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各イベントの考察

ドキュメント内 master thesis ishikawa (ページ 67-72)

第 6 章 Al/CdTe/Pt 両面ストリップ検出器の開 発と性能評価発と性能評価

6.7 各イベントの考察

Anode CH74 Energy [keV]

-20 0 20 40 60 80 100 120 140 160

Cathode CH10 Energy [keV]

-20 0 20 40 60 80 100 120 140

1 10 102

adc[10]*0.17087:adc[74]*0.1377 {adc[10]*0.17087>-20&&adc[74]*0.1377>-20&&adc[10]*0.17087<150&&adc[74]*0.1377<150}

6.12: CdTe 両面ストリップ検出器の陰極、陽極読み出し信号の相関。線源

57Co、温度

20C、バイアス電圧500 V

6.7. 各イベントの考察 61

6.13: ()CdTe両面ストリップ検出器の各イベントにおける陰極、陽極の信号の最大値の

相関。()CdTe両面ストリップ検出器の各イベントにおける陰極の信号の最大値と2番目に

大きい値の相関。線源

57Co、温度20C、バイアス電圧500 V

トリップにより電荷が収集される場合では、陽極の信号の最大値は陰極の信号の半分より大きい 値、すなわちx > y/2となる。陽極で1ヒット、陰極で2ストリップが相互作用している場合は

y > x/2となり、これら2つの条件は図6.13右における補助線に挟まれた部分に相当する。イベ

ントは補助線で挟まれた部分に集中しており、陰極1ヒットかつ陽極1ヒットのイベントと、信 号が複数のストリップから読み出される場合で説明できる。

陰極の信号について、各イベントにおける信号の最大値と2番目に大きい値の相関をプロット すると、図6.13右のようになった。122 keVのガンマ線に注目すると、x+y≃122 keVとなる イベントが存在していることがわかる。これは、2つのストリップで電荷収集が行われている場合 であると考えられる。3.3節で示した通り、CdTeを構成するCdTeは、23 keV から 31 keV までの間に4つの蛍光X線ピークを持つ。そのため、x+y= 122 keVかつy23-31 keV の点 に見られる極大値は、入射した122 keVのガンマ線があるストリップで相互作用し、その一部の エネルギーが蛍光X線として持ち去られ、そのX線が別のストリップで光電吸収されたイベント であると考えられる。

複数のストリップによるイベントを取り除き、陰極1ヒットかつ陽極1ヒットの条件で図6.13 左と同様の図を作成したところ、図6.14のようになり、複数ヒットイベントと考えられるイベン トを除去することができた。1ヒットの判定は、両面それぞれにおいて信号の値が2番目に大き

い値が10 keVを超えないことを条件として行った。

6.7.2 複数ヒットイベント

複数のストリップにまたがるイベントについてさらに考察するため、陰極の隣接するある2 トリップに注目した。各イベントの相関を2次元ヒストグラムで図6.15示す。

122 keVのガンマ線について注目すると、xまたはy122 keVで、もう一方が0であれば陰 極1ヒットイベントである。x+y = 122 keV の場合はこの2つのストリップで電荷を分け合っ ている2ヒットイベントであると考えられる。1光子が相互作用した場合に2ヒットイベントと なる確率をこの分布から計算すると、純粋に電荷を分け合うイベントと蛍光X線イベントを合計

6.14: 1ヒットイベントを取り出した場合の CdTe両面ストリップ検出器の各イベントに おける陰極、陽極の信号の最大値の相関。線源

57Co、温度20C、バイアス電圧500 V

Cathode CH11 Energy [keV]

-20 0 20 40 60 80 100 120 140 160

Catode CH10 Energy [keV]

-20 0 20 40 60 80 100 120 140

1 10 102

adc[10]*0.17087:adc[11]*0.16944 {adc[10]*0.17087>-20&&adc[11]*0.1944>-20&&adc[10]*0.17087<150&&adc[11]*0.16944<150}

6.15: CdTe両面ストリップ検出器における、隣接するある陰極の2ストリップによる読み

出し信号の相関。線源

57Co、温度20C、バイアス電圧500 V

6.8. 400µmピッチ検出器の分光性能に関する考察 63 すると20%と大きい値となった。これは、電極の面積に対して電極間のギャップの面積が大きい ためであると考えられる。x+y= 122 keVのイベントの中で、蛍光X線イベントの割合が高い と考えられる、xまたはy20-34 keV 以内に入るイベントは全体の8%であった。検出効率を 高めるためには、このようなイベントも解析し、スペクトルおよびイメージに反映できるように する必要がある。2ヒットイベントは、スペクトルにはヒットした2つの信号を足し合わせるこ とで反映させることができる。イメージには、蛍光X線イベントは最初に相互作用した位置を用 い、蛍光X線イベント以外は信号の比率により重みをつけてそれぞれの位置に入れることにより 反映させることができる。

