討いただければと思う(校長)」、生徒たちの研究活動に、世論 を動かし、市政を進める力を感じたのは、参加者に共通の思いであったことが分かる。