6.8 400 µm ピッチ検出器の分光性能に関する考察

プロトタイプ1 mmピッチ検出器と400µmピッチ検出器を比較すると、陰極読み出しで達成 したエネルギー分解能は、60 keV のガンマ線に対しそれぞれ2.4 keV(検出器中央付近の1スト リップ)2.6 keV(ガードリングに近いストリップを除いた62 ch の合計)と、同程度であった。プ ロトタイプ両面ストリップ検出器は電極の面積が17 mm2 であるのに対し、400 µm ピッチ検出 器の電極の面積は8 mm2 と半分以下である。そのため、検出器容量およびリーク電流は低減さ れるはずである。また、検出器の厚さはプロトタイプが0.75 mmであるのに対し、400µmピッ チ検出器は0.5 mmである。よって、電荷収集効率も高いと考えられる。

ノイズが低減され、電荷収集効率が向上していると考えられる400µmピッチ検出器において 陰極読み出しの性能が向上しなかった原因として、まず読み出し方法の違いが考えられる。プロ トタイプの読み出しは1 chずつ行ったのに対し、400µmピッチ検出器の読み出しにはASIC 用いている。このため、プロトタイプの読み出しにおいてはノイズがやや高いにも関わらず高い 分解能を達成できた可能性がある。また、400µmピッチ検出器では電極の面積は確かに小さく なっているが、電極の長辺の長さは18 mm から26.7 mm へと増加している。そのため、スト リップ間容量は増加していると考えられる。DSSDの場合はストリップ間容量が支配的であるこ とが知られており[49CdTeストリップでも同様であれば、ストリップ間容量が性能を制限し ている可能性がある。さらに、KEITHLEY 237による電流モニターでは、500 V ∼40 nA 値を示していた。これは、面積あたりのリーク電流にするとパッド検出器よりも1桁近く高い値 である。そのため、何らかの原因でリーク電流が高く、性能を制限している可能性がある。ただ

し、KEITHLEY 237により測定されたリーク電流はFEC間のカップリングコンデンサーのリー

ク電流やガードリング電極を流れるリーク電流も含まれる。

一方、陽極読み出しでは、60 keVのガンマ線に対しプロトタイプが2.5 keVというエネルギー 分解能を達成したのに対し、400µmピッチ検出器は6.3 keVであった。このように400µmピッ チ検出器の陽極側で分解能が劣化した原因は、VA32TAによる負信号読み出しがリーク電流に弱 く、|Vf p|を下げなければならなかったためである。ストリップ電極の面積8 mm2はパッド検出

器の1.8 mm2 と比べると大きく、リーク電流も増大する。さらに、面積あたりのリーク電流に直

してもパッド検出器より大きかったと考えられるため、全ch読み出しを行うためには|Vf p|には 非常に強い制限をかけなければならなかった。容量及びリーク電流は両面で同等であると考えら れ、電子が近づく方向の陽極の方が低エネルギーテールを削減できるはずである。ASIC による 負信号読み出しにおいても、リーク電流が十分小さければ正信号の読み出しと同様に高い性能を 達成することができることは5章で示されている。そのため、陽極読み出しでは陰極と同様また はそれ以上の性能を原理的には達成できるはずである。しかし、現時点では ASICの制約により そのような性能は達成できなかった。

現在、両面ストリップ CdTe検出器の性能を制限しているものは実際には何であるか、また改 善させることは可能であるかを考えるには、リーク電流や検出器容量を実際に測定してみる必要 がある。そこで、各ストリップを流れるリーク電流の分布を両面について調べる予定である。ま た、CdTe検出器の容量は平行平板近似がよく成り立つことがわかっているが[31、ストリップ

間容量がどのようになるかはわかってない。そのため、検出器容量を体積成分、ストリップ間の 両方について測定する予定である。CdTeはワイヤーボンドができないため、バンプした CdTe の1ストリップのみを読み出すような仕組みを作る必要がある。

本研究で示したCdTeストリップ検出器は、最初の1つであり、今後は複数の素子に対してリー ク電流、容量と言った基礎特性、そして分光性能を評価していく予定である。また、ノイズの多 かった今回のセットアップの改善も解決すべき課題である。

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